降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★活版では、こう組んだ❾

2014年06月16日 | 新聞


【 おととい6月14日付の続きです。
写真は、本文と関係ありません 】
新聞社で1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んだ、忘れないうちに書き遺しておこう、の第9回。
*CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ独自に研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンをそれぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
*お断り=新聞社によって、作業の名称やシステムは異なります。

▼降版時間まで14分@とある新聞社の製作局大組み台
=登場人物は13日付、組み紙面イメージは14日付参照してくださいね (^O^)/

大組み・池さんと、整理部の僕は絶句してしまった。
降版時間が接近しているのに、校閲さん直しが来ないなぁと思っていたら、
編集局と製作局を結ぶシューターが故障し、校閲直しゲラが詰まっていた、という。
...........ひ、ひ、非常事態じゃん。
事態を聞いた製作局大組みデスクは、文選や大組みスタッフに怒鳴った。
「手があいた者は、わりぃーが、赤字直しを手伝ってくれ!」
「赤字直しは最低限でいいからな!(*1)
俺は、編集校閲と整理のところで降版時間のこと話に行ってくっから、頼んだぞ」

降版時間が集中しているので、続々と組みあがり(*2)が大刷り機のところに並び、
校閲OK(*3)が出た紙面の一部は、僕たち整理が「降版OK」まで出していた。

整理・僕「池さん、と、と、とにかくコッチは組み上げましょう。赤字直しはそれからにしましょう」
大組み・池さん「んっ、そーだな。
じゃあ、ペースあげっか。記事このまま流していいなっ」
と大組み作業を急いだ。

文選・植字が騒然としていた。
故障していたシューターから、庶務さん(*4)と協力して筒を出したデスクは、
「うわっ、こ、こんなに直しゲラが詰まっていたのかぁ!
こ、こ、こりゃこの版、間に合うかぁ……よしっ手分けして、改行なんか直さねーでいいから、必要最低限の誤字赤字だけ処理しよう!」
................長くなったので、続く。


(*1)赤字直しは最低限=あかじなおしはさいていげん
例えば「病気が直る」→◯治る
「日本、初戦破れる」→◯敗れる
など、明らかな誤字は直すこと。

(*2)組みあがり=くみあがり
大組みし終わった全15段(当時)紙面のこと。
広告、凸版、地紋見出し、写真、決まりものカットなど、すべて乗せてあるハンコ。

(*3)校閲OK=こうえつおーけー
製作局には校閲さんが赤字ゲラを照合する専用台があり、そこで直しと記事流れを確認後、僕たち整理に「OK」を出す。
校閲OKが出なければ、整理も「降版OK」が出せない。

(*4)庶務さん=しょむさん
アルバイトの学生くん。
ほとんど大学生で、情報誌にバイト募集をかけるのだけど、なぜか、ある特定の大学に偏っていた。僕のところでは、外語大生が多かった。