降版時間だ!原稿を早goo!

新聞編集者の、見た、行った、聞いた。
「降版時間」は新聞社整理部の一番イヤな言葉。

★活版では、こう組んだ❽

2014年06月14日 | 新聞

【 きのう6月13日付の続きです 】
新聞社で1990年代初頭まで行われていた、鉛活字を使った活版組み版( →いわゆる「ホット」。対して、コンピューター組み版編集CTSを「コールド」と呼んだ )。
活版大組みで、僕たち整理部はこう組んだ、忘れないうちに書き遺しておこう、の第8回。
CTS=シー・ティー・エス。Computerized Type-setting System。
1960~80年代、朝日新聞社、日本経済新聞社の2社がそれぞれ研究、米IBMと日本IBMが技術協力して開発した。
日本経済新聞社東京本社は1978年にアネックスを、朝日新聞社東京本社は1980年にネルソンをそれぞれ全面稼動した。
その時つくられたソフトの一部は、パソコンの文字訂正などに転用された。
お断り=新聞社によって、作業の名称やシステムは異なります。

▼降版時間まで15分@とある新聞社製作局の活版部大組み台(→登場人物は、きのう6月13日付みてね)

小組みの人「おぅ、お待たせ。5段17行のハコできたぞぉ。小刷りゲラは校閲に上げたけど、まだ時間いいな(*1)
整理・僕「あっ、サンキュー。
(ハコを見て)ウホッ、ピッタシじゃん。計算じゃあ、1行足りないかな、と思っていたけど、調整してくれたんだね(*2)ありがとう。
うん、きっと明日いいことあるよ、競馬、当たるといいねっ」
小組みの人「おっ、嬉しいこと言ってくれるねぇ。あとで、ガラ刷り(*3)頼むな」
整理・僕「ほい、今夜は遅番すか?」

大組み・池さん「△△ちゃん(←僕のことね)このハコ、入れるぞ」
整理・僕「はい、たのんます」
僕注上写真のピンクケイ囲みのハコのこと。
現在、矢印のアタマ記事から流している大組み中としますね。あ、写真はあくまでイメージですから...)

▼降版時間まで14分@組み上がった他の面は続々大ゲラ刷り機に入っている

整理・僕「おっとぉ(製作局の大時計を見ながら)あと10分ぐらいかぁ................まぁ何とか間に合いそーですね」
大組み・池さん組みながら「ああ、大丈夫大丈夫。
ところで校閲赤字が来てねーけど、赤字処理したのか、このゲラ」
整理・僕「あれまっ、そーすね。
こんな時間なのに、校閲さんからの直しが入ってませんね.......ちょっと電話してきます(*4)
小組みの人あわてて登場「おーい、大変だぞぉ~。
シューター(*5)が故障していて、校閲ゲラが大量に詰まっていたんだぁ~」
大組み・池さんと整理・僕「げっ、そ、それで校閲ゲラが来てないのかぁ!」
................長くなったので、続く。


(*1)まだ時間いいな=まだじかんいいな
「かなり降版時間が接近しているけど、小刷りゲラを編集校閲に回してもいいか。それとも、こっち製作局で見るか?」の意味。
時間帯によっては、校閲さんを製作局に呼んで、読み合わせ校正した。

(*2)調整してくれたんだね=ちょうせいしてくれたんだね
たまに(笑)製作局とはいがみ合うこともあったが、
そこは職人集団、1行足りないときはワリを入れて1行つくってくれ、
1行あふれたときは約物二分処理でピッタシに調整してくれた(→6月4日付参照してください)。
整理部には、とても嬉しいはからい (^O^)/

(*3)ガラ刷り=がらずり
新聞社地下にある輪転工場で、インク調整用に刷る試し刷り新聞のこと。
社外への持ち出しは禁止されていて
「持ち出し厳禁」
と赤いハンコがドーンと押されていた。

(*4)電話してきますね=でんわしてきますね
製作局と編集局整理部、校閲部の間にはそれぞれ直通回線があった。
ちなみに、デジタル回線ではなく、アナログ黒電話。

(*5)シューター=しゅーたー
エア・シューターのこと。
活版時代の新聞社はどこの社でも、高い天井に多数の配管がいたるところ複雑に延びていた。
大きな筒にゲラや見出し伝票などを入れ、空気圧を利用して各セクションに届けた。