今日僕はのりピーに2度と同情することはないだろうと思った。
実は今日から1才7ヶ月になる娘の断乳を始めた。
生まれてから断ち切れたことのない乳房に永遠に別れを告げさせるときが来たのだ。
僕ら夫婦は僕が連休になる今日から始めることに決め、準備をしていた。
というのも経験者たちに聞くと、この断乳はかなり大変なもので、というよりとにかく人間だけでなく多くの生きものが太古の昔から汚されたことのない絆を2歳にもならない娘から奪うのだから当然だ。
言ってわかるはずがないし、娘としたら麻薬を奪われる以上にある意味つらいだろう、その禁断症状のごときものをこんな赤ん坊に毛がはえた程度の娘に味合わせなければならないと思うと気が重かったが、仕方がない。とりあえず娘が好きな林檎や蜜柑などを買いだめし、少しでもその苦しみを軽減しようと準備してきた。
そして今日娘の目をみていった、
「今日から赤ちゃんは卒業しようね。赤ちゃんじゃないからおっぱいはなしだよ、でもパパとママはずっとそばにいるから、一緒に頑張ろうね」
すると娘は「うん」といって頷いた。
僕はすでにつらかった。
頷いて、たとえ理解していたとしても、この我慢は並大抵ではないだろう、ヴァンパイアが血を求めるように、彼女の本能が理性を超えて襲い掛かるだろうからだ。
が、今のいままで、彼女はおっぱいを口にしようともしないのである。
例えば普段なら湯上りには必ず「パイピー」といってのむのに、妻の胸元をみつめはしたが、結局何もいわずに立ち上がって遊び始めた。
晩酌を必ずする方が果たして酒を断ち切れるだろうか。
またいつもなら眠るときもおっぱいを求めるのだが、今度は「パイピー」とは口にしたものの、すぐに妻の下から立ち上がって、その誘惑を断ち切った。
僕は涙がチョチョ切れてしまった。彼女の涙ぐましい努力と、一切反抗しない素直さがいじらしかったからだ(反抗したりどうして?と訊いてくれたほうがむしろ楽だったかもしれない)。
そして最後まで口にせずに先程眠りについた。
この潔さ、禁欲心、僕は感心を通り越して尊敬していた。
その精神力に脱帽し、湧き上がってくるいろいろな感慨をしみじみ感じ、オレは今まで甘かった、これからは心を入れ替えて頑張ろうと誓いさえした
ところに妻がやってきていった。
「やっぱりあたしに似たのねぇ」
コメントできなかった。
すでに娘は妻の次元を超えていると思った。
実は今日から1才7ヶ月になる娘の断乳を始めた。
生まれてから断ち切れたことのない乳房に永遠に別れを告げさせるときが来たのだ。
僕ら夫婦は僕が連休になる今日から始めることに決め、準備をしていた。
というのも経験者たちに聞くと、この断乳はかなり大変なもので、というよりとにかく人間だけでなく多くの生きものが太古の昔から汚されたことのない絆を2歳にもならない娘から奪うのだから当然だ。
言ってわかるはずがないし、娘としたら麻薬を奪われる以上にある意味つらいだろう、その禁断症状のごときものをこんな赤ん坊に毛がはえた程度の娘に味合わせなければならないと思うと気が重かったが、仕方がない。とりあえず娘が好きな林檎や蜜柑などを買いだめし、少しでもその苦しみを軽減しようと準備してきた。
そして今日娘の目をみていった、
「今日から赤ちゃんは卒業しようね。赤ちゃんじゃないからおっぱいはなしだよ、でもパパとママはずっとそばにいるから、一緒に頑張ろうね」
すると娘は「うん」といって頷いた。
僕はすでにつらかった。
頷いて、たとえ理解していたとしても、この我慢は並大抵ではないだろう、ヴァンパイアが血を求めるように、彼女の本能が理性を超えて襲い掛かるだろうからだ。
が、今のいままで、彼女はおっぱいを口にしようともしないのである。
例えば普段なら湯上りには必ず「パイピー」といってのむのに、妻の胸元をみつめはしたが、結局何もいわずに立ち上がって遊び始めた。
晩酌を必ずする方が果たして酒を断ち切れるだろうか。
またいつもなら眠るときもおっぱいを求めるのだが、今度は「パイピー」とは口にしたものの、すぐに妻の下から立ち上がって、その誘惑を断ち切った。
僕は涙がチョチョ切れてしまった。彼女の涙ぐましい努力と、一切反抗しない素直さがいじらしかったからだ(反抗したりどうして?と訊いてくれたほうがむしろ楽だったかもしれない)。
そして最後まで口にせずに先程眠りについた。
この潔さ、禁欲心、僕は感心を通り越して尊敬していた。
その精神力に脱帽し、湧き上がってくるいろいろな感慨をしみじみ感じ、オレは今まで甘かった、これからは心を入れ替えて頑張ろうと誓いさえした
ところに妻がやってきていった。
「やっぱりあたしに似たのねぇ」
コメントできなかった。
すでに娘は妻の次元を超えていると思った。