中国に遅れをとったとはいえ、日本がカナダと二国間の提携を結んだ。昨今のような混沌とした時代は、室町の戦国時代に似て、ある集団のなかのひとつになるより、パートナーシップを堅固にすることが重要になる。
徳富さんは、戦国時代に信長が勝ちあがった最大の理由は、家康とパートナーを結んだことだったという。まず第一に役割分担。家康が、東国(特に甲斐の武田、小田原の北条)対策にあたり、信長が、舅の血の繋がらない斉藤龍興(美濃)や、京都で有力だった三好を抑えた。第二に、更に三好を抑えたあとに将軍義昭がけしかけた浅井・朝倉連合軍との姉川の決戦(1570)も家康とのパートナーシップなしには打ち破れなかった。
Townhallによると、その点アメリカにとって中国はパートナーといっても結局戦略上のそれであって、日本とは異なる。同記事によると日本は、イギリスとほぼ並ぶ同盟国であるとしている(「ほぼ」がついているのは、日本が海外で武力を行使出来ないから)。
しかしTownhallは自他共に認める保守系だからアメリカにとっての見方でしかない。現在のような戦国時代のような状況では、日本は、まさに信長ばりの処理能力が要求される。信長の特徴というと、ホリエモンと重ねられるなど、中世から続いた形骸化した非合理的なシステムの破壊者という側面がスポットライトをあてられるが、それが信長の優れた点というわけではなかった。むしろ非合理なシステムに殊の外立腹するこだわりは、結果論だが、信長を破滅させる引き金をひいたといっていいのではないか。
僕の考える信長の凄さは、運もあったとはいえ、融通無碍、これである。あるときはうつけを装い、だからといって道三との初会合には、きちんとふるまう。戦国武将としての才覚ではかなわない信玄とどうしてもぶつからざるをえない状況では、家康をあたらせ(家康も結局は武力だけでなく外交で北条や上杉との関係をみすえながら武田を対処した)、それ以外ではご機嫌取りの品々を送り、とにかく外交で信玄を抑えこんだ(同時に越後の上杉謙信にもそうしている)。
また天下に号令をかけるためにまず義昭を助けるとみせて実はいざ将軍になるときの準備に天皇家にも多大な寄付をしている(これは親父の信秀もやってた)。そして自国の城下町では規制を撤廃して、経済活動を活発にし、更に斉藤を抑えたあとは岐阜という司馬さんたちによると最良の地と思われる地に安土城を建設し(だからこそ舅斉藤道三もここを選んだらしいが)、ここまでのJudgementは神がかり的といっていいほど正しかった。
信長の暗転は、信長の中世的なものへの嫌悪に始まる。信長の美濃獲得後、美濃の国に食い込む形で朝倉(越前)の領地があり、領地が宙ぶらりんだからといって朝倉は比叡山延暦寺にそれを譲る。それに激怒した信長と朝倉が衝突する。朝倉は、将軍義昭に誠を尽くしていたため義昭からの信頼が厚く、義昭の名前から一字を貰って、「義景」というほどだったから、この比叡山への寄進はもともと火種だったかもしれない。
信長としては、もともと娑婆とは関わりを持たないはずの仏教の代表格叡山が政治に口を挟むことが気に入らなかっただけでなく、貴族などからの寄進によって肥え太っているのが気に入らなかったとされているが、とにかくこの問題に手を出すな、と叡山に申し渡した。しかしこれを叡山が無視。明智光秀が信長の命により、几帳面に叡山を焼き尽くした。
こうした果断は、どうしても対義昭を考えると致し方なかった。信長に兄事するといっておきながら、信長追討を企て、結果として信長を四面楚歌の状況においたのは義昭である。しかしこんなときこそ二国間協定というわけで、対朝倉戦も、妹を嫁がせていた浅井との仲があるため安心して朝倉をひねり潰そうとした。しかし予想外に浅井が寝返り、信長は命からがら京都に逃げ帰った(このとき追っ手を途中で引き返させなければ信長は殺されていたといわれる)。そして徳富さんなどによれば、この浅井の裏切りも、一般には朝倉への義理とよくいわれるが、実際は義昭の策謀である可能性が高いらしい。
そこで信長は、家康との連合で(ホントに家康がいてよかった)、浅井・朝倉を死闘の末破る。後ろで糸を引いていた義昭もこれを機に蟄居するが、ホッとする間もなく、二年位前のNHKの『そのとき歴史が動いた』によると、義昭最後の刺客、光秀が信長を討つことになった(司馬さんたちによると、光秀は信長の命じるまま、容赦なく叡山を焼き尽くした際良心がとがめていたという)。結局信長の中世嫌いを見透かしたかのような、義昭の術中に最終的にははまったかたちになったわけだ。
長くなったが、結局二国間のパートナーシップは相手をよく選ばないと意味がないといいたい。とするとアメリカはいいパートナーだが、アメリカとの関係は、アメリカと中国との関係、また、日本の中国との関係とも連動している。
Washingtonpostによると、中国にこれまでプレッシャーを続けてきたSnowが一転ここで中国に猶予を与えろといい始めた。いつ誰が、浅井、義昭になるとも限らない。そんななかカナダとの提携は意義があるし、もっともっと二国間で提携できる国を探す必要がある。