未来に輝く知性の宝冠――池田先生の名誉学術称号45周年 2020年4月12日
- ペルー 国立サンマルコス大学
- 人を創り、社会を創る教育
「大学(ユニバーシティー)」の語源となった「ウニベルシタス」は、“学ぶ人たちの集まり”を意味する言葉であった。
若き探究者たちが、学問の目的のもとに結束し、教師を育み、大学を生んだ。制度でも、建物でもなく、「学び求める心」こそが、大学の魂である。
南アメリカ大陸で、この真理の航海へといち早く船出したのが、ペルーの国立サンマルコス大学である。
1551年の創立。南米最古の大学として、同国の歴代大統領やノーベル賞作家など、社会貢献の人材を多く輩出している。
1981年4月10日、そのサンマルコス大学から、池田先生への「名誉教授」称号の授与式が、東京の創価学園で挙行された。
世界の大学・学術機関から先生に対する名誉学術称号は、モスクワ大学の「名誉博士号」(75年)に続く2番目。「名誉教授」の称号としては、これが第1号となった。
同大学の歴史上、名誉教授称号が日本人に授与されたのは初めて。大学首脳陣が国外を訪れて授与式を行うこと自体、異例だった。
名誉教授称号の証書とメダル、さらに同大学の全ての教授と学部長並びに理事会の承認に基づく決議書が先生に授与されると、大喝采が会場を包んだ。
この瞬間を、ひときわ喜ぶ人がいた。77年まで任期を務めた、ゲバラ前総長であった。黒縁眼鏡の奥に笑みをたたえ、先生との友情を思い返していた。
二人の出会いは、ゲバラ氏が総長の任期にあった74年3月、先生の第2次ペルー訪問の折。総長の強い要請で、会見が実現した。
当時、大学改革を求める学生運動が世界的に高まっていた。サンマルコス大学でも、学生と大学当局が対立し、校舎の壁にペンキで政治的主張が書き殴られ、キャンパスでは、デモ行進が繰り広げられていた。
建学の精神が大きく揺らいだその頃、総長は、先生の著作を読み、その教育理念と平和への行動に感銘と共感を深めていた。
74年の年頭、総長はペルーの学会員の機関誌にメッセージを寄せ、つづった。“偉大な思想家であり、哲学者である池田会長によって、サンマルコス大学が目指す、人類の相互理解、平和、繁栄、福祉が実現されつつある”と。
そして大学の教授会での決定を経て、先生に招へい状を送る。こうして実現したのが3月の会見だった。
キャンパスには立ち入れない状況だったことから、会見は、首都リマ市内にある大学事務局で行われた。
先生は語った。「私は創価大学創立者として、また人類の幸福と平和と繁栄を心から希求する一人として、その一切の鍵は青少年の教育にあると自覚しつつ、私なりに最善を尽くしてきました」
先生が創大建設に踏み出したのは、日本の大学紛争が最も激しかった時期。
暴力をも辞さない主義主張のぶつけ合いが大学の“日常”となる中で、「学生第一」を掲げる学府の建設は、時代の挑戦に対する「応戦」であった。
会見当時、創大は開学から間もなく、卒業生は一人もいなかった。一方のサンマルコス大学には、創立400年を超える歴史があった。
対照的だが、教育に懸ける先生の思いは、“大学は国の未来である。その第一の役割こそ、人間形成である”との総長の信念と、強く響き合うものだった。
総長は応じた。
「両大学の目的は本源的に一つです。わが大学は、創価大学と同じ目的を持つことを誇り高く宣言させていただきます」
会見では、「教授と学生の断絶」「新しい大学像」などを巡り、白熱の議論が展開された。
さらに先生が「教育国連」や「世界大学総長会議」などの構想を語ると、総長は声を弾ませ、「壮大なるスケールの提唱を、私は心から祝福いたします」と述べるのであった。
74年は、長きにわたる友情の出発点となった。
「私のごとき者でも、よい友をもったと思って、いつでもペルーにお越しください」――先生に、そう語っていたゲバラ総長。
81年の名誉教授称号の授与式には、ムッソ新総長と共にはるばる来日した。
さらに84年、3度目となった先生のペルー訪問でも、再会を喜んだ。
この折、先生はベラウンデ大統領(当時)と会談し、国家の最高位の勲章である「ペルー太陽大十字勲章」を受章している。
80年代、ペルーを含む南米諸国は「失われた10年」と呼ばれるほどの、厳しい経済状態に陥った。
この経済危機はペルー教育界にも影響を与え、予算の削減による質の低下などを招き、教育の改善が求められていた。
先生とゲバラ総長の友情を機に、人間教育の光がペルー社会を照らしていったのは、この頃である。
そして先生の励ましを糧に、社会貢献に汗を流すペルーSGI(創価学会インタナショナル)の同志の奮闘が、友情と信頼の大輪の花を咲かせていった。
ゲバラ総長は2000年に亡くなる晩年まで、先生の著作をそばに置き、SGIメンバーとの交流を何より大切にした。
サンマルコス大学との友情は、ゲバラ総長からムッソ総長、そして現・カチャイ総長へと、世代を超えて続いている。2017年8月には、創大とサンマルコス大学の交流協定が締結された。この折、同大学から、名誉教授称号に続く「名誉博士号」が先生に贈られている。
カチャイ総長は、「名誉博士号」の授与について、こう振り返った。
「私たちの思いは、ただ一つ。『池田博士を今一度、顕彰させてほしい』ということでした。なぜなら、それが国立サンマルコス大学、ひいてはペルー社会の喜びとなり、栄誉となるからです」
教育が人を創り、人が社会を、未来を創る。
日本とペルー。古くからの“友人”である両国は、「人間教育の志」によって結ばれ、平和と希望の共鳴音を奏でている。
総長として、彼ら(学生)の成長が楽しみであることはもちろんですが、同時に「わが母校は、著名な大学の水準にも全く引けを取っていない」と異口同音に語っていることが、何よりうれしい。
大学運営に当たって心掛けていること――それは、私自身が池田博士の思想・哲学を体現することです。
対話、団結、誠実、共存、寛容の精神……。そして何より「学生第一」の理念です。国の明るい未来、そして平和と幸福に満ちた新たな地球社会を築くため、学生こそが希望の光となると、強く思うからです。(中略)
私は博士を、偉大な教育者として、また哲学者として、心から尊敬しています。健康、長寿を祈るとともに、いついつまでも広範な執筆活動を続け、平和思想や人間としての崇高な生き方を示しゆかれることを、切に願っています。
博士の理念・哲学を継承し、後世に語り残していくことこそが、私たちの使命と責務ではないでしょうか。(本紙2018年2月3日付)
1551年創立。南米最古の伝統と格式を誇る、ペルー有数の総合大学である。
同国の首都リマに広がるメインキャンパスを中心に、20学部62学科を設置。2000人以上の教員が指導に当たり、約3万人の学生が学ぶ。
多様な民族で構成されるペルーの「縮図」ともいわれ、政治、教育、科学、医学など、各界をリードする人材を輩出。卒業生には、歴代大統領やノーベル文学賞作家らがいる。
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