〈国立ミシオネス大学「名誉博士号」授与式〉 池田先生の謝辞(代読)2023年6月13日
- 智慧と慈悲と勇気を引き出す世界市民教育の希望の大光を
一、月光は、冴え渡る宇宙の英知の象徴でありましょう。
私がいつの日か仰ぎたいと憧れてきた月があります。それは、南米随一の短編作家と名高いオラシオ・キローガが、目にできるものの中で最も美しかったと讃えた「森の漆黒を貫いて見えるミシオネスの月」(甕由己夫訳『野性の蜜――キローガ短編集成』国書刊行会)です。
一、この比類なきミシオネスの名月のごとく妙なる英知の光を、世界へ未来へ送りゆかれる貴大学より、本日、私は最高に誉れある名誉博士号を賜りました。
貴大学のご高配により、良き市民、良き国民、良き世界市民として、日々、献身する、わが敬愛するアルゼンチンSGIの宝友たちと、このように一緒に拝受させていただけることが、何よりの光栄であります。誠に誠に、ありがとうございます(拍手)。
一、とりわけ、私たちSGIにとりまして、あす6月10日は、1951年、生命の尊厳を護りゆく平和の女性のスクラムを発足した原点の日であります。
その意味において、高名な森林科学エンジニアであられるボレン総長が誇らかにアルゼンチンの女性に呼びかけられた力強いエールを、草の根のグループで、麗しい励まし合いの対話を繰り広げている日本をはじめ、世界192カ国・地域の母たち女性たちに、そのまま伝えさせていただきたいのであります。
すなわち「明確な目的観を持った女性は、どんな困難にも打ち勝つことができます」と。
一、今、世界的な気候変動など多事多難の時代にあって、貴大学は、樹木と豊かな水資源が描かれた美しい校章さながらに、人間と自然の共生社会を創造する知性の殿堂として、幾多の卓越した人材を送り出され、絶大なる貢献を果たされております。
民衆の大地に開かれ、生命の大森林を厳護されゆく貴大学は本年、晴れの創立50周年を迎えられました。
私たちは心からお祝いを申し上げたいのであります(大拍手)。
一、貴大学が創立された1973年は、私にとりまして20世紀を代表する英国の歴史家トインビー博士と、地球の未来を巡り対話を重ねた年であります。
対談の中で博士は、環境破壊をはじめとする世界の危機に警鐘を鳴らし、こう結論されました。
「人類の生存に対する現代の脅威は、人間一人一人の心の中の革命的な変革によってのみ、取り除くことができるものです」(『21世紀への対話』本社刊)と。
そして博士と私は、人間生命の尊厳性とともに宇宙大の可能性へ、探究の語らいを進めたのであります。
人間には、自らの欲望を律する「智慧」があります。
他の生命の痛みを、わが痛みとする「慈悲」があります。未来を見通し、どんな逆境も転ずる「勇気」があります。
その共生の「智慧」と「慈悲」と「勇気」を引き出し、結び合わせていく源泉が、「環境教育」であり、「世界市民教育」でありましょう。さらにまた、いかなる暴力にも屈せず、あらゆる差異を超えて、貫いていく「対話」ではないでしょうか。
一、この半世紀、トインビー博士から託された教育と対話の道を、私は走り抜いてきました。そして今、この道に、アルゼンチンをはじめ世界の青年が澎湃と続いてくれていることが、この上ない喜びであります。
一、世界に尊敬と信頼を広げ、平和を築きゆくために、アルゼンチンの宝友と私が大切にしている仏典に、「鏡に向かって礼拝をなす時、浮かべる影また我を礼拝するなり」(新1071・全769)とあります。
思えば、美しき月天も大空にあって、日天に向かって礼拝をなし、日天もまた月天を礼拝して、深秘の光を映し出しているといえるかもしれません。
一、私たちもまた、尊敬してやまない貴ミシオネス大学の先生方と生命の交流を深めながら、平和と共生の地球社会の創造へ、新たな希望の大光を放ちゆくことをお誓い申し上げ、謝辞とさせていただきます。
創立100周年への貴大学の大いなる飛翔、そして憧れの宝土ミシオネスをはじめ貴国の限りない繁栄と安穏を心よりお祈り申し上げます。
ムーチャス・グラシアス!(スペイン語で「大変にありがとうございました!」)(大拍手)
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