都知事選「小池圧勝」の裏にある異例の行動力 目標を達成するカギは意志ややる気ではない
小池百合子氏の真価はこれから問われます(撮影:尾形 文繁)c 東洋経済オンライン 小池百合子氏の真価はこれから問われます(撮影:尾形 文繁)
無所属で立候補した小池百合子氏が、初の女性都知事に当選しました。今回の都知事選では、野党4党の推薦を受けた鳥越俊太郎氏、自民党の推薦を受けた増田寛也氏、そこに小池氏を加えた「三つどもえ」の戦いとしてメディアから注目を集めていましたが、終わってみれば小池氏の圧勝。これには、ひとえに彼女の行動力の高さがポイントだったのではないかと感じています。
なぜこんなことを言うのか、それは目標を達成するためには、「行動」にフォーカスする必要があり、これは裏を返せば、行動したからこそ結果が出たともいえるからです。拙著『1%の素敵な人だけが実践している「なりたい自分」になる方法』でも解説していますが、目標を達成する人たちは、ほかの人と比べて意志の力が強いわけでもなく、やる気が高いわけでもありません。何よりもまず「行動」しているから、目標を達成できるのです。そして、これは小池氏も例外ではありません。
立候補表明から垣間見えた「異例の行動力」
私は現在、行動習慣コンサルタントとして個人や法人を対象にセッションを行っていて、「行動科学マネジメント」という手法を用いています。これは米国発祥の行動分析学をベースにしたノウハウで、行動科学マネジメントでは、行動を【先行条件】【行動】【結果】の3つの要素から成り立っていると定義します。
たとえば、今回の都知事選でいえば、次の3つに分けられます。
【先行条件】立候補する
【行動】選挙活動(PR)をする
【結果】有権者に投票してもらう
選挙をするためには、まず立候補しなければ始まりません(【先行条件】)。そして立候補すると、各自選挙活動をします(【行動】)。選挙活動を積み重ねた結果、候補者は有権者から投票をしてもらいます(【結果】)。
これを今回の小池氏で当てはめて考えてみた場合、小池氏は自民党内の調整を待たず、早々に立候補を表明するという異例の行動に出ました。一般人であれば、都知事選という大舞台、思いつきこそするものの、行動に至る人は皆無でしょう。現に政治のプロである政治家、自民党内部からも批判の声が上がりました。しかし、今となっては、誰よりも早くに行動したことで、メディアからの注目を集めたといえます。
「先出しジャンケン」ともいわれた立候補の表明は、身内から強いバッシングを受けましたが、有権者の目には、東京都議会という現体制に真っ向から切り込んでいく強い候補者像として映ったでしょう。イメージカラーである“グリーン”を取り入れながら、各地でPRしたのも存在感を強くアピールするための積極的な「行動」といえます。
「行動の見える化」で集中力を切らさずPR
また、今回の小池氏の選挙活動において、行動科学マネジメントの観点で特筆すべきポイントがあります。それが「行動の見える化」です。行動科学マネジメントでは、行動を強化する手段のひとつとして位置づけていて、小池氏はこれを緻密に行ったため、投票数を伸ばせたともいえます。
たとえば、小池氏の東京都知事選特設サイトを見るとわかりますが、HP上には東京都の地図がアップされ、街頭演説をしたエリアがすべてイメージカラーの緑で埋め尽くされています。過去の演説日程についても、日時、場所がつぶさに記載されています。このように自分の行動を「見える化」しておけば、告示から投開票日までの間、集中力を切らすことなく、選挙活動が続けられます。
「行動の数=有権者へのPR数」ですから、多くの人たちにアピールができたはずです。演説時の動画をアップしたり、Twitterで有権者からの意見をもらったりするなどSNS対策にも抜かりはありませんでした。
行動こそが結果を手繰り寄せる
もちろん、ほかのライバル候補者が行動していなかったわけではありません。ただ、増田氏陣営からは女性差別とも取れるヤジが飛び、鳥越氏からは女性スキャンダルが浮上。そんな中で男性都知事しかいなかった都知事選に女性として、ただひとり果敢に挑戦している姿が目にとまれば、誰もが自然と応援したくなります。女性票はもちろん、浮動票も小池氏に流れたのは当然といえるのかもしれません。
これまでも小池氏は、環境相や女性初の防衛相を歴任しています。環境相時代には、「クールビズ」の定着に貢献するなど、類いまれな行動力に定評がありました。これだけ行動力のある政治家が初の女性都知事として就任するのですから、周囲の期待はとても高いものでしょう。
私が思うに、政治とは行動の積み重ねです。有権者からの声なき声を拾い、それをいかに行動して形にしていくかが問われます。小池氏は、「これまでにない都政、これまでに見たことのないような都政を、みなさま方とともに進めてまいりたい」と話しているといいますが、同じ女性としてぜひともこれからの小池都知事が行動で都政を変えていくことを期待したいです。
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