「私は必ずあなたを守る」と大人から安心のメッセージを--青年部と医学者による第3回オンライン会議から㊤ 2020年4月12日
- 〈危機の時代を生きる〉 テーマ「休校延長--親と子の心身を守るには」
青年部と医学者の代表らによる第3回オンライン会議が開催された(9日)。テーマは「休校延長――親と子の心身を守るには」。これには青年教育者や未来部のリーダーも参加。その模様を上下2回にわたり紹介する。
志賀青年部長 今月7日に政府の緊急事態宣言が発令されて以降、各地で小・中学、高校、特別支援学校の臨時休校期間を延長する動きが広がりました。
テレワークや自宅待機となった保護者と、子どもたちとが四六時中、自宅で共に過ごさざるを得ないご家庭が増え、互いにストレスを募らせていく懸念も高まっています。
親と子の心身の健康を守るために、家庭でできる工夫は何でしょうか。
荻野医師 まずは「睡眠」「運動」「食事」といった基本的な生活習慣を整えることです。理想的な睡眠時間は、幼児で11~12時間、10歳で10時間、15歳で9時間といわれています。しかし、これまで日本の子どもたちの多くは、その睡眠時間を確保できていないのが実情でした。そうした意味で、この休校期間は、大人も含めて睡眠の在り方を見つめ直すことができる機会とも捉えられるでしょう。
次に「運動」です。緊急事態宣言が発令されたとはいえ、健康維持のため、人との距離を取っての散歩やジョギングは問題ないとされています。お住まいの地域やご家庭の環境によって難しい場合もあるかもしれませんが、ダンスや体操、縄跳びなど、リズミカルな運動は心を安定させるためにも有効です。
そして「食事」。休校によって給食がなくなり、栄養バランスが崩れることを心配しています。とはいえ親御さんが気にしすぎて、心身の負担が増加してしまっては本末転倒です。栄養バランスも1日単位で考えるのではなく、3日間で帳尻が合えば良し――くらいの気持ちでいいのではないでしょうか。
松野未来部長 ご家庭によっては、料理の負担を減らすため、積極的に弁当などのテークアウト(持ち帰り)やデリバリーサービスを活用し、栄養バランスを取る工夫もされていると聞きました。また、せっかくの機会だからと、「親と一緒に料理をするようになりました」という未来部員の話も伺っています。
佐藤女子青年教育者総合委員長 それは素晴らしいですね。「一緒に」という点が大事だと思います。現在のような社会状況であれば、イライラしたり不安になったりするのは、大人も子どもも同じです。いや、子どもの方が顕著かもしれません。だからこそ親御さんたちにはどうか、お子さんの気持ちを理解するためにも、意識して一緒に何かを楽しんだり、話したりする時間をつくっていただきたいと思います。
大串女子部長 お子さんの発達段階ごとに、どんな対応が求められますか。
荻野 乳児であれば、不快感を覚えるような大きな音や声から遠ざけて、安心できる環境づくりを。以前と同じような食生活や睡眠も心掛けてください。そして温かなスキンシップをお願いします。もちろん、衛生面には気を付けて。
幼児や小学生であれば、親も一緒に遊んであげることで安心感が広がります。できれば1日1時間以上、楽しく体を動かすことが望ましいとされています。
また、新型コロナウイルスのことについて質問されたら、答えは簡潔に。過度に怖がらせるような話は控えてください。不安が募るあまり、お子さんが親御さんにまとわりついたり、赤ちゃん返りをしたりするようであれば、大変かもしれませんが、どうか、優しく寄り添ってあげていただきたいと思います。
先﨑女子未来部長 思春期の子どもたちに対しては何が大切ですか。
荻野 じっくりと向き合う時間です。今、社会がどういう状況にあるのか、真剣に伝えることも、時には必要でしょう。その上で、子どもですから、友達と会えなくて寂しがったり、やりたかったことができなくなって悲しんだりするのは当たり前。そうした気持ちを「仕方ないでしょ!」と抑え込もうとしたり、「強くあること」を求めたりしないようにしてください。まず「受け止めてあげること」が大事です。
また、勉強であったり、読書であったり、家の掃除や、朝のゴミ出しであったり、何かしら本人が「頑張りたい」「役に立ちたい」と思えることがあれば、その目標を共有し、実現の機会を積極的に与えてあげてほしいと思います。それが子どもの活力になっていきますから。
庄司創価青年医学者会議議長 テレビやインターネットなどで、不安をあおるような情報も氾濫しています。子どもたちがそうした情報に、過剰にさらされるような状況は避けるべきでしょう。
テレビをつければウイルスについて報じる番組ばかりで、つい子どもと一緒に何時間も見てしまいがちです。そうではなく、大人が正しい情報を踏まえ、お子さんの年齢に合わせ、適切にかみ砕いて伝えることが大事だと思います。
荻野 その通りです。もちろん、事実をごまかしたり、何でもかんでも隠したりする必要はありません。それに、分からないことは「分からない」と正直に伝えていいんです。
ウイルスの感染拡大の状況を踏まえれば、安易に「大丈夫だよ」と言い切れない部分があることも確かでしょう。その上で重要なのは、子どもに「私は必ずあなたを守るよ」というメッセージを、言葉で、表情で、振る舞いで伝えていくことです。
安定して落ち着いた大人が近くにいれば、子どもは安心し、こうした状況にもうまく対応していけるものです。
西方男子部長 WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は今月3日の会見で、DV(家庭内暴力)が増える可能性を指摘していました。“普段より多くのストレスがかかり、経済や失業への不安が増すことなどから、人々がより暴力にさらされる危険性が高まる。家庭内暴力の被害者への対応は、必要不可欠な支援だと各国に呼び掛けている”と。児童虐待のリスク増加も懸念されています。この点について、いかがでしょうか。
藤原教授 児童虐待の予防研究に努めてきた経験から、親も子も健康でいるために、家庭や地域、自分でできることのポイントが分かってきました。
今、感染拡大のリスクを減らすために「3密」(密閉空間・密集場所・密接場面)を避ける重要性が叫ばれていますが、私は「3S」――つまり三つの「S」を強調したい。
一つ目のSは「Self care(セルフケア)」です。大人は、たとえ短くてもいいから一人になる時間をつくったり、少しでも好きなことをしたりして、息抜きができるよう心掛けていくことです。
二つ目のSは「Social capital(ソーシャル・キャピタル)」。これは社会関係資本という意味ですが、簡単に言えば「人とのつながり」を指します。
現在の状況にあっては「親だけで頑張る」ことで、限界を超えてしまうことがあります。その場合は地域や行政のサポートが必要です。
また、直接会うことはできなくても、電話やSNSなどで誰かとつながり、不安や愚痴を聞いてもらうだけでも、どれほど気持ちが楽になるか。
新井医師 おっしゃる通りです。とはいえ、性格的に誰かに相談することが苦手な人や、気持ちの余裕が持てず、誰かとつながるという発想自体ができない人もいるでしょう。そうした親御さんの状況を捉え、救ってあげられるのは、やはり身近な家族や地域のコミュニティーだと思います。
大串 創価学会が育んできた「つながりの強さ」が、ますます重要になってきますね。
学会の同志、特に婦人部の先輩の皆さんは「あの人は元気だろうか」「この人はどうしているだろうか」といつも気に掛け、つながりを広げ、地域の絆を強めてきました。一本の糸のように思える細いつながりであったとしても、電話や手紙、メールなどで近況をお聞きしていくことが、困難な状況に置かれているご家庭を救うことになるかもしれませんね。
志賀 かつて、社会起業家の駒崎弘樹氏が語っていた言葉を思い起こします。
「行政による対策は重要なことですが、その一方で『助けて』と言えずに孤立して苦しんでいる人にも目を向ける必要があります」「全国各地で地域に根差したコミュニティーを持つ創価学会は日本最大の中間団体といえるでしょう。苦しむ人に積極的に寄り添う“おせっかい力”が、今ほど求められている時はないと思います」と。
松本女子青年教育者委員長 私も、電話やメールを使って励ましの声を届け、悩みに耳を傾けていこうと決意を新たにしました。それでは「3S」の三つ目の「S」を教えていただけますか。
藤原 それは、子育ての「Skill(スキル)」です。子育てのスキル(技術)や知識が足りないと、子どもと長時間、一緒にいることに困難さを覚え、ついイライラしてしまいがちです。
特に父親の場合、今まで、なかなか子育てに関われてこなかった人も多いでしょう。子育てのスキルが高くないのは、当然といえるかもしれません。
しかし、だからこそ、この休校期間や自粛期間は大きなチャンスです。一つ目と二つ目の「S」を大切にして心の健康を保ちながら、少しずつそのスキルを磨いていってはどうでしょうか。
焦る必要はありません。行政からの支援や情報も活用しつつ、子育ての力を高めていく。それが、より豊かな自分と家族を築いていくことにもつながるはずです。
<㊦に続く>
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