興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

恋愛のハネムーン期の終わりに耐えられない人たち

2022-12-14 | カップル・夫婦・恋愛心理学

以前にもお話しましたが、恋愛には、いくつかのステージがあります。

恋愛、というと、少し語弊があるかもしれません。パートナーシップ、というともっと包括的でしっくりいくかもしれません。

尚、この記事では以下も便宜上「恋愛」という語彙を使いますが、それは私としては「ロマンスの伴うパートナーシップ」とほぼ同義です。

 

恋多き人生、というとなんだか良い響きですが、1枚のコインには常に裏表があります。

多くの場合、こうした人たちは、恋愛が長続きしないという問題を抱えて生きています。1つの恋愛が10年続いていたら恋多き人生にはなりません。こうした方たちは、お話を聞いていると、おおよそ数ヶ月から半年ぐらいで終わる恋愛を繰り返していて、長くても2年以内に別れています。パートナーシップが長続きしている人たちで「恋多き人生」なのは、決まったパートナーがいるのに忠誠心が保てずに不貞行為を繰り返す人たちです。つまり、誰かと恋愛関係を築くことはできても、それを深めたり維持していく能力に問題があります。

 
人が誰かと恋に落ちた時からしばらくの間を、ロマンスのハネムーン期と言います。この時期は、多かれ少なかれ、2人は浮かれていますし、幸福感に満ちていて、実際、脳神経学的にも、報酬系の脳内ホルモンが良く分泌されていて、人の通常のこころの状態とは異なります。
 
しかし、こうした特別に浮かれたハネムーン期というのはせいぜい半年、長くても1年ぐらいで終わります。
 
ハネムーン期が終わると、2人はその恋愛関係の次のステージに入るのですが、冒頭の恋愛至上主義の人たちは、この移行期間をなかなかうまく乗り超える事ができません。
 
最近はわかりませんが、昔はこうした頃合いを巷の恋愛心理学ではよく「倦怠期」と呼んでいました。「倦怠期をどう乗り切るか」とか。
 
ただ、2人の人間が恋に落ちて盛り上がってしばらく集中的に一緒に時間を過ごしていれば、関係性は少しずつ落ち着いていきます。関係性はハネムーン期より深まっていくわけですが、その中で良い事もあればそうでない事もあります。お互いに慣れるというのは、心理学や生物学でいうところの「馴化」の作用も関係しています。
 
つまり、同じような活動を繰り返していたら、その関係性に慣れてきて、新鮮なものではなくなるので、停滞しているように感じるのも自然なことなのです。それ自体には本来何の問題もないのです。
 
ちなみに、うまくロマンスが展開しているカップルを見ていると、多くの場合、次々に、2人で一緒に取り組むテーマやチャレンジがあります。適度な変化と負荷です。この適度な変化と負荷に2人が協力して取り組んでいく中で、彼らはさらに信頼関係を深め、親密さを維持しています。
 
分かりやすい例を挙げると、大学のサークルで知り合ってお付き合いを始めた2人が、互いに励まし合って就活を経て就職し、婚約したけれど、どちらかの家庭がなかなか複雑で一筋縄にはいかず、しかし協力してなんとか両家顔合わせを完了し、双方の親から祝福され、それなりに大きな結婚式を挙げ、子犬を飼い始め、まもなく第一子が生まれ、第二子が生まれ、どちらかの親御さんが老齢でサポートが必要になり、それにも互いに協力して取り組み、といった事例ですが、こういう仲良し夫婦は世の中少なくありません。
 
こうした人生のいくつものステージにおける自然なチャレンジやハードシップは、パートナーシップに常にハネムーン期のようなスリルやサスペンスを求めていたらなかなかうまくいきません。
 
そして、こうした恋愛における「本当」のチャレンジに挑戦してこなかった人たちは、それに伴うストレスに対する耐性も身についていないので、その自然に起きる困難な状況を、ふたりがうまくいっていないとか、合わないのだと錯覚して、パートナーシップを解消してしまったりします。
 
ストレスに対する耐性を身に着ける唯一の方法は、ストレスを経験することなので、ストレスを避けているといつまで経っても長期的なパートナーシップに辿り着けないという悪循環があります。
 
現在続いている恋愛関係に「倦怠期」や飽き、物足りなさなど感じていて、それでもその人と長期的なパートナーシップ、願わくば生涯添い遂げるパートナーシップを望むのであれば、ふたりで取り組める人生の新しいチャレンジに挑戦していくのが良いかもしれません。これは多くの場合それぞれのライフステージの変容に伴い自然発生的に起きることですので、もしかすると必要なのは、その深みに入っていくためのコミットメントなのかもしれません。
 
 
 


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