「主人は優しい人です」とか、「彼氏は優しいです」とか、「父はとにかく優しいんです」とか仰る方が、夫婦関係や恋愛関係や親子関係の悩みで相談にいらっしゃる事がよくあります。
そこでパートナーの方との関係性や、その方の言動などについて注意深く傾聴していくわけですが、お話を聞かせていただく中でしばしば私の頭の中に湧き起こる疑問は、「その人の『優しい』ポイントが全然聞こえてこない」、「その方の一体どこが優しいんだろう?」という種類のものです。
そこで、お連れ合いがどのように優しいのかお聞きすると、「怒らない」「キレない」「声を荒げない」、「暴力を振るわない」などと仰られる事が多いです。
なるほど、「穏やか」な方たちではあるようですが、依然として、「優しさ」の要素が聞こえてきません。
「家業の飲食店を継いでほしいから結婚はしないでくれ」と親御さんから懇願されたり、義理のご家族からひどい意地悪をされているのに夫が一切助けてくれなかったり、義理のご家族サイドについてしまったり、家事育児に全然参加してくれなかったり、1週間無視され続けて理由を聞いても教えてくれなかったり、不倫していたり、風俗に通っていたり、問いただすと貝になって部屋に引き篭もってしまったり、緊急性のある連絡をしても全然返事してくれなかったり。。。
こうしたパートナーの方たちの多くに見られる問題点として、自己中心性、自分の事しか考えていない、相手を含む他者に興味関心がない、共感性の低さや欠如、相手の気持ちや事情に対する想像力の乏しさ、思いやりのなさ、ケチ、事なかれ主義、回避性、コミットメントの欠如、責任感のなさ、忠誠心の低さなどがあります。
ところで、優しい人に穏やかな方は確かに多いですが(ドラマ「Silent」の湊斗(みなと)君など思い浮かべると分かりやすいです、まさに優しさの権化的な)、穏やかではないけれど優しい人も少なからずいます。短気でせっかちだけど優しい人もいますし、気難しくて神経質だけど優しい人もいます。
穏やかだけれど優しくはない人、安定しているけれど優しくはない人たちは、実のところたくさんいます。
冒頭の相談者の方たちが、その関係性に対して、相手に対して、自分のあり様や関わり方について深く考えたり新しい行動にでられるようになるのは、この方たちが「穏やかさ」と「優しさ」の違いについて理解できて、「あの人は優しい人なのに」という葛藤から抜け出せた頃です。