興味津々心理学

アメリカ発の臨床心理学博士、黒川隆徳によるあなたの日常の心理学。三度の飯よりサイコセラピーが好き。

サンタとトナカイ

2012-12-24 | 戯言(たわごと、ざれごと)

 確か先週だったと思う。

 夜の早い頃、7時ぐらい、その日は木曜日で、いつものように、小休止と称してクリニックを抜け出し、いつものスターバックスでコーヒーを買って、いつものように、ロサンゼルス国際空港近くの飛行機が頭上30メートルのところを飛んでいく公園にいって、いつもの花壇のレンガに腰掛けて、いつものように目と鼻の先の空港目掛けて真上を飛んでいく飛行機をぼんやりと長めながらコーヒーを啜っていたのだけれど、吐く息の白さ以外はすべていつも通りだったのだけれど、その夜ふいに視界に入ってきたのは、その小さな公園の前の大通りを隔てたところにあるタイヤ屋の大きなガラスの窓に描かれていた絵だった。たぶんそれは随分前から描かれていたはずで、視野の端にそういう記憶がなきにしもあらずだったけれど、その時の精神状態ゆえだろう、その絵がダイレクトに意識に入ってきたのだ。

 その絵はたぶん、タイヤ屋の店員によって描かれたものだと思う。おそらくプロの仕業でないだろう。真っ赤なオープンカーに、サンタとトナカイが乗っている。サンタが運転席でハンドルを握っていて、トナカイはサンタの隣の助手席に座ってくつろいだ様子で、二人はいかにも楽しそうにドライブを楽しんでいる。

 どうして自分がその絵に惹かれて不思議な感動を覚えたのか瞬時には分からずに、その絵をしばらく見ながら考えた。
 サンタとトナカイの友情は世代を超えて文化を超えて知られているけれど、しかし大体において、ふたりの間には暗黙の上下関係があった。しかしこのタイヤ屋の絵では、サンタが車の舵を取っていて、エンジンという原動力を手に入れたゆえ、もはやトナカイの労力は必要ないのだけれど、ふたりの関係はそこで終わらず、サンタに使われなくなったトナカイは、彼と真に平等な関係になって、同じ目線で、同じ方をみて、一緒の車でドライブを楽しんでいるのだ。

 それで気付いたのだけれど、こういう幸せな絵を、たぶん大して深く考えずに、どちらかというと即興で描けてしまう人の人柄、世界観、こころのあり方に、なんだか羨ましくなったのだ。そしてこのサンタとトナカイの関係が好ましかった。


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