滋賀県を車で走ると、道路の脇に子供の走る姿をかたどった看板を目にします。その名も「飛び出し坊や」なんですが、今年「タモリ倶楽部」をご覧になった方は少し分かると思います。僕も観ていました。イラストレーターのみうらじゅん氏が命名したこの看板。放送を観てから気になってしかたがなかったので、フロントガラス越しに注意して見てみることにしました。「飛び出し坊や」は全国に広がっているようですが、滋賀県東近江市(当時は八日市市)の自治体が子供の交通安全の対策として久田工芸の代表者久田泰平さんに看板を注文し、その後類似の看板が作られるようになったという話です。みうら氏はこのオリジナルデザインの原形を「0系」と呼び、みうら氏も購入して所蔵していました。今でも本人が製作を続けていて、購入することは可能なようです。道路に勝手に看板を設置することはできませんが、自治体が主体で設置する正規のものから個人で家の敷地内の道路脇に掲げている自作のものまであるようです。特に学校の通学路や家が密集している道路は多く見かけました。デザインはバリエーションが豊富で、女の子のものもあれば、サッカーボールを蹴っているもの。それに爺ちゃん、婆ちゃんなど面白いものもあります。最近滋賀県に旅行する機会があった上の娘は、「タモリ倶楽部」の放送を僕と一緒に観ていたので、県内の移動中に「飛び出し坊や」を捜すのが楽しかったようです。その上の娘は子供の頃、自宅の前で道路に飛び出し、車にひかれた経験を持っています。無邪気に「飛び出し坊や」に興味を示していますが、あの時のことは忘れてしまったのかな。その時、事故の知らせを聞いた僕も妻も強いショックを受けて、その日は眠れない夜になったことを今でもよく憶えています。幸い後遺症も発症せず、元気にすくすく育ってくれました。滋賀県に多い「飛び出し坊や」は、交通事故で子供が怪我をしたとか、中には亡くなってしまったような悲しい出来事が背景にあったのだろうと思います。確かに、車を運転する者にとっては注意喚起になっているような気がします。どこかの団体が募集する標語よりずっと効果があります。最初は、いささか主張が濃いような気がして、あまり感心してはいなかったのですが、子供を心配する親心が分かるようになってから見てみると、違った印象を持つようになりました。最近子供が減りました。学校が終わる時間でも下校途中や外で遊んでいる子供の姿を見かけることが少なくなりました。それより高齢者の無謀な横断の方がよっぽど多いので、坊やより爺さん婆さんを増やした方がいいかも知れませんね。
