日本史ミステリーの宝庫である飛鳥へ行ってみました。行ってみましたというのは、特に目的があったわけでなく、何となく飛鳥寺へ行ってみたのです。車を運転して狭い道路がうねる明日香村を走ると、日本中どこを探してもない独特な風景を目にします。「まほろば」と呼ぶこの辺りの景色に僕は遠い時間の隔たりを感じつつ、大陸から渡って来た渡来人が、同じ景色を見てなんと思ったのだろうと思いがよぎります。飛鳥寺は蘇我馬子が創建した日本最古の寺です。うひゃあ。そうだっけ。予備知識を持たないとこんなもんです。意外に小さい寺ですが、最近、周囲には大きな伽藍が発見され、発掘調査が進んでいます。親仏派の蘇我氏と排仏派の物部氏が争った現場でもありますが、江戸末期、開国か攘夷かで争ったり、今ではTPP問題で争っていたりするところを考えると、外圧慎重論は日本の伝統芸能ではないかと思えます。ひっそりしたお寺の境内と本堂でした。この本堂には再建されてはいますが、建立当時から座り続ける大仏があります。3メートルほどの釈迦如来像です。もちろん日本最古の大仏です。中に入ると誰もいませんでした。大仏像の前に移動すると何故だか見とれてしまって、気が付くと正座して見上げていました。細長い顔をしています。もう一つ気になるのは近くにある入鹿の首塚です。乙巳の変で首をはねられた蘇我入鹿の首を供養するためのものとされています。この事件の背景などは僕の興味を大いに刺激するところですが、飛鳥寺の周辺にあるなんて来てみないとわかりませんでした。日本が日本になる頃の歴史は面白いです。ところで、首が彷徨う話は他にも平将門など有名ですが、祟りが存在した昔も今も、変わらない何かがあるような気がします。思い付きでやって来た割には、いい勉強になりました。境内の中には鐘があり、自由に突けるみたいだったので歩み寄ると、「上は有頂天を下は奈落の底まで響けよかしと念じて静かに一度」と掛け札がありました。何だか神妙な気分になってきたので、無心になって静かに一度鐘を突き、残響の音が無くなるまで、目を閉じて待ちました。いい音で鳴ります。「まほろば」に響かせる鐘の音に心安らぐ思いでした。





