久々の乙一の新作。ここ数年彼は書いていないと思う(特に単独著書はない)。その間、彼は人生上の大きな節目を経験する。それは結婚という彼にとっては意外と普通の人のするなる経験だ。でも僕はまるで彼にそぐわない出来事が彼の作品にどれだけ影響を与えるのかすこぶる興味があった。そしてこの新作の登場である。
6篇の短編集である。これは読者からWEBで募ったボツ案を乙一が再生したという文学界でも珍しい作品集であ . . . 本文を読む
前作『月に囚われた男』と比較すると、考えたら(当たり前だけど)、人が生きていく、生きている哀しみ、切なさ、人を愛するいとおしさ、いつくしみ、それらがすべて同じくよみがえってくる。似ている。
パラレルワールドという素材を使っているという意味で、地球から遠く離れて月にいて、同じ人間が製造されているといた前作も本作と設定はほぼ同じ。
でも【ダンカン・ジョーンズ】のこの切なさはどうしたことだろう。見た . . . 本文を読む
このある意味大胆な題名。東京にオアシスはあるのか、なんて勝手に観客は見る前に思ってしまう。一応東京は表現しているが、そこにあるのはただ風景としての表層的な東京という都会がありました。
冒頭、真夜中の東京の高速道路を車が走っている。いつも見慣れたただどこにでもある東京の風景。これが延々と続く。この映画は風景を描いているのですよ、といいたいようだ。ちょっと幼稚(失礼)かな。
喪服姿の女がトラックに . . . 本文を読む
アメリカでは有名な事件なんだろうが、日本ではあまり話題にされなかったイラク大量破壊兵器に関するCIAの内輪もめ事件の全容である。映像が簡潔でスピーデーな展開。まるで秀逸なサスペンス映画の典型のような演出ぶりだ。
内容はともかく(私的には話が分かるのにずいぶん時間がかかった。)、とにかくワクワクする切れのいい描写・映像で、この重いテーマをいかにエンターテインメントに昇華させるか、といった工夫が十分 . . . 本文を読む
今週珍しく演劇観戦が続く。しかも同じ劇場HEPHALLなのだ。「空晴」に続く今回の出し物は「スクエア」の下町の流しミュージカルもの(?)。
だいたい財布に1000円ぐらいしか入っていないしがないサラリーマンの4人。いろいろ言いたいことはあれど、されど社会に何か攻(口)撃しているわけでもない、底辺にさりげなく生息する庶民派リーマンたちである。無力な我々の姿でもある。
その彼らが唄うコント風ソング . . . 本文を読む
10年以上追いかけている劇団「空晴」、その千秋楽に行ってきました。いつも僕らの身の回りにある、小さな、ちょっとした不安、喜び、夢を観客と等身大になって見せてくれる、ありそうでなかなかない希有な存在の劇団である。
今回も、ちょっとした誤解がどんどん広がり最後はほっと安心できるいわば僕らの実際の生活を描いてくれる。小さすぎてこんなの劇ではない、なんて言って見てしまった観客は知らず知らず彼らの虜になっ . . . 本文を読む