ルノワール、南仏のおおらかな日光。ふくよかな裸体の女性たち。人生がそんなに幸せにあふれているのなら何も絵なんか書かなくてもいいのではないか、と思う貧相な自分。印象派の絵画が好きな僕でもあまり関係ない画家の話ではある。
彼の色彩技術の基本が絵皿技法にあるとは知っていた。そして晩年リューマチで手が動きづらくなっていることも。映画は想像通りのルノワールを描いていく。
そして一番僕らが興味深いのは映画の天才である息子のジャンの方である。まだ映画が芸術として認められていない時代に彼は将来何をしたいのか悩んでいる。
しかし描写が断片的で、どうも深く入っていかない。最後のミューズたるデデとの恋愛も思ったほど深くない。何か気になるかなあという程度の描き方である。
全体にこの映画、個々のエピソードに面白いものもあるけれど、すべて断片的なのである。まるでルノワールの絵画をそのまま映像に仕立て上げたリー・ピンビンのカメラに頼っているかのように、むしろドラマとしての機能を捨てたような作り方である。
確かに絵画からそのまま抜け出てきたかのようなデデの裸身は南仏の光を彷彿させるほど自然豊かで美しい。しかしアトリエの生活描写も、まるで当時戦時中で死が隣り合っていたとは考えられないほど平和である。平和っぽく見える。
映画がふと終わり、ジャンとデデが後で結婚し映画を撮ったことを知る。でもそれだけで感銘は浮かんでこない。描きたかったことは分かるような気もするが、もっと掘り下げるドラマ性もあってよかったのではないか。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます