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ソーシャル・ネットワーク (2010/米)(デヴィッド・フィンチャー) 80点

2011-01-19 10:35:17 | 映画遍歴
フェイスブックなるものがこの世にあることさえ知らない吾輩がこの映画についてウンチクをたれることの失礼をまず述べさせていただきます。でも、この映画、確かに面白かった。こんなにつまらない内容なのに映画的には見ごたえがありました。

冒頭の女子学生との会話。5分ほど続いたかなあ、これが圧巻でしたね。俗っぽいエリート意識とハーバードだから女の子とデートできることさえ分かっていないオタク学生。その、会話にならない会話とそれでも女の子を欲しがっている膨張した若者の生理が今風で、しかもリアル、導入部としてこの映画のすべてを物語っていると思う。

この映画のスタンスは、誰にも公平で冷静な距離を置いているということです。ハーバードの姿勢が人に使われるな、ということは分かりましたが、あの学長のいかにも学校の理想をぶっている厭らしさも汚いほど伝わってくる。

友人のエドゥアルドにしても自分が無視されていることからのひがみが彼との歪みのきっかけだろうし、誰の話も聞かないマークが珍しく傾倒しているショーンに嫉妬し、投資家としてはやっていけないことをやってしまうのは、彼らがまだ自由な学生の心情を保持しているからだろう。

話としては一つの題材をきっかけに世界的な事業を構築してしまう若者のサクセスストーリーで、もちろんそこには淡い恋もあればビジネスだから裏切りは絶えず存在する。「やらなければ明日は我が身」で何か問題があれば、友人であれ、絶大なる出資者であれ、非情にも切り捨てる時もあるのである。そうれなければ企業家にはなれない。ビジネスとはそういうものなのだろう。

でも、この映画はそんな古臭いウンチクを言っているのではない。かと言って20代の世界最高資産家になったマークのビジネス成功談でもない。巨大なネットワークで成功しても、彼はやはり最後まで女子学生のことを忘れられない一学生だったのである。こういうところにこの映画の現代的意味を見出すこともできるが、ちょっとあの偉大な映画『市民ケーン』、を少し思い起こしたのは私だけであろうか。

まあ、この映画では【デヴィッド・フィンチャー】の巧みな映画技術を堪能すればいいのかもしれない。そんな職人芸が至る所で圧倒する玄人好みの映画かもしれません。でも、決して心に深く残る映画ではありません。

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