昔懐かしアングラ演劇、しかも出し物は佐藤信の「阿部定の犬」と聞けば、演劇好きの僕が家に居るわけにいかないだろうて。
何かもっとドロドロしたアングラ劇を想像していたが、現代における劇になると、かなり濃度が薄まり、ある意味見やすい演劇となっていた。
だいたい長丁場の劇であるが、暗喩が至るところに散りばめられているので、せりふの言葉の意味を考えていると、すぐもう次の場面に移ってゆく。これで3時間。で、もういちいち意味を考えないで、ただ劇そのものを楽しむことにした。
そうするとこの難解そうな演劇もだんだんと僕の体に溶け込んできた。さすが佐藤信だね。40年前にはこんなものを作ってたんだ。
でも、昭和とは何か?というテーマには現代のスタッフと観客がどこまで対応できるのか。難しい問題である。それには僕のようにまず楽しめばいいのではないだろうか、とか思った。
定が逃亡中に肌身離さずにいた男根が、開けてみると拳銃に変貌し、その拳銃で天皇の写真師をズドンと撃ち抜くシーン。また途中で天皇の崩御を伝え、昭和の終焉を知るシーン(初演が昭和50年だから実際の天皇崩御より14年も早い。)。何ともすごい。
劇が面白くて途中2回の休憩は何か間合いをそがれたような気がした。しかし実に秀作である。
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