大好きな別役実作品。彼の作品には常に不条理が付きまとう。人の営みのどうしようもない哀しみ、苦しみ、諦観が表現される。ところが本作はサンテグジュペリものなので、いつものそれとはかなり違う。
サンテグジュペリと宮沢賢治をミックスした感もある透明感が全編漂う。素晴らしい出来である。
対面式席空間である。最初座った席、1mぐらいしか離れていない向かいの席に若い青年が座っている。7,8名ぐらいが座れる席なんだが、こんな所に観客を座らせると、どこで劇をするんだろうなあと不思議に思っていた。あまりに近いので僕は端の席に移動する。
劇が始まると、その中州のような場所にいた7,8人の若い観客は椅子を端のほうに移動させ、なんと彼らは演技をし始める。彼らは観客ではなく役者だったのだ。なんと面白い出だしだ。
星の王子さまも出てくる。バラの花も出てくる。サンテグジュペリを捜す両親も出てくる。彼は北アフリカで遭難していた。線路のない駅。けれど人は集まる、、。
星と宇宙と人と、そして愛する人たち。手紙。出会いはあれど別れもある。凄絶な人間の愛のものがたりでもある。いつも感じられる別役の不条理性は本作では全く感じられなかった。ラスト近く、不覚にも感動で涙する。
とても清冽な気持ちになって劇場を出る。こんな演劇が1500円。ますます演劇が好きになる。
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