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ハッピー・ゴー・ラッキー (2007/英)(マイク・リー) 80点

2011-09-19 11:14:17 | 映画遍歴

マイク・リー】の新作。そしてベルリンの銀熊賞。かなり期待して見る。冒頭の何やら軽やかな笑顔で自転車をこぐ決して若くはない女。まあ決して美人ではない。本屋に入り、店主に無駄話で声をかけるも無視される。外に出ると自転車が盗まれている。

でも、彼女、誰をも恨むことなく自転車にさよならの言葉をかけていなかったわあと楽天的。即、自転車から運転免許取得へと実行力も早い。30歳ぐらいの、ちょっと行き遅れ気味の、決して可愛くないそこらのその他大勢の女性にまぎれそうなフツーの女教師である。

表情はだいたいへらへらしているので、こういうタイプは逆に敵を作りそう。でも冒頭での自転車盗難シーンから分かるように、彼女は人生をその日楽しく、どんな人でも対等に、軽いようで実は人生をしっかり正直に生きている人なのである。

映画は決してドラマめいたものを見せてはくれない。彼女の風貌がごくフツーであり決して映画を見て感動するような映像作りをしているわけでもない。そこにあるのは、ごくフツーの女性がごくフツーに毎日を生きているその真摯な姿である。

仕事では一瞬にへらへらさが真剣になり子供の暴力を心配する優秀教師になる。それをきっかけにある男友達と付き合い始める。でもそれも人生の一つの日常スケッチとして普通に描かれるだけでドラマチックなものでもない。

映画は教習を受ける偏屈男との(ここだけは)ちょっと演出を狙った二人の掛け合いで多少画調が変わるも、彼女のへらへら顔でこの映画はフツーに終わる。そうこの映画はごくフツーの人の日常を映画化したごくフツーの映画なのである。なのにこの映画的高揚は何なんだろう。

新しい【マイク・リー】の映画である。自分に自信がなければ、自分に余裕がなければこういう映画は撮れないだろう。これこそ新女性映画と言える代物かもしれない。秀作。


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