お気に入りイランの名匠ファルハディの新作。いつもこの人の作品って、悪く言えばずるいところがあり、ところが見終わってからは、それにも増して納得してしまうんだから、僕にとっては変な監督だ。
冒頭からの結婚式を控えての何十年ぶりかの家族ご帰還ぶりのシ-ンは、さすがとうなさせられる部分も見せてくれて、それは映画の醍醐味でさえあります。ところがこの作品の魅力は、そのパーティーの夜から始まるのです。
それからは、この作品は最後まで一気に持って行きます。流麗な滑るような映像で、今回は娯楽に徹してます。
誘拐っていうのが日本とスペインとは違うんでしょうなあ、警察なんかいなくても彼らご自身で解決しようとしてる。お金を払っても、当人が戻って来ればそれでいいわけだ。この辺りは文化というか国情の違いがあり、少々驚く。だからこそこのストーリーが息づくわけである。
でも全体的に心理的ミステリーを構築してはいるが、通常のミステリーでは考えられないアンフェアな犯人を用意してきたり、誘拐後でぐったりの娘を病院にも連れて行かずそのまま帰国させるなど荒い部分もある。警察沙汰にしたくないからなんだろうが、でもなんだかご都合主義でずるい。
テーマはこういう村社会では嘘が丸裸になっているということでしょうか。かえって、本人たちのほうが気づいていないなんて、日本ではあり得るだろうか、と思ってしまう。
な~~んて、いつもファルハディには小憎らしく思ってしまうけれど、でも確かに面白い。そして今回は完全娯楽作です。
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