なかなか面白い映画を見る。原作は未読だが、設定が秀逸。最初の安藤サクラの何気ない演技からこの映画に自然と入り込み、石川慶の魔術にかかり、そして映画鑑賞の喜びをしかと感じ取る。
人間、誰かに変わって生きていこうなんて、そういえば子供時代にふと考えたこともあったけな、、。それでも本作に描かれるようなあらゆる差別社会を生き抜く主人公たちは過酷であり、しかし強い。
差別をする方とされる方は人が生きている限り続くのは必定。認めるわけではないが、人間はどんな小さな範囲の世界でも差別を基にしたヒエラルキーを持続させて生きているのだと思う。
映画的構成からは窪田の生い立ちを謎を追う展開、そのミステリアスな叙述は自然でよろしい。安藤も子持ち女性という負い目を抱えるマイナーな存在として描かれており、謎を解こうとする弁護士の妻夫木は黒子のはずなのだが、何とラストでは登場人物の「ある男すなわちわれわれ人間」という存在を全面的に受け入れる強烈な仕組みになっており、驚くばかり。
このラストのため、2時間を延々と紡いできた感もあり、私はこの作品に賞賛の気持ちを伝えたい。
演技的には、全員凄みを感じたが、窪田の哀しいまでの心の叫びと喜びを彼の肉体を通して見ることになった。安藤は相変わらず自然体の演技で、どうしてここまで人間の哀しみと強さを表せることができるのか、たまりません、、。
妻夫木の受け身ながら、それが徐々に爆発するまでの演技は驚異的だ。スゴイ! 彼は中年の気配も出て来て、いい役者になってきている。
そしてこの世に実際に存在する悪魔とまで感じられた柄本の強烈。ただただすごい。また他の俳優陣は全員いい仕事をしている。演技を見るだけでも有益で秀逸な映画でした。
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