2時間を軽く超える長丁場なんだが、それを感じさせることのない緊迫感が全編を覆い、素晴らしいエンタメとなっている。別にこの映画は政治、貧民、経済差を訴えているわけではない。ある意味昔からよくある災害映画であります。
そう、例えば昔は船の遭難から人の生還を扱った「ポセイドンアドベンチャー」、高層ビル火事題材の「タワーリング・インフェルノ」然り、市井の人間が偶然の事故に遭遇した場合の人間の知恵と勇気をテーマにしたジャンルに入るかと思う。
ソマリアの海賊って、そりゃあ銃を持ってて怖いなあと思うけれど、考えたら大昔から海賊は存在していたわけで現代だから怖いわけではない。「パイレーツ・オブ・カリビアン」だって立派な海賊でしょう?政治的理由はなくとも人間、食べられなくなったら生きるために何でもするのである。
冒頭のソマリアの事情も恐らく事実もあんなものだろうけれど、今回は少年が一味に加わって観客を心情的にハラハラさせるのがうまい。彼はしかし、結局その他のソマリア人たちと違った特別扱いの終わり方をしているわけではない。この辺りはまさに無情であると思う。脚本のうまさが光る。
ポール・グリーングラスの作品はいつも思うんだけれど、映画館で観ている時が一番熱く一番濃厚な時なんだね。映画館を離れると時間とともにどんどん印象が薄くなってくる。でもこういう映画が本当は一番のエンターテイメント映画なのかもしれない、とも思う。
トム・ハンクス はますます好調。普通の人を描かせてこれ以上の演技は望めないほどの熱演。いい俳優である。大事にしたい俳優であります。長年俳優をやってて演技が鼻につかないのが素敵だ。
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