50分の中編劇だが、この題名の意味を考えるとき、ジーンと来ちゃいます。そういえば、フライヤーは桜の花だったからなあ、、。
劇前の音楽は珍しくクラシック。スメタナの「わが祖国より」モルダウ。郷愁性の強い大好きな曲である。幕が開くと、現代の露上ダンスから音楽は炭坑節に変わり、若者が一人紛れ込んだように盆踊りを踊る。ダンスをしていた若者たちが不思議そうに見やる。
と、その時だいたいの人はこの劇の題名の意味を感じ取る。特高の話である。もう終戦から70年。特高の意味も知らない若者たち。そこに盆踊りの好きなひいおばあちゃんが登場。腰が曲がって90歳だという。
もう語らなくても分かるだろう。重い話である。しかし、70年経って、彼ら夫婦からこの若者たちが立派に育っている。海のもずくに消えた若者たちの無念の重いとかすかな希望をこの劇から垣間見る。
現代に戻ってきたこの若者は死に立ち向かって、死ぬ瞬間に廻った強い思いが現代にスライドしてよみがえってきたのだ。舞台では若者の散華する爆音が響く。
90歳の老婆と20歳の青年が70年ぶりに再会するシーンが印象的だ。お互いに名を名乗り、それぞれ確認する。涙なしには見られないシーンである。美しいシーンである。残酷なシーンである。けれど、見なくてはならないシーンでもある。
秀作。
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