とうとう一観客からはみ出すようなイベントに参加する。そもそもゲスト目当ての参加で、何かしら後ろめいた気持ちもどこかにある。
今まで通り椅子に座り、劇を観るというとでは何ら変わらないのだが、劇は脚本を丸読みのそのままのリーディングである。この間1時間45分。そのあと、ホンを提供したナガイさんを囲み、観客をも含めたディスカッションが行われる。
今まで劇を見た後に質問などはしたことはあるが、未定稿の脚本を論じることなどしたことがないので、今日はなるべく後ろの方で覗き見ることにした。
リーディングは今まで何度も見たことがあるが、完成されない未定稿の脚本は初めてなので、会場がどんな空気なのか知りたかったのだ。
ホンは前半の1時間がまるで文学座の芝居を思わせるような世間話が続き、若い方が多いのにみんな大丈夫なんだろうかと心配もする。ところが1時間を過ぎて急にスピードアップ。じわじわあらゆるところで伏線を敷いていたダイナマイトが爆発する仕掛けである。
これは面白い。昭和40年代の話なんだが、いかにも古臭い田舎風情が舞台である。「人形の家」という小説の話まで出現する始末。
まあ、まだまだ出来上がってはいないホンではあるが、作者の気持ちは出ている。しかし、ラストは何か解せない終わりで、そのことがずっと引っかかる。
姉の恋人を奪って出奔した妹が金を借りに姉の元を訪ねるのである。この部分が安易かなと僕は思う。急に金の話になるので劇がダサくなるのである。けれどこの部分が一番姉妹の葛藤として面白い部分でもある。
父親が出て来て妹の妊娠を告げる。そして妹に近くに住みように手配をするのである。姉の気持ちはどうなるのか。ずっと父親の元、父親の世話をして世の中から隠れるようにしていた姉の気持ちはどうなるのか。しっかりと書かれていないのである。
その辺りはかなりディスカッションされて、恐いほど盛り上がる。
初めての経験だが、このリーディングは脚本を出した作家としては本当にまな板の鯉である。ものすごく怖い経験を積むことになる。
思ったよりシビアな空気感であった。でも僕にとっていい経験でもある。
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