Sightsong

自縄自縛日記

岩川光+山崎阿弥@アートスペース.kiten

2018-03-18 23:15:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

山崎阿弥さんがNYから一時帰国中で、急遽、ライヴが組まれた。SNSとは凄いものだ。1本目は岩川光さんとのデュオ(2018/3/16)。2本目は、2018/3/22、Bar Issheeにて、TUMOとの共演。そして3本目は、3/23、黒田京子さんとの共演(!)だそうである。

Hikaru Iwakawa 岩川光 (笛)
Ami Yamasaki 山崎阿弥 (voice)

岩川光さんはずっと気になる人ではあったのだけれど、ナマで演奏を観る機会ははじめてだ。

また、わたしが昨年9月にケヴィン・シェイと歩いてNY・クイーンズのTrans PecosにPulverize the Soundを観に行ったところ、山崎さんもピーター・エヴァンスに興味があるのだと言って来ておられて、またシェイとも旧知の仲のようで、無知なわたしはそこで山崎さんの存在を知ることとなった。その後、白石民夫さんや外山明さんとの共演の映像や、R2D2の声をやりたいというアピールの映像をネットで観て仰天し、ぜひその声を体感したいと思っていた。最近ではカール・ストーン、ネッド・ローゼンバーグと共演もしているようで興味津々。

会場のアートスペース.kitenは東陽町のマンションの一室だった。探し当てるまでに右往左往してしまった。靴を脱いで中に入ると、床に岩川さんの使う楽器が所せましと並べられていて、ふたりが愉しそうに談笑している。しかしパフォーマンスの時間が近くなると緊張感が張り詰めてくるのがわかる。

大きな羽根を手に、岩川さんは何ごとかを呟いている。「パチャママ」と聴こえたことからも、アンデスの大いなるものへの呼びかけでもあったのだろうか。やがて葉っぱのついた枝を振り、筒の片方に鼓が張られ、そこからバネが垂れ下がっているために雷の音がする「thunder drum」を鳴らす。一方の山崎さんはいきなり激しく首を横に振り物理的に震える声を発し、喉も鳴らしはじめた。

そこからのふたりの変化は落ち着いていながらも実に多彩なものだった。

小さな縦笛が何本も連なった、サンポーニャのようなパンパイプ。大きく身体を動かしながらの足踏み。生物をかたどった焼き物の笛には水が少し注がれており、傾けても吹いても古くからの音がする。太く大きな竹の横笛。長い縦笛の2本吹き。紐に結わえられて風を切る重し。倍音を出す喉笛。金属の大きな器を使った残響。ラオスの竹製の口琴。オカリーナ。マラカス。親指ピアノ。北米チェロキー族のものだという大きく平らな笛。羽根。大きな貝。

一方の山崎さん。鳥の声が電子音に化ける。指で喉を、拳で胸を突くことによる衝撃。狼と犬の遠吠え。シャーマンの呟き。龍ののたうちを思わせる長い声。口笛。蝋燭との遊び。2本の指が人間に擬態しての歩行。戦慄してしまうような囁き。こだま。絞り。うなり。コップに水を注ぐ。

こういった音楽とパフォーマンスの要素が、狭くも広くもある空間において、独立して勝手に遊び、あるいは互いに接近した(どちらかと言えば、山崎さんからのちょっかいが多かった)。ときに接近がグルーヴを生み出した。超絶技巧と言えば簡単だが、実際に目の当たりにするとたいへんなものだ。それが次々に開陳され、まるで何かの風景を視ているかのような心地にさせられた。

終わってから懇親会。岩川さんの語りは演奏の続きのようでとても面白い。山崎さんはこの5月までNYにいて、そのあとフィリピンに渡り、コラボレーションというものを追究するということである。観に来た方々も主催者もみんな興味深い話、いい時間だった。(そのせいで飲み過ぎてしまい翌日二日酔いで苦しむことになった。)

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4


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