Sightsong

自縄自縛日記

キース・ティペット『Ovary Lodge』

2012-07-10 00:33:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

久しぶりにキース・ティペットなんかを聴いている。『Ovary Lodge』(RCA、1973年)、実はこのあたりのティペットの世界をほとんど知らないのだが、若くして、既にティペットのピアノスタイルになっていることはわかる。

Keith Tippett (p)
Roy Babbington (b)
Frank Perry (perc)

1997年に、ほとんど予備知識なく、法政大学でティペットのピアノ・ソロを聴いた(たしか、前座が灰野敬二だった)。プリペアドも繰り出し、素晴らしいパフォーマンスだった。おそらくその場にいた多くの者が感激し、2回のアンコールを求めた。いちどはそれに応えたティペットだったが、2回目は、壇上で、こんなに拍手を送ってもらってとても嬉しい、しかしわたしは老いてしまってもう弾けない、と、真摯に話した姿をよく覚えている。

この盤でも、ティペットらしく、右手と左手でそれぞれ、同じフレーズをどうかしているほど執拗に繰り返し、発展させていく。彼のピアノを聴いてイメージするのは、今井俊満のどどどどどという奔流の絵だ。音は音塊になり、巨大な流れとなる。そして静寂が訪れる。それに身をまかせたあとに、最後の曲が提示する抒情性がたまらない。

いつもは、ティペットのピアノソロのCD(FMP盤の『Mujician』など)を聴きはじめると、何分かで厭になって止めてしまったりするのだが(たぶんこちらに余裕がないんだろうね)、ながら聴きではなく、音に向かってとめどなくイメージを妄想しながら聴くべき音楽なのかもしれない。


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