Sightsong

自縄自縛日記

キム・エランら『目の眩んだ者たちの国家』

2019-04-14 19:07:21 | 韓国・朝鮮

キム・エランら『目の眩んだ者たちの国家』(新泉社、原著2014年)を読む。

本書には、セウォル号沈没事件について韓国の作家たちが寄せた文章が集められている。

これは事故ではなく人災の事件であった。2014年4月16日のことであるから、およそ5年が経つ。そんなに前だったかと驚いてしまうが、亡くなった299人の乗員・乗客はそのように忘れたり思い出したりすることもできない。絶望したり憤激したりする自由も残されていない。

作家たちは各々の言葉で何が起きたのかを探ろうとする。それはどうしても、新自由主義的なオカネの重視とドライな役割分担、でたらめな制度の運用、見て見ぬふり、ハンナ・アーレントが言うような人間の悪、責任逃れの方法が組み込まれたシステム、といったことに収斂する。もちろんその通りである。そして日本に住む読み手は、これを自分たちのこととして読まなければ何の意味もない。向こう側に隠しているものをこちら側に持ってくる行為、恥辱を恥辱として共有する行為がなければ。


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