デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』(WOW、2000年録音)を、最近入手した。
Derek Bailey (g)
John Butcher (sax)
Gino Robair (energised surfaces)
横井一江さんが書いていたと記憶するが、ジョン・ブッチャーの個性はこれと限定されるわけではなく、そのときの音楽世界に応じて実に多彩なサックスの音を繰り出してきて、場を形成する。ここでも、演奏を開始したときには、エヴァン・パーカーかと思わせるような微分的なアプローチだ。ところが、三者が絡み合う即興演奏が進むに従い、ヘンな音がどんどん出る。凄いテクなんだろうな。
もちろん主役は、デレク・ベイリーである。決してクリシェになりえない「いつもの音」は、ときに金属がしなる音のようでもあり、虚空を漂うようでもあり。ベイリーの唯一無二性は何によるものだろう。この人の演奏を聴くと、何だか、永遠の闇を凝視し続けようとした埴谷雄高の世界を思い出すのである。
実に素晴らしい記録だ。
ジョン・ブッチャー、マドリッド、2010年 Leica M3、Summicron 50mmF2.0、Tri-X(+2増感)、フジブロ4号
●参照
○ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る
○デレク・ベイリーvs.サンプリング音源
○田中泯+デレク・ベイリー『Mountain Stage』
○トニー・ウィリアムス+デレク・ベイリー+ビル・ラズウェル『アルカーナ』
○デレク・ベイリー『Standards』
○1988年、ベルリンのセシル・テイラー(ベイリー参加)
○ジョン・ブッチャー+大友良英、2010年2月、マドリッド
○ジョン・ブッチャー『THE GEOMETRY OF SENTIMENT』
○横井一江『アヴァンギャルド・ジャズ ヨーロッパ・フリーの軌跡』