戴瑋『西蔵往時/Once upon a Time in Tibet』(2011年)を観る。広州で20元で買った。
第二次世界大戦中、米国は中国国民党の蒋介石を支援するため、インドからヒマラヤを超えて雲南省へ物資を運んでいた。そして1944年、米国人パイロットがチベットに不時着する。この、強い日射で目がやられていた「赤毛の悪魔」を助けたのは、夫を事故で亡くしたために「魔女」と呼ばれていた女性だった。男は恋に落ちる。一方、チベットでは、外国人の往来を強く禁じていたため、男は追われることになる。
辛亥革命後に清国軍を追い払って以来、1911年から51年まで、チベットは実質的独立時代にあった。英国の絶えざる介入もあって、外国人の往来を禁止していたのだろうか。なお、英国領インドが1914年にチベットとの間で取り決めたマクマホンラインが、戦後、中国とインドとの間に国境紛争を生む原因となっている。
映画では、既に、国民党も外国人の引き渡しなどに関して、かなりチベットに介入していたことがわかる。独立時代末期の物語である。
それにしても、圧倒的に美しいチベットの映像。標高が高いために、広い空の雲は低い。それに、山々と、雪解け水による湖と、草原。物語はどうしようもなくご都合主義に支配されているのだが、ここまでの光景を見せられると、そんなことはどうでもよくなってしまう。大画面で観たかった。
>> 予告編
●参照
○クロード・B・ルヴァンソン『チベット』
○汪暉『世界史のなかの中国』
○汪暉『世界史のなかの中国』(2)
○加々美光行『中国の民族問題』
○L・ヤーコブソン+D・ノックス『中国の新しい対外政策』
○国分良成編『中国は、いま』
○チベット仏教寺院、雍和宮(北京)
○ポール・ハンター『バレット モンク』