さて、映画は見てないけどプロットが気になった第455回は、
タイトル:13階段
著者:高野和明
文庫名:講談社文庫
であります。
映画『13階段』の原作です。
映画の公式サイトに、満場一致で第47回江戸川乱歩賞に選ばれた作品の映画化、とあったので拾ってみました。
樹原亮は、独居房の中で死神の足音を聞いていた。
事件前後の記憶を失っている彼は、わけもわからないまま死刑の恐怖に怯えている。
しかし光明はあった、僅かながら記憶が蘇ったのだ――今と同じように死の恐怖に駆られながら階段を上る記憶が。
傷害致死で懲役二年の実刑判決を受けた青年、三上純一。
仮釈放後、彼は刑務官の南郷正二に、ある仕事を依頼される。
南郷とコンビを組み、死刑囚の冤罪を晴らす――それが、仕事の内容だった。
高額な報酬、弁護士を代理人として姿を見せない依頼人、十年前に純一が家で補導された時に起こった殺人事件――。
不審な点はいくつもあったが、純一は遺族への賠償金、そして、冤罪の死刑囚を救った男という肩書が欲しかった。
そして、二人の過去への旅が始まった。
乱歩賞の名に恥じぬ、堂々たる長編です。
二人の主人公の設定、心理描写が巧みで、序盤から一気に引き込まれました。
ちょっとした会話にも互いの過去がきっちり反映されており、非常に味わい深い物語になっています。
最初に目を引くのは、刑法とその背後にあるものの描写。
請願作業、遵守事項、身分帳、検面調書、連絡カード、死刑執行起案書……専門用語の嵐が吹き荒れ、ノンストップで法の世界の内幕を見せていきます。
単なる知識の羅列ではなく、法を扱う人々の微妙な心理、それぞれの立場の違い、主人公の個人的な感想など、様々な方向から描いているのは好感度高し。
殺人の償いとして、別の誰かの命を救おうとする青年、純一。
社会復帰しても周囲の眼は冷たく、また遺族への保証が家計を逼迫しており、家族には暗い影がつきまといます。
それでも、彼は自分が罪を犯したという事実をどうしても認めることができません。なぜなら――。(以下削除)
一方、刑務官の南郷は死刑に携わった者としてジレンマを抱えています。
正義の名の下に、死刑という名の殺人を犯すことの後ろめたさ……そして、罪を認めずに死んでいく者、認めて死を受け入れる者の存在。
死刑容認、死刑反対、二つの主義の間で揺れ動きつつ、最終的に刑務官をやめることを選んだ、非常に奥の深いキャラクターです。
一度終わったことになっている事件を掘り起こすことの難しさ、憎むべき相手を救おうとする行為に対する遺族の反感、道は楽ではありません。
それでも、死刑に疑問を感じる検事の助けを受けて、二人は少しずつ核心へと近づいていきます。
刻一刻と迫るタイムリミット、遂に辿り着いた場所にあった意外な物、そして怒濤のクライマックス――上手い!
ただ……ミステリとして読むと粗が目立ちます。
真犯人について、ラストで『実はこういう過去があったんだよ』という二時間ドラマ的手法で一気にまとめちゃってるのも引っかかるのですが、何と言っても――
(以下、ネタバレなので反転)
何の予備知識も持たない佐村某が、警察も見つけられなかった証拠をあっさり発見してたってのはいかがなものかと。
最後まで一気に読ませてくれる水準の高い作品です、オススメ。
映画の方はどうしようかな……と悩み中、これを二時間にまとめるのはちょっと難しいんじゃないかと思うので。
タイトル:13階段
著者:高野和明
文庫名:講談社文庫
であります。
映画『13階段』の原作です。
映画の公式サイトに、満場一致で第47回江戸川乱歩賞に選ばれた作品の映画化、とあったので拾ってみました。
樹原亮は、独居房の中で死神の足音を聞いていた。
事件前後の記憶を失っている彼は、わけもわからないまま死刑の恐怖に怯えている。
しかし光明はあった、僅かながら記憶が蘇ったのだ――今と同じように死の恐怖に駆られながら階段を上る記憶が。
傷害致死で懲役二年の実刑判決を受けた青年、三上純一。
仮釈放後、彼は刑務官の南郷正二に、ある仕事を依頼される。
南郷とコンビを組み、死刑囚の冤罪を晴らす――それが、仕事の内容だった。
高額な報酬、弁護士を代理人として姿を見せない依頼人、十年前に純一が家で補導された時に起こった殺人事件――。
不審な点はいくつもあったが、純一は遺族への賠償金、そして、冤罪の死刑囚を救った男という肩書が欲しかった。
そして、二人の過去への旅が始まった。
乱歩賞の名に恥じぬ、堂々たる長編です。
二人の主人公の設定、心理描写が巧みで、序盤から一気に引き込まれました。
ちょっとした会話にも互いの過去がきっちり反映されており、非常に味わい深い物語になっています。
最初に目を引くのは、刑法とその背後にあるものの描写。
請願作業、遵守事項、身分帳、検面調書、連絡カード、死刑執行起案書……専門用語の嵐が吹き荒れ、ノンストップで法の世界の内幕を見せていきます。
単なる知識の羅列ではなく、法を扱う人々の微妙な心理、それぞれの立場の違い、主人公の個人的な感想など、様々な方向から描いているのは好感度高し。
殺人の償いとして、別の誰かの命を救おうとする青年、純一。
社会復帰しても周囲の眼は冷たく、また遺族への保証が家計を逼迫しており、家族には暗い影がつきまといます。
それでも、彼は自分が罪を犯したという事実をどうしても認めることができません。なぜなら――。(以下削除)
一方、刑務官の南郷は死刑に携わった者としてジレンマを抱えています。
正義の名の下に、死刑という名の殺人を犯すことの後ろめたさ……そして、罪を認めずに死んでいく者、認めて死を受け入れる者の存在。
死刑容認、死刑反対、二つの主義の間で揺れ動きつつ、最終的に刑務官をやめることを選んだ、非常に奥の深いキャラクターです。
一度終わったことになっている事件を掘り起こすことの難しさ、憎むべき相手を救おうとする行為に対する遺族の反感、道は楽ではありません。
それでも、死刑に疑問を感じる検事の助けを受けて、二人は少しずつ核心へと近づいていきます。
刻一刻と迫るタイムリミット、遂に辿り着いた場所にあった意外な物、そして怒濤のクライマックス――上手い!
ただ……ミステリとして読むと粗が目立ちます。
真犯人について、ラストで『実はこういう過去があったんだよ』という二時間ドラマ的手法で一気にまとめちゃってるのも引っかかるのですが、何と言っても――
(以下、ネタバレなので反転)
何の予備知識も持たない佐村某が、警察も見つけられなかった証拠をあっさり発見してたってのはいかがなものかと。
最後まで一気に読ませてくれる水準の高い作品です、オススメ。
映画の方はどうしようかな……と悩み中、これを二時間にまとめるのはちょっと難しいんじゃないかと思うので。
映像化できないことはないと思うのですが……いい作品
になるかと言われると疑問形です。
私も好きです。
反転部は、一応言っとくべきかな~と思っただけで、
特に支障があるという程ではありませんでした。
確かに、あそこで長々と解説があったりしたら、爽快感
半減でしょうね。
二の足を踏んでしまいます…
世間の評判と自分の評価は違うというのは重々承知なのですが
良質ミステリの映像化って難しいですよね…
あ、ちなみにこの作品は好きです。
反転部は同様の感想を持ちましたが
伝奇モノと同じく爽快感を得るための
ギミックだと思えば、特に気にならなかったです