さて、よく毎日やってたよなぁと感心してるの第911回は、
タイトル:おしまいの時間
著者:狗飼恭子
出版社:幻冬舎 幻冬舎文庫(初版:'97)
であります。
仕事が忙しかったり、そうじゃなくても飲み会があったりして、なかなか今週は読む時間が取れなくて、週1でも時間がねぇ~、なんて思い付いたりすると、よくもまぁ、週3冊なんてよく読んで書いてたよなぁ、としみじみ。
さておき、今日の記事ですが、またもやお初の作家さんです。
ストーリーは、
『21歳という年齢の中途半端さに、「幸せと不幸せのさかいめの襞」に和泉リカコはいるように感じていた。
そんな21歳の春、高校時代の演劇部の顧問をしていた宮本先生が亡くなった、と親類の男性から連絡を受け、演劇部の部長だったリカコは先生の葬式に出向いた。
かつて演劇部員だった人間は自分以外にいなさそうだった葬式の席で、リカコはおなじ演劇部だった渡辺イズミと3年ぶりに再会する。
高校時代と変わらず、美人でかっこよくてわがまま、そして口の悪いイズミは、そこで先生の弟だと言うワタルから先生の遺書を見せられる。
宛名は「いずみさん」。
ともに「いずみ」と呼ばれるふたりだったが、その宛名は自分のことだとイズミは言い、さらにイズミは先生の子供を妊娠している、と告げた。
水とか、空気とか、そんな独特の雰囲気を持っていた先生の子を産むと言うイズミが気になって、リカコはイズミの住んでいるマンションへと赴く。
そこには葬式のときに出会ったワタルがいて、兄の子供のためにかいがいしくリカコのために家事を行っていた。
正しいとか、正しくないとか、善だとか悪だとか、そういうことではなく、ただ何かに向かって歩いている……そんなふたりと違って、リカコはただ何も出来ず、臆病に待っているだけだった。
そんなリカコは、憎まれ口を叩きながらも風邪を引いたときに見舞ってくれたイズミや、兄の子のために何かしたくても高校生の身では何も出来なくて、それでも何かしようと模索するワタルと接する中で、何かを変えなければと思い始める。』
デビュー作が詩集、と言うことで詩から出発した作家さんだからだろうか。
とても透明感がある作品だと言うのが第一印象。
臆病で、待っていること以外に何も出来ないリカコの一人称で語られる物語は、透明感の中に幾ばくかの寂しさや悲しさがあって、でも重くなりすぎず、全体の透き通った雰囲気は壊していない。
私好みのいい雰囲気を醸し出していて、かな~りどっぷりと浸れる作品になっている。
ストーリーは、リカコを中心として、リカコが接するイズミやワタルとの生活が綴られているだけで、雰囲気はいいのだが、逆にどろどろしたことや盛り上がりと言ったものとは無縁。
とは言え、不倫の恋に悩むリカコや私生児を宿すイズミ、複雑な出生の秘密を抱えるワタル……と、設定上はけっこうどろどろしたものを持っているのに、そうしたところを感じさせないと言うのは逆にすごいのかもしれない。
ただ……雰囲気はとてもいいのだが、ラストがちょっと……。
まぁ、こうした後ろ向きな主人公がラストでどういうふうになるか……なんてのはだいたいお約束で、あんまり変わり映えしないものだとは思うけど、あまりにもふつうすぎて残念。
ぎりぎり作品の雰囲気は壊していないが、それでも何だかなぁって感じはするんだよねぇ。
もっとも、雰囲気だけよくてオチはなし、とか、奇を衒ってぶちこわしになるよりはマシだとは思うけど。
あとは……文章だけど、表現はふつうにOK。
これはいいな、って思ったのは繰り返しの表現、かな。
けっこう頻繁に短いセンテンスで繰り返しの表現があるんだけど、繰り返してもせいぜい3回、概ね2回くらいのを場面の区切りとかに使っていて、いい余韻を創り出している。
繰り返し表現は頻繁に使ったり、何回も繰り返したりするとくどくなって読むのが億劫になったりすることが多いんだけど、この作品では効果的に使っていると思う。
ある意味、繰り返し表現をする文章のいい手本って感じかもしれない。
……と、個別にはこれくらいかなぁ。
と言うわけで、総評だけど、……悩む……(笑)
ラストに残念なところがあるけれど、とてもいい雰囲気のある作品だし、表現にもおもしろいところがあって、オススメしたいところだけど、たぶんこれが好きになれるタイプは、私とおなじ感性タイプな気がする。
個人的には良品にしたいところだけど、どっちかって言うと感性派向けって感じがするから最終的な総評は、及第。
ってとこが妥当、かな。
たぶん、私は別のを手に取るだろうけど(笑)
タイトル:おしまいの時間
著者:狗飼恭子
出版社:幻冬舎 幻冬舎文庫(初版:'97)
であります。
仕事が忙しかったり、そうじゃなくても飲み会があったりして、なかなか今週は読む時間が取れなくて、週1でも時間がねぇ~、なんて思い付いたりすると、よくもまぁ、週3冊なんてよく読んで書いてたよなぁ、としみじみ。
さておき、今日の記事ですが、またもやお初の作家さんです。
ストーリーは、
『21歳という年齢の中途半端さに、「幸せと不幸せのさかいめの襞」に和泉リカコはいるように感じていた。
そんな21歳の春、高校時代の演劇部の顧問をしていた宮本先生が亡くなった、と親類の男性から連絡を受け、演劇部の部長だったリカコは先生の葬式に出向いた。
かつて演劇部員だった人間は自分以外にいなさそうだった葬式の席で、リカコはおなじ演劇部だった渡辺イズミと3年ぶりに再会する。
高校時代と変わらず、美人でかっこよくてわがまま、そして口の悪いイズミは、そこで先生の弟だと言うワタルから先生の遺書を見せられる。
宛名は「いずみさん」。
ともに「いずみ」と呼ばれるふたりだったが、その宛名は自分のことだとイズミは言い、さらにイズミは先生の子供を妊娠している、と告げた。
水とか、空気とか、そんな独特の雰囲気を持っていた先生の子を産むと言うイズミが気になって、リカコはイズミの住んでいるマンションへと赴く。
そこには葬式のときに出会ったワタルがいて、兄の子供のためにかいがいしくリカコのために家事を行っていた。
正しいとか、正しくないとか、善だとか悪だとか、そういうことではなく、ただ何かに向かって歩いている……そんなふたりと違って、リカコはただ何も出来ず、臆病に待っているだけだった。
そんなリカコは、憎まれ口を叩きながらも風邪を引いたときに見舞ってくれたイズミや、兄の子のために何かしたくても高校生の身では何も出来なくて、それでも何かしようと模索するワタルと接する中で、何かを変えなければと思い始める。』
デビュー作が詩集、と言うことで詩から出発した作家さんだからだろうか。
とても透明感がある作品だと言うのが第一印象。
臆病で、待っていること以外に何も出来ないリカコの一人称で語られる物語は、透明感の中に幾ばくかの寂しさや悲しさがあって、でも重くなりすぎず、全体の透き通った雰囲気は壊していない。
私好みのいい雰囲気を醸し出していて、かな~りどっぷりと浸れる作品になっている。
ストーリーは、リカコを中心として、リカコが接するイズミやワタルとの生活が綴られているだけで、雰囲気はいいのだが、逆にどろどろしたことや盛り上がりと言ったものとは無縁。
とは言え、不倫の恋に悩むリカコや私生児を宿すイズミ、複雑な出生の秘密を抱えるワタル……と、設定上はけっこうどろどろしたものを持っているのに、そうしたところを感じさせないと言うのは逆にすごいのかもしれない。
ただ……雰囲気はとてもいいのだが、ラストがちょっと……。
まぁ、こうした後ろ向きな主人公がラストでどういうふうになるか……なんてのはだいたいお約束で、あんまり変わり映えしないものだとは思うけど、あまりにもふつうすぎて残念。
ぎりぎり作品の雰囲気は壊していないが、それでも何だかなぁって感じはするんだよねぇ。
もっとも、雰囲気だけよくてオチはなし、とか、奇を衒ってぶちこわしになるよりはマシだとは思うけど。
あとは……文章だけど、表現はふつうにOK。
これはいいな、って思ったのは繰り返しの表現、かな。
けっこう頻繁に短いセンテンスで繰り返しの表現があるんだけど、繰り返してもせいぜい3回、概ね2回くらいのを場面の区切りとかに使っていて、いい余韻を創り出している。
繰り返し表現は頻繁に使ったり、何回も繰り返したりするとくどくなって読むのが億劫になったりすることが多いんだけど、この作品では効果的に使っていると思う。
ある意味、繰り返し表現をする文章のいい手本って感じかもしれない。
……と、個別にはこれくらいかなぁ。
と言うわけで、総評だけど、……悩む……(笑)
ラストに残念なところがあるけれど、とてもいい雰囲気のある作品だし、表現にもおもしろいところがあって、オススメしたいところだけど、たぶんこれが好きになれるタイプは、私とおなじ感性タイプな気がする。
個人的には良品にしたいところだけど、どっちかって言うと感性派向けって感じがするから最終的な総評は、及第。
ってとこが妥当、かな。
たぶん、私は別のを手に取るだろうけど(笑)