バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

幻の鉄道を辿るバス専用道の旅@吉野

2011-01-25 23:19:13 | ☆バスde温泉(近畿)

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鉄道未成線とは、鉄道の建設途上、何らかの理由で完成できなかった路線のこと。国鉄の末期には各地で建設計画が中止され、多くの幻の鉄道を作り出しました。関西にもこの幻の鉄道があります。

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紀伊半島の木材資源を運び出すことを目的に、奈良県五條市から紀伊山地を貫き、紀伊半島を縦断して熊野灘の新宮市を結ぶという、遠大な鉄道計画がありました。昭和初期、和歌山線の五条駅から大塔村阪本(現在は五條市)の間を先行開業させるために着工したものの、太平洋戦争のため、工事が中断。1957年に工事を再開し、1959年に五条駅から西吉野村城戸(ここも現在は五條市)まで路盤が完成し、五新線と仮称されていました。

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この完成した路盤を全国でも珍しいバス専用道路として暫定使用したのが国鉄バスの阪本線です。城戸~阪本は引き続き建設し、この区間の完成後にバスから鉄道に切り替えることとなっていたが、国鉄の解体により1982年に工事が完全に中止。結局いちども列車が走ることなく、運行が国鉄バスから西日本JRバスに引き継がれました。現在のバス乗り場に貼ってある古い地図にJRバス専用道路との表記があるが、これこそその専用道です。

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阪本線はそれ以後、並行道路の改良が進んだことによって専用道路の優位性がなくなり乗客が減少。JRが撤退した現在は、地元自治体の委託を受ける形で奈良交通による運行となっています。JR五条駅の駅舎の脇にあるバス乗り場の跡が国鉄バスの名残をとどめていますね。

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JR和歌山線の五条駅の駅前に、五條バスセンター始発のバスが定刻に現れました。バスは日野レインボーのショートボディ。およそ20人ぐらいが着席できるバスに6人が乗車し、寂れた駅前を通り過ぎて国道24号線にはいりました。ここは寂しげな駅前とは一転してかなり栄えています。スーパーやファミレス、パチンコ屋など、そのほとんどが駐車場を備え、それぞれ賑わっています。地方都市では今や鉄道より車…ということです。

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バスは国道24号線から離れ、吉野川を渡り、旧市街を通過。県立五條病院を過ぎるといよいよ専用道の入り口が現れます。専用道はレールの代わりにアスファルトを敷いているような感じで、ほとんど鉄道と変わらない。一般道と交差するところには踏切のような構造になっています。

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時おりトンネルもあるが、断面が馬蹄形で、まさしく鉄道トンネルです。梅林で有名な賀名生(あのお)でほとんどの乗客が降りました。現在、賀名生へのバスでのメインルートは国道168号線経由、十津川特急バスとなっており、梅林を訪れるなら、そちらのほうが便利です。

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賀名生を過ぎ、さらに山の中に入っていきます。やがて専用道の終点である城戸に着きました。城戸はいかにも駅という雰囲気で、レールがあれば今にもディーゼルカーが走り出しそうです。

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バスはここから一般道に入り、丹生川沿いを走って西吉野温泉に向かいます。
トンネルを越えたところでわき道に入り、村営の旅館の前で停車。ここが終点の西吉野温泉です。

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温泉の後はバスの運転手に教えてもらった「山里」という店でお楽しみの食事。釜飯が名物とのことなのでそれを注文しました。「20分ぐらい時間がかかるけどいいですか?」っと店の奥さんが聞いてきたが、米から炊くなら当然それぐらい時間はかかるでしょ。時間がゆっくり流れているときには20分は相対的に短いのか、それほど待たされた気がしないうちに「釜飯定食」が運ばれてきました。釜飯の蓋を開けるとホンマにいい匂い。勇んで一口目を食すると「ん!」少し芯が残る。米のアルデンテはいただけない。しかし、時間の経過とともに芯もなくなり、だんだんおいしくなってきました。蒸らしの時間が少なすぎたのかな?

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定食をきれいに平らげ、先ほどバスで通過した専用道の終点である城戸に歩いて向かいます。ここに紀伊半島を鉄道で縦断しようとした夢の跡があります。専用道の終点である城戸は鉄道開通時に城戸駅になるはずでした。ここまでは曲がりなりにもバス専用道として活用はされているが、ここから先は工事をしただけでまったく何の役にも立っていません。その役立たずの最初の部分がこのコンクリート橋です。

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橋の上に近づいてみると、その橋を村役場の駐車場として活用していました。なんだか無意味なことをしている。

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この巨大な橋は廃墟というには新しすぎるが、存在意義を失った以上、やはり廃墟に違いありません。橋の上を歩いて奥に進むとトンネルの入り口が迫ってきます。トンネルからの冷気が心地いい。入り口に立つと心地いいのを通り越して寒いぐらい。入り口には柵が設けられ、部外者は入れないようになっています。

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トンネル入り口のコンクリートには銅製の銘板があり、トンネル名とともに延長、着手、竣工などが記されており、トンネル名は「城戸トンネル」とされるはずだったことがわかります。竣工は昭和54年となっているので、けっこう新しい遺物といえるでしょう。

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コンクリート橋の手前は幻の城戸駅です。少し駅っぽい建物はあるが、今のところバスの停留所としての機能があるのみ。

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バスの出発の時間となり、駐車場代わりの巨大な高架橋の根元からバスに乗りこみ、再び専用道を通って五条駅へと戻りました。この幻の五新線、ここまで完成して打ち捨てられているのはもったいない感じがするが、これほど周りに人がいなければ、たとえ開通したとしても鉄道として維持できるだけの乗客が確保できたとは思えません。残念ではあるが、このまま徐々に朽ちていくのを見守るばかりです。

  • 訪問日:2003年7月29日
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