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三千里コラム-負けるが勝ち

2013年07月12日 | 南北関係関連消息

開城工団での第二次実務会談を終えた南北の首席代表



 7月10日に開城工団の施設内で開かれた南北実務会談は、操業再開をめぐる対立が解決できずに終了しました。
 南は「北が労働者を一方的に撤収させ操業を中断させたのだから、その責任を負うべきだ。再発防止の保障がなければ操業再開はできない」という立場です。
 一方の北は「南の大統領自ら我々の体制と最高指導者を冒とくし、米韓合同軍事演習を強化して意図的な緊張を煽った。そのことが操業中断の原因だ」と主張しています。
 
 相手に非があるとの相互批難に終始していては、南北関係の改善は遥遠であり、開城工団の操業再開すら困難でしょう。開城工団を生活の場としてきた南の企業と北の労働者は、どのような心情で南北の実務交渉を見守っているでしょうか。彼ら、彼女たちのもらす、深い溜息が聞こえてきそうです。

 北は10日付で「金剛山観光再開のための南北実務会談を17日に、離散家族再会のための南北赤十字実務接触を19日に」開くよう提案しました。これに対し南は、金剛山観光再開への実務会談は拒否し、人道的な離散家族問題を中心に赤十字交渉を行おうと修正提案しました。当然ながら北はそれに応じず、11日の夕刻、前日に提案した実務交渉をすべて保留すると表明しました。

 北の提案で、主眼は金剛山観光の再開にあることは言うまでもありません。ただ、南の関心事項である離散家族の再会問題も同時に論じることで、交渉の実現を図ったわけです。一方の南は、北に実利を与える工団操業や観光事業の再開はできるだけ先延ばしにしたいのでしょう。

 南の対応は“一ドルの外貨もタダでは提供しない”と言わんばかりです。謝罪をさせ、物乞いをさせて屈服を強いるような姿勢は、南北の和解・協力を謳った6.15共同宣言の精神とは、あまりにもかけ離れたものです。

 北も、開城工団の操業再開に向け英断を下すべきです。南の企業と市民が、安心して工団操業と観光事業の再開を受け入れられるよう、当局の責任ある保障表明は不可欠です。かつて、金正日総書記は小泉総理に拉致問題の再発防止を確約しました。その事例を想起してほしいものです。

 長期にわたる分断状況で「勝敗」を論じることは好ましくありませんが、南北が互いに「負けるが勝ち」の精神を持って交渉に臨むことも大切です。別の言葉では「易地思之」です。時には相手の立場で考えてみることが必要です。相手の欲する物を与えることなく、己が望むものを得ることはできません。合意とは、妥協の産物だからです。 JHK。

参考までに、7月10日付の『統一ニュース』に掲載された記事を紹介します。
(http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103248)


開城工業団地での南北実務会談、合意に至らず15日に続開

7月10日、南北当局は第2次実務会談を行なったが、開城工業団地の操業再開条件をめぐる意見相違を解消できず、次の会談(15日)に議論を持ち越した。

10日午後、ソ・ホ南側首席代表は開城工業団地内の総合支援センターで、会談の結果をブリーフィングした。

この日の会談で南北は、開城工業団地の“発展的正常化”に関しては認識を共にしたが、操業再開の条件をめぐる対立から、相互の差異を確認しただけで終わった。

南側首席代表は「開城工業団地の発展的正常化に関する構想を北側に詳しく説明した。開城工業団地を国際的な水準の公団に発展させる意思を再度、明確に説明した。そのためには、北の一方的な措置で操業が中断される事態が再発してはならないという点を、くり返し強調した」と述べた。

さらに彼は「操業再開と関連し、今回の一方的な操業中断措置に対して責任ある立場表明がなければならない。再発防止に対する明確な約束と措置があってこそ、開城工業団地に関する内外の憂慮を払拭させることができる」と強調した。

つまり、南側は開城工業団地の操業再開条件として、△操業中断に関する立場表明、△再発防止への保障、という原則を固守したというわけだ。だが、立場表明と再発防止保障に対する具体的な提案に関しては報告されていない。

一方、北側は南側が再発防止の保障を持ち出したことに対して、最高指導者への非難を糾弾するなど、根本問題を提起した。南側の政府と言論による最高指導者への冒とくが、開城工業団地の操業中断を引き起こしたとの主張である。

北側は「6.15共同宣言の精神に則って開城工業団地を発展させるべきだ。開城工団の正常操業を妨げる一切の行為をしてはならない」とし、南側マスコミの報道と米韓合同軍事演習などを問題視した。

そして「開城工業団地の入居企業が設備の点検と整備を速やかに終え、操業を再開すべきである」と表明し、操業再開の優先を強調した。

北側が最高指導者への冒とく問題を取り上げたことに対して、ソ・ホ南側首席代表は「南にも体制の最高尊厳がある」と反論したことに言及した。北側の朴槿恵大統領に対する実名批判を迂回的に取り上げ、対抗したと見られる。

だが、南側が提起した開城工業団地の国際化問題に関しては、北側から特別な反論はなかったようだ。

ソ・ホ南側首席代表によれば、北側は開城工業団地を国際化してはならないとの立場を表明しなかったし、北側の『開城工業地区法』にも国際化が明示されているので、問題にならないと認識している。

『開城工業地区法』第3条には、「工業地区には南側および海外同胞、他国の法人・個人・経済組織が投資できる」と明示されている。

今回の第2次実務会談で、南北間には開城工業団地の正常化条件をめぐり原則的な立場の相違が明らかになった。来る15日に開かれる第3次実務会談も、難航が続くものと予想される。

一方、開城工業団地の施設点検のため、入居企業は予定通り、11日に開城工団に向け出発する計画だ。今回の開城訪問には、繊維・営業企業など76人と開城工業地区管理委員会の関係者など50人、計126人と車両93台が出発する。

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