君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十一話

2014-06-04 03:03:30 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十一話

 惑星ニュクスはSD体制時代、最大の脳科学そして医学の研究惑星だった。
 ここはグランド・マザーが直接操作していた。
 全てがコンピューターで管理され人がほとんど居なかった。
 SD体制崩壊後、最高機密だった所為で長い間人類からもその存在を知られずにいた。
 近年、ここの出身と言う人間が現れた。彼らは黒い服を纏い、行動も怪しかったのでまるで暗黒惑星のような星だと噂が立っていた。
 その噂の真相を確かめる為に軍は星への侵入を試みたが、星の鉄壁な防御システムを崩す事が出来なかった。
 そんな中、黒い服を着ていないセドルが現れる。
 キースは彼に興味を持った。彼に接触しニュクスへ入れる条件を聞き出す。
 入る条件は「クローン」である事、ニュクスの人類は全てがクローンだった。
 現在、クローンだと人類に認知されているのは『カナリアの子供達』と『ミュウのソルジャーズのブルー』そして、公認はされていないものの彼の発言から一部で囁かれている『前ミュウの長 ソルジャー・シン』だった。
 人類はクローンを人道的に認めていない、クローンは不遇で下等な者だと蔑みながら、得体のしれない畏怖を感じていた。そして、クローンを受け入れるどころかその存在すら認めようとしていなかった。
 実験体のキース・アニアンはクローンだった。
 彼はその事実を伏せねばならなかった。

  惑星ニュクス上空 セドルと合流してすぐ
 セドルの船の中、青く細い剣をセドルに向けるジョミー。
「さて、セドル。ミュウの仲間が僕の船へと移った今、この船は僕の思いのままだ。教えて欲しい事がある」
「ジョミー。これ…冗談だろ?」
 セドルはこの状態でも嫌な笑いを消そうとしなかった。
「それは、俺がもう必要じゃないって意味か?」
「ううん。そうじゃない」
「なら、どうしてこんな」
「僕にとって君は、今この時では無くて、ずっと先に必要になるだろう。だから、本当はこんな事はしたくない。だけど、君は脅さないと本当の事を答えてくれないからね。僕はこの船にミュウの秘密であるステルスの技術を乗せた。乗せるのは僕からの提案だが、ステルス技術は僕らの身を守る盾と矛なんだ。だから、今頃で悪いけど交換条件だ。教えて欲しい。君はキース・アニアンとどんな話をしたんだ」
「キース・アニアン…ノアの首相じゃないか?会った事も無い。話を?そんなの俺は知らない」
「キースはアルテメシアで僕らの夢に入ってきた男だ。君は覚えていると言ったよ」
「ああ、そうだった。覚えてる。だが、あれが初めて会った…」
「…意外に律儀だね。キースだとわかっているのに。君にはあの時の男が誰でもいいと軽く設定されているのかな?あの時、入ってきた相手がキースだと知った時の君の衝撃を僕は覚えている。君は僕と同じだったんだ『何故、彼がここに…』と思っただろう。本当に忘れているのなら…どこかで君の記憶は書き換えられていると言う事だ」
「…書き換え?」
「君はキースと何をどう話したのかさえ覚えていないんだ。もうそれは会話とは言えないね…」
 そう言ってジョミーは青い剣を消した。そして、額に手をあてた。
「そうじゃないかと思ってはいたが…。あの時、僕は君の深層に潜った。君はミュウだと聞かされ、僕もそうだと思った。人類では無かったからね。でも実際はミュウに見せかけられていただけの人類だった。君の中には巧妙な細工があった」
 ジョミーの表情が曇る。
「でも、あれは俺がミュウに会う為に人を利用し騙したものだ。だから、俺は…」
「薬の試しに会うなら、誰でも良かったのに僕が来ただけ?」
「ああ、そうだ…」
「違う。君は僕が居るのを知って行動を起こした。そこがキースの誤算だったんだろうね」
「キース・アニアンの誤算…」
「そう、一つ目のね…」
「俺にどんな細工があったんだ?」
 勝手に仕掛けられた罠、成立しない話し合い、忘れさせられている事実、どれを取ってもセドルには面白くない話だった。
「僕の推測の部分もあるけれど、僕らの出会いは偶然だった。僕がアルテメシアに居ると知って、君は僕に会う為に東に権力を持つダールトンを訪ねた。その結果、僕が君に潜った。そして、僕らは眠り続けたとなっているね。あれは、実際は眠らされていたんだ」
「それは、あの家に居た者。全員の記憶が違っていると言うのか?」
「多分…。僕とシドの記憶が食い違っているし、今のセドルと初めて会った時の大人しい君との違いが余りにも不自然だ。最初からのシナリオはこう…。その前に質問。正直に答えて。君は僕に会う前にキースに会っているね?」
「…っと…そこは…会っていると思う…多分…。軍に船を止められて…。でも、お前たちミュウの話なんてしなかったぞ」
「キースが君に関心を持ったのには、ミュウは全く関係が無いからね。キースの考えで動いた事だ。君の星に存在をキースは知っていたから…」
「俺はキースに会った時、ニュクスに入る条件を教えた。それだけだ…」
「そうか…わかった。じゃあ、あの時の種明かしをしよう。まったく…。僕に薬を飲ませるなんてしなければこんな困難な事にはならなかったんだ」
「…会えなければ実験台なんかにしなかった…」
「確かに、結果論でしかないが」
「悪かった…」
「いいよ。もう、僕も迂闊だったんだ」
 そう言ってジョミーは自分の考えを話した。
 セドルが彼の部下を使って昏睡状態のミュウという自分を作った。ジョミーはシドを補佐にして薬を飲んだ事を知らないまま状でセドルに潜った。キースが二人が会うのを知りアルテメシアに急遽やって来た。キースは自分がしようとしている事を知られない為に、二人が会ったと言う事実を消したかった。
 セドルの記憶操作は出来ても、ジョミーの記憶には触ることが出来なかった。だが、薬を飲んだ事で、不安定になっているジョミーに眠りについたままになったと嘘の情報を入れる。
 そこに、ヴィーを使ってキースが二人を助けに潜る。
 深層でジョミーが「女性体」になっていたのは予想外だったが、これはセドルの願望がそうさせた現象だが、これをキースは利用し『お前は過ちをおかした』とジョミーに思い込ませた。
 セドルはこの作用で一時ジョミーの記憶を無くしたが、やがて思い出しジョミーに興味を持ち始める。
「理想の女性ってさ…」
「ジョミー?」
「せドル、君は僕ではなくて、母親を望んでいるんだと思うよ」
「母親…?」
「君は知らないだろうけど…優しく包んでくれる存在さ」
「そうかもしれない…。でも、俺はお前を諦めないぞ」と少しおどけた。
「まだ言うの…」
 セドルが僕の言った言葉を理解しているのはわかった。それでも彼はこんな風に僕に入ってくる。
「本当に君はニュクスの生れなの?クローンっだって嘘じゃない?」
 記録によると、SD体制崩壊前から、ニュクスからの渡航者が居なかった訳ではなかった。今は都市伝説のようになっているが、死神のような黒い服は陽に浴びると溶けてしまうからとか言われていた。あれは僕らミュウが着る服のように独自で開発したニュクスの服だったし、陽を浴びると溶けるなんて事はない。ただ、彼らに共通したのは、表情が無く、抑揚のない口調とかだった。ニュクスは自我がない星なのか?と僕は感じていた。
 なのに、目の前にいるこの男は全く違っている。
 普通の人間よりも人間だった。
「セドルのその上へと向かっていく貪欲さに、キースは興味を持ったんだと思う」
「そう言えば…お前に会う半年くらい前に…戦艦に止められて…」
「少し思い出した?思い出したなら、僕にその枷が外せるかもしれない」
 手を重ねてとジョミーは彼の記憶に同調した。
 消されてしまった記憶は本人が思い出すしか戻せないが、そのきっかけを与える事は出来る。
 ミュウの記憶能力は、普通と同じ記憶とは別に記録する事も出来た。
 記録とは言葉通りに記録を見たり、写真を見るような物だった。それはそこに自分の感情を上乗せして見せる事も出来た。
 セドルの微かな記憶から戦艦の内部を見せると彼は少しずつ思い出してゆく、そこを情報で埋めてゆく。
 同調の中でセドルが話だした。
「お前に会う半年くらい前…軍に止められた船にキース・アニアンが居た。その時はニュクスの事を聞かれた。俺は入る条件がクローンだと話した。それで、俺は東の星域の渡航が出来るようになった」
「それだけじゃないよね」
「星の構造や色々聞かれた。俺は全部話した…」
 そこでジョミーは同調を解いた。
「君に自白剤を使って必要な情報を引き出し、その記憶を消したんだ。キースは星の真実を知った。それで君に監視を付けた」
「俺に監視が?」
「ああ、いたよ」
「僕と君に会った後からずっとね。きっと今回の事ももうキースには伝わっている。だから、僕は事を急いだんだ。だけど、キースは僕とは関係なく計画を加速させた…その理由がわからない…」
「ニュクスはただの研究惑星だ。それも忘れ去られた星だ。だから、俺はそれを気付いて欲しくて出てきた」
「SD体制崩壊後はニュクスは封鎖されてしまったからね。人類も見向きもしなかった。でもニュクスの技術は欲しかったんだ。下手に誰も手を出さないようにニュクスが怖い星だと噂を流したのも政府だろう。そうして、飴と鞭を君に与え、君が合法的な物の商売だけじゃなく、非合法の商売をするようにも仕向けた」
「なんで、どうして、そんな事を!」
「キースはあの星が怖いのさ」
「…怖い?」
「そう。だから。前に言ったけど、このままだと惑星ニュクスは破壊されると…」
「信じられない…」
「僕らはそれを止めにきたんだ」
「……」
「星を壊させはしない。今度こそ守ってみせる」





   続く












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