君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十五話

2015-01-25 02:07:16 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)


   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十五話

  惑星ニュクス・戦艦ゼウスが墜ちた後、思念体のジョミーとキース

 キースは思念体のジョミーの問に答える。
「全ての混沌を終わらせようとしただけだ」
「終わらせる…?」
 その言葉はジョミーに衝撃を与えた。
「この先に向かうのにここは邪魔だ」
「それは…キース。どういう意味で言っているんだ…」
 ジョミーの思念体が揺らぐ。
 何かが大きなものが近づいている気がした。
「……」
 キースは何も言わないまま、ただ睨み続けていた。
「空が…とても重い…」
 ジョミーの心の中で何かが鳴っていた。
「何かが…起きる」

 そうか、僕はここで間違えたんだ。
 僕は精神ではなく、キースの許へは僕が行かなければならなかったんだ。

 ジョミー本体が再び光り始める。
 ニュクスの薄く淡い緑の空の向こうにチカチカと光る船団が見える。
 ジョミーは空を跳んで、マザーシステムの境界を抜け、プロメテウスへと向かった。
 その時、ニュクス全土で警報が鳴った。
 上空にいた戦艦が星に向かって降下を開始していた。
「降下?まさか!」
 マザーのシステムが書き換えられた?そんな事が出来る筈が無い。

 キース。僕はあれを止める。そして…世界を取り戻す。
 時間が戻った。
「…さようなら。ソルジャー・ブルー」
 ジョミーの瞳から零れた涙が宇宙へと消えていった。
 
 ソルジャーズのブルー。
 僕を殺しに来い。
 でなければ、僕が世界をもらうぞ。

 プロメテウスが降下を始めていた。
「降りてはならない!」
 ジョミーはプロメテウスへと乗り込み、全員に思念波を送った。
 それは艦全体を包み込み、他の船へと広がっていった。
 プロメテウスはマザーシステムのラインのぎりぎりで停船した。
 ニュクス地表から飛び立った戦艦ゼウスの主砲が撃たれる。
 その攻撃はプロメテウスの迎撃システムに阻まれ撃沈には至らなかった。
 
「すべての戦闘行為を今すぐにやめるんだ!」
 シドの声が響いた。
「キース・アニアン。貴方は評議会議長から降ろされた。もう貴方には船団を、そのゼウス一隻すら動かす力はありません」
 セルジュの声だった。
「全艦に告ぐ。僕は、ミュウの長。ソルジャー・トォニィ。本日、議員全員から承認され評議会議長に就任した。それに従い、今、この場のこの空域での全ての権限を僕が預かる。戦艦ゼウスのキース。投降しろ。そして、この無駄な闘いを今すぐに止めろ」
 その声と共に、ニュクス上空に大きな白い船体が現れた。
 それはミュウの母船・シャングリラだった。
 その背後に三隻の船を従えていた。
 一隻はミュウの船、エラ。もう一隻は人類のアルビオン。そして、セドルの船、セレストだった。
 この三隻以外にも軍の高速戦艦が続々と現れ、空域の戦艦は全て包囲された。

 ベルーガ2はシャングリラに収容された。
 プロメテウスからジョミーがミュウの救護用ポッドで移送されてきた。
「ジョミー」
 トォニィに付き添われながらジョミーはシャングリラのあまり使っていなかった自分の部屋へと入る。
「トォニィ。ごめんね。僕は君にとても重い物を背負わせてしまった」
「ミュウとして、人類の中枢に立つことは僕もいつかはそうなると思ってた…だけど、遅いくらいでしょ?」
「君が思う時で叶えてあげたかった」
「ダメですよ。それじゃ、僕はいつまでもぐずぐずしてしまう」
 と笑った。
「それでもさ…君には時間を大切にしてゆっくりと生きていって欲しいんだ」
「ジョミー。時間を戻したね」
「ああ、戻したよ。君には言ってあったね。僕が人類の敵になるって言うのが始まりだと…あの時、君は僕を止めに来た」
「間に合わなかったけど…プロメテウスが沈み。人類の混沌が始まる。僕はそれでもよかった。キースがマザー信奉者を殺すのなんて見逃しても良かったのに。あいつらは邪魔だ」
「それをしたら、それを許してしまったら…。僕らミュウが地球へたどり着いた意味が無くなってしまう。僕は、君にもキースにもブルーにも、もう誰にも人を殺してほしくなかった。それでも…プロメテウスが沈むのだけを止めれればと思っていた。時間を戻すまでしなくてもって。でも、プロメテウスが沈んだ時に視えたんだ。その先の未来が、君とキースの死が見えたんだ」
「僕は死んだりしないよ」
「ブルーが相手でもそう言い切れる?」
「……」
「君もキースも失えないんだ。僕はそれを許さない。未来を変えてでも守ってみせる。そう思ったんだ」
「ジョミー。何も変わらないかもしれないのに?」
「希望はある。時間を止めた先でソルジャー・ブルーに会った」
「希望?時間を止めた先?」
「君は僕に願ってくれたよね?このままではいけないと」
「だって。そうだろ?タイプブルーの力を全部使ってしまうんだ。ジョミーがジョミーでなくなるのに、それを誰も知らないでいかせるなんて、おかしいと思ったから…だから、キースには見せたいと思ったんだ」
「キースには会えたよ。時間はかかっちゃったけどね。彼の身に何が起きていたのかもわかった。あの場所で話せて良かったと思っているよ。ありがとう。トォニィ」
「こんな事になったのを…僕は許してないよ。ブルーも貴方もね…」
「僕がした事を君が許さなくていいんだ。僕が間違ったら怒ってくれればいい。でも、ブルーは僕が止めなきゃいけない。そして許してもらわないといけない。それと、許さなきゃならない。希望はあると思う。ソルジャー・ブルーはあの空間を君と彼ともう一人のブルーが作ったと言った。ブルーはまだどこかで僕らを見ている」
「それで、こうして試していると?ジョミーの力を全部使わせてまで?」
「僕が時間を戻すなんて想像していなかったかもしれないね。僕はわずかに残ったタイプブルーの力を温存していた。その為にタイプオレンジの力を使っていた。そんなとても変な状態だったんだ。いつまでも昔の事を引きずっていてさ、これで良かったんだよ。僕はあの力にしがみついて先に進もうとしていなかったんだ」
「ジョミーが進んでいないって言うのなら、僕らミュウは後戻りしているってなるよ」
「…そうかな?」
「そう。絶対。そうだよ」
「でも、僕はとても卑怯な事をしたんだ」
「敵前逃亡?」
「そうだね」
「勝算が無い闘いなんて慣れていたんじゃなかった?」
「最近は一人勝ちだったからね。そんな感覚、忘れちゃったよ」
「僕のが強いよ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「あー、そうだったね」
「酷いなぁ。ああ、もうどっちでもいいや」
 と、二人は笑った。
 そんな二人を包むようにパキパキと淡い水色の氷が広がってゆく。それは「月の墓標」と似ていたが、いまのそれはとても薄く、淡い。
「トォニィ。後を頼むね。僕は暫く眠る…」
「ねえ、ジョミー。あまり長く寝てると僕が(ソルジャーズの)ブルーを殺しちゃいますよ」
 冗談めかして言っているがその言葉は本気だった。
「大丈夫だよ。この船がメサイアに戻る時には目が覚める。待っていて」
「ジョミーの大丈夫はあてにならないよ。いつも嘘ばっかりだから…」
「じゃあ、約束するよ…僕はトォニィを愛している。だから、信じていて…」
「愛してるなんて言葉を安売りしちゃいけません。ジョミー」
 トォニィはフィシスの真似をした。
「あはは、わかったよ。でも、安売りじゃないからね。本当に感謝しているよ。トォニィ」
「わかりました。ジョミー。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。トォニィ」
 そして、ジョミーは静かに目を閉じた。
 トォニィは立ち上がり、ベッドから離れると彼を守るように氷が閉じていった。

 
 このキースが起こしたニュクスでの戦闘は波紋のように広がり、キースは英雄から犯罪者へと堕ちた。
 彼の身柄は人類軍の許で裁判にかけられる事となった。
 何者かの洗脳で起きた今回の事件で、ミュウの立場は悪くなったが、ニュクスのセドルがミュウの側に加わり、均衡は保たれた。
 衛星スメールでキースの洗脳と記憶障害を治す治療が開始された。





  続く






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