君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 終章 四話 「epilogue」

2012-04-29 01:07:12 | 『君がいる幸せ』本編終章 「epilogue」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。

   『君がいる幸せ』 終章 epilogue 四話「epilogue」

  惑星ノア
 僕が戻ってから四ヶ月が過ぎた。
 僕の部屋に医師が常駐する事がなくなって、まだ満足に歩けなかったが、この官邸内なら一人で歩いていいとの許可がやっと出た頃…。
 キースの部屋にバスタブの浴室があるのに気が付いた僕は、キースが側で見張っているという条件で入浴していた。
 それで、注意してはいたものの思っていたより早く、ほんの数分でのぼせてしまった。
 気が付くとキースの部屋のベッドの上だった。
 髪は濡れていたが、身体は濡れてなくて、ガウンを着ていた。
 今日はここにはキースしかいないので、彼が拭いてくれたのだろうと思いながら、ベッドの下へ移動して、半分這って僕は暖炉の前に寝転んだ。
「もうすぐ、五ヶ月になるのに…」
 僕は戻って一ヶ月の頃に、セルジュのすすめでクローンとしての様々な検査を受けた。
 正直言って、受けたくなかったのだけど、結果はソルジャースと同じように正常だった。
 その結果にほっとした。
 だけど、僕は僕の寿命が短いのだろうと思っていた。
 僕が作ったクローンは一ヶ月だった…。
 でも、あの子は元気だった。
 今の僕とどう違うのだろう。
 DNA細胞の年齢?
 あの時は十四歳だった。
 僕の実年齢は四十歳になる。
 でも、ミュウなら、寿命は長いはずだ。
 だが…、カナリア達は三年早く生まれ変わった。
 それは僕にもいえるのだろうな…。
 せめて、人と同じくらいまでは、生きていたい。
「ジョミー?」
 ベッドの上にいない僕をキースが探している。
「ここ、暖炉の前」
 と答えて手を振った。
 キースは僕の側に来ると、あぐらをかいて座り僕の身体を持ち上げ、僕の頭が彼の足の上に乗るようにして、タオルで乾かし始めた。
 そして「だから、まだバスタブは無理だったろ」と言った。
 そう、僕はやっと一人でシャワーが使えるようになった所だった。
「浸かるだけしかしてない…」
「心拍が上がったんだろうな…」
「……」
 やはり、僕は蘇生が苦手だから、不完全にしか…ならなかったのか…。
 まだそれはわからなかった。
 しばらくは人工暖炉のあげる音だけだった。
「お前、暖炉が好きだな」キースが言った。
「…シャングリラには無かったけど、ナスカではいろいろやってたから、窯があったんだ。それで、暖炉も作ってよく皆で集まっていたよ。だから暖炉は好きだな」
「…そうか」
 ナスカの事を懐かしそうに話すジョミーを見て、やっと、本当に彼はあれを過去と思えるようになってきたのだな。とキースは思った。
 髪は乾いたが、キースはそのまま僕の髪を触っていた。
「髪や目の色はまだ変えられるのか?」
 と聞いた。
「もう変えれない。あれは見えなくなったのを力で補っていた副作用のようなものだったから…」
「その所為じゃないのか?」
「…何が?」
「お前は、目とか耳とかだけじゃなくて、全身に強い力の負担がかかっていた。それを、力で無意識に補って動いていたんじゃないか?俺もイグドラシルの後は怪我の所為だけじゃ無くて体力も無くなった。それで、一年以上療養したが、お前あの頃は何ともなかったろ」
「んー、…そうだとしたら、この恐ろしく戻らない体力もうなずけるね。ミュウが力に頼り過ぎてるって言ってた自分がそうだったなんて…情けないな」
「お前は…」
「何?」
「お前は、まだ、力は使えるのか?」
「……」
 それは、皆が僕に一番聞きたかった疑問だ。
 彼らは誰も聞いてこないだけでなく、思念も送ってこなかった。
「使えるだろう?」
「…今更、嘘を付く必要はもう無いか…」
「使えるんだな?」
「使えるよ。まだ全然弱いし、思い通りに出来ないけどね。だから、僕はこのまま使わないようにした方がいいと思っている」
「それは、そうしない方がいい」
「どうして?」
「人であり、ミュウであるのがお前だろ?」
 僕は彼の顔を見上げる。
「もう人でなく、ミュウでもないんだよ。僕は」
「なら、その先に行けばいい」
「何それ…?」
「人でもあり、ミュウでもあり、それ以上の何か」
「それが未来の形なの?」
「さぁ…」とキースが笑う。
「キース。そんな曖昧な僕にまたジュピターの資格を与えようとしているね」
「地球再生のお礼だ。ジュピターの資格だけじゃ全然足りないがな。必要なら今のお前に扱えるシャトルも用意する。受け取ってくれ」
「この時代じゃまだ地球は赤いのに?再生なんてそんな事は出来る訳がないんだから、僕の夢物語かもしれないのに?」
「…夢物語にしたかったのはお前だろ。あんなに、悩み苦しんでいたんだ。嘘のはずが無い。地球は再生されたと俺は信じている」
「キース…。だけど、僕がその資格をもらっても、ここから出る事も出来ないんだよ」
「それでもいいんだ。俺にはお前に渡せる物がそれくらいしかない。それにお前は、ここから出られないままでいる気は無いだろう」
「…わかったよ。キース。僕はそのエサに飛びつくとしよう。元気になるよ」
 と、彼を見返し笑った。
 キースは、あまり無理しないようにな。と言った。
 そして、
「もう少し動けるようになったら、アタラクシアに行かないか?」
 と言った。
「え?」
「時間はかかるが戦艦じゃなくて、客船で行こう」
「……でも」

「会いたいだろう?」
「…見た事はあるよ。前に一度行ったから…」
「今はアタラクシアに居ないらしいが、会いたいなら呼べばいい」
「今の僕をどう紹介するの?」
「お前が消えた時、スゥエナがトォニィに話したらしい」
「そうか…、僕は罪な事をしているのかな?」
「俺はそうは思わない」
「…ありがとう」
「……」
「アタラクシアに行ったら、ブルー達に会いに行きたい」
「教育ステーションに行くのか?」
「うん」
「会えるようにしておこう」
「親としては見ておきたい」
「……」
「キース?」
「…お前、もしかして、入りたいと思ってる?」
「…ずい分、読むの上手くなったね…」
「顔に書いてある…この身体なら入れるんじゃないかって…」
 とキースは額に手をあてて、頭痛がする。と言った。
「その頭痛は気のせいだよ」
「お前のせいだろ…」
「でも、この状態じゃ…無理かな…」
「無理をしない事、異変があったらすぐに対処する事、身の安全を第一に考えて、よけいな問題に首を突っ込まない事、が守れるなら。考えてやる」
「!」
「…だから、早く元気になれ…」
「わかった。元気になる」

「ジョミー。俺はもう、俺の見えない所にお前を行かせる気は無い。だから、こうしてお前を助けていられるのが嬉しい。だけど、お前を俺に縛り付ける気は無い。お前はお前の力で、生きたいと思う心でここに戻って来た。だから、この先は、お前のしたいようにしろ。俺はずっとそれをお前に言ってきた。そして、俺はずっとお前を見ているから、安心して行ってこい」
「あは…」
 とジョミーが小さく笑った。
「何を笑う?」
「その言葉の終わりに、そして、いつでも嫌になったら戻ってこい。を付けたらと思って」
「なんだ?」
「だから、もうすっかりパパだね。しかも…花嫁のパパな…んだもん」
 と笑いだした。
「だまれ…それ以上言うと、襲うぞ」
「あっはは、ごめん、ごめん。僕は…本当は…さ、ものすごく…嬉しいんだ」
 そう言うと、ジョミーはキースの持っていたタオルを奪い顔を隠して泣き出した。
「ジョミー」
 キースが優しく僕の名を呼ぶ。
「もう、俺の前で、声を殺して泣くな」
「……っつ…」
「もうお前は泣いていいんだ」
「キース…。僕の「命」はミュウやマザーが作ったまやかしだった。それに生きろと言ってくれてたのが、ブルーだ。僕はその彼を利用したんだ」
「……そうか…」
「オリジンを「ブルー」にしたのは僕だ。僕がそう望んだ」
「……」
「だから…僕は…罪を…地球の再生は僕に与えられた使命だった。そこで僕は命の全てを使う事が決められていた…。僕は沢山の僕が嬉しそうに死んでゆくのを見ていなければいけなかった…止めれないんだ。何も出来ないんだ。僕の中には力があるのに。な…なにも…出来なかった」
 ジョミーは薄く淡く青く光り始める
「こんな力なんてあっても、僕は何も救えない。ブルーはそれを受け入れて前に進めと言うんだ。僕はそれを彼と約束したから…」
 パチッと暖炉の火がはじける音がした。
 それに共鳴するようにジョミーのオーラの色が鮮やかなオレンジに変わってゆく。
 キースは彼から暖かな陽の光りを感じた。

 陽の光は希望の光りだ。
 祝福の光り。
 やっと彼も生まれ変わる事が出来たんだな。とキースは思った。

「ジョミー」
 とキースが囁く。
「彼と約束した…だから、前だけを見るって…。でも…今だけは、今は泣きたいんだ」
「泣けばいい」
「僕らの運命は…この先はどうなってゆくのだろう…」
「それは…誰にもわからないさ…」
 そのまま、僕はキースに抱きついて泣いた。
 悲しくて泣いただけでもなく、
 嬉しいだけでもなかった。

 泣きながら僕が「キースも何かあったら泣いていいからね」 と言うと、
「俺はお前の所為でもう何度も泣かされている」と言った。
 その後、僕は泣き笑いになった。
 こんな時間が持てる事が幸せと言うのだろうな。と僕は思った。
 期限付きかもしれないけれど、僕達は前を見て生きてゆく。


 未来には何があるのか、そこに行ってみないとわからない。
 けれど、きっと悪くはないだろう。
 そう信じて進もう。










  二人の未来に幸多かれと願って。 『君がいる幸せ』 終
 






約1年の長い間、ありがとうございました。
ここに来て彼らが「素」で話すなんて考えてなかったのに…入れちゃいました。
楽しんでいただけたでしょうか?
終わってしまいましたが…彼らと別れたくないなぁ…。

☆ホワイトディで書いた「学園物」の構想があるので
まだしばらく書いてゆきます。
タイトルは変えますが、時間軸はここの続きになる予定。

★くじ引きCP・どこで・何をした。
のお題ショートを書き始めました。
「小説を読もう」にじファンと同時UPでいく予定です。
本編の転載が進まないとオリキャラが出せないので、
CPの幅が狭いですが…
(ジョミー、ブルー、キース、トォニィ、シド、セルジュ)かな。
メチャ振りなCPも出来るだろうと、
面白がって書いています。

次回は設定裏話と感想です。



『君がいる幸せ』 終章 epilogue 三話「君のもとへ」2

2012-04-25 21:14:37 | 『君がいる幸せ』本編終章 「epilogue」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。

  『君がいる幸せ』 終章 epilogue←(後書きとも言う) 三話「君のもとへ」2 
 ※ここではジョミーとキースが「素」で会話しています。
 ※BL風味でギャグ調です

「キース。「銀の祈り金の願い」は色々な謎を解明する為と、僕がブルーを看取る為に追加されたんだよ。ちなみに、タイトルの銀がブルーで、金が僕」
 とジョミーの声がした。
「俺達が別れても繋がっている。で終わった。のでは書けていない謎か?…」
 とキースがうなる。
「そう、普通の恋愛ものなら、「二人はいつかまた会える」ときて、戻ったのかな?で終わっても良いだろうけど、ここだと、僕が完全に生き返らないと、ハッピーエンドじゃないのでは?って理由なんだ。それと、本筋から少し外れた形で、出ていたブルーは最初っから、僕を殺させる気はなかったから…だから」
「うむ」
「僕を死なせてしまってから、陽炎や霊魂みたいなので僕が戻るのに彼は反対だったんだ。だから、彼自身も戻る事なく死んだままだった。僕がちゃんと戻るという方向で行くなら、という条件でブルーは、「心の世界」で魂だけじゃない形で再登場した。でも、そうなると今度は彼を書かないといけなくなった。ブルーは当初、イグドラシルでシロエを導く事。月での再会と別れの死体役。僕に人を愛してもいいと言う。だけの配役だった。彼の過去はさらっと流す程度だったのだけど…」
「だけど、キース、君がもたついているから、ペセトラで出て来た訳だ」
 とブルー。
「わっあ!」
 驚く二人。
「ブルー。ごめん。今は出てこなくていい!てか来ないで!」
「わかった」
 去ってゆくブルー。
「目の前で、かっさらわれた気が…する…」
「キース…落ち込むのもわかるけど、落ち込まないでくれるかな。僕はもうそれに慣れたよ。ともかく、彼が来た事で、僕を助けに来たと言う彼と対決する事になった。カード対決になったけど…(笑)それで、最終戦になるはずだったマザーとの対決が戦いとならずに会話で終わった。もし、マザーと戦っていたら僕は、また、イグドラシルと同じ事を繰り返していただろう。でも、あのマザーとの会話は和解をしたからじゃないんだ。僕らはどんな形であっても、マザーを憎んで壊す事を目的とする」
「……」
「だからさ。彼が来なかったら、皆とのちゃんとした再会も無かったんだ。あったとしても、皆の所に僕が戻りました。終。 だった可能性が高い。って聞いてる?」
「……」
「まだ気にしてるの?それじゃ、最大の謎にいくよ」
「?」
「僕が君を好きになった理由」
「それは、憎しみと愛だろ?」
「そこは、人類全体に対してだよ」
「なんなんだ?」
「さぁ」
「さぁって、きっかけくらいはわかるんじゃないか?」
「んーーーー、キースは?」
「やっぱり、シロエかな?」
「じゃあ、ブルーがキューピットじゃない?」
「!…そ、そうなるのか?…」
「でも、キース。ずっと言いたかったんだけど、それは結局さ。君がシロエを好きだから、僕に気が向いたってだけじゃないの?」
「あ、いや。シロエが言いそうも無い事を、お前が言ったからだ」
「それだって、彼を好きだった事に変わりないじゃん」
「お前って、過去にこだわる方じゃ無かったよな?」
「何その、逃げ口実。先にブルーにこだわったのはそっちじゃないか」
「……ごめん」
「だから、きっかけって、それくらいなんじゃない?話が合いそうで、変に作らなくていい相手を好きだ。と思ったってだけでさ」
「では、そう思えるようになったのはいつだ?」
「キースが僕に好きになってみないか?と言ってからかな?」
 それをきっかけって言うんじゃないのか?と思うキース。
 俺がこいつを思うようになったのは、彼がそれに気が付く二年も前になるのか?
 お互いにそう思っているんじゃないか?と思ったのは俺の勘違いだったのだろうか?
 俺の中にくすぶる気持ちに気付いたブルーは俺の前に現れた。
 俺がジョミーを気にしだしたのは、シロエの事だけではなくて、ノア事件の直後に、俺に抱いて欲しいと泣いて願ったあの時から…。
 こいつの中にある激情を垣間見た時から、側に居たらもっと色々なモノが見えるのではないかと思った。
 実際、色々見てきたな。
 そして、これからも色んな物を見てゆくのだろうな。と俺は思った。
 ジョミーの心の中にはきっとまだブルーがいるのだろう。
 それはもう当然の事なのだろう。
 彼と出会い彼と生きてきて、そして、俺と出会った。
 そうでなければ、「ジョミー」じゃないのだから…。
 俺の中には「マツカ」がいる。
 忘れてはいない。
 それはジョミーは気付いていると思う。
 だが何も言ってこない。
 俺がこれだけあいつの過去がああしたこうしたと言っているのにも関らずだ。
 それは、俺の思いと同じだろう。
 シロエやマツカと出会って生きてきた俺が「俺」なんだ。
 それをジョミーは認めているのだ。

 彼らミュウは長い年月、人類に迫害され、虐げられながら生き延びてきた。
 それでも、人としての誇りを失わなかったのは目指すものがあったからだ。
 「地球」があったから。
 虐げられていたから、その痛みを知るジョミーは、戦後、人類の上に立とうとしなかった。
 恐ろしいまでの力があるなら、「力」で治める事も考えただろう。
 それでも、その悔しさを加虐に変える事をしなかった。

 時間を止めて過去に戻すまでの力が彼にあっても、それを使う事はしない。
 未来を思うがままに出来る力を持っても、未来を予知する事が嫌いで使おうとしなかった。
 人を自在に操る力を持っても、それを使おうとしなかった。
「コントロール出来ないから使わない」だって?
 そんな事はある訳がない。
 それは口実に近い、俺はお前を何年見てると思っている?
 お前は優しいから使えないだけだろう。

 見えない未来を信じて、人を信じて、「会話」で人と人を繋ごうとする。
 それが、「ミュウの長、ジョミー・マーキス・シン」
 俺は彼の横にいて、その先を見据えて生きよう。
 そう…、あいつが「生きていられるまで生きる」と言ったその時まで…。
 そう…。
 ただ一つ、願う事があるとしたら、俺とあいつの時間が同じ時で終わる事を願う。


「しかし、最大の謎とは大げさだな」
 キースが言う。
「だって、君と僕が恋愛なんて、普通考えられない。でしょ?」
「そこまで言うのか。お前は…」
「僕からしたら、キースは好きだって言いながら、相手の関係ばかり気にする変なおじさんじゃないか」
「!変な…おじさ…ん…」
「実年齢は同じなんだ。同じならどんな過去があってもそんなの当たり前なのに」
「そ、それはそうだな…」
「いくら僕が愛に疎くて、関係を持続させようとしていなくても、いちいち何人と寝たなんて普通聞かないだろ?第一、男の俺に聞く質問じゃないし。ま、女性にそれを聞いたら即、振られてるだろうけど…」
「……」
「で、挙句に、どういう風にやった?だもん。呆れもする」
「いや、それは…だな。俺が…」
「俺が?何?」
「俺に…自信がなかっただけだ…」
「自信?何の?」
「だから…」
 あれ?もしかして、キースって…。
「だから…俺は知りたかっただけだ。俺は…お前を……満足させる…自信が無かったんだ」
 あれれ?
 あんな風にあっさり「好きになれ」なんて言うから、僕は、てっきり彼はそういう経験があるものだと、勘違いして、疑いもしなかった。
「キースって、男と寝たのって僕が初めて?」
 僕は思わず言葉を作らず聞いていた。
「…ああ、そうだ」
 彼がちょっと間を開けて返事をしてきたので、僕は僕の質問を自分で考える時間が出来てしまった。
 僕を女性を扱うように抱いているなと思った事はある。
 でも、する事が根本的に違うから、ある程度の知識がないと上手くはいかない。
 僕の初めてはブルーだった、
 彼は完璧にリードをしてくれた。
 僕が初めてキースに抱かれた時に、ああして、こうしてと言葉はかけなかった。
 あの時は…、僕はクローンのブルーに会うのが怖くて、本当にメギドを止め切れるのかと不安だった。
 たとえ死んでもかまわないと言いながら死ぬのが怖くて。
 あの時は…、本当に感情だけが先にいったから…。
 彼の中に逃げるように、
 無我夢中で求めるような行為を僕はしてたんだ。
 あれが、彼を好きだ。って事だったんだ。
 そして、彼は僕を満足させるために抱いた。
 もっと愛して欲しいと僕は言ったんだ。
 あのキスマークはその証だった。
 そこまで考えたら、急に彼が可愛く見えてきた。
 だって、そうじゃないか、僕に興味があったとしても、
「好き」=「愛する」とはならない。
 好きは好き止まりだ。
 僕はメティスを離れる前にトォニィを抱いた。
 いや、抱かれたか…。
 あれは彼の子供時代への決別だった。
 愛していたが、それだけだ。
 キースは「好きになれ」=「愛すればいい」だった。

 なんだ…、僕の思いはちゃんと、キースに伝わっていたんじゃないか。
  とブルーは思った。

 そして僕はからかってみたくなった。
「そうだったんだ。知らなかった…。いいね。キース好きだよ。僕も」
「何を急に…」
「だけど、キース、今はこんな子供になっちゃってさ。これでHなんてしたら、犯罪だよね。だいたい、これじゃ、したいって思わないだろ?」
「え、あぁそうだな」
「…もしかしたら、こんなんでも良いと思ったの?」
「違う。今はお前が戻った事しか頭にない」
「じゃあ、僕が元気になったら、これでもいいの?」
「そうは言ってないだろう…」
「やっぱり変態だったんだ…」
「お、お前な。今さっき、俺の事を好きだと言った口でなんて事言うんだ」
「そっか、口でなら…出来るかな」
「!お前なぁ…」
「だって、キースの大きいから無理。挿れれない」
「……お前、オーラって言うか、性格も変わってないか?」
「本々の性格に戻ったんだって」
「…そうなのか?…」
「キース、少し待っててね。もう少し成長したら、僕のヴァージンあげるから」
「え、ええ?」
「僕は僕を1から作り直して戻ったんだよ。だから、イグドラシルでの傷も何も無い。まだ何も知らないんだよ」

 まぁ、記憶はあるけどね。
 そう、辛い記憶も、いつかは彼方へと流れてゆくだろう。
 人は忘れてゆく事で、先に進む事が出来るのだから。




  終章 「epilogue」そして、「未来」へ







『君がいる幸せ』 終章 epilogue  二話「君のもとへ」1

2012-04-22 00:40:09 | 『君がいる幸せ』本編終章 「epilogue」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。

  『君がいる幸せ』 終章 epilogue←(後書きとも言う) 二話「君のもとへ」1 
 ※ここではジョミーとキースが「素」で会話しています。

「あのさ、前回の僕の長い語りで終わった方が良いと思うのだけれど…。もう疲れたし、体力ないんだから…」
 ジョミーが言う。
「俺も、このまま俺が出なくても良いと思う」
 キースも言う。
(…と言う二人を無理やり語らせてみた。)
「と言う事で…何か言う事ある?」
 と、ジョミー。
「あるにはあるが、お前がずっとここに居るのなら急ぐ事はないと思っている」
「だよね」
 んじゃ、僕寝るから、とジョミーは寝てしまった。
(…じゃあ、一人語りしてもらえるキース。)

「それじゃ少し。そもそも、この小説はキースとジョミーの恋愛を軸にして。と聞いていた。最終回は「地球再生」へ向かったジョミーを俺が見送り、どんなに離れても二人は繋がっている。というくだりで終わる。と俺は聞いていたんだがな。つまり、追憶の破片十話あたりで終わるはずだったと」

 ・ラストの構想・原案↓↓
 地球の為にミュウが生まれたのなら
 僕はここで

 地球を再び氷河期にして
 浄化し
 火山を起こし
 大気を作り
 大地を作る
 海を作り
 生命を作る

 そして再び
 命を育む場所にしてゆく

 かけがいのない地球

 その再生
 その歯車になる
 人外のこの力は
 人に持たせるには余りあり過ぎて
 僕自身も持て余していたから
 ブルーが月に埋葬された(いる)なら
 僕は地球へ 

キース 「お前はだから危なっかしいと言っただろう」

ジョミー「僕の望みはかなった」

キース 「地球へ来る事がお前達の望みだったのは十分承知している。
     地球を青く戻したいのもお前達やブルー
     俺達人間の望みなのも承知の上だ
     俺はソレを聞いているんじゃない」

ジョミー「ブルーの為にも地球を青くする事だけで、
     他には僕にしたいことはない」

キース 「成人検査でブルーに助けられたのじゃないだろう。
     お前は自分の意思で記憶を手離さなかった。
     ブルーが居なくなってしまうのを拒んだ。
     強い仲間を望みトォニィ達がうまれミュウを地球まで導いた」

ジョミー「追ってきた夢が大きすぎてそれが叶った瞬間
     僕は全てを失った」

キース 「お前は何がしたい?」

ジョミー「生きる意味も
     生きてきた証も
     生まれてきた意味さえも
     あのまま何もかも
     なくしても
     僕自身さえ無くしても
     絶対後悔しない自信はあった
     それくらい生きてきたから」

キース 「お前は貪欲だ。
     俺は知っている
     どこまでも欲しがる。
     お前は人間だからな貪欲なんだ」

ジョミー「でも僕は生き残ってしまった。
     生き残ったから抜け殻になった。
     でも生きてきた
     抜け殻になった僕に居場所をくれたのは君だった」

キース 「実験体はどこか淡白なんだ。
     望みが人間のように複雑じゃないしあまり変化もしない。
     手に入れれなくても後悔しないように
     どこかに何かを捨ててきたように生きている」

ジョミー「ミュウであり人であり
     ミュウでもなく人でもなくなった
     そんな僕に君はここに居ろと言ったんだ」

キース 「人間は違うだろう
     貪欲にそれを望み欲する
     そうだろう?
     どこまでも尽きない
     どこまでも知ろうとする
     どこまでも行こうとする
     そうだろう?」

ジョミー「僕のこの恐ろしいまでの力を知っても
     なおそう言ってくれたんだ」

キース 「お前はミュウになって
     ソレをかなえれるだけの力を手に入れて
     そしてミュウの希望を叶えたら
     何もなくなってしまった
     だから
     次の夢
     地球の再建を自分の夢だと思った」

ジョミー「いつも
     どこかに行きそうだと心配してくれた
     いつでも逝ける様にと
     いつどこで
     地球に呼ばれる日が来るかわからないから」

キース 「それはミュウや人類全ての望みで
     お前だけが叶える夢じゃない。
     お前達をグランドマザーが用意した
     地球の為の歯車だったとしても
     SD体制崩壊後 
     人は自我に目覚めて
     「生き」始めている
     それはお前達ミュウが成した事だもうそれでいいんじゃないのか?」

ジョミー「いつでも後悔しないようにと
     やってきたけど
     僕は不器用でどうしょうもないから
     よく叱られたっけ
     それすらもすごく嬉しくて
     僕を見ててくれるのが嬉しくて」

キース 「だから、お前は危なっかしいと言ったんだ」

ジョミー「僕が生きてきた証を
     僕の事を君が覚えていてくれれば」

キース 「もう二度と」

ジョミー「僕は「人」だと君は言ったね。
     そう、人だから我儘で貪欲
     これで満足なんてしていないけど
     今は
     それで
     いい
     僕の真実(本当)を
     君が知っていてくれる
     着飾った僕でなく
     作った僕でなく
     何も出来ない小さな僕を
     君が知っていてくれれば
     今は
     それで
     いい」

キース 「俺は失いたくない」

ジョミー「泣かないでいくと決めたのに」

キース 「戻ってこい」

ジョミー「戻れない」

キース 「俺がずっとその手綱を引いててやるから
     何度斬って逃げようとも
     何度でもお前を探し
     また握っててやるから」

ジョミー「怖いんだ。
     本当はとても
     死ぬ事はもう超えてきてると
     思っていたのに
     すごく
     嫌なんだ
     逝くのが
     まだ側にいたいんだ
     まだ愛していたいんだ
     皆を
     君を」

キース 「俺は人間になった
     この思いだけは
     貪欲になってやる」

ジョミー「僕は欲張りで
     我儘だから
     どこまでもいつまでも
     まだ満足していないんだ
     まだなんだよ
     でも
     それでも
     泣かないでいくから
     見ていて そこで」

キース 「たとえ何年かかっても
     そこから
     俺の元へ」

ジョミー「側に居たい
     いつまでも」

キース 「ここに居て欲しい
     ずっと」

ジョミー「この心だけでも
     君と共に
     ずっと」

キース 「待っている」
 
ジョミー「待っていてくれる」


「と二人が違う場所に居て、会話はしていないのにしてるように流れてゆく。これが当初のラストシーンだったはずだ」
 とキース。
「それなのに…」

・回想ー追憶の破片12より
「最低で…最悪だ…」
 ジョミーが向かった先にブルーが居るのなら、ブルーは俺にジョミーを託すと言ったが、今度は、俺がお前に託す。
「あいつはまだ何も…何も掴んでいないんだ」

「って何で俺が「最低で最悪」にならないといけない?」
 しかも、ブルーが出たら、あいつはもうブルーしか見ていないじゃないか!と、言いたい。と、愚痴るキースだった。



長くなったので2つにしました。
  終章 epilogue「君のもとへ」2へつづく




『君がいる幸せ』 終章 epilogue 一話「皆のもとへ」

2012-04-18 01:46:26 | 『君がいる幸せ』本編終章 「epilogue」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
☆あらすじ☆
一章「黄昏の海」
地球へ辿り着いたミュウ。人類との会見後グランドマザーの許に降りたジョミーとキースは、マザーの策略で殺されそうになる。ジョミーの最後の力でイグドラシルから地上に戻った二人。
大戦から二年。ミュウは新たな移住惑星に移り住む事となった。その旅立ちを見送ったジョミーはキースと共に「月」へと向かった。そこにはソルジャー・ブルーの身体が保管されていた。
その事実をジョミーは何故かミュウ達に明かせずにいた。
二章「湖底の城」
木星でキースの警護をして暮らすジョミーに「カナリア」の少年が会いに来た。彼らには渡航出来るIDは無い。事の不審さにジョミーとキースはある計画を練った。だがそれは思いも寄らない展開へと進んだ。事件解決後、ジョミーはメティスを出てスメールへ渡る事となった。
三章「星の祈り」
トォニィの結婚式の為、ミュウの移住先の惑星メサイアへと向かうジョミーとフィシス。過去にこの空域にジョミーは辛い思い出があった。木星のメティスを出て二年振りに会ったキースにジョミーが告げた言葉とは…。キースは再び権力の道へと登り始じめる。やがて、姿を現す敵と最後のメギド。その標的は惑星メサイアと首都星ノアだった。
四章「心のままに」
四年前、ジョミーがジュピターだった頃、軍事惑星ペセトラの地下にまだ残っていたマザーの端末に呼ばれたジョミーはその攻撃で倒れてしまった。そこに現れた白い思念のブルー。キースとの邂逅でブルーは彼に「時が溶ける」と警告をした。
同じ四年前。ジョミーはミュウの少年ヴィーと出会った。四年後、成長した彼はキース付きのミュウ部隊へと配属された。彼がキースに語った過去の傷害事件にショックを受けたキースはジョミーを呼び出した。そして、ジョミーはキースに今まで隠していた事実を明かした。
※最終章に向かって、心残りの無いようにとあれこれと詰め込んでいます。
暴力が嫌いな方はその回(パスワード入室の隠部屋)を飛ばして下さい。パスしても繋がります。
五章「時の在り処」
メサイアからの帰路。トォニィとセルジュに拉致されてジョミー。話し合いの末、スメールへ戻ったジョミーだったが、残された時間は思ったより少なく倒れてしまう。なんとか意識の回復をさせたいと必死に謎を追うトォニィ。
ブルーの死から探り始めた事実。各星に散らばった欠片を集め、地球のマザーの許へと降りければならなかった本当の訳とその宿命と運命。倒れたジョミーの意識が向かった先にはソルジャーブルーの想いの塊が待っていた。彼は生きていてと願っていた。


   『君がいる幸せ』 終章 epilogue 一話「皆のもとへ」

 その日、惑星ノアのキース・アニアン首相官邸は大変な事になった。
 その上空にミュウの母船シャングリラが浮かび、前庭にはミュウの前長、ジョミーのシャトル・ベルーガがあった。
 シャングリラの横には、実習戦艦アルビオンと戦艦ゼル、戦艦エンディミオンが停まっていた。
 トォニィを始めとしてフィシス、シド、クローンのブルー、そして同じくジョミー。
 セルジュとヴィーとスウェナが集まって来ていた。
 ジョミーの体力が戻っていない為、会うのはフィシス、トォニィ、そして、ジョミー本人の希望でクローンのブルーの三人と会う事になった。
 隣の部屋に医師を待機させた状態で、人類用の医療装置に囲まれ、ベッドを少しリクライニングさせてそこに寝たままのジョミーと彼らは会う事となった。
 ミュウの医師団の診察をジョミーが断っている所為もあるが、ここまで仰々しい状態にミュウはならない。だから、一番に聞きたい事は皆一つだったが、それを、誰も口に出さなかった。
 今はただ、彼がここに戻ってきた事を、それだけを喜んでいた。

 フィシスはジョミーを見ると「オーラが変わりましたね」 と言った。
 それを聞いて、優しく微笑んでいるジョミー。
「これが本当のあなたなのかもしれませんね…」
「命やら肉体やらの枠組みから外れてしまってから、やっと気付くなんて遅すぎるよね」
「いいえ。いいえ、ジョミー。あなたは本当のあなたをを取り戻したのですよ。きっと」
 フィシスが笑った。
「君には僕やブルーの秘密を色々黙っていてもらって、その所為で色々と辛い思いをずっとさせてしまった。本当に申し訳ないと思っている」
「ジョミー、それは私が勝手に気付いてしまうだけで、貴方達はそれを知るのを許してくれただけなのです。貴方達の辛さを少しでもわかっていた事は、私にとっては喜びでもあったのです。それがあったから私はここまで、そう、ここまで生きてこられたのです」
「君は強いね」
「いいえ。そうではありません…。それはジョミー。それはきっと、私の願いです。貴方達を見続ける事が私の使命だったのです」
「ありがとう。フィシス」

 トォニィはジョミーを見ると、まず「なんで、僕より小さくなってんだよ」 と言った。
 それから、「でも、戻ってきてくれてよかった」と泣き出した。
 彼が泣き止むまで、ずっと彼を見て微笑んでいるジョミー。
 やがて泣き止んだトォニィは、はにかみながら「おかえりなさい」と言った。
「ただいま。でも、初めましてになるのかもしれないね」
 ジョミーが答える。
「?」
「僕は僕を作り直したから、クローンみたいな物なんだ」
「肉体を再生したの?」
「うん」
「だから、若返った?」
「そうだよ」
「ミュウの力が若返りの力だって言ってたら、もっと、ずっと早くに受け入れられたかもしれないね」
 トォニィが笑う。
「そうかもね」
 ジョミーも笑った。
「それでさ、ジョミー。地球はどうなったの」
「無事に再生できたよ。青い地球になった」
「でも、それが出来たって事は、どうしてここに戻って来れたの?」
「それは、僕が完全に消滅する事を阻止する為にブルーが何年も前に罠をはっていてくれたから…。それともう一つ」
「もう一つ?」
「クローンのブルーが僕にカナリア事件で攻撃したからなんだ」
「クローンのブルーの精神攻撃?」
「ソルジャー・ブルーは僕がマザーに会うと全ての力を抜き取られて、死ぬ事がわかっていた。だから、その前に僕の封印を解除して逃げれるようにしたんだ。だけど、彼が現れたその時にはもう僕は力を取られていて、地球は再生のルートにのった。でも、それは僕の全てじゃなかったんだ…」
「ジョミー、それは、ジョミーは二つになっていたから?」
「うん。そう。正確には僕はあの時、十か二十に等分されていたんだ。その内の九十%以上がマザーに殺されて、地球へ落ちた。残りは逃げた。だから、僕はクローンのブルーに救われた」
「そうなる事はわかっていた?」
「いや、全く思っていなかったよ。マザーに会ったらどうなるのかわからなかった。完全に死ぬと思っていたよ。だけど、望みは捨ててなかった」
「死んでも戻ってくるって?」
「自分が思いを馳せる人達を残して僕はまだ逝けないよ」
「でも、さよならって聞こえたのに…」
「違うよ。あれは、ありがとうだよ…。心配をかけて、ごめん。僕は君に全てを話して行かないといけなかった。君はもう小さな子供ではないのだから。ごめんね」

 ソルジャーズのブルーは僕を見ると「ごめんなさい」と言った。
 それは彼がスメールで倒れた僕の身体の時間を止めた事だった。
「自分が何をしたのかすらわからなかった…。だけど、どこかに行ってしまうのを止めたくて…」
「君が止めてくれたから、彼に、ブルーに会えた」
 僕は笑った。
「ありがとう。ブルー」
「……」
 彼はそこで泣き出した。
 僕の居ない一年の間にカナリアの交代があったのだと言う。
 それは予定より早かった。
 ブルーが精神攻撃をした事で時間にズレが起きたのだろう、
 彼は、順に死んでゆくカナリア達を看取った。
 命の重さを彼は知る事が出来たのだろうと僕は思った。
 泣きながら話すブルーを僕は優しく抱きしめた。
「君の子供時代にもう少し一緒にいてあげたかった…だけど、大きくなったね。君の何かは見出せたかな?」
「うん」
「そうか、なら君はもう大丈夫だ」


「皆のもとへ」
 僕は、ただその思いだけで戻った。
 今まで、いろいろと無茶な事を言ったりしたりしてきたけど、自分で起き上がる事も出来ない程の事はなかった。
 三ヶ月以上、歩く事すらままならないなんて…。
 そのあまりの体力の無さに、戻ってから死ぬかと思ったくらいだった。
 トォニィに目は見えるの?と聞かれた。そして、どうしてそこまで人を憎まないの?とも聞かれた。
「君がもし僕のような目にあっていたら、僕はノアを壊していたかもしれないね。僕はね。そう、とても浅はかなんだ。だから、戦争という大儀で人を殺しているけど、その大儀が無くて、僕自身が殺したいと思った時、その時は、多分人類は跡形も無くなってしまっていただろう。それくらいの力を僕は持ってしまっていたんだ」
 僕が十四歳の時の、惑星キロンでの虐殺行為、あれは僕が殺そうとしてやった事だ。
 僕はあれで、自分の中の恐ろしい狂気を知った。
 ブルーは、僕の憎しみの対に愛があると言ったけど、
 狂気を押さえ込む方法が愛だっただけだ。
 憎しみと愛情とが混在する存在。
 僕がそんな風に愛しているのは、ただ一人。
 キース・アニアン。
 ペセトラで会ったという二人。
 ブルーはキースに「道標」になれと言ったという。
 それは、なっていたのかもしれない。
 僕は宇宙の中で、「ただ一つの場所」に戻った。
 ブルーは僕の生きてゆく目的を彼の中に見出せと言いたかったのだろうか?

 人が生きてゆくには何かがないといけない。
 ただ無駄に生きる事を浪費してはいけない。
 それは人というある種、選ばれて生まれてきた「命」への冒とくとなってしまう。
 時には立ち止まって休んでもいい。
 悩み嘆く時もあるだろう。
 何もないと見失う時もある。
 それでも、命がある間は、人は生きなければならない。
 そして人は、
 生まれてきた自分の価値を自分でしか評価できない。

 自分を落とすのも、押し上げるのも自分だ。
 落ちたいなら落ちて、また這い上がればいい。
 血の涙を流しながらでも上がってくればいい。
 上りたいなら上ればいい。
 その上に何があるのかが見えなくても。
 たとえ何もなくても…。
 上がってきた事が得たものと思えばいい。
 助けて欲しい時は、助けてと叫んでいい。
 苦しいなら苦しいと言っていい。
 人は一人ではない。
 たとえ側に居る人が受け入れてくれなくても、誰かがわかってくれる。
 それを探せばいい。
 違っていたら、また他を探せばいい。

 世界は広いんだ。
 必ずいる。
 きっと、見つかる。

 泣きたいなら泣けばいい。
 辛い、悲しいと泣いていい。
 そして、泣いたり怒ったり笑ったり出来る。
 そんな自分自身を受け入れてくれる人と出会えたら、そこから未来が始まってゆく。
 そこから先は、一人では無いのだから予測不可能な事もあるだろう。
  二人では困難な道だったら、仲間を作ればいい。
 人は一人ではないのだから…。

 世界でただ一人の存在、それが自分で。
 世界でただ一人ではないのが、人間だ。

 人ではないが、人を見続けた。ミュウの長の僕、

 ソルジャー・シンがそう言うのだ。
 信じて、損はない。


 ソルジャーという一人でしか背負えない物を背負わされた「オリジン」 ソルジャー・ブルー
 その志を継ぐものとして生み出され、生かされ続けてきた「僕」 ソルジャー・シン
 その二つの枷を外して生きるようにと願い託された。 ソルジャー・トォニィ
 僕らの生き様を見せ付けられ、人として生きる事を選んだ。  キース・アニアン

 僕は戻ってきた。「皆のもとへ」
 そして「君のもとへ」





 終章 epilogue「君のもとへ」へつづく





『君がいる幸せ』 五章「星の在り処」 十八話「銀の祈り 金の願い」

2012-04-14 14:27:17 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十八話「銀の祈り 金の願い」

「僕はもう二度と…貴方の手を離さない…もう見送ったりしない」
「ジョミー…」
 あの優しい声が消えてゆく、
 お願いです。ブルー。僕の思いのままに…抗わないで…。
 僕を信じて…。
 …その淡い光りは僕の中に溶け込んでゆく。
 優しい微笑みを浮かべたままブルーは消えていった。
「…ごめんなさい…また心配させてしまいましたね…」
 こうしないと貴方は完全に消えてしまう。
 心を体に戻さないと貴方の輪廻は適わない。
 ブルーが持っていた僕の最後のカードが風に舞い上がり僕の手に落ちる。
 これを貴方は僕に求め続け、僕はこれを受け取ろうとしなかった。
 ジョミーは、最後のカードをかえした。
「生きたいと願っていいですか?」
 その瞬間、ガラスのドームは粉々に砕け飛んだ。

 青い地球
 白い月

「月」へ向かって僕は飛んだ。
 ブルーの記憶の中にあった。
 あの古い施設、そこにグランド・マザーがいた。
「ジョミー・マーキス・シン」
「私をどうするつもりです」
 マザーはマザーイライザのようなフィシスのような女性の形をしていた。
「最後を看取りに…」
「そうですか」
「マザー、貴方の計画は遂行されました。ミュウになったブルーは僕を見つけ、僕は力を得てSD体制を壊し、人類は未来に向かって歩き出した。そして、僕は、貴女に殺された。僕は死に地球は青い星に戻りました。やがて、人類も戻ってくるでしょう…」
「なら、私はもう必要ありませんね」
「そうですね」
「さぁ、殺しなさい」
「…壊すの間違いでしょう?」
「どちらでも同じです」
「ですね。マザー。最後に教えていただけますか?僕はミュウのDNAだけで守られたとは思えないのです。貴女も僕を繋ぐようにしていましたね。それは何故なんです?」
「その答えは私にはわかりません」
「そうですか…。この答えは僕がそう思っていればいいくらいのものですね」
「そう、それでいいのです」
「貴女は何故フィシスの遺伝子を使ってキースを作ったのですか?」
「それも私にはわかりません」
「貴女も本当は賭けていたのかもしれないですね…。本当に人類はどうしようもなく愚かな事をしたけれど、それを変えてゆけるかもしれないと願っていた」
「そうかもしれません」
「人類に望みも希望も未来もあると思わないと、滅びを与えたくなってしまいますからね」
「ジョミー。希望はありますか?」
「それを貴女が?貴女が僕に聞くのですか?」
 ジョミーは少し笑ってしまった。
「ええ」
「そうですねぇ…」
「未来はありますか?」
「ありますよ」
「そうですか…」
 マザーは微笑んだ。
「この後はそうなってからでないと、僕もわからないですけどね」
 ジョミーも笑った。
「では、マザー僕はそろそろゆきます」
「どこへですか?」
「僕は、地球のあの山の頂きにブルーを連れて行かないと…。そうしないと、彼はオリジンのままだ。「ブルー」になれない。そして、僕らは貴女を壊して人類が目覚めの道に進む為の道標になれない」
「わかりました」
 僕は月基地の上空に飛んで、光りを集め、それをぶつけた。
 基地は消滅した。
 大きなクレーターだけが残った。
 僕の手の中の黒い塊が静かに消えていった。
 時間を遡るその前に、僕は「黄昏の海」へ向かった。
 ブルーが眠る青い氷
 その向こうに青い地球

「見えますか?青い地球ですよ」

「ブルー。貴方と会うのはもう少し先になりそうです。僕は、まだ生きようと思います。どこまで生きていられるかはわかりません。ですが、貴方が願ったように、それまではしっかりと強く生きて行こうと思います。この先、僕に何が出来るのか。何がしたいのかはまだわからないけれど…。今は、生き続けたいと思います。長かった僕たちの輪廻はこれで終わりです。今、貴方の心を身体に戻しますね」
 七十八枚のタロットカードが氷を囲む その端から順に青く燃えて消えてゆく。
 僕というモノを「生かし」「殺した」二つの命を僕は見送った。
 僕を縛り続けていた沢山の鎖を僕の意思に関わらず断ち切ったのがマザー。
 そうなる事でしか僕は生きたいと願えなかった。
 そう願う事すら罪だと思ってしまっていたから…。
 願いたくても願えなかった。
 それを知っていたブルーは僕の死の瞬間に罠を仕掛けた。
 自分を見て発動するように、命の本能に従うようにと…。
 諦めずに、生きあがけと。
 たとえ、辛くても生きろと生き続けろと。

 彼の言う「生きて」は「生きたいと願って」だった。
 そう祈り続けてくれたんだ。
 地球で会った僕を探し続け求め続け、皆を守って死んだ後も僕を守り続けて、その身体も心も記憶すらも塵と消える事をいとわなかったブルー。
 だけど、あの時彼が托した絆を、ただ一つ残った鎖を、僕は心の中で切ろうとしたんだ。
 それを切らせないように現れた。

「生きたいと願っていいですか?」
 最後に残った僕のカード。
 あれは、ブルーがずっと離さずに持っていてくれたものだ。
 僕は心の世界ですら何も知ろうとしなかった。
 カードという形で僕はみせつけられ、ずっと奥底に閉じ込めていたカードをやっと出す事が出来た。
 あんなに脆いくせに、どこまで頑な…なんだろうな僕は…。
 僕は本当は生きていたいと願っていた。
 貴方はそれを知っていた。
 最後の時にそう願うようにと祈っていた。
 僕は貴方に誓った。
 僕は、あの絆は絶対に離さない。
 そう、もう二度と離さない。

 ブルー。
 貴方にこの世界にある全ての感謝を、そして、永遠の安らぎを。
「これで、本当にさよならです。ブルー」
 ジョミーは微笑むと静かに目を閉じた。
 カードの最後の1枚が青く燃えて消えていった。

 僕は時空を飛んだ。
 一万年の旅は一瞬だった。
 過去のオリジンに地球を視せて、僕は現在に戻ってきた。
 僕が戻るには月で消えた僕の身体を再生しないといけなかった。
 思念体のままでは戻れない。
 時空を戻ってくるのに力を使い過ぎて、完全に再生は出来なかった。
 それでも、僕は戻りたかった。
 僕は鎖を手繰り寄せる。
「皆のもとへ戻るんだ。僕はそう願う」



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