君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

君と僕の行く未来 3

2012-05-30 02:28:23 | サイドストーリー「君と僕の行く未来」
☆本編の補足、トォニィ視点からのサイドストーリーです。
 時間軸は多分戻らずに事象、事件を追ってゆくと思います。


「君と僕の行く未来」 3



 大戦から約二年後

「彼らの謎を探ろう」
 と言ったセルジュはペセトラに戻って行った。

 ジョミーを連れてキースもペセトラやノアへ向かったので僕にはセルジュの報告を待つ日々になった。

 シャングリラで行こうかと思ったりもしたけど、今のシャングリラはミュウ達の家と化していた。

 もう一年以上この船は飛んでいない。
 飛ばす必要が無かったので船の修理も進んでいなかった。
 他の戦艦も同じような物だったが、あの三隻はジョミーが早々と修理をさせて、ノアとアタラクシアの仲間の元に向かっていた。

 飛ばせられない理由は終戦した事だけではなかった。
 今、このシャングリラには各星域からミュウが集まって来ていた。
 彼らは戦前戦中の成人検査でミュウと判断された者達、そして、ミュウ因子を持つと判断された者達だった。
 もう、ミュウと言っても人類は敵として見てはいけないと言われていたが、それでもそうレッテルを貼られてしまった者達はソルジャーの居るここを目指して集まって来ていた。


「ミュウ化した者だけを受け入れるしかない」

「その通りだ、この船は大きいけれど限度がある」

「ミュウ因子があってもそうならない者も多いんだ」

「では、ここに集まって来た者たちをどうするのか?」

「帰ってもらうしかない」


「戦後の混乱期にここまで来れたのも奇跡に近いんですよ」

「帰る場所の無い者もいます」

「それでも、我々にはそうしかできない」

「今までもミュウ化しない者は切り捨ててきたじゃないか」


 こんな議論が毎日だった。



「だから、僕達は船を降りるべきなんだ」


 ジョミーはそう言って反発された。

「ソルジャーの意見は無茶です。そんな事出来るはずもない」

「降りたら。殺されてしまいます」



 一年前の、幽閉されるきっかけになったジョミーの言葉はちょっと酷かった。


「ずっとここに居るつもりですか?僕達は人間を皆殺しするつもりでここまで来たのか?それとも、人間と共存するつもりで来たのか?どっちなんです?」


 この言葉は、戦中ずっと人間を殺してきた僕らにも辛い言葉だった。
 僕はジョミーが殺したくないと思いつつ戦っていたのを知っている。
 彼の最終的な目的は、ミュウと人間との理解と共存だ。

 だけど、いきなりは無理だった。
 殺しあっていたんだ。

 だって、僕らはタイプブルーだから…。
 戦うことしか出来ない。


「彼らはわかってはきているんだ。人間が僕らを全く理解せずに居たら、僕らはとっくに殺されている。戦争は終わったが、まだ問題が沢山残っている。これは僕らが始めた戦いだ。もう逃げ隠れは出来ないよ」

「それと、いつまで、僕を頼るのですか?人間が怖いなら怖いと言えばいいじゃないですか?何を気にしているんだ」


 そう、ミュウの皆だって、このままじゃいけない事はわかっている。
 だから、共生用の保護施設が出来た都市に行く者も居たし、積極的に人間と関り人間の中で暮らす者も出てきていた。

 それでも、暴力的な事件はかなり起きていた。

 人間がミュウを怖いと思うように、ミュウは人間が怖いんだ。
 やっぱり、僕らと人間は違うんだという意見まで出てきていた。


 惑星移住計画も出ていた。
 違うと言い張るのなら、他の星へ行って暮らせばいいという意見には今度はジョミーが反対した。

「そういう意味で移住先を探してくれている訳じゃない」

「この宇宙で人が住める星はそうない。それを探すのも容易じゃない。彼らは住めるようにした星を僕らにくれるんだ。どこかに行けと言ってるんじゃない」


「もう、彼らを怖がるのは止めないか?」

「ソルジャー。それは、反対じゃないですか?彼らが我々を怖がっているんだ」

「ええ、そう。人は僕らを怖がっている。それなら、僕らが自分達で怖がらせないようにすればいい。だから、そこを理解しあう為にまず降りよう」

「簡単に言わないで下さい。あなたの様にはいきません」


 ジョミーは人類との会議に良く出ていた。
 人類の上層部が少しずつ彼を認め始めた。

 それも、反発をよんだ一因だったのじゃないかと思う。


 ジョミーのカリスマ性が薄れたのではなく、皆が我侭になったんだ。
 彼がどんどんと先に行ってしまうのが、置いて行かれるのが怖かったんだ。
 何故、そんな何も見ないように僕らはなってしまったのだろう。
 地球へ辿り着いた。
 それで満足してしまって、その先を考えようとしなかった。

 こんな矛盾した気持ちになるなら、もういっそ、人間を力で押さえつけてしまおうという意見が再燃した。


 それは、やがてジョミーを幽閉する形になった。

「グランパ、あなたがそこから自分で出ないと言うなら、僕が壊す」
「それは、しないでいて」
「だけど」
「大丈夫だから、心配しなくていい」


 僕の抗議でやっとジョミーを解放できた時には、ジョミーの気持ちは固まっていた。


「僕が船を降りよう」


「人類の中へ行って、もっとちゃんと皆が生きていけるように話を進ませる。時間はかかるかもしれないが、暫く我慢をしていて欲しい」

「ジョミー。だめ。降りちゃいけない」
「もう決めたんだ」
「ジョミーは僕らを見捨てるの?」
「…ううん。何かあればすぐ来るし、いつでも呼んでいいよ」
「どこに行こうとしているの?」
「キース・アニアンに会って来ようと思っている」
「キース。あいつに?」
「人類に僕の話がわかりそうなのが他に居ないからね」
「わかりそう?あいつが?有り得ないよ。あいつはブルーを殺しているんだ。ジョミー。殺されるよ」
「今は、戦時中じゃないから、僕を殺して彼らの得になる所はないよ」
「せ、洗脳とかされちゃったらどうするのさ」
「あはは。もう僕には出来ないと思うけどね。もし、そうなったら君が僕を殺してくれ」
 と笑った。
「……」
「トォニィ。そうはならないと思うけど、もし、何かあって本当に助けが欲しい時には、君を呼ぶから。必ず呼ぶからね」
 と、微笑んだ。

「ジョミー、行かないで」

「もう、決めたんだ。トォニィ、僕の事を、君には君だけには解っていて欲しい。僕はミュウの皆の未来の為に降りるんだ。戦争は終わった。だけどまだ続いている。まだ終わっちゃいないんだ。僕らが始めた戦いだ。僕はそれを本当に終わらせなければならない。人類と生きるこれが僕のやり方だ。君には君のやり方、生きる道があるだろう。ここは君がするべき事がある。ミュウの皆を頼む。それは君にしか出来ない」

「ジョミー、あなたが視る未来は…それだけ?」

「…ん、戦後まだ一年…急ぎすぎていると思う?でもね、こうしてても、ミュウは生まれているんだ。それを知りませんでしたと見過ごせないだろう?僕らは止まってちゃいけないんだ」
「なら、人類と一緒に生きたい者だけでいいじゃない?そしたら、いつかは増えていくんじゃない?」
「今でも…迫害は続いているんだよ…トォニィ。一人では人類に押されてしまう。僕らは団結していかないといけないんだ。僕らの力は一人一人ではない。協力しあって初めて意味を持つ物なんだ」

 協力しないといけないと言いながら、ジョミーは一人で降りると言う…。

 ジョミーには遠い星で苦しむ仲間達の声が聞こえているのだろうか?
 その声が聞こえない僕は、ソルジャーの資質が無いのだろうか?


 僕は、ジョミーが船を降りる事を許可した。


 あなたが見る先には何が見えているのか?
 僕にそれを教えて欲しい。
 その先に…。
 何かがあるのなら…、
 僕は同じ未来を見て、一緒に歩いてはいけないのだろうか?

 何かが起こると言うのなら、
 僕はそれからあなたを守る事は出来ないのだろうか?

 もう、僕らは一緒にいられないのだろうか?
 僕は何をすれば良かったのだろう?

 誰か…それを教えて。



 ジョミーが船を降りてから半年…

 僕は眠れない日々だった。

 そんな時、セルジュから連絡が入った。
「ジョミーはメティスに帰ってないですよね?」
「帰ってないよ。何かあったのか?」
「まだ、僕とキースと同僚の数人しか知りませんが…行方不明なんです。彼だけの極秘任務がある時があるので、それかと思ってたのですが…」

「何か…起きたんだ…」



 お願いだ。


 僕を呼んで。



 ジョミー。








君と僕の行く未来 2

2012-05-27 01:50:31 | サイドストーリー「君と僕の行く未来」
☆本編の補足、トォニィ視点からのサイドストーリーです。
 時間軸は多分戻らずに事象、事件を追ってゆくと思います。

「君と僕の行く未来」 2


 セルジュは元々の勤務地ペセトラに戻らず、暫くメティスに居る事になった。

 あれから幾度かソルジャー・トォニィの訪問を受けた。
 もちろん、公式の面会じゃないので、色々と苦労したけれど、彼はこちらの指示に従ってくれたので、混乱はなかった。


 そして、俺は彼に言われて「ソルジャー・シン」ジョミーについて調べた。


「ジョミーには、ジュピターというコードネームがついた。だけど、問題はこれには凄い価値がある事だ。とんでもない地位と権限なんだ」
「どんな?」
「人類の軍部全体を動かせる。政治的な発言力もある。これが出ると人類は彼に従うしかない代物だ」
「…ふーん」

「これがあれば全宇宙を掌握出来たも同じだろう…」

 とセルジュが言った。

「…全宇宙なら一度、手にしているよ。僕らは…」
 
 とトォニィが返す。

「…全宇宙を君たちは握ったかもしれないが、放棄しただろう?じゃあ、何故、彼はこれを受け取ったんだ?重要だからじゃないのか?」
「考えるまでもないよ…」
「考えるまでも無い?」
「そんな物…」
 とトォニィは呆れたようなポーズをした。

「君は、この価値を重く考えていないんだな。では、何故、君たちがこんな物と思う物を彼に許可し、与えるんだ?」
「許可?与える?だからそんな物は人類のものでしかない。僕らには怖くも何とも無い。それをジョミーは甘んじて受け取っただけさ」
「これをいらない物だというのか?」
「いらないとまでは言っていない」
「同じような事じゃないか」
「ジョミーは、あった方が良いから受け取っただけだと思うと言ったんだ…。ジョミーがこれから人類の中で暮らすなら…ある程度の地位は必要だと…」
 トォニィは眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。

 そんなトォニィを横目にセルジュは言葉を続けた。
「だけど、なんでキースはジョミーに渡すんだ?こんな自分の地位より高いものを、大佐は…こんな凄いものを…どうして…」
「そんなの僕は知らない」
「一つだけ言えるのは…キースは彼にそれだけの物を渡しても良いと判断したからだろうな…」
「判断か…そんなのいらないのに…。もらったら、もう戻って来れないじゃないか…」
「え?」
「…さっきの意見と同じだよ」
「……」
「セルジュ。一度手離した物をまたもらって、それでどうして僕らの前に出て来れるんだ?そんな事がバレたら…」

「お前達、ジョミーと何かあったのか?」

「……」
 トォニィはちょっと考えてから話し出した。
「僕らは、お前達人間と戦ってきたよな。それで、僕らは沢山の人を殺してる」
「……」
「それに、僕はキースを殺そうとした…」
「…それは、戦争だったのだから、お互いさまだ。俺もお前達を殺している」
「でも、お互いに個人的な恨みも遺恨もある…。じゃあ、今、セルジュが僕とこうして話しているのは何故なんだ?」
「それは、情報交換の為で…」
「僕を捕まえたり、ジョミーが来た時みたいに軟禁しないのは何故?」
「捕まえる必要を感じないし、それに、キースから見逃すように言われている」
「それは、僕がソルジャーだから?」
「当然だろう。ミュウの代表を粗雑には扱えない」

「じゃ、ジョミーは何故、閉じ込めたの?」
「そ、それは、彼がそう希望したと聞いているが…」
「ジョミーはソルジャーじゃなくなったから捕まえて閉じ込めたのか?そんな檻、簡単に壊せるのに?キースは敢えてそうして、ジョミーもそれに従った」
「多分、彼の意思を確かめたと言う事だろうな」
「うん…そうだね。あのさ、セルジュ。ソルジャーってどうやってなると思う?」
「どうやってとは?」
「タイプブルーだからとか、一番強いからだけだと。まるでサル山のボスザルだよ。だけど、ジョミーは強くて、知識もあって、皆を見ていける視野もあって…それが、ソルジャー・シン。僕らのジョミーだ。それなのに…」

 自分の事をボスザル扱いするトォニィにセルジュは少し驚いていた。
「お前達は…許せないのか?彼がここに来た事が…」

「許せる訳がない」

「彼にはそれ相当の覚悟と考えがあってした事だと思う」

「それも…わかってる」
 だけど…とトォニィは言葉を続けた。
「言い訳する気はないけど、僕はジョミーを止めれなかった。かと言って意思を尊重する事も出来なかった。きっとジョミーとは向かう未来…見つめる先が変わってしまったんだ。僕は、それを認められなかった。だから、僕は彼を自由にした」

「自由?…だけど…彼は人類の中に入って何をしたいのだろう?何か計略があるような感じはしないし…」

「計略なんか無いよ。人類とミュウの共存する未来を作りたいって言ってたけど、それを急ぎすぎて、ミュウの皆から反発されたんだ。それで船の中でも幽閉されていた。それを僕が解いたら、船を降りるって言い出して、行き先も決めないまま出て行ったんだ…。降りてそのまま、ここへキースの所へ行った」

 リーダーを幽閉した?
 しかも、あのジョミーを……。

「お前達、意外に過激なんだな…思い切った事を…」
「皆、まだジョミーに甘えているんだよ。何をしても大丈夫だって思っていたんだ。自分達を彼が置いて出る訳がないと。行く所なんてここしかないって…」
「だけど、幽閉されたから怒って出て来たんじゃ、あまりに変だぞ」
「きっとすべて口実で…最初っから、幽閉される事も、元は人間だったと出自を言われる事も、彼を救出しようとした僕が閉じ込められる事で問題が起きる事も全て、彼は計算していた」
「ジョミーがそうまでしてしたい事がここにはあるのか?」
「したい事、知りたい事、しなければならない事、彼の望む物が人類に中にあるって事だよ」
「それは何なんだろう?」
「僕にはわからない」

「僕はジョミーを裏切り者として見てるんだ。唯一の理解者でなければならないのに、それを僕はまだ出来ずにいる」

「トォニィ。それを言うなら…俺もだよ。俺もキースをそう見たよ。あの終戦時の宣言も、今回の事も、軍部にジョミーを入れるって事はしてはいけないんだよ」

「…それでも、今、お前はキースを信じているじゃないか…」
「それを言うなら、お前もだろ?ジョミーを信じたから、幽閉を解いたんだろ?」
 
 それを聞いてトォニィは意外そうな顔をしてから笑い出した。

「そうかもね」
 と笑いながら言った。
「俺達であの二人の謎を解いてゆくのが一番だと思わないか?」
 とセルジュが言った。

「協力していこうって事だな。わかった。それで僕は何をしたらいい?」


「んーー、まずはそのソルジャー服でここに来ないで欲しい」
「…なんで?いいじゃないか。そんなの」

「目立つだろ?せめて普通の服でないと、ここで一緒に食事をしようとしても誘えないじゃないか?俺そろそろお腹空いたんだけど…」
 とセルジュが言った。
「…そっか…」
「だろ?」
「それじゃ、セルジュ。お前の服を貸せよ」
「ええ?俺の?お前が軍服着るのか?」
「私服あるだろ?」
「んー、わかった。持ってくるから、待ってろよ」

 とセルジュは出て行った。


「…僕を食事に誘う?変なやつだな…」
 
 意外な形で人類と交流する事になったなと、思うトォニィだった。


 セルジュが持ってきた服に着替えたトォニィは、
「ソルジャー服は、僕らの力を制御する役目と、どんな攻撃からも防ぐんだ。だから、着てなきゃいけないんだけど…お前が脱げって言ったんだから、全力で守ってくれるよね」
 とにっこり笑った。


 彼ら、ソルジャーの笑顔がとても怖い事をセルジュはまだ知らなかった。










くじ引きCP 「LOVE IS…愛が足りない」&「トウキョウ」

2012-05-22 01:29:01 | 運命(CP)は神(くじ)が知っている

  「LOVE IS…愛が足りない」
※くじ引きCP ジョミーとセルジュ

 愛してると何度も言うよ

 その日は公休で、ペセトラの施設内にある個別住宅に僕はいた。
 夜中ににセキュリティが反応し、そして、それはすぐに止まった。
 居間でくつろいでいた僕は立ち上がった。
 その時、
「セルジュ…ごめん…」
 の声と共にいきなり目の前にジョミーが現れた。
「ジョミー?」
 彼は黒いスーツを着ていた。
 右腕を負傷しているのか左手でさすっていた。
「ど、どうしたのですか?」
「ちょっとヘマして…レーザー、くらっちゃった…」
 と
「大丈夫。怪我はしていない。少し…ここに居させて」
「ええ、それはかまいませんが…」

 公の場で、キースと一緒に居る時は大体ソルジャー・シンとして居るので、ジョミーがジュピターの時は完全に極秘状態の事が多かった。
 セルジュは居間のセキュリティを確認する。

「やっぱり、さっきのは君が切って進入したんだな」
「ごめん。僕は今、ここじゃない場所にいるはずだからね…」
「いいよ。休んでいくといい」
「少し、眠るね」
 そう言うとジョミーは居間のソファーで眠ってしまった。

 セルジュはキースにも知らせなかった。
 ホットラインと呼ばれるものはある。
 ここにジョミーがいる事だけでも知らせようとしたが、彼の目が覚めてからにしようと思った。
 何か知らせなければならないような事があるのなら、ジョミーはそれを対処してからここに来ただろう。
 でなければ眠る前に何か言ったはず…。

 今は、疲れて眠りたいというだけのような気がした。
 寝かせてあげようと思うセルジュだった。
 


 しばらくして、

 「セルジュ…」

 眠っていたはずのジョミーが起きて自分の数値を確認した。

 そして、唐突に

「君を…愛していいかな?愛が足りないんだ」

 と言った。

「え、何を急に、愛が足りないって何ですか?」

「率直に言うなら、抱いていい?」

「だ、え?い、い、いいえ。よくないです。そ、そんなの」

「それが一番ポイントが回復するんだけどな…」

 と腕に付いたブレスで自分の数値を見せる。
 確かに「LOVE」が減っている。

 しかし、それは、それはなにの話だ。
 ポイントが回復って、何だそれは。
 いったい、どこのゲームだ。

「いいじゃないか?やらせてよ」
「よ、よくないです」
「だって君は誰とも結婚していないし、今は特定の好きな人いないだろ」
「確かに、いませんけど。それとこれとは違いますよ」

「トォニィには気付かれないようにするから」
「か、彼は関係ないですよ」
「なら、なおさらいいじゃないか?」
「よくないです」
「だったら、力で抑え込んじゃうよ」
「って、僕はもう、動けないんですけど…」

 僕はさっき彼が起きた瞬間からソファに押し倒されているのだった。
 上からジョミーが見下ろしていた。
 彼がうっすらと妖しく笑った。

「暴力で屈服させるんじゃないよ。僕の力は…合意の上で屈服させれるんだ」
「ご、合意…」

 ジョミーの唇が僕の唇と重なる。
 抵抗が出来ない。
 違う、抵抗をする気がない。

 これが…彼のみの力…。

「さぁ、軍人らしく諦めるんだ」
「負けを認めろって事ですか?」

「そう…だよ」

 と、微笑んだ。

「君が欲しい…」

 そして、
 もう一度、重なる唇。

「緊張しないで……力を抜いて」

「む…無理です…」

「今は…何も考えないで…もっと…自由になるんだ」

「……」

「もっと…自分を開いて…もっと…そう…もっと…」

「…ん……」



「愛してるよ…」




   「トウキョウ」

 ☆くじ引きCP シドとジョミー
※時間軸なし 場所設定なし、本編との関連性も全くなし。 


「トウキョウ?」

「トウキョウって何ですか?」


「ん、地球にある都市らしい」

「そこに何があるのですか?」

「そこで愛を語れってくじ引きで出たって…」

「あ、愛を…ですか!?」


「まぁ、とにかくその場所に行ってみようか」


 シドの操縦で時空を超えて現代の東京へ跳んだシャングリラ


「ああ、あれにしよう。スカイツリーとかいうのだ。アレに接岸で…」
 と指をさす。

「ジョミー。何故そんな観光案内持ってるんです?」

「細かい事は気にしない方がいいよ。このくじ引きは特にね」

「で、どうします?この夜景見ながら…どうすればいいのですか?」

「くじ的には君が僕にだから、いつもとそんなに変わらないね」

「いつも…、って、言われても、その…」

「君が僕に強引にキスしてきた時と変わらないって事だよ」

「あ、あれは…そういう状況だっただけで…」

「ふーん。じゃあ、あれは全然本気じゃなかったんだ」

「あ、いいえ。いいえ。成り行きとか、思いつきじゃありませんよ」

「じゃあ、出来るよね。語ってよ」

「いや、それは…」

「……」

「……」



「そうだよねぇ、出来ないよね。君の事は友達でいようって僕が拒否しちゃったんだもんね」とにっこり笑うジョミー

「え、ええ…ですね」
 と、シドは苦笑いする。

「ならさ、ここならば、今この時だけなら君の思いに答える。と言ったらどうする?」

「ジョミー?」

「どう…す…る?」
 シドを下から覗き込み、じっと目を見ている。

「…何をしても良いって事ですか?」

「ううん。愛を語って。それを僕は拒否しないって事…。だから…、そういう口調も無しで…言ってよ」

「……」

「シド」

「……」

「シド、やっぱり、言えないかな?君は頭も良いし、行動力も人望もあって。そして、何より誠実だ。僕は君のそういう所が好きだよ。だから…こんな形では言えなくても…仕方が無いと思うよ」

「え、いいえ。ジョミー…そのくじには従わないといけないのでしょう?」

「まぁね。今まではそうしてる」

「今までって?」

「色々ね…」

「何をしてきたのですか?」

「何故か僕がらみのばかり出るからね…色々と。だよ」

「じゃあ、これってチャンスなんですか?」

「かもしれないね。君とキースって出たらどうなるのだろう?とか考えちゃうね」
 と笑うジョミー

「それは、考えないで下さい」


 シドはジョミーを見て、意を決したように言い出した。

「僕には、愛を語るなんて出来ません。でも、ジョミーが好きだと言えます。前からずっと好きでした」
 だんだんと語尾が小さくなってゆく。

「……」

「だ、だめだ。やっぱり上手く言えない」
 シドは、せっかくの二人きりなのに、と言った。

「シド、いいんだよ。君は君で。僕はそういう君がいいんだから」

「でも、情けないな…」


「良いんだって、言い切れなくなったのは、僕の所為でもあるから…。僕がさっき君の事を誠実さが好きだって予防線を張ってしまったからさ」

「あ、いえ。僕はそれくらいしかないですから」
 と笑う。

「ううん。僕が悪いんだ。ごめんね」

「……」

「じゃあさ。ここまで来たんだしトウキョウ見物しようか?」

 と、ジョミーは手を差し出した。





「シド、君は何もしなくていい。僕が全部するから…二人で飛ぼう」











★ジョミーの「落としセリフ」は確信犯だと思います、、、、。


地球へ… 「君と僕の行く未来」 1

2012-05-18 03:25:32 | サイドストーリー「君と僕の行く未来」

★時間を先に進めようと思っていましが、
 「にじファン」への転載作業をしていて「黄昏、湖底、星の」
 とやってゆく内に、ソルジャーなのに脇に置かれたままのトォニィは
 ジョミーの事をどう思って見ていたのかと思いはじめました。
 本編の補足、トォニィ視点からのサイドストーリーです。
 時間軸は多分戻らずに事象、事件を追ってゆくと思います。
 思いつきで別方向へ進むかもしれませんが…^^;
 よろしくお願いいたします。
 


 サイドストーリー「君と僕の行く未来」 1



 大戦から約2年後

 太陽系、木星軌道上の衛星都市メティス
 その中核にある軍事基地を攻撃用衛星で撃つようにと信じられない指示を受けた
俺は、数人の部下と共にメティスにいた。

 一刻一刻、指定された時刻が近づく。

 いくら出力を最小に下げて、ピンポイントで攻撃をしても被害は出る。

 この基地だけでは済まない。
 被害はメティス全体に広がってしまうだろう。

 俺はそれを想定してその時に備えた。

 基地内はキースと彼の警備、それと俺と司令室の数人しか残っていない。

 それでも、彼は何をするつもりなのだろう。


 俺はその時間のキースの行動を追った。



 彼はここより2つ先の建物に居た。
 そして、屋上に移動した。

 俺も屋上に上がった。

 上空には衛星軌道兵器が見える。
 時間通りにここへの攻撃がきた。

 衛星都市メティスが揺れた。
 青い光がメティス全体を包み上空に何本もの稲光が走っていった。

 メティスは無事だった。


「これは…ミュウの力…。ジョミーが…!」


 セルジュは信じられなかった。

 確かに、2つ先の屋上にはキースとジョミーがいる。

「な、なにがあったんだ…」


「何でこんな事をしなきゃいけないんだ」

 俺のすぐ横で誰かが叫んだ。
 
 さっきまで誰もいなかったはずだ。

「誰だ?」
 俺はそいつに銃を突きつけて言った。

 彼は俺を見ようともしなかった。


 彼は、ミュウの次代ソルジャーのトォニィだった。




 これが、2人の出会いだった。



 もちろん公式ではもう何度も会っている。
 だが、2人で会話する事はなかった。

 僕が銃を向けていても彼は一向にこちらを気にしなかった。


 2つ先のジョミーとキースを見ている。

 彼らが屋内に入ってもまだ見続けていた。

 俺が彼の頭に銃口を押し付けても全然気にしないでいた。

「…泣いているのか?」

 彼は声を殺して泣いていた。
 俺にはそれは悔し泣きに見えた。

「うるさいな。放っておいてくれよ」

「そういう訳にはいかない。ここは人類の軍事基地なんだぞ。お前、それわかってるのか?」

「知ってるよ」

「知っててなんでここで泣くんだ?さっさと行かないと見つかるぞ」

「もう、どうでもいいんだ」

「何が?お前がか?」

「そうだよ」

「…許可なしでの侵入で俺が捕まえてもいいけど…俺も今はそんな気分じゃない…見逃すからさっさと消えろ」

「…今は、シャングリラに戻りたくない…」

「はぁ?ってお前なんだよ?ソルジャーなのに家出か?まるで子供だな」

「そうだよ。僕はまだ子供なんだ。何もしないから。だから放っておいてくれよ」

 トォニィはこの間も泣いたままだった。
 俺はとにかくここじゃマズイからと彼を基地内へ連れてきた。

 人のいない会議室へと案内して、さっきの攻撃に関しての指示を出す為に司令室に一旦戻った。

 俺は司令室で、キースから指示されていたとおりに事後処理を済ませ、皆に明日からは通常勤務に戻る事を伝えるとここの解散を命じた。



「ソルジャー・トォニィ?」
 俺は彼はもういないのじゃないかと思いながら、会議室のドアを開けた。

 彼はまだそこにいた。
 泣いてはいなかった。

「ソルジャー・トォニィ」
「…今の僕は…ただのトォニィさ。肩書きはいらない」
「トォニィでいいのか?」
「ああ。いいよ」
「…了解」
「お前、ジョミーの事で何かわかった?」
「名前くらい知ってるだろう。俺はセルジュだ」
「…セルジュ。さっきの事、調べたんだろう?」

「俺は知らなかったが、彼はこれから、キースの護衛をするようだ」
「…そうなんだ…」
「さっきの攻撃用衛星をここに撃ち込むように指示されたのは俺だ。まさか…」
「まさか、ミュウの力を確認する為とは…か?」
「あ、ああ。今は彼らはキースの官邸、ビルレストに向かった」
「…やっぱり、戻る気はないんだな」
「ジョミーはこ2週間くらい、ここで軟禁状態にあったようだな」
「知ってる…」

「お前達、ジョミーと何かあったのか?」

「セルジュ。何故、ジョミーがここに来たのか?キースは何故ジョミーに警護させるようにしたのか知りたくないか?」
「知りたいと思う」

「僕も知りたい。それと人間に興味が持てそうだ。セルジュ。お前のオーラは覚えた。また来る」
 トォニィはそう言うとテレポートした。

「またって…俺、ここ勤務じゃないんだけど…」
 
 そういう問題じゃないな。と思いながらセルジュは報告をする為、キースのいるビルレストへ向かった。








『君がいる幸せ』本編終了記念読切 「トライアングル」 ※BL風味

2012-05-04 00:52:43 | 『君がいる幸せ』本編終章 「epilogue」

☆『君がいる幸せ』本編終了記念・ラブラブが書きたくなりました。
本編の終わりのキースがあまりにかわいそうになったので追加させました。
くじ引きにCPにあるのを持ってきました。

※場所設定なし、関連性なし。遊んでます。

   「トライアングル」

「キース、三角関係って何?」
「え?あぁ、一人を二人で取り合う事だな」
「自分が好きなのが違うのを好きで、それが自分を好きってのも三角?」
「あぁ、それもあるのか…」
「どっちがいい?」
「は?取り合う方が普通なんじゃないか?」
「じゃ、そっちからね…」
「な…何を言ってるんだ…ジョミー」

 俺は軽い眩暈を感じて頭を押さえた。
「キース、キースどうしました?大丈夫ですか?」
 黒いスーツを着たジョミーが俺の肩に手を置き心配そうに聞いてきた。
「ジュピターか…大丈夫だ」
「休暇が取れればいいのですけどね」
 とジョミーはため息をついた。
「これからの予定は、ノア政府との会談とメサイアへの視察ですが…。メサイアには僕が行きましょうか?ヴィーが護衛で行く事になっているのですが…お疲れなら、ジョミーとして僕が行ってきましょうか?」
「いや…」
 キースは自分のデータを見てみる。
 年数はミュウがメサイア移住直前、俺たちは木星のメティスに居た頃…。
 こんな風にノア政府と交渉していた。
 だが、まだヴィーはペセトラで、俺たちとは会っていなかったはず…。
「ヴィー?」
「ミュウ部隊のヴィーですよ。先月配属されてきたじゃないですか」
「セルジュが…?」
「ええ。彼の推薦で…」
「ヴィーは今、いくつだ?」
「確か、十八才ですね」
 彼の年齢は合っている、配属時期が1年以上ずれているだけだ。
 それより、ジョミーが…俺にこんな風に話しかけるのが…。
「お前はいくつだ?」
「あなたと同じじゃないですか…見た目ならヴィーと同じ十八くらいかと…」
 キースはジョミーの手の白いブレスを見る。
「これがこの頃の俺たちを繋ぐ証だったな…」
 そして、その手首を掴んだ。
 ジョミーの緑の目を見つめ、
「お前は、このジュピターだった時が一番大事な時だったと言ったな」
 と掴んだ手を引き寄せ、彼を腕に抱いた。
「これが…お前の作った幻でも…俺は…お前を愛している」
「え…?あ、あの…キース?」
「ジョミー」
 腕の中にジョミーが居る。
 それが、嬉しい。

「あの、キース。急にどうした…のですか…」
「今は、何も言うな。頼む…今は…じっとしていてくれ…」
「……キース?…」
「ジョミー」
「えっと、嬉しいですけど…今日は変ですよ…何かあったのですか?誰かに振られたとか?」
 とジョミーはキースの背中をポンポンと叩いた。
「俺はお前だけだぞ」
「んー、それだったら…嬉しいですけどね…」
 と苦笑いとしていた。
「??」
「僕が告白した時は相手にしなかったし、今もそうでしょ?」
「!お前が俺に告白した?」
「…あ、それは酷いなぁ…忘れちゃった?」
 キースの身体を手で押しのけようとするジョミー。
 だが、キースが頑として離さなかった。
「ジョミー。今日の俺は変なんだ。そう思っていい…だから、このままで。そして、その時の告白をもう一度してくれないか?」
「…恥ずかしいな…」
「それはいつだった?」
「クラヴィス将軍の海賊退治の後で、僕の処分が決まって…海賊の処刑をした後です。自分でも最悪な時に言ったなと思っているのですが…。あの後、僕が銃を持ったまま部屋に行ったのを見て、キースが僕から銃を取り上げようとして押さえつけられた時に、つい言って…」
 確かに、銃を取り上げたのはあった。
 でも、それだけだった。
「何て…言ったんだ?」
「…あなたを守るのは僕だ。あなたが傷付くのも見たくない。それも僕が受ける。守りたい。キース、愛しています」
「…ジョミー」
「その言葉の、あなたの部分を「君」に変えてもう一度言ってくれないか?」
「君を守るのは僕だ。君が傷付くのも見たくない。それも僕が受ける。守りたい…キース、君を愛している…」
「…ジョミー」
 これがジョミーが言わないでいた本音なのだとしたら…。
 立場や思惑、使命や運命を全て、超えていけたなら…。
 俺たちは…。
 俺は、お前の手を離しはしなかったのに…。

「ジョミー、俺に未来が見える。そう言ってお前を今から閉じ込めて、力を使えなくしてもお前は俺に従ってくれるか?」
「それは、出来ないお願いですね…」
 腕の中のジョミーが薄く淡く青くなる。
「キース、僕をどこかに閉じ込めてヴィーといい事しようっての?」
「ヴィー??」
「だって、いま、気になっているのはヴィーでしょ?」
「…?…」
「マツカに似てるって、そう思って傍に置くことにしたんでしょ?」
「……」
 腕の中にいたジョミーが消えて、ドアの前に居るのが見えた。
「もうすぐ、彼が来ますよ。僕と同じ事を彼にも言えばいいんだ」
 と出て行った。
「……ジョミー」

 あのジョミーが、ヴィーの事となると感情が入るのは知っていたが、それは…。
「嫉妬していたのか…」
 その事実が俺は嬉しかった。

「閣下、今日の警護は僕達だけですが、いつも通り万全です」
 ヴィーが元気よく言った。
「当たり前だ。ここに誰が居ると思っているんだ」
 とジョミー。
「えぇ、そうですね」
 とヴィー。
 二人の間で火花が散っているのが見えるようだった。
 昔のセルジュとトォニィを見ているようだと思った。
 ここに居る「キース」が俺は羨ましくなった。

 ジョミーに地球への使命も無く、このままの関係を続けていたらどうなっていたのだろう?
 それでも「カナリア事件」「メギドのメサイア襲撃」「ノア事変」は起きるのだろうか?
 この2人に守られた俺はどんな答えを出すのだろう?




「さて、次のお話は…もう一つの三角ですね」

「ジョミー。次って…。俺がお前を好きなのはわかる。
 ヴィーが俺を好きなのも何とか…、でも、お前がヴィーを好きってのが無理あるだろ?」
「そう?」


「ヴィー、今日の警護についてだけど…」
 控え室にいたヴィーをジョミーが見つけ、彼の方に向かいながら声をかけた。
「……」
「ヴィー?」
「……はぁ…」
「何、ため息ついてるんだ?」
 イスに座ったヴィーの目の前にジョミーがいた。
「あ、いえっ何も」
 とヴィーは立ち上がる。
「転属になってからずっとそんなだねぇ…、ここがイヤかい?」
「いいえ、いいえ。そんな事はありません」
 ジョミーはヴィーの横に進み、肩に手を置く。
「悩み事なら僕が聞くよ。何でも言ってくれ。君の為なら何でもしよう」
「いえ、いいえ。だ、大丈夫です…。そろそろ、上に行きます」
 とヴィーはキースの部屋へ向かった。
「はぁ…。な、なんで…」
 ノア政府との会談も、メサイアへ先に入植したミュウや人類への視察・慰問も無事に終わり、俺たちは一旦、メティスへ戻る事になった。

 その前日、ヴィーがジョミーを訪ねてきた。
「ジョミー、あの、俺は出会ってからずっと、あなたに逆らってきました。ずっと、でも、それは…あなたが気になっていたって事なんですよね…」
「…ヴィー」

「ちょっと、待った」とキースが止める。
「ん?」
「これって、このままだと、ジョミーがヴィーを落としたってならないか?」
「あぁ、そうなっちゃったねぇ…」
 そうなっちゃったって…計算済みだろう?
「でも、あんなセリフを良く言えたな…」
「あんなセリフ?あぁ、言えるよ。君にも…言おうか…。キース、僕は君の為なら何でもしよう…」
 そう言ってジョミーはキースをじっと見つめた。
「この命も、この力も、すべて君の為だけに使えたら…そう僕は願っているんだ」
「…ジョミー」
「だから、僕を受け入れて…」
 イスに座ったキースにジョミーが近づき、後ろから彼を抱きしめて静かに唇を合わせた。
 ジョミーの舌がキースの唇を割って進入してくる。
「…ん…」
 ジョミーがキースに対して力を使う。
 それは「魅惑」
 頭の芯がくらくらしてくる。
 自分が彼の術中に落ちている事を確信させるように俺の手はジョミーの身体を抱きしめていた。
 ジョミーはキースの制服を前を開けて、その肌に唇を這わせる。
 普段、ジョミーは俺に対して力を使ってくる事はない。
 本気で俺と話したいと思うと、力を使う必要は無かった…。
 でも、こうして力で俺を思うがままにしたいと思う時もあったのだろうな…。

 そんな関係もあっていいのかもしれない。
 どんな風だろうと、俺が俺で。彼が彼ならば。
「キース、止めないと。僕、やっちゃうよ…」
 と声が聴こえた。
「それも…いいかもな…」

 ここが幻でも、何一つ真実が無いとは言えない。
 生きるとは覚悟がいる。
 俺たちは、ギリギリで生きていたのは知っていた。
 だから、こんな…事があっても…
 それも…
 どれが嘘で、どれが真実だなんて誰が言えるんだ。

 これも、それも、あれも、お前と俺であるなら。
 どんな事もどんな物も、俺たちだ。

 この時よ。
 いつまでも、いつまでも。