君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十九話

2013-05-23 02:17:12 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十九話

「ここは時間も関係ないんだ。だから、何も気にする事は無いよ。座ろうか?」
 僕たちは床に座った。
 ジョミーは、左足を立てて座り、その足に腕を乗せていた。
 僕はぺたんとあぐらをかくように座った。
 ガラスの床は冷たくなかった。
「殺風景だろう?」と見回しながらジョミーが笑う。
「いえ、とても綺麗だと思います」
「そう?ありがとう。前はね。もっと広くて、でも、狭くて。本当になーんにも無かったんだ。この上についてる布はブルーの所にあったから、つけてみたんだ。彼のはもっと大きくて沢山あって、何層にもなってて…。それで、たまに潜れないのがあるんだ。そんなのの側には、決まって空気がガラスの粒みたいになってた。だから、無理に通ろうとすると傷がいっぱい出来ちゃうんだよ。通る資格があるかどうか…彼は本当に人を試すのが好きなんだから…。本当に進むのが大変だったよ。あれは心の中にまで防御してたって事だったんだろうね。で、僕も真似をしたけど、僕のはこの程度さ。これじゃ、単なる装飾だね」
 ジョミーは所々に下がっている布を見ながら懐かしそうにそう言った。
「僕はこれで良いと思いますよ。だけどそれなら、クローンのブルーにも布がいっぱいあるのかな?」
 僕も近くにある下がっている先が見えない白いカーテンを見上げながら答えた。
「さあ、それはわからないな。きっと違うと思う。心は同じではないから心象世界も違う。彼のはどんな風だろうね」
「潜ってないですか?」
「ここまではないよ。君たち二人の表層までならあるけど」
「…僕のもこんなに綺麗だといいのにな…」
「君のは僕より、きっともっと頑丈だよ。ここはとても脆いんだ」
「そうですか?僕にはそうは見えませんよ」
「そう?なら少しは強くなっているんだろうね」
 ジョミーは笑った。
「あの、人の深層に潜るのは二人でないといけないんじゃないですか?」
「ああ、それは相手が心を開いていない場合だよ」
「え?じゃあ僕は?」
「君の心は僕が開いてここに引き入れたからね。君を責めて怒らせたり、不安にさせたりしたのは僕の作戦だったんだ」
「なんで、そんな…」
「君とは深層で話したいと思ったから」
「そうならそうと言ってくれれば」
「君の心は強固なんだ。距離もあるし、だから、僕だけでは無理だろうと思ってた。それでも、誰かを介入させたくなかったんだ」
「会って話せば良かったんですね。僕がずっとそれを拒んでいたから…」
「ちょっと強引だったけどね。ごめんね。でも、君はもうここに居て、こうしているのだから、いいよね?」
「あの…ほんの少しだけ、こんな事されて怒っていたんです。でも…ここを見たら…許しちゃいましたよ。僕と本当に二人だけで話したかったのですね」
 ジョミーが結構無鉄砲な性格だった事を思い出していた。
 そして、二人は笑った。

「では、何から話そうか…」
 僕はその言葉にドキンと心臓が跳ね上がった。さっきまでのドキドキと同じような不安が戻った。
「あ、あの、あなたは運び屋を殺そうと思ったのですか?」
「…ああ。それが知りたいの?」
 ジョミーは少し不思議そうな顔をしていた。話を逸らしたいんじゃない…。さっき感じた怖さの意味が知りたかった。
「いえもう…気にはしていません。何もしてくれなかったんじゃなくて、殺そうとしていたのなら、もう気にしなくていいと思って…ます…」
 語尾がにごってしまった…。
「そうか…。気になっているのなら話してもいいけど…。何もしなかったのは…。そこは僕なりの理由しか出てこないよ。ちゃんと先を示してあげられない。聞いて君の判断に任せるしかないのだけど、それで良いなら…」
 僕は無言でうなずいていた。
「本当は別の話をしようと思っていた。でも、あの場所で君と出会っていたのならば、その方がいいかもしれないね」
「……」
「あの頃の僕は、大戦後、もう誰も殺したくないと言いながら、それでも僕は人に向けて力を揮っていた。そこには答えのない矛盾が生まれていたんだ」
「…矛盾ですか…」
「そう。砂漠で、あの時はね、僕は何もしなかったのでは無くて、何も出来なかったんだ」
「?」
「今頃、こんな事を言っても、助けられなかった言い訳にしかならないけど、僕は砂漠で熱波にやられて何も出来ない状態だったんだ。僕が拾われたのを君は見てるんだね?」
「はい…」
「でも、君は不思議に思っただろうね。いくら病気で高熱を出していてもミュウの力がそこまで使えなくなるなんて事にはならない。その通りだ。問題は病気だけじゃなくてね。僕は砂漠に入る前に、博物館で遺跡の中にブルーの痕跡を見つけたんだ。そこには、石版になったコンピュターテラがいてね。それには、僕に繋がる遺伝子を消さずに残しながら、ミュウは迫害するとあったんだ。それは、何百年も、僕という「新たな希望」が見つかるまで、ずっと仲間たちは苦しむって事だ。それは僕に重い絶望しか与えなくて…僕はそれまで、心の何処かで自分は「ブルーに選ばれた者」だって思いがあったんだ。そう、その思いだけで進んで来れた部分もある。そこが音を立てて崩れてた。そんな感じだった」
「……」
 この話は前にトォニィが僕らにしてくれた事がある。どの時期で知ったのかまではわからなかった。ほんの十年ほど前、まだそんなに最近だったんだ。
 ジョミーがブルーから受けた影響はとても大きい。それが彼をソルジャーにしていた。そこの中心が折れてしまったんだろうと僕は思った。
「博物館を出たら、運悪くヴィーが居てね。僕を捕まえようとしていた。最初は邪魔だとしか思えなくて、彼が僕を同じミュウだと知っても全然聞き入れてくれなくて、思わず僕は全員吹き飛ばしてやろうかと思ったくらいだったよ。彼とは本当に運の無い出会いだったよ。ミュウを傷つけようなんて、多分もう、あの時から僕は普通に考えられないようになっていたんだ…」
 そう言ってジョミーは座り直して膝を抱えるような姿になった。
 その姿は彼を小さく見せた。
「多分、僕は自分を否定して、力を拒否して。自分で自分を閉じ込めたんだ」
 それからジョミーはその頃は自分の中の力に体が耐え切れずにいた事を話した。自分を拒否して力を封印してしまったジョミーは熱波にかかかり砂漠で死の淵をさまよう事になった。そこに通りかっかたのが研究所の運び屋だった。
「記憶が粉々になってしまった原因はよくわからない。君たちが車から降ろされてから、売り物にならなかった僕は彼らに薬を飲まされてね。それは麻薬みたいなもので、身体も精神もなにも薬と彼らに支配されてしまったんだ、繰り返される暴力で正常な心もやがてねじ切れて、僕は彼らの言いなりになった」
 そう言ってジョミーは少し悔しそうに唇を噛んだ。そして、小さく息をつくとまた話始めた。
「とても悔しい事だけど、彼が僕にしろと要求すれば何でもした。黒く汚れてゆく自分を感じたよ。もう最後は僕はそれに喜んで従っていたのかもしれないね。暴力を快感とは思わなかったけど、命令されてそれにただ何も考えずに従うのが楽だと思ったんだ。それでも、必死で他の者を庇ったりして、本当に僕は愚か者だ…」
 愚か者…。
 その言葉はその時の彼に向けらて発せられたのではなく、自分を力を否定していなければ、僕や自分を含めそこにいる全員を救えたと、自分の中の弱い自分に言っているのだろう。
「そんな状態になってから、僕は自分が否定したミュウの力を欲した。僕は力を使うものの資格とか覚悟って言うけど、その時はそんな考えはどこにも無くて、僕は、ただそこから逃げたくて、力が欲しかった。プライドなんてもうどこにもない。ただ、生き延びる為だけに、何もかも捨てて。動物のように、いや、物のように扱われて、何度も何度も死んだ方がいいと思った。最後には力があったら車ごと僕を含めた全てを焼くつくそうとそう思った。でも僕は何一つ出来なかった。もう目を開くのも嫌になってた…」
「……」
「今はわかるよね?僕の使命。「地球再生」だけど、それすらも何もかもどうでもよくなって。それがあるから死ねなかったと僕は思い込んで居たけど、そうじゃない。ただ僕は出来なかっただけで何があっても生き抜く事。僕に出来るのはそれしかなかった。だから、やがて、時間が経って熱が下がり、少し動けるようになった時、僕は何もかも捨てて逃げようとしたんだ。もうボロボロで…逃げれるはずもなく、当然のように見つかって。その時僕を見つけたのは兄の方で、それで、僕は今度はどんなに酷いことをされるのだろうと怯えていたんだ。でも、彼は僕の怪我の手当てをして…。だから…」
 ジョミーはここで言葉を切った。すこし考えてまた話し出した。僕はただ続きを待った。
「だから、僕は彼の前で声を上げて泣いたんだ」
「え…」
「僕はさ…。何をどうしたかったのかわからなくなっていて、その頃の僕は、人類に戦争をしかけて殺してきた事をずっと悔やむばかりだったんだ。殺した事の償いなんて出来はしない。それに気が付かずにただ必死に自分が贖罪して救われる事ばかり願っていた。ただ楽になりたくて、そう願うばかり。でも、何をしても満足しなくて、僕は彼らにそんな扱いを受けて気が付いたんだ。人間の強さと本質を。そして、僕は自分が許される事ばかり考えていたけれど、彼らを許すのも必要だったんだと知ったんだ」
「許し許される事?」




   続く





『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十八話

2013-05-15 03:03:06 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
☆今回。一人称が二人とも「僕」なので、混乱すると思います><
一応、交互に話をさせていますが、読みにくくてすみません;
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十八話

「惑星ノアの砂漠で,最初は別人かと思っていたんです。でも、ソルジャー・トォニィがあなたは前は力で髪や目の色を変えていたって言ってて、それで、気が付いて、あの時は、黒い服で髪は栗色で目の色も違ってて、僕は同じ車に居たんです。僕はあなたを見ています。あれは、ジョミー、あなたですよね?」
「…ノアの砂漠…栗色の髪…それは、列車のように繋がったあのバギーの輸送車か?」
「はい」
 僕はあの頃、ブルーの足跡を追うとともに強奪されたメギドと遺伝子研究所を探していた。彼はその対象の側にいたのだから、偶然、出会っていてもおかしくはなかった。
「…そうだったのか…よりにもよってあの時か…。僕は覚えていないな…」
 とため息をついた。
「覚えていない?そんなの記憶を手繰れば、すぐに蘇るでしょう?」
 身を乗り出し懸命に話す彼を見ても、脳内の情報は変わらなかった。
「いや、ミュウの力でも無理だった…。ああ、君たちの所為じゃない、今回の事は関係ない。あの辺りの記憶は前から曖昧で粉々なんだ。君の前の記憶が壊変され過ぎてずたずたになってしまっているように、僕自身、上手く思い出せないんだ」
 諭すように説明をしてみたが、彼はがっかりしたように「そうですか…」と言っただけだった。だから僕は、僕の疑問を彼に聞いてみる事にした。
「だけど、今の僕にはその記憶は無くても、あそ場にミュウが居るか居ないかは僕は視てるはず、ミュウは居なかったと思うんだが…。仲間が居たら事態は大きく変わっていただろう。…しかし、君はよく僕に気が付いたね」
 事態が大きく変わる?彼はその部分に少し興味を持ったようだったが、僕の質問に答えてきた。
「あ、あの、僕は誰にも言ってないから、誰にもばれてないと思うけど、多分、あの時、僕はもうミュウだったと思うんです。だから、あの時、あそこであなたの中の大きな力を見て、僕は助けてもらえると思ったんです。だから…どうして…」
「そうかだから、君は、僕は大きな力を持っていても何もしてくれなかった。と言うんだね…」
「はい」
「あの時、僕は、助けて欲しいと言う君の気持、そして、君の願いを踏みにじってしまったんだね」
「あの!でも、もう謝らないで下さい。僕が勝手に期待してしまっただけですから…」
「でも、君がそう言っても、僕は君に許しが得たい」
「……」
 ノアでの事が彼にとって重荷になっているとは思えないが、僕は説明を始めた。
「あの時、僕は色々な事を知っていて、その現場に居たのに、何もしなかったのは事実だ。今になって何を言っても許されるものではないな…悪用されないように痕跡を消してあるいても、どこかで残るものなんだね」
 惑星メサイア襲撃事件の後で、ノアにあった研究所の全てが何者かに焼かれ何も残さず燃え落ちてしまっていると聞いた。あれはあなたがやった事だったんだ。僕には悲痛な顔で炎の中に立つジョミーが見えるような気がした。
「ジョミー。それは、人間が勝手にやった事であなたの所為では無いです。ミュウを作るなんて無理なんです」
「それでも、僕は彼らに僕の存在が無ければと言われたよ」
「そんな…」
「だが、今は僕の存在ではなくて、君の存在意義を見つけなくてはね」
 ジョミーは僕の目をまっすぐに見て行った。
 僕はその視線を受け止めたが、あやふやな作り笑いになってしまっていた。
 こんな僕の存在意義?それはもうずっと前から、きっと生まれた時から僕の手に中には無い。それをどうやって見つけるというのだろう。ミュウの力で、魔法のようにパッとどこから持ってこれるそんな簡単な物ならいいのに。そんなのを僕に教えてくれると言うのですか?それはどんな方法でだろうか…。ジョミーは僕に何を言うのだろう?
 ただ、じっと僕らはお互いを見つめていた。
「あの、今、僕が知りたいのは、あの時、あなたが何故何もしなかったのかが知りたいんです」
「そうか…」
 なら…。とジョミーは考え込んだ。
 そして、
「君は僕がスメールで言った。ミュウの力の事を覚えているかい?」
 スメールで話した事が何故ここに出てくるのか?と僕は思った。
「あなたが言ったのは、人の命の重さを知らなければならないというのと、ミュウの力は武器と同じで、剣や銃のように簡単に人を殺せてしまうから、そんな力を持つ者はそれに対して責任を持たなければいけない。でしたよね?」
「そう。君たちはそれを理解してくれているね。僕は嬉しいよ。それで、そこにはもう一つ考えないといけない事があるんだよ」
「もう一つ?」
「ああ、もう一つは、人を殺す事を自分の中で折り合いをつける事さ」
「え…」
 僕らの力は武器で、人を殺してはいけないのだと言ってから、そのすぐ後で、殺す理由みたいなのを考える?それっていったいどういう事なのか?僕はますますわからなくなった。
「それが…さっきの答えになるのですか?」
「いいや。彼らを殺せなかったのは別にある。だけど、君が人を殺せなくなったのは僕がそう教えたからじゃないかと思ったんだ…」
 何も知らず、人を殺してはいけないとは思っていなかった頃、多分死んでいるんじゃないかと思えるような事を僕たちはしてきた。倒すべき敵だと話に聞いてきたジョミーがあまりにも違っていたから、僕はただ彼に怯え甘えていた。だから、僕には信じられなかった。「彼らを殺せなかった」って、ジョミーは、あの運び屋を殺すつもりだったんだ。緊張が走った。そして、得体のしれない怖さが僕に忍び寄っているのを感じていた。何が起きようとしているのだろう。
「…あ、でも、僕は、海賊にも誰も死んで欲しくなかっただけ」
「わかるよ」
 ジョミーは優しくそう言った。だけど、一度高鳴りだした心臓はなかなか落ち着いてくれなかった。
「それじゃあ、殺せば…良かったんですか?」
「ああ、君が失われるくらいなら、僕は何人でも殺せる」
「でも。それじゃ、キースが、ミュウと人類はまた戦争になるかもしれなくて…」
「だから、僕がキースを死なないように殺すんだ」
 ここにきて、僕はジョミーが怒っている事に気が付いた。彼は僕がした事を怒っているんだと…。
「僕は、あの、ジョミー!ごめんなさい」
 大きな不安が襲ってくる気がする。僕はとにかく謝らないと、と思った。
 そう、別に僕はキースを助けられて良かったとは思ってはいない。だけど、もう自分が死んでしまえば楽なんじゃないかと思ってしまったのも事実だった。自殺しようと思った訳じゃないなんて…でも、そうした方が楽とは思っていた。だったら、彼を庇っても死んでも良いんじゃないかと思ったんだ。
「ああ、いや。君を責めてはいないんだ。あんな事になるくらいなら、最初に僕がさっさと手を下しておけば良かったのかもしれないと思った…ただそれだけで。今は、僕も、人は殺したくはない。でも、僕は殺せるんだ。そんな矛盾が僕の中にあると言いたかっただけなんだよ」
「矛盾…?」
「そうだな。君にはまだ早いのかもしれないね。もう少し、人の中で生きてから…にした方がいいのかもしれない」
 そう言ってジョミーは立ち上がってモニターから外れてしまった。
「ジョミー?」
 と呼ぶと「何?」と答えは返ってくる。
 画面にはアルテメシアの空港の貴賓室が映っているだけだった。さっきまでジョミーが座っていた応接セットの大きな椅子と、その向こうには大きな窓、外は青空と白い雲が見えていた。
 どこかの窓が空いているのか、ゆらゆらとレースのカーテンが揺れていた。
 そんな平和な光景だった。
 時間にしてもそんなに経ってはいない。ただジョミーが宙に浮かせたモニターのカメラを自動追尾にしていないだけだった。
 そんな短い時間だけど、僕はどうしようもなく不安に駆られた。
 さっきの心臓のドキドキが戻ってきたのか、不安でたまらなくなった。
 それはまるで、親に置き去りにされた子供のような気分だった。怖くて、寂しくて、不安だった。人を殺せなかったとジョミーが言った所為か、僕に怒っているのだと知ったばかりだからか、僕にはまだ早いと言われたからか、僕は泣きそうな気分になっていた。このまま、今ここで捨てられるかもしれない。そんな不安が襲ってきた。
「ジョミー!」
 僕は叫んでいた。
「な、何?」と驚いた顔で、ジョミーが画面に戻ってきた。
「ごめんなさい」と僕は頭を下げた。
「ああ、僕の方こそ、ごめん。カメラが追尾になってなかったね」
 ジョミーは空港が騒がしかったんだと言った。
 彼は頭を下げたままだった。
 ジョミーは…これには、少し心が痛んだ。僕は彼の不安を煽って心を開かせている。
 近くに居ればたやすい事だが…。流石に距離があるから時間がかかってしまう。
 そろそろか…。
「ごめんなさし。あの時、あなたが助けてくれなかったのを、何もしてくれなかったのを、ずっと悲しんでいた訳じゃありません。だって、でなければ僕はブルーに会えなかったから」
 ジョミー。そこは順番が違うよ。ノアに居た頃はもうとっくに君たちは会っているはずだ。君たちはもっと小さい時に会っている。
「ジョミー」
「だから、僕は良いんです。きっと一緒だった子供達もあなたに葬ってもらえて良かったと思ってます」
 彼は頭を下げたまま話している。
「……」
「僕は、きっと、とても悪いんです。あなたやフィシスと会ってスメールに行けて本当に嬉しかったのに、本物のあなたにブルーが惹かれてゆくのを見て、僕はあなたに嫉妬したんです。だって、スメールでも、戻った時でも、いつもいつも、あなたはブルーばっかりで。僕は、ブルーにもキースにも、ずっとあなたの事しか言わないシドにも、必死になっているトォニィにも。そんな皆に嫉妬してたんです」
「……」
 彼の心は開かれた。
 手に取るように彼の痛みがわかる。
 暗闇で握りしめている手を開くとキラキラとした小さな光が残った。
 それが彼だ。愛しかった。
 僕は泣きそうになるのをこらえていた。
「ソルジャーズのブルーはもちろんだが、トォニィもシドもフィシスも、そしてキースも君が好きだよ」と僕は言った。
「だから、僕はあなたが消えた時、嬉しかったんです。だって、あなたに成るように育てられて、本物が目の前で消えたなんて、どうしてもそう思ってしまう。だから、あなたの代わりをしていられたのは楽しかった。でも、それは最初だけで、あなたがいつもどんな気持ちであの大変な状況で生きていたかがだんだんとわかってきて…。どこにいても何をしていても、どこかで人類に監視されてる。ミュウだって、いつも誰かが何かを言ってくる。願ってくる。その全てを叶えるなんて出来ない。だって、ソルジャーは神じゃないんだ。トォニィやシド、キースやセルジュ、ヴィーやジュピターの時のあなたの友人たち。そんな皆のフォローがなければ僕は二年もあなたの代わりは務まらなかった」
「ジョミー。落ち着いて。目を開けて、そして手を」
「え?」

 僕はゆっくりと目を開いた。 
 ザアッと風が過ぎる。そこは、僕と彼だけの世界。
 僕たちは向き合って浮かんでいた。そして、彼は僕の手を取ると静かに着地した。
 回りを見回すと、ガラスで造られた丸いドームだった。
 ガラスの外の宇宙を写しながら白く光るどこまでも続くようなガラスの床。
 所々に遥か高い天井から下までまっすぐに下がっている透けるドレープ状の床までとどく白いカーテン。
 宇宙には遠くに見える太陽と、青い地球と月、火星と木星。
「…ここは?」
「ようこそ。ジョミー。ここは僕の精神世界だよ」
「精神世界…」
「つまりは心の中だよ」
 僕はノアに居てジョミーはアルテメシアに居る。最新の戦艦で何回も跳んで、それでも二か月はかかる距離だ。それをこんな風に繋げてしまうなんて…。そんな信じられない事をしてしまう彼が、僕の目の前で優しく微笑んでいた。
「どうやって、どうして?」
「ここに来てもらうのに時間がかかってしまったけれど、僕は今から君に人を殺す話をするつもりなんだ。前と反対の事を言うようだが、聞いてもらえるかな?だから、そんな話は通信じゃなくて、二人だけの方がいいだろうと思ってさ…」
 と小さく笑った。




  続く





『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十七話

2013-05-06 02:46:44 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十七話

 画面に映るジョミーはもうすっかり元通りに見えたが、怪我の回復があまり思わしくないと聞いていた。
 それでも、命も危ぶまれた状態だったのだから、一年足らずで通常の生活が出来るまで回復したのは彼がやはりミュウだからだろう。
 お互いが言葉を探る中、ジョミーは静かに話し出した。
「まず僕は君に謝らないといけないね。君に、本当にすまない事をした」
 力強い瞳でまっすぐに自分と良く似た顔を見つめてそう言った後、僕はゆっくりと頭を下げた。
 僕の顔が起き上がりまた相手を見るまで待ってから、ソルジャーズのジョミーはどう返事をするべきかと言うように頭に手をあててから、頭を掻くしぐさで彼は答えた。
「あれは、僕が勝手にした事です。あの、あれで死んでも僕には後悔は無かったんです。ああ、でも、信じてはもらえないかもしれませんが、皆が言っているように、死にたかった訳じゃありません。えっと、それで、ミュウの医療技術が無ければ助からなかったのは、わかっています。だから、あの、謝らないで下さい」
 そう言ってさっきのジョミーと同じように頭を下げた。
 そんな彼を見つめて、和みそうになる心を打消してジョミーは答えた。
「君が助かったのは君の生命力だよ。君が生きたいと願ったから助かったんだ。ミュウの力の本質は意思の力だから、そんな君を、僕は読み違えていたんだ。僕がキースを見殺しにして、ミュウによる力での支配を考えているという僕の本心を君は見抜いたんだ」
 僕の言葉に意外そうな表情を浮かべながら、僕から顔をそむけてしまった相手にどうしても気持ちが動く。このまま、ここでお互いに許し、流す事も出来るだろう。
 でも、それはしてはいけないんだ。
 わかって欲しい。逃げないで僕に向かって来るんだ。 
「僕はそこまで見ていません。僕は、ただあの場から逃げたかったんです」
「キースを殺すまではいかなくても、彼に瀕死の重傷を負わせた将軍を僕らが拘束する。僕が集めた人類の総意で戦争を終結させて、完全なる平和という理想を掲げて人類を力で操る。それがミュウをあの戦争へ介入させた目的だった。僕らは十年以上も待ち続けた。受け入れられるだけじゃ足りない時が来ていた」
「甘い蜜と苦い毒ですね」
 彼は下を向いたまま、ぼそりと呟いた。
 僕はその答えに安堵した。
 君は僕になるように育てられた。だけど、同じではないのだから、僕に言いたい事があるのなら向かって来て欲しい。
 彼は人として生まれた分だけブルーよりもプライドが高い。それは、彼自身の不幸な境遇も上乗せされているのだろう。プライドなど無いと言う彼はそれだけ自分を守る殻が硬いんだ。それさえ開けれれば、本当が見えてくる。
 こうして僕らの戦いは静かに始まった。
「ああ、その通りだ。蜜は甘くなければ意味は無いからね。とにかく、あの時、僕は君を読み間違えた。いや、僕は君を軽んじていた。正確には君たちをと、なるのかもしれないけど、それは、取り返しがつかない僕の過ちだ。謝っても許してもらえないだろう。君にスパイのような真似をさせてしまったのがいけなかったんだ」
 僕はもう一度頭を下げる。
 それに対し、彼はさっきと同じように答えた。
「それは、僕がミュウを、貴方方を避けていたのも原因がありますから、それに僕はその立場を選んだのですから」
「だけど、僕はクローンのブルーと同じ扱いをすると、タイプブルーとしての能力的な事は、僕とトォニィが助けると言ったのに、僕は君に何も出来ていなかったんだね。君には荷が重かったんだ」
 画面越しでも、彼の心がざわつく音が聞こえた。 
「…奇異の目にさらされる僕たちをスメールで暮らすようにしてくれた事は感謝しています。人として生きる道も、ミュウとして生きる道も、示してくれた」
「だけど、それは僕のエゴでしかない…」
「それは…」
「許される事ではない」
「罪滅ぼしで優しくしたと言うのですか?」
「ああ、罪悪感はあった…。特に君には…」
 画面の向こうで苦しげな表情をしているジョミーを見ながら、ソルジャーズのジョミーは叫んだ。
「僕は、あなたの謝罪を聞く為にてこうしている訳じゃありません!話がしたくてこうしているんです、だから…」
 とても苦しい。とジョミーは思った。
 まるで、小さな子供を苛めているような気持ちが襲ってくる。ソルジャーズのジョミーは本当に良い子なんだ。僕とは似ても似つかない。僕は苦い表情のまま、思わず「ごめん」と呟いていた。
 そして、僕は小さく笑い、ため息をついた。
「わかった。もう謝らないよ。それで、君は僕と何を話したいんだい?」
 そう言うと、彼の表情はとたんに明るくなった。
「えっと、あの、色々あるけど…」
 真剣に悩む彼を暫く眺めてから、僕は「では、ジョミー。好きなように質問をしてくればいい。僕はそれに正直に答えよう」と言った。
「えっ?質問を?」
「ああ、その方が楽だろう?」
 聞きたい事は沢山あるのに、どれから聞けばいいのかわからない。と、また彼は悩みこう言った。。
「じゃあ、最初に会った時から、どうして僕たちを殺さなかったのですか?」
「メサイア襲撃の時だね。あの時は、君たちと戦って手に負えないようなら、殺すしかないと思っていたよ。だけど、君たちは惑星ノアを救ってくれた。あの時から君たちを引き入れようと思った」
「あの時は、あなたが協力をしろと有無を言わせなかったんじゃ…。でも、僕たちは本物のあなたを見て圧倒されたんです。あなたと居ればもっと上に行ける。もっと力を手に入れられる。そう思ったんです」
「ミュウとしての戦い方はトォニィから教わった方が効率がいいのに、きみたちは僕にせがんでいたね」
「だって、メサイアはちょっと行きにくくて…。でも、スメールはとても楽しかった。同年代とあんな風に楽しくいれる時が来るなんて思っていなかったから、とても、嬉しかった。だから、僕たちは子供のままであなたに甘えていた」
「そのままで居れれば良いと、僕もフィシスもそう思っていたからね」
「でも、僕がタイプブルーでは無いのに気が付いたのは、最初から?」
「ああ、知っていた。それはトォニィも同じだ。君がいつからそうしていたのか僕らは調べていたんだ」
「じゃあ、、僕がタイプブルーじゃないとばれないようにスメールに?」
「それもあった。でも、タイプが何であろうと、僕にもトォニィにも、君が強いミュウであることには変わりないけれど、仲間たちの中にはそこを気にするのも居るだろうから」
「僕がクローンじゃない事もわかっていたの?」
「それは、少し経ってからかな。曲がりなりにもスメールは遺伝子研究所だからね」
「遺伝子研究所…」
「ジョミー?」
「……」
「嫌な事を、思い出させてしまったかな…」
 不吉な未来を視てしまった時のような表情で彼が僕を見つめている。
 僕はその意味がわからなかった。
「でも、どうしてなんですか?ジョミー。あなたはあの時何もしなかった」
「何が?あの時って…いつなんだ」




  続く



『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十六話

2013-05-06 02:34:41 | 『君がいる幸せ』 Missing-link編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
  <人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーはクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 Missing-link編 「伝えたい言葉」 十六話

「大丈夫ですよ。辛くて忘れてしまえば良いと思う事もあるけど、記憶を失っても僕は貴方の事を忘れない」
 ジョミーはまっすぐにブルーを見つめてそう答えた。
「ジョミー。君は知っているかい?僕がどれほどの思いで君を探して来たか、君を見つけた時、僕は喜びで死んでしまうんじゃないかと思ったよ」
「…ソルジャー・ブルー」
 本物のブルーのように、僕に言い聞かせるように優しく語りかけてくる。それは、アルビノの銀髪の紅玉の瞳。薄紫のマントをなびかせ銀色の装飾のあるソルジャー服を着た彼がそこに立っている錯覚を僕に起こさせた。
「だから、僕は君を救いたかった。全てを成し終えた時、君の瞳で見た世界を君の思いで生きていって欲しかった。君の、君だけの幸せを見つけて欲しかった…ただそれだけを願った」
 彼は胸の前で手を組んだ後、僕に向かって手を差し伸べた。僕は思わずその手を取りかけたが、すぐに戻し答えた。僕には、ここで伝えなければならない事があった。
「知っていましたか?僕は、そんなに、それほどまでに想ってくれる貴方を見殺しにしたんですよ。あの時の不安は貴方の死も予告していたのに…」
「見ていればわかるさ…。知っていたよ」
 ブルーは優しく微笑んだままだ。
 そう。
 ここで、貴方に贖罪しなければ僕は先へ進めない。
「僕は、この先…生きて再び会えない事を気付いていました。けれど、貴方を追わなかった。守らなかった。僕は選んだんです。愛する人と、仲間たちのどちらを命を優先するのかを…。その選択に悔いはありません。たとえ、貴方が僕に追えないように指示をしていなくても、僕は皆を選んだと思います」
「君の選択は間違っていない。あらゆる全てに予感はあった。だから、僕はその先で君を待つ事にしたんだ」
「大戦中に、テラズナンバーやコンピューターテラを探す内に、貴方の痕跡を見つけて、その意味を知った時、僕は愕然としました。貴方は全てを成し終えたその先まで用意していると…何てことをして逝くのですか。僕は貴方に何もしていないのに…何も…」
 まだ足りない。まだ全部言えていないのに、後悔の感情が溢れてきて、僕は泣きそうになった。
「……」
 ブルーは笑顔で僕を見ている。
 これが最後なら言わなくてはいけない。泣いてちゃダメだ。僕は笑っていなければ、そうは思っても心が悲鳴を上げていた。
 遥かな未来で彼に遭うとしても、それは、今の僕じゃない。そして、今の貴方でもない。
 今は、今しかないんだ。
「貴方とマザーとの約束は、マザーは僕への遺伝子を途切らせない事、それはミュウを遺伝子レベルで排除しない事ですね。そして、貴方は迫害されながらも僕を見つけ育てる事」
「そう」
「僕という人間は、いったいどれ程までの罪を負うのでしょうか…。ミュウが僕を作る温床だったと、人類が決断をするその為に用意された戦争。全ては僕に何を託し、僕は何を見て、人類全てに何を望べば良かったのでしょうか」
「君は何も望んでいない」
「ブルー?」
「望んだとしたら、僕と同じだ。青い地球を望んだんだ」
「ブルー。それは、僕が本当に望むのは、貴方です。僕は貴方が好きです。何もいらない。何も、貴方さえ傍に居てくれたら…僕は何も望まない」
 ジョミーは再び泣きそうになるのをグッと堪えた。
 それを、ただ優しく見つめブルーは言った。
「ねぇ、ジョミー。僕の名前は何?」
 僕はうつむきかけていた顔を上げてブルーを見た。その後ろに青い地球が見えた気がした。
「ソルジャー・ブルー。貴方は、ブルーです…」
「そうだ」
「そうですね。貴方は地球そのものなんですね」
「君は僕の最後の希望だった」
「僕は貴方に、貴方は僕に青い地球を見せる為に生まれてきた。青い地球に戻すために、それが、人類の最後の願いで希望なんですね。それは途方もなく長いですね…」
 もうジョミーは泣いていなかった。
 穏やかな笑みでブルーを見つめていた。
 その瞳を見返してブルーも微笑んでいた。
 彼の目には、僕の後ろにも青い地球が見えているのかもしれない。そんな、優しい眼差しだった。
 ああ、もうこれで終わりだ。
 ここで終わるのが僕らには相応しい。

「僕は貴方に再び出会った。僕はもう大丈夫です。先にあの頂きに行っていて下さい」
「ああ、わかっているよ。僕らの望みは叶ったんだね」
「ええ…叶いました」
「君はこれを遠回りだったと思うかい?」
「いいえ。僕は少しも…思いません」
「ジョミー」
「今だから、今でなければわからなかった。今でなければ会えなかった。何一つとして無駄はないと思います。苦しかった事も、悲しかった事も、辛かった事も全てです。それは全部、この今でなければわからなかった。今でなければいけなかった。僕は、その全てを持ってこの先へゆきます。ブルー。僕は、今、幸せです」
「そうか、良かった…」
 ブルーがにっこりと笑った。
 ジョミーがブルーに抱きつき、その勢いのままキスをする。
 ブルーはそれを優しく受け止めた。
 やがて、ジョミーがオレンジ色に光りだす。
 僕と貴方の繋がりを、今、切ります。
 クローンのブルーから、ソルジャー・ブルーが去ってゆくのをジョミーは感じていた。
 それは、僕の中のブルーも同じだった。
「ありがとう」
 と、聴こえた気がした。

「ブルー。それは…僕の台詞ですよ。今まで、ありがとうございました…。僕はもう…大丈夫です…」

「これで、良かったんだよね?ジョミー」
 君はきっと「あなたが決めたのなら、僕はもう何も言いません」と言うだろうね。


「キース」
 歩いてゆくブルーを見送りながらジョミーが声をかけた。
 隣の部屋に居たキースが傍に歩いて来た。
「気が付いていたか?」
「うん。多分。知らない振りをしていたのだと思う」
「二人で会うと約束だったのに、俺がこうして傍にいるなんて、よく見逃したな」
 ソルジャーズのブルーを見るキースの目に優しい光が見える。
「きっと…」
「……」
「いや、わからないな。多分もう今さらだったんじゃない?」
「今さら?何がだ?」
「僕が彼らを騙すのがさ」
「お前…」
「わかってる。こういう言い方が彼らは気になるんだ。彼らは必死に生きてゆこうとしている。それに水を差す気はないさ」
「お前はまたそんな事…」
 と言いかけて、キースは質問を「お前はこれからどうするんだ?」に変えた。
 それは、きっと、ブルーを見送る僕の目にも何らかの変化があった事を彼は見て取ったのだろう。本当にキースは勘が良い。
「僕はしばらくアルテメシアにいるよ。まだスウェナに会ってないし…ブルーは、ノアに帰ると言うのだけど、あの子は、ベルーガが無いからどうも民間船でここまで来たらしい。彼の持つ影響力も教えないといけないね」
「ノアか…プロメテウスは三日後には出港だ。あれに乗ればいい」
「ありがとう。伝えておくよ」

「それより、ジョミーとの話し合いはどうだったんだ?」
「ああそれは、あの子もとても良い子で、下手な小細工なんか要らなかったと思ったよ」


  三時間ほど前
 僕はブルーと会う前にソルジャーズのジョミーと会っていた。
 彼は惑星ノアに居るので通信だけだったが、彼とこうして二人できちんと会話をするのはあの海戦以来だった。
 僕は彼と会う前を少し昔を思い出していた。
 僕が彼ら研究所の存在を知ったのは大戦中。人間がミュウを作り出そうとしているとの情報からだった。
 その頃はまだミュウ因子を人間の子供に植え付けて育つのを待つ程度のものだった。
 狂気とも思えるその研究が加速したのは、大戦後だ。僕が地球(イグドラシル)で大怪我をして人類の医療船に助けられてから…。あの時、研究者の一人があの船に乗っていなければ、そして、僕がソルジャー・ブルーの体を人類の許に残すような事をしなければ、彼らは作られる事無く、僕らと会う事も無かった。
 こんない運命に巻き込む事も無かった。
 僕とブルーの存在が、人間のミュウ化と共にクローンの研究もおこなわれるようになった原因だ。

「お前が存在しなければ」と言う人間。
「存在させ続けなければならなかった」マザー。
 それでも、僕はここにいる。
 そして、彼らを生み出すしてしまった。
 彼らの不幸は僕が作った。そうとしか思えない。
 僕は、メギドの惑星メサイア襲撃事件の後で、惑星ノアに跳んだ。そこには、助けられなかった多くの子供たちの遺体があった。人の形を成していない物まで、実験体の遺骸も同じように放棄されていた。僕はそこを塵の一つも残さないように燃やしつくした。僕はもっと早く手を尽くすべきだったと痛感した。
 木星などに引っ込まずに、逃げ込まずに、動くべきだったんだと。
「クローンに会ってみたい」なんて思ってはいけなかった。
 ミュウ因子はそれを持っているかいないかの二つしかない。それは、どこかで「オリジン」と繋がっている者だ。
 ジョミーの場合は異質だったと言える。彼は僕の遺伝子と繋がっている。だから僕たちはとても良く似ているんだ。
 彼の記憶は幾度となく操作されていて彼自身からは正確な情報はもう得られない。
 僕らが調べた結果では、彼は開拓を放棄された惑星の生き残りで、僕に似ている事から研究対象にされた。ただそれだけだった。そこだけ、不自然に記録として残っていた。
 その意味を僕は知っている。
 やがて、ミュウとなった彼は、僕、「ソルジャー・シン」となるべく教育され、記憶を書き換えられ続けた。
 推測だが、小さな機関がさまざまな所に在り、移動を続ける研究所のどこかで育てられ保管され、そのどこかでブルーと出会ったのだろう。そして、ブルーが覚醒した時のストッパーとなった。そこにブルーが望みタイプブルーの力が加えられた。
 彼の、ソルジャーズのジョミーはタイプイエローだ。
 戦闘タイプのタイプブルーの力はオールマイティーな能力を持っている。
 攻撃力も防御力も高い。だからと言って他のカラーのタイプが弱いと言う訳ではない、心の思いが強ければタイプブルーの力を凌ぐ事もある。
 僕が幼いシロエとカリナから受けた強い拒絶。彼らは何かを守る為に使う防御はとても強い。そう、自分を捨てていける強さだ。
「だから、僕はタイプイエローが苦手なのかな…」
 自分を守れなければ人は守りきれない。
 タイプブルーの力なんて、大事な人の手を離さなければ護りきれない強さなんだ。
 思考がそこに行き着いてしまうと、もう何も考えられなくなる。
「命を捨ててもか…」

 そろそろノアと通信が繋がる頃だ。
 空港の外が騒がしくなった。
 新造戦艦「プロメテウス」が入港したようだ。
 キースの到着だ。
「キース。僕がさ、マツカの事を話さないのは彼に嫉妬してるからなんだよ」
 僕はアタラクシアの空を見上げた。

 

   続く





月イチ雑記 「今後の事ですが」※転載先決定しました。

2013-05-02 23:27:53 | 月イチ雑記「青い星」
☆雑記です。

続けたいなぁ、って理由だけで始めた二部。
完全番外って表記したのに、全然番外じゃなくって、これじゃあ、完全二部ですね;って事で、タイトル・カテゴリーを変えます。
申し訳けありません><完全番外は今後のタイトルで使ってゆきます。

二年間書いてきたこの二次小説。
とても楽しかったです。
あと少しで終わりますが、まだ構想だけならあります。
でも、固まっていない状態で書くと、今回みたいな事になってしまうので^^;
まぁそれも、ブログ小説らしいと言えば、そうなんだけど。
今後はきちんと短編の作り方を勉強して、短編の形式で書いてゆこうと思っています。
そして、より小説っぽく書く予定です。
短編でも一話で終わる物ではなくて、4話くらいある物がいいなと、週イチで書いてその月で終わるような形が理想です。

何かイベントがあれば、それでも書くつもりです。
今からなら…七夕かな?
秋締めの大賞の公募にも何かを出したいので、オリジナルも書きます。
(公募ものはここには書けないですけど…)
それから、ログインできない事件?があった事から、他に転載させてゆくのも始めるのから、この後の二話が終わったらしばらく休みます。

で、月イチで「青い星」のタイトルで「真城灯火」について書こうと思っています。
書いてる人になんて興味ないって方は、すみません;飛ばして下さい。
真城灯火の名で別ブログを書いていますから、そちらを見て下さってる方もいるかな?
あっちではなんでもかんでも書いているので、反対に「小説」話が書けなくて、ここでは「小説家になろう」で書いている物の事とかのCMをしたいなぁ。とか。
やっている音楽の事とか。今、ハマっている事とか。
その時その時の事を、少しだけ書こうと思っています。
小説を終わりまで書いたら、今度は感想を書くので、そこで転載先のお知らせと・・・
残っているラブモードの話の事も書けたらなぁ~。と思っています。
「砂吐かせてやろう」と、でも、どうなんでしょうねぇ。
なんか、もう、ジョミーではなくてキース次第な気がしてきてるのですが…。

あ、丁度1000字。

この短さで一遍書けるのが理想です。あぁ、無理だわ;
「青い星」は、目指せ千文字以下です(笑)と言う事で、終わります。

※ここ以外の掲載先が決まりました。
小説サイト「ハーメルン」さんです。
http://novel.syosetu.org/10190/
↑ので、読めるはずです。

まだ第一部「君がいる幸せ」解説と、一章「黄昏の海」しか無いですが、
最初から順に読むなら、ここより読みやすいと思います。
久しぶりに一話「はじまり」を読みました。
どれだけ恥ずかしい思いをするかと思っていましたが、意外にそうでもなく、頑張ってるな自分などと思いました。
「なろう」へ書いた時に書き直して、PCトラブルの時も触ったし、今の文の方が出来が悪いんじゃ?と思ったり…(笑)
もっと、精進しないといけないですね。
それで、加筆を大幅にしたいなぁ。などと思っています。頑張ります。