☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十話
シドは軽く船を見て回った後、第一艦橋に入った。
舵を中心にして左右に三席並ぶ、自分の右隣、副操縦席がジョミーの席だった。
通信士がメサイアの管制塔と通信していた。
「発進シークエンス。異常なし」
「了解」
シドと同じように各所を見て回っていたジョミーが艦橋に入って来る。
いくつものウィンドウを出して一つ一つを確認していたシドが愛しそうに舵に触れているのを見て彼に近づき声をかけた。
「シド。君は本当に船が好きなんだね」
「宇宙(そら)が好きなんです。僕は船で生まれて育ったようなものですからね」
「そうだったね」
「……」
艦橋で航海予定の最終調整をしながら二人は会話を続けた。
「まずはスメールへ向かう」
「フィシスに黙って行ったら後が怖いですからね」
「出来れば会わずに行きたいくらいだ。学園での事や海賊事件。クローンのジョミーの事やブルーの事とか、まとめていっぱい叱られてからまだ一年過ぎた所だから…この事を伝えたらまた怒られる。最近は彼女に会うのが怖いよ」
「怖いもの無しより良いですよ」
とシドが面白げに笑った。
「どうして皆を巻き込んだのかって言われるな…」
この新しい船の乗組員はシドが集めてきた二十名足らずだった。
「ジョミー。謎の多い辺境の西に向かうには、この人数では少し心もとないですか?」
「セドルから聞いたが惑星ニュクスは言われている程怖い所ではない…普通の人間は入れないだけだ…」
「ジョミー。まさか彼の為ではないですよね?」
「彼個人の為ではない…。シド。この船は僕一人でも操縦できるようになっている…だから」
「ダメです」
「……」
「シールドやワープにミュウの力を使う以上、いくらあなたが無尽蔵に力を出せるのだとしても、一人じゃ着くまでに干からびちゃいますよ」
「シド」
「そんなにミイラになりたいのですか?」
「ミイラにはなりたくないな…」
とジョミーが言った時、二人の後方から声がした。
「僕たちは死ににいく訳ではないと思っています」いつの間にか艦橋に乗組員が集まってきていた。
「みんな…」
「ジョミー」
「この旅は皆の命を危険にさらすかもしれない…だから…」
「信じています」と口々に言った。
「ジョミー。ソルジャーも僕らを信じて下さい」
「何を言っても、誰も降りたりしないよ」とシドが言う。
「……」
「大丈夫です。何があっても僕らは切り抜けてみせます。だから、信じて下さい」
皆が真剣な眼差しでジョミーを見つめた。その顔に「僕を信じて」と言ったトォニィがダブった。
「今回ばかりは皆の言う事をきかないと、ジョミーがここに置いていかれるかもしれない」とシドが笑った。
シドの言葉に笑みをこぼしジョミーが皆に言った。
「わかったよ。みんな。約束をしよう。僕は皆を信じる。そして、僕たちは誰ひとりとして欠けないでここに、僕たちの星に帰って来よう」
「では、皆、作戦開始だ」
「了解」乗員がバラバラと各部署へと散って行った。
「セドルはもうニュクスへ向かっている。こちらも出る事を伝えてくれないか」
「送信完了しました」
と通信士が言う。
「ありがとう」
「出港用意」
「固定リング、パージ」
船を支えていた光の輪が静かに色を変えて、やがで宇宙に溶け込む。
「Sacred Heart発進」とジョミー静かにが言った。
「進路スメール」シドが続けた。
微かなエンジン音とともに船は宇宙(そら)へと進みだした。
スメールへの寄港後、宇宙を進む『セイクリッドハート』この名前はキースが付けたものだった。
「聖なる心ですね」とフィシスが言った。
「僕はcross Haertが良いんだけどね」とジョミーが答える。。
「彼には貴方が殉教者のように見えているのかもしれませんね」
「殉教者?」
「はい」
「だったらそれは、フィシス。僕は理想を追うだけで何もしないバカだと言う意味だよ」
「今度の事は二人で決めたのですか?」
「ううん。二人でもないし、独断でもないよ」
ジョミーはフィシスとの会話を思い出していた。
「ジョミー」
とシドが声をかける。ジョミーは「何?」とシドに答えた。
最後のワープが終わりレーダーが小さな青緑の星を映し出していた。
「惑星ニュクスが見えました」
「あれがSD体制の始まりの地、ニュクス」
「ジョミー。人の記憶とは何でしょう?」
「記憶か…なくてはならないものかな?シドはどう思う?」
「確かに必要ですが。無くてもいいものもありますよね?」
「無くてもいいもの?それは忘れたい記憶の事?」
「…いいえ。それは別に。僕が言いたいのは、良い記憶だけ覚えている訳でもないし、悪い記憶だけでも無い。記憶って正確なものなんでしょうか?」
「ん、それは人それぞれかな…」
「正確ではないって事ですか?」
「同じ物を見ても皆で感じ方が違うからね」
「同じ物でも違う…」
「人はどうしても感情が入ってしまうから見たままにはなっていない。でも、だからといってその記憶が間違っているとは言えない。言えないが、やはり鵜呑みに出来ない時もある」
「では、人はそれぞれが記憶を書き換えて生きている?」
「無意識で操作はしていると思う。今はマザーがいないから自分の力でやっているって事だね」
「でも、それなら、記憶ってそんなに重要な物なんでしょうか?」
「ここにあるのは人類全体の記憶。マザーがやってきた全てがここに眠っているんだ」
「それが人類の脅威になるのですか?」
とシドが聞いた時、通信士が言った。
「ソルジャー。通信が入っています」
「セドルからか?」
「はい」
「開いてくれ」
艦橋の上部にセドルの顔が映った。
「待ちかねたよ。ジョミー」
二隻の合流ポイントにはもう一隻、待っていた。
それはベルーガ2。
「ジョミー」
とソルジャーズのジョミーがソルジャー服を着て映っていた。
「軍は動いた。今からそちらに行く」
とジョミーが言った。
やがて、ジョミーを乗せたセドルの船がニュクスへ向かっていった。
セイクリッドにはソルジャーズのジョミーが乗り込んだ。
艦橋へ入りシドの右隣の席に着いた。
シドはその手が小さく震えているのを見た。
その視線に気が付いたジョミーが震えを止めるように握りこぶしを作った。
「ジョミー…怖いですか?」
優しくシドが声をかける。
「ジョミーの替わりをするのは慣れているから…大丈夫だと思ったのに…。こんなに一人が怖いなんて…思わなかった」
「大丈夫。きっと出来るよ」
「今までは会議でも何でも言う事が決まっていて、僕はただ演じれば良かった。いつも、ブルーが居たし、キースもいた…」
「彼が怖い?」
「怖い。敵に回すには大き過ぎる…僕にはできない」
「ジョミー。それは怖いのは当たり前だよ。人類全体が敵だなんて、誰も無理だ」
「シド。前に僕はミュウと人類の両方を憎んでいるってジョミーに言われたけど、あれは何にもわかっていない子供のたわごとだったと、今、気が付いた…。嫌だ嫌だと言うのは簡単なんだ。人とは違う力があっても何も出来ない」
「大丈夫。僕ら全員がついているから」
「ジョミーは、こんな恐怖にずっと耐えてきたんだね」
「ああ…それがソルジャー・シンだ」
「それなのに、あの見ず知らずの人類の星を守ろうとしてる…」
セイクリッドの乗員は惑星ニュクスへ降下してゆく船を見つめた。
続く
<用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属
『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十話
シドは軽く船を見て回った後、第一艦橋に入った。
舵を中心にして左右に三席並ぶ、自分の右隣、副操縦席がジョミーの席だった。
通信士がメサイアの管制塔と通信していた。
「発進シークエンス。異常なし」
「了解」
シドと同じように各所を見て回っていたジョミーが艦橋に入って来る。
いくつものウィンドウを出して一つ一つを確認していたシドが愛しそうに舵に触れているのを見て彼に近づき声をかけた。
「シド。君は本当に船が好きなんだね」
「宇宙(そら)が好きなんです。僕は船で生まれて育ったようなものですからね」
「そうだったね」
「……」
艦橋で航海予定の最終調整をしながら二人は会話を続けた。
「まずはスメールへ向かう」
「フィシスに黙って行ったら後が怖いですからね」
「出来れば会わずに行きたいくらいだ。学園での事や海賊事件。クローンのジョミーの事やブルーの事とか、まとめていっぱい叱られてからまだ一年過ぎた所だから…この事を伝えたらまた怒られる。最近は彼女に会うのが怖いよ」
「怖いもの無しより良いですよ」
とシドが面白げに笑った。
「どうして皆を巻き込んだのかって言われるな…」
この新しい船の乗組員はシドが集めてきた二十名足らずだった。
「ジョミー。謎の多い辺境の西に向かうには、この人数では少し心もとないですか?」
「セドルから聞いたが惑星ニュクスは言われている程怖い所ではない…普通の人間は入れないだけだ…」
「ジョミー。まさか彼の為ではないですよね?」
「彼個人の為ではない…。シド。この船は僕一人でも操縦できるようになっている…だから」
「ダメです」
「……」
「シールドやワープにミュウの力を使う以上、いくらあなたが無尽蔵に力を出せるのだとしても、一人じゃ着くまでに干からびちゃいますよ」
「シド」
「そんなにミイラになりたいのですか?」
「ミイラにはなりたくないな…」
とジョミーが言った時、二人の後方から声がした。
「僕たちは死ににいく訳ではないと思っています」いつの間にか艦橋に乗組員が集まってきていた。
「みんな…」
「ジョミー」
「この旅は皆の命を危険にさらすかもしれない…だから…」
「信じています」と口々に言った。
「ジョミー。ソルジャーも僕らを信じて下さい」
「何を言っても、誰も降りたりしないよ」とシドが言う。
「……」
「大丈夫です。何があっても僕らは切り抜けてみせます。だから、信じて下さい」
皆が真剣な眼差しでジョミーを見つめた。その顔に「僕を信じて」と言ったトォニィがダブった。
「今回ばかりは皆の言う事をきかないと、ジョミーがここに置いていかれるかもしれない」とシドが笑った。
シドの言葉に笑みをこぼしジョミーが皆に言った。
「わかったよ。みんな。約束をしよう。僕は皆を信じる。そして、僕たちは誰ひとりとして欠けないでここに、僕たちの星に帰って来よう」
「では、皆、作戦開始だ」
「了解」乗員がバラバラと各部署へと散って行った。
「セドルはもうニュクスへ向かっている。こちらも出る事を伝えてくれないか」
「送信完了しました」
と通信士が言う。
「ありがとう」
「出港用意」
「固定リング、パージ」
船を支えていた光の輪が静かに色を変えて、やがで宇宙に溶け込む。
「Sacred Heart発進」とジョミー静かにが言った。
「進路スメール」シドが続けた。
微かなエンジン音とともに船は宇宙(そら)へと進みだした。
スメールへの寄港後、宇宙を進む『セイクリッドハート』この名前はキースが付けたものだった。
「聖なる心ですね」とフィシスが言った。
「僕はcross Haertが良いんだけどね」とジョミーが答える。。
「彼には貴方が殉教者のように見えているのかもしれませんね」
「殉教者?」
「はい」
「だったらそれは、フィシス。僕は理想を追うだけで何もしないバカだと言う意味だよ」
「今度の事は二人で決めたのですか?」
「ううん。二人でもないし、独断でもないよ」
ジョミーはフィシスとの会話を思い出していた。
「ジョミー」
とシドが声をかける。ジョミーは「何?」とシドに答えた。
最後のワープが終わりレーダーが小さな青緑の星を映し出していた。
「惑星ニュクスが見えました」
「あれがSD体制の始まりの地、ニュクス」
「ジョミー。人の記憶とは何でしょう?」
「記憶か…なくてはならないものかな?シドはどう思う?」
「確かに必要ですが。無くてもいいものもありますよね?」
「無くてもいいもの?それは忘れたい記憶の事?」
「…いいえ。それは別に。僕が言いたいのは、良い記憶だけ覚えている訳でもないし、悪い記憶だけでも無い。記憶って正確なものなんでしょうか?」
「ん、それは人それぞれかな…」
「正確ではないって事ですか?」
「同じ物を見ても皆で感じ方が違うからね」
「同じ物でも違う…」
「人はどうしても感情が入ってしまうから見たままにはなっていない。でも、だからといってその記憶が間違っているとは言えない。言えないが、やはり鵜呑みに出来ない時もある」
「では、人はそれぞれが記憶を書き換えて生きている?」
「無意識で操作はしていると思う。今はマザーがいないから自分の力でやっているって事だね」
「でも、それなら、記憶ってそんなに重要な物なんでしょうか?」
「ここにあるのは人類全体の記憶。マザーがやってきた全てがここに眠っているんだ」
「それが人類の脅威になるのですか?」
とシドが聞いた時、通信士が言った。
「ソルジャー。通信が入っています」
「セドルからか?」
「はい」
「開いてくれ」
艦橋の上部にセドルの顔が映った。
「待ちかねたよ。ジョミー」
二隻の合流ポイントにはもう一隻、待っていた。
それはベルーガ2。
「ジョミー」
とソルジャーズのジョミーがソルジャー服を着て映っていた。
「軍は動いた。今からそちらに行く」
とジョミーが言った。
やがて、ジョミーを乗せたセドルの船がニュクスへ向かっていった。
セイクリッドにはソルジャーズのジョミーが乗り込んだ。
艦橋へ入りシドの右隣の席に着いた。
シドはその手が小さく震えているのを見た。
その視線に気が付いたジョミーが震えを止めるように握りこぶしを作った。
「ジョミー…怖いですか?」
優しくシドが声をかける。
「ジョミーの替わりをするのは慣れているから…大丈夫だと思ったのに…。こんなに一人が怖いなんて…思わなかった」
「大丈夫。きっと出来るよ」
「今までは会議でも何でも言う事が決まっていて、僕はただ演じれば良かった。いつも、ブルーが居たし、キースもいた…」
「彼が怖い?」
「怖い。敵に回すには大き過ぎる…僕にはできない」
「ジョミー。それは怖いのは当たり前だよ。人類全体が敵だなんて、誰も無理だ」
「シド。前に僕はミュウと人類の両方を憎んでいるってジョミーに言われたけど、あれは何にもわかっていない子供のたわごとだったと、今、気が付いた…。嫌だ嫌だと言うのは簡単なんだ。人とは違う力があっても何も出来ない」
「大丈夫。僕ら全員がついているから」
「ジョミーは、こんな恐怖にずっと耐えてきたんだね」
「ああ…それがソルジャー・シンだ」
「それなのに、あの見ず知らずの人類の星を守ろうとしてる…」
セイクリッドの乗員は惑星ニュクスへ降下してゆく船を見つめた。
続く
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