君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十三話

2015-01-11 03:40:32 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十三話

 現在・惑星ニュクス上空

「お願いだ。キース。もう止めてくれ。この宇宙を再び戦乱に落とすのが目的なのか?」
 キースの側にいる思念体のジョミーが聞いた。
「ああ」
「嘘だ。もし、そうだと言うなら、僕は今、タイプブルーのミュウとなって人類の前に再び立とう。愚かな人類。今度こそ容赦はしない。お前たちも無慈悲に殺される側になればいい。僕は人類を滅ぼす化け物になろう。そして、君を」
「ジョミー。その言葉を口にしてはいけない」
 そうヴィーの口を借りて叫んだのはトォニィだった。
「ソルジャー・トォニィ!」
 ジョミーの前にトォニィが居た。
 世界が青く光る。
 ジョミーはトォニィの腕の中に崩れ落ちる。
 だが、トォニィが受け止めたはずのジョミーの身体が青く輝きながら消えていった。
「ジョミー」
「これは…いったい何が?」
 ヴィーはトォニィを見上げる。
「…トォニィ…?」
 トォニィは宇宙空間を睨みつけていた。

 (異空間)

 白いドームの冷たい床に寝転んだままのジョミーにブルーが手を差し出す。
「手を…」
 ブルーは優しくジョミーに声をかけた。
「……」
 その声にゆっくりと目を開け、ジョミーは出された手をとり立ち上がる。
「じゃあ、僕はまた全力で逃げ出したって事ですか?」
 諦めのような小さなため息とともにジョミーはブルーを見て言った。
「ん。ここは、君の中…」
「…僕の中?」
「そうだ。よく見てごらん」
「…ガラスのドーム。だって、あれは壊れて…僕は地球に…」
 流れる白い布のドレープ。ブルーの心の中に良く似ているが、どこかが違った。床に散らばるタロットカード。そして、眼下にはさっきまで居た木星のメティスが小さく見えた。
「ここを作ったのは僕だったのか…」
「ううん。それも違う。ジョミー」
「では誰が?」
「君だけではない。君とトォニィ。そして、僕と、もう一人の僕」
「何故、そんな事を…あの時…僕はただ時間を跳ぶ事だけだった…」
「トォニィが強く願ったのだろうね。このままではいけないと…」
「…トォニィが…」
「ニュクスの計画を練ったのはジョミー。君だろう?」
「計画と言える程のものじゃない。だけど…そう。筋書きを考えたのは…僕だ…」
「後悔をしている?」
「…後悔はしていない…ただ、失敗したなと思っている」
「失敗じゃない。君は人々を救う道を選んだだけだ…」
「そう…だね。このままでは人命が沢山失われる…」
 シュルシュルと上から布が落ちてくる。それは心の遮蔽が増える事。ブルーは自分の心と似てきているジョミーの心をこれ以上閉じさせたくなかった。
「ジョミー…」
 ふいに、ブルーが手を上げて床に散らばるタロットカードを飛ばした。それはクルクルと二人の周りを回りブルーの手の中に収まる。ブルーはジョミーにカードを引かせる。
 カードを空に飛ばせるブルー。
 そのカードを見てジョミーが呟いた。
「運命の輪の逆位置か…そう…失敗したんだ。僕は」
「カードが君を示しているとは限らないよ」
「僕は…時間を止めて、都合の良いようにするんだ。僕は世界を裏切る。だけど、僕はこんな事をする為に生きてきた訳じゃない」
「選んだだけだ…ジョミー。君は未来を選んだんだ」
「未来なんて…僕は…」
 ブルーはカードを見る。。
「運命の輪と太陽か…。僕には君の選択は間違っていないと思う…。君はキースが彼に操られているのを知っていてそれを止めなかった。彼の所為でマザー信奉者に対し攻撃的な心境になっているのも知っていた。そんなキースは評議会から疎まれはじめ、キースは君のいるノアやペセトラを避けていた。そこを利用してトォニィを政界に送り込もうと考え票を集めた。この異変に気が付いたセルジュも君に協力した。これで、間違いないかな?」
「本当は…もっとちゃんとした形でトォニィを迎えたかった。でも、セドルが持ってきたニュクスの情報が僕を動かした。あの星には人間は手を出してはならない。だが、キースに壊させる訳にもいかなかった」
「惑星ニュクスはクローン惑星。マザーの実験場だね」
「暗黒惑星の呼び名の通りの星だ。残酷で残忍なあの星は人の血で出来ている」
「SD体制の始まりを作ったのはあの星。地球や月で行われていた実験がより高度で、より正確な結果を得る為に人体実験は宇宙へと出た」
「そうです。あの惑星は長い時間をかけて地球を回る彗星。あの星からバンクが作られミュウも生まれた。もしかしたら、ニュクスが貴方の故郷かもしれないですね」
「かもしれないね。僕が覚えているのは月だけどね…」
「ニュクスの情報は残酷で衝撃的だった。人が人である必要すらないんじゃないかと思えるくらいに…もっと早くにニュクスを知っていたら、違ったかもしれないけど」
「あの星はキースにも本当の故郷なのかもしれない」
「キース…。ニュクスの事はキースには荷が重い。かと言ってトォニィなら良い訳でも無い。彼らではなく、僕がふさわしいと思ったんだ。それだけだ」
「君なら良い訳ではないと僕は思うよ」
「ありがとうございます」
 とジョミーはにっこりと笑った。
「でも、それでも、僕が良いと思いませんか?」
「…きっと、それは僕が暴くべきものだったのだろうね。それが出来なかったのなら、君がふさわしいのだろうね…」
 ジョミーの笑顔に泣きそうになった自分を抑えつつブルーは答えた。
 そんなブルーをジョミーは見つめた。そして、ドームの天井を見上げ言った。
「ねぇ、ブルー。人類に公表は出来ない事実ってなんだと思いますか?」
「残酷な実験の内容か、それとか、洗脳のやり方か…」
「そうですね。その辺も含まれるけど…僕の望むものはあの星には無かったと言えばわかりますよね?」
「…君が探していたもの?」
「僕はクローンの寿命を延ばす方法を探していた…でも、それは存在しなかった。ううん。そんな事を探す必要も無かったんです」
「ジョミー…まさか…」
「ソルジャー・ブルー。誰が誰のクローンなんて関係ない。今や人類のほぼ全員が作られた遺伝子の子どもだという事です」
「……」
「マザーは戦争を繰り返す愚かな人間から、虚栄や闘争心を抜き去ろうとした。だけどそれは難しくなかなか出来なかった。なら、そういう気持ちを持たなかった(あるいはそういう気持ちの少なかった)人間を沢山コピーしてしまおうと考えたという事です。大勢のの人間を作りなおし、それを繰り返してきた。もう人は誰がクローンないのかもわからない…」
「では、ニュクスは?」
「あの星に入ろうとすると機械が異変を起こすのは人が自分はクローンでないと思う気持ちが起こさせている誤作動です。現に僕は入れました」
「ミュウであるのは関係なく?」
「予想がついていましたけど、ちょっと怖かったかな?少し力を使いましたが、何もなかった」
「思い込みで星を一つ消していたのか」
「オカルトですね」
 とジョミーは言った。
 マザーの作ったシステムの中に星に受け入れられない何かの条件があるのでしょうね。とジョミーは付け加えた。
「クローンを訳もなく忌み嫌うのは、この事実を隠す為だったと」
「そう。今に至る人間のどこかでクローンの遺伝子が混じっていて自分もクローンの仲間で、もしかしたら自分自身がクローンなのかもしれないって事実を言える者はいないでしょ?」
「すべてはマザーに繋がるんだな…」
「ソルジャー・ブルー。貴方にもね」
 その言葉にブルーはジョミーを見返し、そして、空にまたカードを飛ばした。カードは二人の周りをクルクルと回ってから、辺り一面へ散らばった。タロットカードが舞い落ちる中、ブルーがジョミーに問う。
「ジョミーはどこで気が付いた?」
「セドルの情報から…単独で彼の深層に降りてみたんだ」
「単独で?危険な事を…」
「貴方も僕が生まれる前に来ているじゃないですか…」
「……」
「僕は何世代も前から貴方の夢を見ていた。段々鮮明になって、僕が本物の貴方に会った」
「忘れさせてきたのを思い出したのか…」
「思い出したと言うより、覚えていたと言う方が合ってる」
「……」
「貴方はマザーの命で動いていたのですね」
「ジョミー」

 白い布が天井から衣擦れの音とともに舞い落ちた。




  続く









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