君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話2

2016-06-30 04:21:09 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。 

<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
キャプテン・シド ミュウの優秀なパイロット ジョミーの専属だった。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)



 『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話2

  「ソルジャーズのジョミー」その2 ※ソルジャーズの表記を省いています。

「聞いた瞬間に何かが壊れた気がした…」
 ドアの前に回り込んだソルジャーズのジョミーはシドを見てそう言った。そして、そのままドアを背にして崩れ落ちた。慌ててシドが駆け寄る。
「ジョミー。それは多分…怖くなったんだよ」
「怖く?」
「こっちへ」
 シドは部屋にあるソファーへと彼を寝かせて、奥から水の入ったコップを持って戻って来た。医療技術を学んだシドが体を診る。
「落ち着いて。大丈夫。体に異常は無いよ」
 何かあるとすれば心だな。とシドは思った。
 ソルジャーズのジョミー。彼は今まで守られていた。ジョミーのクローンで力の強いミュウ。
 それだけで彼はそこに当然のように居た。
 彼の生い立ちは生易しいものでは無いとあれこれミュウ達は想像をしていた。だから、優しかった。
 ジョミーの子どもでも、その部分が変わる事はないが、自分自身がソルジャーとなったジョミーを見る目が変化したのと同じ事が起こるだろう事は想像出来た。
 いつか、この事実は公表しなければならない。それはいつなのだろうか…。
 コップを受け取ったジョミーが話し出す。
「嬉しい筈なのに…。どうして…こんな。自分が望まれない子だったなんて思いは気にならない。殴っても辛かったんだ」
「ジョミーを殴った?」
「うん」
「殴ったなら、少しはスッキリしたんじゃない?」
 ジョミーのコップを持つ手が震えている。得体の知れない不安に支配されてしまっている心を落ち着かせる方法を探しながらシドは話し出した。 
「君はとても強いのに、何を心配しているの?」
「僕は強くない」
「強いさ。僕はずっと君を見て来たんだ。嘘はつかない」
「僕はブルーに力をもらっていたから、強いのは僕じゃない」
「ジョミーも自分を強くないって言うよ。君はあのキースとも戦っているんだ。だから…」
「同じじゃないよ」
「ん?」
「同じじゃないって…」
「そっか…」
「シドは何年ジョミー見ていたの?それなのにわからないの?」
「どういう…」
「僕が強くないと言うのと、ジョミーの言うのは違うのが気が付かないの?って言ってるの」
「違う?」
「そう、違うよ」
「どうして君にわかるんだ?」
「見ていればわかるよ」
「そうか…」
「シドってさ。自分の事しか考えていないから見えてこないんだよ!こんな時にトォニィの所へ行くなんてさ。自己満足でしかないじゃん。命をかけたってそんなの、無駄だよ」
「何を言いだすんだ」
「無駄だし。意味が無いんだ」
「ジョミー」
 シドはソルジャーズのジョミーを睨む。
「いくら君でも、許さないよ」
「トォニィの所でスパイする気だろうけど、そんなのトォニィは気が付いてる。だから意味が無いんだって、言ってる…」
「このッ…」
 シドは殴ろうと右手を振りあげた。
「殴れよ」
 その言葉が合図だったかのようにシドは殴るのではなく、平手打ちをした。。
 ジョミーが意外そうにシドを見上げた。
「ご、ごめん。大丈夫か?」
「やっぱり両方辛いじゃないか…」
「わざと怒らせた?」
「うん」
 それを聞いてシドはジョミーの頭を優しく抱きかかえた。
「シド?」
「叩いてごめん」
 シドに抱えられたまま、ジョミーは小さく頷いた。
「シドもさ、親は知らないんだし、こんな事で落ち込んだり喜んだりするのはミュウとして変だよね?」
「変じゃないよ」
「変だよ…どうしてこんなに変なのかな?」
「ジョミー。いつも、どうしてた?」
「いつも?」
「そう。いつも、恐くなった時とか」
「恐い時は、ブルーがいた。傍にいてくれた」
「ショックな事があって、ブルーに会いたくなっただけだよ」
「そうかもしれないけど…」
 ジョミーはゆっくりとシドにもたれた。
「ジョミー?」
 ジョミーの腕がシドの背中に回される。
「ごめんなさい。さっき酷い事を言って」
「大丈夫だよ。スパイだってバレているなら、トォニィの所へ行くのに意味が無いかもしれないってわかってる。でも、もう傍に居られないんだ」
「うん」
「何があっても諦めないって言ったけど、もう無理なんだ。諦めた訳じゃないなんて、嘘さ。だからもう、諦められないなら、逃げる事にしたんだ」
「でも、あのチョーカーはまだ付けないで」
「自分を犠牲にするようなのは、良いとは思っていないよ。ジョミーにブルーを失った時と同じ思いはもうして欲しくない。チョーカーを付ける付けないはトォニィに一任したから、もう僕では決められないんだ」
「それでも…最後まで付けないでいて」
「うん。そうする」
「だから…」
「キスしていい?」
「え?」
 シドはジョミーの頭に回した手を顔を包むように下げた。ジョミーの驚く顔をじっと見つめた。
「この前は、抱いてって言ったのに?」
「あの時は、結局、抱いてくれなかった…のに、どうして?」
「あの時、君はジョミーの代わりにって言ったよね?今日はジョミーの代わりだなんて思わない。君が良いんだ」
「シド…」
 ジョミーはシドの視線から目を外したが、腕はまだシドの背にあった。
「僕がブルーの代わりに傍に居てあげる」
「ん?ダメだよ…。僕も僕自身なら、シドもシドでなきゃ。ダメだ」
「わかった」
 シドがジョミーにそっとキスをした。
 強い悲しい想いがジョミーに流れ込んだ。
「僕の気持ちは変わらない」
「うん」
「彼の為に生きる。そして死ねる」
「わかってる」
「それを重荷と思われても構わない」
「シド」
 ジョミーがその想いに涙ぐんだ。シドは唇を離した。
「シド。ジョミーは気が付いてる。きっと引き留めるよ。それでも?」
「それでも、変わらない」
 シドはジョミーがソルジャーで無くなった時に、彼を好きだ気付いた。それは、この場所で。

 シドは10年前を思い出していた。
 場所はここ、宇宙港だった。
 静かにエレベーターがロビーに着く、ジョミーが下りる。
 メサイアは今日は祝日扱いになっているのでコンコースは混雑していた。
 ソルジャー服はやっぱり目立つ、人々の中を歩いて来る。
 僕が声をかけるとこんな事を言った。
「ちょっとだけ、こっちに来てくれる?」
 とジョミーは下を向いたままシドの手首をつかみ、人々を避けながらコンコースの先にある外が見える所まで引っ張って行った。
「え、ジョミー?」
 コンコースは宇宙港の地下なので、窓にはメサイアの市街地が見えた。
「シド。胸を借りるって訳にはいかないから、少しだけ背中貸してくれる?」
 とジョミーは言った。
「え?」
「少しの時間でいいから、僕が落ち着くまでそこに向こうむいて立ってて」
 あぁ、とシドは思い出した。
 昔、まだ心理遮蔽が上手く出来ない頃のジョミーは、たまにリオに壁になってもらってたっけ。
「わかりました」
 とそこに立つシド。
 その背中にトンっとジョミーは自分の背中を預けて目を閉じる。
 背中から伝わる体温が暖かかった。
 暫くして、ジョミーがぐすっと鼻をすすった。
「ジョミー?」
 気づいたシドが心配して様子を見ようと動く。
「おわっ?急に動くなよ」
 背中に体重をかけてたジョミーが転びそうになった。
 あわててシドが抱きとめる。
 背中から抱き止められ至近距離で目が合う二人。
「す、すみません」
 とジョミーを立たせるとシドはまた背中を向けた。
「……」
 無言で背中を合わせるジョミー。
 泣きそうな顔だったとシドは思った。
 沈黙が流れた後、「落ち着いたよ。シド」とジョミーが言った。
「行こうか?」
 と背中を離しジョミーは歩き出した。
 そこに居るのはもう普段のソルジャー・シンだった。

 僕はあの時に。

 腕の中にいるソルジャーズのジョミーがシドを見上げて言う。
「シド。今は、今だけは君のものだ」
「ジョミー。僕も君だけのものだ」

 二人の唇が再び重なった。




 
  閑話 終






※書くのを悩んだこの部分、シドはソルジャーズのジョミーを守れた事でずい分満足してしまったけれど、
それでもまだ思いが諦められなくて、最終的には逃げる事を選んでしまいました。
自分から得られる情報を搾り取れるだけ絞ってもらおうと思っている。
二人のこのキスには少しだけ打算がある罪悪感、
ここでの事は「誰にも言えない秘密」となります。、





『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話

2016-06-25 03:43:47 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。 

<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)
ヴィー キースの部下 ミュウ部隊の隊長 ニュクス事件で仕事を失う
セドル 惑星ニュクス生れのクローン 商売に長けているキースとジョミーに近づく
アガレス・ベリアル 悪徳商人 セドルの上司 大戦中に彼の親とジョミーが会っている


☆『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話ですが、ちょっと脇道に行くので、
オリジナルキャラの裏?設定を書きますね。

ソルジャーズのブルー。
彼は人類が作ったソルジャー・ブルーのクローンです。ニュクスの技術は使われていますが、ニュクス生れではありません。タイプブルーで、どこか人類もミュウも信用していない部分がある。戦闘特化なので戦うと強くなってゆきます。ニュクス事件をおこしたのは彼じゃないかとトォニィは考えています。

ソルジャーズのジョミー。
ジョミーのクローンでも、タイプブルーでも無く、ジョミーの子ども。タイプイエロー。一時、「ソルジャーズ」と二人が一緒に扱われるのを嫌って離れていたが、今は、ブルーに会い彼を説得したいと思っている。

ヴィー。
キースの部下で、セルジュの部下でもある。キースを好きでジョミーの事を嫌っているけど、見捨てたり出来ない損な性格をしています。シドがジョミーから離れたので、その代わりをしています。

セドル。
ニュクス出身のクローン。利用出来る物は自分でも何でも使う武器と薬物の商売人。利用目的てキースとジョミーに近づき、シドとジョミーの関係を知り、薬で弄びますが、その結果、二人の不器用さに絆されてミュウよりになります。
※最初は名も無き「青年」で出てきました。(名前を考えていなかった)

オリジナルの悪役設定の一番はアガレス・ベリアル。
父親が権力好きの軍人でショタでした。彼の子どもとして育ったのが、今のアガレス・ベリアルです。ジョミーを父親の敵と思っています。
成人検査前にニュクスから攫われいて、ベリアルJrはクローンなのかがはっきりしていません。
セドルは自分の意思でニュクスから出て来てベリアルと知り合う。


 『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章 閑話

  「ソルジャーズのジョミー」その1

「僕がジョミーの子どもかぁ…」
 いつか、言ってくれると信じていた。
 僕がマザー信奉者といつまでも通じていたのは彼らがその情報を握っていたから…。
 だから僕は殺されずにいた。かれらがブルーを怖がって殺さなかったのも事実だけど…僕は彼に生かされていた。
「ミッシェル」
 でも、そう呼ばれても何も感じなかった。
 そう呼ばれる日をずっと待ち望んでいた筈なのに、どうして…だろう。
 なんで、こんなに空っぽになっているんだろう。
 嬉しい筈なのに。
「おかしいな…嬉しくない」
 そんな事を考えながら、メサイアの町を歩いていると、横に車が停まった。
「ジョミー。乗って、早く」
「シド?」
 僕は慌てて車に乗り込んだ。。
「いい?君はジョミーの部屋には行って無いって事になってるからね」
「ええ?どうして?トォニィには許可をもらってるのに」
「取ってるけど、事情が変わったんだ」
 話をしながら、シドの運転する車はとある家の前に停まった。
「まだ来てないな」
 辺りを気にしながらシドが車を降り、家へと入って行った。それに僕は続いた。
「この家は?」
「僕の家さ」
「メサイアに家があったんだ」
「ミアを呼ぶつもりでね」
「ふーん」
 僕はミアとどうなっているのかは聞かないでおく事にした。
「こっちに君の着替えがあるから」
と呼ばれた寝室に見覚えのあるバッグを渡された。
「君の荷物だ。適当にまとめさせてもらった」
「一体、何が起きてるの?」
「君はセイレンを知らないだろ?」
「うん」
「彼女はスメールの人間だから、君が手引きしたと疑われているんだ」
「知らないって言えば良いんじゃ」
「君はさっき、ジョミーから何を聞いた?」
「え…」
「それは、まだ誰にも言わない方がいい」
「そ、そうだよね」
「だから、今、親衛隊に君は会わせられない。隠れられる場所があるんだ」
 と、シドが言った時、家のドアが叩かれた。
「ここを開けてもらえませんか?」
「キャプテン・シド」
 ドアが何度もドンドンと叩かれる。
「時間の問題か…」
 鍵を開けるような音が聞こえてくる。
 シドはベッドの毛布をめくり、手で合図をした。
「君はここに」
 僕は言われた通りにベッドに潜り込んだ。
 そう言って、シドは部屋のドアを閉めると、着ていた服を脱いで上半身裸になり、ジョミーの横に滑り込んだ。
 ドアのロックが外され、数人が入って来る。そのまま、室内を探し寝室までやってきた。
「キャプテン」
 と、声がかかる。
「なんだ、五月蠅いな」
 シドが不機嫌に体を起こす。
「キャプテン・シド。お休みの所、すみません。我々はソルジャーズのジョミーを探しています」
「そうか、僕は知らない」
 一人がベッドに誰かが寝ているのに気が付き、シーツを捲ろうと手が伸びる。
「止めろ」
 シドが声を荒げる。
「ご理解下さい。今は緊急事態です」
「お前ら、故郷での休暇中に部屋に居る相手なんて、決まってるだろ?気を使えよ」
「ですが…」
「彼女は人類で元軍人なんだぞ。事を大きくしたいのか?」
「……」
 親衛隊は答えられない。
「わかりました。キャプテン」
 と言って、出て行った。
「もういいよ」
「シド…。大丈夫?」
「ああ、多分。もうすぐ、もっと騒がしくなる。彼らはそっちに狩りだされる」
「え?」
 暫くすると、シドの言葉通りに、町中が騒がしくなった。
 親衛隊も移動をして行った。
「始まった」
「シド。何が…?」
「今だ。行こう」
 二人は走って、車に乗り込んだ。
 車はまっすぐにメサイアの空港へと向かった。
 空港から、上空の宇宙港へと上がるエレベーターの中で、何かを探す親衛隊のシグナルを見た。
「さっきのは、ジョミーが動き出したんだ」
「まさか、あの部屋から出れたの?」
「ああ、セイレンが来たからな」
「…ね、シド。僕たちも何か出来ないの?逃げる気なんでしょ?」
「行く事になると思うけど、まだわからない」
 エレベーターは宇宙港に着いた。
 宇宙港の警備は手薄になっていると思っていたシドだったが、ここの人員の移動はなかったようで、銃を持った警備員が見えた。
 シドとジョミーは彼らから隠れ移動した。
 そして、あるデッキまでやって来る。そこは星の空港が出来るまで使われていた。会議室だった。
「ここは…」
 今は使われていない部屋。ロックが開く。
「ひとまずここに居て」
 そう言ってシドが出て行こうとする。
「待って、シド。行かないで、話があるんだ。こんな事を聞いていいかわからないんだけど…でも…教えて欲しい…」
「ジョミー?どうしたの?そんなにショックだったんだ。ジョミーは君を子どもだと言ったんだよね?それは君にとって良い事では無かったの?」
「嬉しかったけど…」
「?」
「想像していたのと違うんだ」





  続く






※踏ん切りがついていないぐだぐだな二人、で、腐な展開になると思います。多分、、。


『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十九話

2016-06-13 01:52:19 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編二章
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。 
 <用語>
惑星ノア 人類の首都星
惑星メサイア ミュウの星 ノアに近い位置にある
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 軍部解体中
<人物>
ジョミー ノアの前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っていた
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任していたが…ニュクス事件後行方不明中
ソルジャー・トォニィ ジョミーの後を継ぎミュウの長となる。ニュクス事件による政変でノアの議会を掌握する。現在、ジョミーのジュピターの権限を預かっている。
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
シルジャーズのジョミー 本当はジョミーのクローンではなく実子(タイプイエロー)
ヴィー キースの部下 ミュウ部隊の隊長 ニュクス事件で仕事を失う
セドル 惑星ニュクス生れのクローン 商売に長けているキースとジョミーに近づく
アガレス・ベリアル 悪徳商人 セドルの上司 彼の親とジョミーは大戦時に会っている

※オリジナルキャラの設定を追加しました


   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編二章十九話

 『世界』は僕の手を離れた。僕がそれを欲した時に消えたのだ。
 だけど、まだ僕は、足掻き続けるだろう。そう、道は一つではないのだから…。

「ジョミー。本気ですか?」
 メサイアの空港でヴィーがそう言った。
「ソヌスプロジェクトの事も、それを牛耳るソヌスの存在も今までははっきりしていなかった。ニュクス事件でキースが退き、トォニィとセルジュが性急に事を進めようとしたした事で動き出したようだ」
「ソヌスはマザー信奉者ですよね?」
「彼らはミュウを目の敵にしていた訳ではないんだがな…。セルジュが邪魔になったという事か…トォニィを操ろうなんて…甘く見られたものだな…」
「…ソヌスを攻撃って、場所はペセトラですよね?マズイんじゃ…」
「セルジュが彼らを押さえ込もうとしていた。だから、軍部も協力してくれるだろう。出来る限り拘束してくれればいい」
「今さら、人類の部隊とですか…信用できますか?」
「セルジュの為になら動いてくれる」
「了解。しかし、あのアガレスに協力を求めるなんて、信じられない」
 見るのも嫌だとヴィーが顔を歪める。
「使えるものは使うべきだよ」
 え?と驚きヴィーはジョミーを見る。
「ジョミー。実際のあなたより、思念体の方が怖いんですね」
 と、ヴィーは皮肉を言った。
「そうかも…しれないな」
 僕はそう言うと、目をふせ、窓(宇宙)へと目を向けた。
「そんな事より、キースに会わないといけないな」
「どうやってですか?」
「セイレンがキーを持ってきてくれたからね」
「セイレン?」
「フィシスの…ね」
「では、予知してるとかですか?」
「さぁ、それはわからない。ただ、キースに会う時が来たのだろう」
 そう言ってジョミーはセルジュの所へ繋がるコードナンバーをヴィーに教え、静かに消えていった。
「キースを締め出した。人類との共闘…。こんな風にこそこそとしてるのは嫌なのに。僕はこの後に何を見てゆけばいいのか…教えて下さい。キース…」
 と、ヴィーは呟いた。

  ジョミーの部屋

「ありがとう。ヴィー」
 ヴィーの苦しみが伝わる。
 ゆっくりと思念体を体に戻すと、セイレンのキーコードを使い部屋に仕掛けられたシールドを一つ一つ解いてゆく。
「ちょっと疲れた…な」
 ソルジャーズのジョミーは、僕をどう思ったのだろうか?助け出せるチャンスをふいにして、知っていた事を知らせずにいた。僕ならミュウのソルジャー・シンはどうしようもないなと思うよ。
 彼との約束、(ソルジャーズの)ブルーに会わせる事、それだけは何を代償にしても叶えなくてはならない。
 それと、トォニィが始めた軍縮・改革という名の粛清。これがソヌスの所為で曲げられた本人の意思でないのなら、僕はそれを止めなくてはならない。彼は僕らの希望なんだ。
「…んーっ。最後は…と」
 僕は大きく伸びをすると、最後の枷。手と足に付けられた透明の鎖を見た。
 これを外すと実体で動く事が出来るようになる。
 もう一度手をあげて、透かして見る。よく見れば肉眼でうっすらと見える。これはトォニィ本人が僕につけたものだろう。
「これを外すと、僕はトォニィの想いを裏切る事になるのか…」
 カチカチ…と小さな金属音がする。
 手が震えていると思った。失いたくないものだから、こうまでするのなら…。僕は動いてはいけなかったのだろうか?
 今なら、止める事が出来る。僕はただ見ていれば良かったのか?
 何度すくっても手から零れ落ちてゆくものがある。
 トォニィも僕をそう見ているのかもしれない。
 寂しさや、儚さで作られているかのようなこの鎖。

「説得に応じなかった場合、キースを殺してもいいですか?」
 ニュクスへ向かう前、シャングリラでトォニィは僕に聞いてきた。
 それに僕は「自分が手を下すから、誰にも手を出させないように」と答えた。
 けれど、結局僕はキースを殺せなかった。
 トォニィはそれを怒っているんじゃないのはわかっている。
 キースを殺すと決めるまでのトォニィの苦しみを知っていて、そう答え、それを実行しなかった僕への怒りだ。
 だけど、トォニィ。
 キースのしようとしていた事を僕は最初から認められなかったんだ。
 誰かを殺して見える未来(さき)って何だ。
 僕らはもう十分に人々を仲間を殺してきているんだ。
 もういいじゃないのか?
 ピシッと小さく音を立てる鎖。
 そして、パンと粉々に砕けた。
「トォニィ…。確かに僕たちには守らなくてはならないものがある。でも、それだけじゃいられないんだ」
 セルジュとの連絡が取れなくなったのは、ニュクス事件の時、僕がトォニィとメサイアに戻る前だ、そこに不自然さを感じた。それよりもニュクスの前にセルジュ自身が僕に会いたいと場所を指名したきたあの日から変だった。ノアとペセトラがキース暗殺へ動きだしたと知らせに来た。あの時から、セルジュは何らかの脅迫を受けていたのかもしれない。セルジュはそれに応じず、彼を人質として、矛先がトォニィに変わった。
 暗殺や謀略、人類はどこまでも傲慢なんだろう…。
 セイレンの指示通り、施設の屋上にフレッチアがあった。僕はメサイアの空へと飛んだ。
 
「大切なものを守る為に自分を犠牲にするのは良い事なの?」
 それは、部屋を出てゆくソルジャーズのジョミーが心で思った事だった。テレパシーの交信はなかったが、流れてきた感情だった。
「僕のそれは…ただの自己満足…」
 飛びながら、ジョミーは答える。
「それで守れるなら、皆、そうしている。待ってろよ。キース。間違っているって教えてやる」
 頬を伝うものがあった。
 それを手でぬぐい、僕はキースが居る場所へと速度を上げた。


  惑星メサイア・遺跡(人類の入植の跡地)

 メサイアが過去に人類の入植をされた星である以上、こういう遺物は残っている。ここは遺跡と呼ぶにはまだ新しい。200年程しか経っていない物だった。
 コンピューターテラを取り出し、それを元の結晶の形に戻してから、キーの解除をする。
 監視はすべて人工物。つまりアンドロイドだ。
 コンピューター・テラがあれば、ミュウの力を使う事無く、彼らを従わせるのは簡単だった。
 キースが居る部屋へと着き、ドアを開ける。
 と、同時にふわりとホログラムが浮かぶ。
 それは僕の前進を阻む。
「ジョミー。戻って」
「これ以上、進まないで」
 懇願するように、それは言う。
「ごめん。僕がここに来た事で答えは出ている、僕はもう後戻りは出来ない」
「グランパ。お願い」
「トォニィ」
 一歩進むと、前に出るトォニィの映像。
「聞いて、トォニィ。惑星ニュクスを救うと君が悪政を布くのは視えていた。これは、僕が君を信じて進んできた道だ。大丈夫。大丈夫だから、未来を掴もうよ」
「グランパ」
「トォニィ…信じて」
 トォニィのホログラムを突き抜ける。
 悲しいような、寂しいような、それでいて笑っているような顔のトォニィがゆっくり消えていった。

「キース・アニアン」
 僕は、細長い球体の中で眠るキースに声をかけた。
 静かにホログラムが浮かんでくる。
「……」
「眠っているの?」
「…いや、さっきのも見えていた」
「キース。僕らは離れる。こうなる事が望みだったんじゃないだろう?」
「…お前はトォニィには強がるんだな…」
「それが…悪いか?」
 僕はキースを睨み返した。
「映像のくせに、憎まれ口なんて、本人と確認するまでも無さそうだね」
「そうだな」
 キースは小さく眉を上げた。




 つづく




※やっと会えたのにケンカ腰…。^^;
 甘々にしたいと奮闘中です。
 ここで会ってまた離れてしまうので、何とかしたいです。