君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十九話

2014-11-30 02:51:17 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 十九話


  太陽系 木星のメティス(異次元)

 ここは、時間も空間も違う場所だ。
 本音が言えない二人が弱音を吐ける。そんな場所なのかもしれない。

「僕らは本当の心を…真実を語ろう。そこから答えを導こう…」
 ジョミーは暖炉の灯を見つめたままそう呟いた。
 キースはそんなジョミーを見つめ、暖炉の灯へと目を向け、ため息交じりにこう答えた。
「そうだな。それしか今は手段が無いのかもしれない。さっきので、ここが…外部と繋がっていない異空間である事はわかった。それをお前が作ったのではない事もな…。未来でなく、過去を探れと言うなら、今はそれしか手段が無いのかもしれない」
「シャングリラを見つけた時は僕が作った理想の場所なのかと思ったよ。だけど、シャングリラに入れない事や、この暖炉の説明がつかない。君が…キースが来れば変わると待っていた」
「…暖炉(それ)は調べたのか?」
「調べたよ。何もなかった。普通の暖炉だ。一日で燃え尽き朝になるとまた繰り返す」
「本当に一日が進んでいるのか?」
「それは、わからない。一日がほんの数秒だったとしても僕にその感覚はない」
「お前の三年が五年や十年かもしれないが、数秒かもしれないんだな…」
「時空が違う感じと言うのか…。人の深層に入った感じと似てる。だけど…一人で深層に入るのはタブーだし、自分の深層に潜るのも本当は駄目なんだ…でも、ここは深層でない。僕らを見てる誰かが作ったと思う。だけど、ここの風景はこうも細部までは…」
「自分たちが過去を再現した事になるのか?」
「僕達が何かしら関与しているとみていい…」
 キース。
 僕は君に本当の事を教えられないのを許して欲しい。
 君の出生にはもう一つの意味があることを隠さないといけないんだ。そこに目を向かせてはいけない。
 本当に世界が終ってしまう。
 僕は、ここで、こんな形で終わらせたくないんだ。
 まだ始まったばかりの世界なんだ。だから…キース。
 君に世界を託そう。
「僕がここに来る前の記憶はニュクスで君に世界を壊すと言ったまで…覚えてる?だから、やり直そうと、過去を再現したのかもしれない…でも、僕たちが作ったのならさっきのはあり得ない。僕が望んでいない過去のやり直しなんて変じゃないか?それに、僕に全くわからないってのが…。ここが本当に安全かどうかがわからないんだ。僕はそんな曖昧な場所に…君を呼んだりしない。僕は君を護るのが、ここの、この場所での一番だったのだからね…だけど…僕はこのメティスの時間に戻りたい一心で、君を呼んだのかもしれない…僕はここが…ここでの時間が大切だったんだ…だからいつかここに戻りたいと思っていた」
「…ジョミー…」
 ジョミーは簡単にはいきそうにないね。と言った。
 メティスが夜の時間に変わってゆく。
 ブラインドが自動で降りてくる。その音を懐かしげにキースが振り返り見ていた。そして、キースはジョミーの横に座った。
「俺の記憶は、お前のテレパシーを受けた瞬間までしか…俺も無い…。だが、それすらも…俺の記憶は…充てにならない。一つ聞いていいか?お前は記憶を無くした時…不安じゃなかったのか?」
「僕が…?」
「不安だったろう?」
「そうだね。ずっと長い間、ごく自然にやってきた事が忘れて出来なくなる。それは怖かったよ。ミュウのソルジャーの知識は、危機回避の為に膨大の情報を集めて瞬時に演算をし、予測・予知をしていたからね。自分や仲間の身になにが起こるかを肌で感じ、回避する。それをごく自然にやっていた。それが出来なくなった。皆を守れなくなる。毎日さ、後ろから刺されるんじゃないかと思っていたよ」
 と、ジョミーは冗談交じりに言い、小さく笑った。その目には涙が浮かんでいた。
 ミュウの長として、仲間を守る事に命を懸けてきたジョミー。それが出来なくなる。その不安さは常人では考えられないものだったのだろうとキースは想像をした。
「よく不安に押しつぶされなかったな」
 とキースは自分の記憶が壊れてゆく様を思い起こしながら言った。
「そして、俺は不安に負けたんだな…」
「キース。僕もとても怖かったよ。本当にとてもね…。ノアのあの場所に僕は居ていいのかとずっと思っていた。でも、君が居て、トォニィが居て、セルジュが居て、シドが居て、皆が居て。そして、僕にここに居て良いと言ってくれた。皆の言葉がなければ僕も何処かに逃げ出していたのかもしれない」
「皆の言葉か…。俺は不安に負けて、皆から、お前から逃げた。記憶が途切れ途切れになって、俺は焦り、そして自分自身を持て余し…そこから逃げた」
「…僕を避けるようになったのも…不安から?」
「ああ。ノアからペセトラに拠点を移し、ノアに戻っても公式の場でしか会わなくなったな…」
「キース。僕も不安だった。君の記憶の事を僕はどこかで気が付いていたのに…」
「俺の記憶か…」
 キース。
 君はイグドラシルで、君の心に従い僕を助けるように動いた。
 あれは君の本心だ。
 君に科せられたものは僕のそれより重い。
 その重さを跳ね除けて君は僕を助けようとしてくれた。
 僕はその思いに今こそ答えよう。
 僕は、僕が何故こんなに君を愛したかを知ったんだ。
 それが、僕が、僕こそがあやつり人形だったと言えるものだとしても、僕は、君を愛す。
 お願いだ。
 僕に君の強さを信じさせて欲しい。
 僕の全てをかけて守らせて欲しいんだ。
 ジョミーはグッと手に力をいれた。そして尋ねた。
「今は…今、記憶はどうなっている?」
「わからないな」
 キースは答えた。
「本当に俺だけじゃ、どうしようもないんだ。二人で記憶の埋め合わせをするか?今の訳のわからない状態からすると…やはり、ここを作ったのに僕達は無関係じゃない」
「僕と君と、何者かが作った…」
「だが、ここには二人しか居ない」
 と、キースは半分諦めたように言った。
 キースが諦めたのは自分を取り繕う物。
「そうだね。今はね…真実を語り、導き出すしかない…」
「俺は…どうすればいい?」
「時間はあるから…話をしよう。君の記憶の消えた部分をたどろう。そうすれば、きっとどこかに糸口が見つかる筈だ。それに、君の記憶なんだから君には知る権利がある」
 二人は夜通し語り合った。

「ミュウの能力があればすぐなのに…」
 能力のない事をジョミーがごちる。
 ジョミーが集めていた本や探せるだけの資料を探りながら記憶をたどった。
「記憶が途切れているのは、あの最後のメギドの事件の辺りから…という事かな」
「そうなるな。お前の時とは違うな」
「うん。僕はどこから、どこまでって言う区切りはなかった。記憶の全てがバラバラになってしまって、漠然としてるのと、全く思い出せないのとが混在している感じだった。覚えている日もあったし、記憶の無い日もあった…」
「区切りか…正確に言うと、メサイアとノアの襲撃事件から以後の特にお前に関する事が抜け落ちているのか…」
「そうだね。酷いなキースは、僕の事だけ忘れちゃうなんて…」
「……」
「僕達。あーんな事やこーんな事もしたのに」
 と、ジョミーは笑った。
「ジョミー」
「あは。ふざけて言ってるんじゃないよ。本当にいろんな事があったんだ。良い思いも悪い思いも沢山ね」
「さっきみたいに自然に戻ったりはしないか?」
「こうしている事で、自力で思い出せるものも少しはあるだろうけど…完全には無理だ。ミュウの僕だっていろいろと苦労していただろ?…覚えていないかな…」
「やはり、俺はお前とは違う…」
「うん…。確かに違うね。君が忘れているのは僕に関する事柄が中心…そして、忘れているだけじゃない。何物かが関与している」
「……」
「君は、『人を信じないように』操作されているようだ」
 この言葉を聞いたキースを頭痛が襲う。
「それは…」
 キースの顔が苦痛で歪む。ジョミーはそれを見ながら言葉を続ける。
「きっかけは、あの避暑に行った星で僕は彼に記憶を奪われた。同じ影響を君も受けたという事だろう。楔となった彼は頻繁にキースに会うようになった。その中で君の記憶の欠如に気が付いた彼は、失った記憶の代わりに別の記憶を君に見せたんだ」
「では、これはあいつが…」
「僕は君に謝らないといけないね。僕は君に何かが起きていると気が付いていたのに何も行動を起こさなかった」
 パキッと薪が弾けた。







  つづく



※11月UP!


最新の画像もっと見る

コメントを投稿