君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

☆ご案内☆

☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

「後書きと年末年始の挨拶にかえて」

2012-12-31 00:32:17 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は

では、後書きです。

この二部を書き始めた時は、人類の意思をジョミーが問いかけてそれに答える人類と、それを彼がどうしたか。しか考えていませんでした。←オイ
他は、ソルジャーズの事ですね。彼らをくっつけたかった。とか、学園物が書きたいとかはありましたが、学園物は…途中断念。。

二部を書き始めてから、一部で書かないで進んでしまった他のメンバー達を補完してやりたいなぁ、とかも考え出して、一番放置されたのは、トォニィですが、彼とキースの関係はもう大人の同士の会話になっているようですからそのままで、トォニィとジョミーは家族なので必要以上の事はしていない感じになりました。
次はシド、彼には二部からのオリジナルキャラのミアと出会わせました。
あまりにあっさりミアに行きすぎてるかな?と後で思いまして、(彼は誠実感があるキャラだったのに、セルジュがそっちを持っていってしまったので)番外で補足します。
ソルジャーズの方は、なんとなく、ブルーとジョミー(本体)が心で浮気してるっぽい感じでしたが、それどころではなくしました。良くある「大事なモノは失ってみないとわからない」って事です。
ブルーに関しては、「愛しているんだ」と叫ばせた事で満足しました。
今回のヒロインがソルジャーズのジョミーに移行した瞬間ですね。

二部になってからの後付設定のソルジャーズのジョミーはクローンではなかったの部分で矛盾が出来ていないかと心配でした。
オリジナルキャラが多く出てきて、でも、あまり彼らを出し過ぎると、別作品になりそうで…
エディとかはもっとちゃんと書けば良かったかもしれないけど、流しました;


えー、一番の心残りは、エロくならなかった事です。

二部二章からはエロ有り。にするつもりが、何故か、無し。
ってどうしてかと言うと、大戦時から十四年過ぎてしまったのが問題で、あの時、ジョミーとキースの年齢は三十代、って事は、キースはそろそろ五十歳です。
若い身体に戻ったジョミーを二十歳くらいと考えて、えっと、新入社員と課長クラスの危ない昼下がりってな感じ?と、、、、。
思ったら、書けませんでした^^;
その頃は「ガンダムAGE」の子安さんが浮かんでたりしたし…。。。
(で、AGEって酷くなかったですか?何だよこの設定!似てるじゃん!と思いつつ終わりまで見ました…)

えっと、危ない昼下がりが嫌いな訳ではありません。
もう十分な二人なので、ここでは素通りして後で書いてやろうと思ったのです。
別枠の方が良い気がして…。
それと、どうも本気で戦ってくれないジョミーの本気を引っ張り出してやろうと、と言う事で、番外で遊びたいと思っています。
星の一つや二つ壊しても良い場所を作らないと戦えないって。


十一月にPC壊れとかがあって焦りましたが、今年中に終了目標はなんとか達成されました。
次は、真城灯火のオリジナルもそろそろ取り掛からないとマズイのでこれからはまったり更新になりますが、まだ彼らを書きたいので書いてゆきます。

  それでは、良いお年をお迎え下さい。


★CM・・・普通の男女の恋愛物が書きたくなって、しかもHなのが書きたい。百合少女とノーマル男子の恋愛です。←普通の恋愛?とにかく、男の子も女の子もかっこよく活躍させたいと思っています。これで大賞応募を考えていますが、バンド練習もあるので、時間的、字数的に間に合わなかったら諦めて、短編で一つ書いてから、取り掛かるかもしれません。

  では、来年もよろしくお願いします。

  真城灯火。





『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

2012-12-30 03:00:17 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

「タイプブルーの力を封印?」
 思わずキースが聞き返した。
「うん。封印すると言っても、それは僕だけの事で、タイプブルーの力を使える状態で温存させるだけなんだけどね。タイプブルーはクローンブルーがいる。人類からミュウにさせられた彼がいる。そして、新しいタイプの僕。僕はジョミー・マーキス・シンは、やっと僕になったんだ。もう誰かの所為になんてしないで生きる。だから、僕は人類とミュウに影響を与え続ける「楔」になる。人が戦いに向かうのなら僕らはいつでも力を行使する。理不尽に思えるような事もする。トォニィはミュウの為に生きるだろう。キース、君は人類の為に生きるのだろう?僕は二人の間に、あの二人を連れて立つ」
 それは、ジョミーの本当の状態を知らない軍部が三人を架け橋ではなくて、人々の間に穿つ楔にしようとした時期があった。
 それをそのまま利用して、人もミュウに対しても影響を与えてゆくという事なのだろう。
「あの二人は了解済みなんだな」
「うん。前に話してある。この戦いが終わったらと決めていた」

「ミュウのお前の言葉を信じて人は戦争を止めに来た。それには十四年かかった。それはお前も同じだったんだな。自分の生き方を見つけろと、俺はお前にずっとそう言い続けていたとが、俺ではお前にそれを与えてやれなかったのか?」
「きっとね。心の何処かで君の言葉も届いていたと思うんだ。だけど、僕は素直にそれに従えなかった…」
「そうなのか…やはり…それは俺がブルーを殺しているからか」
「違うと思う」
「…違う?」
「それは…きっと…僕が君を好きになったから…君に従うのが面白くなかったんだろうな」
「…好きになったなら相手の言う事を聞いて従うのもあるんじゃないか?」
「僕が君の前で泣けなかったように…僕はものすごく意地っ張りなんだよ…。そして、とても甘えたがりなんだ。一つ君の言う事を聞いたら…それこそ全部君に任せてしまいそうで…あの動く事すらままならなかった時には、君を好きだと思う事すら考えたくなかった。本当に何もかも…君に投げて逃げ込んでしまいそうだったんだ。それこそ…地球再生の前に君の身体に溺れた時以上になるような気がして…怖かったんだ」
「俺は…」
 俺は甘えて欲しかった。子供の身体になってしまい、何も出来なくなったお前を介抱するのが嬉しかったんだ。
 俺は、お前が俺しか頼れないようにしようとしていた。
 甘え頼りきる事が出来ずに悩んでいる事も気がついていた。
 それでも、俺は…俺のエゴだと知っていても、それでも。
「俺は甘えて欲しかった」
「僕は…君が怖かったんだ…。だから、僕は君を愛した僕を否定した。僕の行為には打算しかなくて愛など存在しなかったのでは?とね。認めるのが怖かったんだ。僕は避けていた。僕には君との思い出がある。あれをすべて嘘だったと思う事は出来なかった…愛しているのは事実なんだ」
「ジョミー」
「しかし、まさかね、こんなに君を好きになるなんて…思いもしなかったよ…。君無しでは居られないとは言わない。だけど、君を殺せるのが僕なら、僕を殺せるのも君だ。君が居なくなったら僕も居ない」
「なら、絶対に俺が死ぬまで生きろよ」
「…僕はそう長くは生きられないんだよ…」
「クローンには生殖能力が無く、子孫を残せないままいつか細胞崩壊が起きてしまう事は知っている。だが俺は、あのブルーもお前もクローン検査の結果通りではないと俺は思っている。お前たちはミュウ最強のタイプブルーなんだろう。今まで、人間の結果など、ただの紙くずにしてきたじゃないか?お前は大きすぎる力を持ってしまった時、体機能を全て力で動かしていた。いつかその壊れたDNA配列も変えるんじゃないか?」
「人ですらなくなってしまったような言い方だな、それ」
「基より、ミュウだろう」
「ミュウだけど…それに何がいいたいの?」
「いいさ。俺だって実験体だ。クローンとそう変わりはない。マザーも俺がこんなに長く生きるなんて予想していなかっただろうな」
「うん。そうかもね」
「だから…僕たちは…」
「もうどうしようもない…」
「その言い方には望みが無いな」
「んー、どうにでもしてゆける?」
「何処にでも行ける」
「何処にも行けないのに?」
「行けるさ」
 二人はメティスの星空を見上げた。

「でも、キース。ペセトラは良いのか?こんな辺境の視察、後回しに出来たんじゃないか?」
「俺の意思は議会に通してある。副総裁のお前のと同じだ」
「そうか…来てくれて良かったよ。僕はここからペセトラに行く足が無かった」
「そう言えば、ドッグに船が無かったな」
「ゼルはフィシスを送っていったんだ」
「人類の戦艦で良いなら乗ってゆくがいい」
「充分だ」
 僕はここビルレストで暮らした二年間がとても大切だったと思っている。
 お互いをまだ良く知らず、探り合うような日々だったけど、忙しくて会えない日も多かった。
 けれど、僕たちはなるべく会うように決めていた。
 あれはどちらからともなく決めた事柄だった。
 他愛無い日々の業務を話すそんな時間でも必要だったんだ。
 あの二年間が無かったら、今、ここに居なかっただろう。
 そう、きっと僕は全てを諦めて消えていただろう。
「ジョミー。手を出して俺と同調してくれないか」
「…?」
「俺が心からお前を傍に置きたいと思ったのは、地球再生の時だ。目の前から居なくなった時だ。いつもお前は俺の傍に居ると落ち着くと、安らげると良く言っていたな。俺はお前が傍にいると緊張した。何も動じないように生きてきた俺がだ。最初はお前が敵だからだと思っていた。俺とお前が関係を持つようになってもお前はどこか心を許していなかった。俺もそうだった。そう言葉では何でも嘘でも言える。だから、手を合わせよう…俺を視ててくれ」
 そう言って手を出したキースの手にジョミーも手を出し合わせた。
 ゆっくりと同調が始る。
「怖くはない?」
 どこからともなくジョミーの声が聴こえてきた。
「大丈夫だ」
「僕は怖いかな…」
 そう言ってジョミーはキースを見て照れたように笑った。
「俺は…俺はそうやってお前が見ていてくれるのが好きだったんだ。お前がずっと俺を見ていてくれるならどこまででも人の為に生きよう。それだけで生きていけると思った。俺の横でずっと二人で前を見て進めたら…と思っていた。今もそれは変わらない。それを言葉にしたら「愛している」となるのならそうなんだろうな。これが本心だ。楔になると言うならそれも良いだろう。だけど、こうしてやっと捕まえたお前を俺は手離しはしないぞ。ずっとこの手を掴んでいる。もう逃がさない。覚悟しろ。それが、俺の希望だ」

 彼の本心が流れ込んでくる。
 熱い決意。
 熱い思い。
 焼けてしまいそうだ。
 この男の前だとどうして僕はこんなに小さいのだろう…。
 そして、どうしてこんなに嬉しいのだろう…。
 泣ける程に…どうして嬉しいのだろう…。
 心が泣いている。
 愛していると…。
「俺を見てさらけだせ。全てを…ジョミー」
「キース…好きです。僕も君が好きです。この身が朽ちても好きでいられる自信がある。死んでも絶対にこの思いを守る。誰にも君を渡さない。僕だけのモノでいて下さい…」
 溢れ出し止らない思い…。
 ダメだよ…。
 僕はわがままなんだ…。
 もう、だめだ…。
「もっと…だ。もっと言ってくれ」
「…誰よりも…何よりも傍に居て欲しい…。僕は「未来」は望まない。「今」が次の瞬間に過去になり、未来が「今」になるのなら、僕は「今」をずっと望む。ずっとこの「今」であったらと…望む。僕は今、君を愛しているんだ…きっと、何よりも誰よりも、さっきの僕よりも今の僕は君が好きだ」
 もう、言葉が次げない…思いだけで潰れてしまいそうだ。
「…ジョミー」
「…言葉なんて意味は無いよ…もう…僕たちには…言葉は必要ない…」
「俺はもっと聞きたい…」
「どう…して…僕たちは同じ場所で出会わなかったのだろう…そうしたら…こんなに時間をかけなくても見つけられたのに…」
「マザーが俺たちを殺しあうように配置したんだ。だけど…この出会いでなかったら、本当に殺しあうだけだったのかもしれない」
「そうかもしれないね…ああ、殺したいほど愛しているよ。キース」
「ならば、俺は殺されたいほどに愛している」
 過去の憎しみや悲しみなど消し飛んでしまえばいいのに…。
 そうさ、未来は変えてゆけるんだ。
 そう、望めば、何にでも変えてゆける。
 だって未来はまだ訪れていないのだから…。

 僕たちは思いっきり「今」を愛そう。
 「今」を大切にして懸命に生きるんだ。
 そうすれば、いつか未来は願う方向へと向かってゆくだろう。




「お前は、今、幸せか?」
「今?幸せだよ…」










        終





『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十五話「ジュピター」

2012-12-29 01:50:58 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十五話「ジュピター」

  太陽系 木星の衛星都市メティス
 空港に着いたキースはここにミュウの船が無い事を確認をする。
 月が長引いているのだろうと思いつつビルレストへ向かった。
 ビルレストの玄関に着いたキースは二階の自分の部屋に人影を見た気がした。
 キースは二階へ急ぐ。
 開いたままのドアから中に入ると、それを見計らったように声がした。
「ここから見る火星は大きくて、手で掴めそうだ…」
 その声の主は大きな窓も前に立ち、手を火星に向けるジョミーだった。
「それを言うなら地球にも届きそうなんじゃないか?」
 振り返らないジョミーにキースはそう声をかけた。
「火星と双子星みたいな…あの赤い地球には僕は興味が無い…」
 少し寂しそうに答えた。
 キースはジョミーの横に立ち、同じようにドームの外の星を眺めた。
「そうか。月はどうだった?お前がここに居るのは、成功したという事なのか?」
「ううん。彼を取り戻せてはいない。だけど…ブルーが月に残ると言って…シャトルを黄昏の海に置いてきた。僕はゼルでここまで来た」
 言いながらキースをチラリと見るジョミー。
「あの磁気嵐の…シャトルでは…」
「大丈夫だ。少し離れれば影響はないから、静止衛星みたいになってる。月でフィシスが言ったんだ。ブルーが迎えるのが相応しいって、多分…もうすぐ戻ってくる」
「……」
「フィシスを月のブルーに会わせる事も出来たし、彼もブルーだけの方が戻って来やすいだろうからね」
 とジョミーは笑った。
「ブルーとは何もなかったのか?」
「ん…あれ以来、忙しくて僕とブルーは会っていなかったから…。今回会った時に、無謀だったって殴られた…。読みが甘かったのじゃなくて、そこまで読んでいたからクローンでは無い事を皆に伏せていたのじゃないか?とも言われた」
「何もせず、殴られたのか?」
「シドが一発、返した…」
「……」
「ブルーの苛立ちもわかる…人を利用し欺く…そんな事に僕は慣れ過ぎてしまったのかもしれない…」
「ジョミー。俺はあの時、将軍の前でお前たち二人を見た時思ったんだが、あのジョミーとお前はあんなに似ていたか?本当にクローンでは無いのか?と思える程だった。どこかで繋がりがあるんじゃないか?」
「…んー、遺伝子がどこかで繋がっているかもしれないね…でも、彼のデータが全て消失してしまっているので追えなかんだ。どこか別の方法でないとわからないかもしれない」
「……」
「あの子は自分の本当の名前すら知らないんだ」
「そうか…ならお前が名付け親になってやればいいんじゃないか?」
「ジョミーじゃない名前をねぇ…思いつかないな…」
「そう言えば、お前、ネーミングセンス無かったな…」
「あはは…。今度はシャトルじゃないし…トォニィに頼むかな」
 と、二人は小さく笑った。
「あの時、僕と彼とが入れ替わった時、年齢差が出来てしまっている僕たちは見分けが付かない状態じゃないといけなかった。二人が似ているように見えたのは、気が付かれないようにしながら、お互いが「魅惑」の力を使っていたから…だから、彼はより「ソルジャー・シン」らしく。僕は彼らしくしていたんだ」
「そうだったのか…」
 キースは感心したように呟いた。
「でも、キース」
 ジョミーがクスクスと笑い出す。
「ん…?なんだ?どうした?」
「君は本当はわかっていたんじゃないか?」
「俺は将軍の前でお前に上手く殺されるのと、シャトルに部下を待機させるしか聞いていなかったからな。入れ替わっているのは…気がつかなかった」
「ジョミー。お前は、そのソルジャー服が一番似合っているな」
 とジョミーがキースの口調を真似をして言った。
「……」
 真似されたキースは、それがどうした?と言いたそうな顔をしながらも、少し照れていた。
「僕、本人にだと言わない感じの台詞だよね」
「…な、なんだ…今更、言って欲しいのか?」
「言って欲しいかな」
「改めて、言えと言われると…言い難いな」
「ジョミー、お前はお前で良いんだ。もね…何故、あんな事を言ったの?」
「あの時は、俺を殺せるのはお前だけだ。と話したばかりだったからかもしれないが、本当に死ぬかもしれないとも思った。だから、言いたくて言えなかった事を伝えないと後悔すると思ったのだろう。それと、もしかしたら…」
「もしかしたら…僕じゃないって思ってたかもしれない?」
 ジョミーが言葉を継ぐ
「ああ、お前の言うように、無意識に本人を目の前にしたら言えない事がすらすらと出てしまったのは…そういう事だったのかもしれないな…」
「じゃあ、僕も本人に言えない事は他の誰かに言わないといけないんだね」
「ジョミー。俺は同じ実験体は居たが、もう何も残っていないぞ」
「ふーん」
「?」
「残ってたら、そっちに言っていいんだ」
「そうではない。俺はお前にも言った。だから、言いたいなら俺に言え」
 呆れたような顔を隠さずキースは言った。
 回りくどい言い方が好きではない自分がジョミーの話にはこうして付き合ってしまう。それは、それをお互いが楽しんでいるからだった。
「そうだよね。言いたい事があるなら本人に伝えないと伝わらないよね」
「そうだ」
「では、キース。僕に言いたい事は?」
 何となくこう切り返してくる事がわかっていたキースはそれをそのまま返した。
「言いたい事なら、言った。ソルジャー服が似合う事も、進む事を拒み悩むお前もそのままで良いと。それと、俺がもうお前と離れて居たくない事も俺は言った。今度はお前の番だ」
 きっと今ジョミーが一番聞きたいだろうと思っている言葉を並べて、言葉で逃げれないようにしたキースはジョミーの返事を待った。
「つ、強くなったね…」
「待たされ過ぎれば腹も括るさ」
「…ご…」
「謝るなよ」
 ごめん。と言いかけた言葉を遮りキースが言った。
「俺が聞きたいのは謝罪じゃない。お前が、今、俺に伝えたい言葉だけだ」
「君に言いたい事かぁ…。やっぱり、謝ってしまうのが一番簡単なんだけど…それじゃ、納得しないって感じだね」
「いや、それでもいい。小さな一つ一つにまで、何に謝ったのかをはっきりさせてくれればな」
「それは…ちょっと…」
「では、言ってくれ」
「…ま…待っていてくれてありがとう」
「待つと言ったからな」
「でも、君は僕が僕でいられる場所を作ってくれている。それにはやはり感謝するべきなんだろうなと思うんだ」
「……」
「僕はこの戦いで思ったんだ。何度も言うようだけど…どんな大義名分があろうと人は殺し合ってはいけなんだと…。僕は何千、何万という人を殺している。いや、将軍を被害者とするなら…もっとかもしれない」
「それ…は…」
 俺も同じだから、と言おうとしたキースを「いいんだ」とジョミーが制した。
「それをね。僕は前は誰かの所為にしようとしていたんだ。ブルーに導かれミュウになって、長として戦争を起こし、ミュウを地球まで連れて来た。そうだな…誰かの為にした事だと、はっきり言うとミュウの為だな。そうやって僕自身の罪から逃れようとしていた。そして、僕はその戦いの中でもう一つの自分の運命を知った。人智を超えた力をマザーの意のままに…地球の為に使って死ぬ事。僕はそれをすごく簡単に受け入れた。それで人々や仲間を死なせた事を償えるのなら…。全てから…開放されると…楽になれると喜びすら感じてた…。有り余る力を得て、それの最高の使いどころを用意されていたんだから、力に押しつぶされて普通に生きているように見せているだけの僕だったから…嬉しかったんだ」
 キースは不安定な状態のジョミーをこのビルレストで間近に見ている。
 自分にはここでの生活は自分の療養の為と、彼を監視するのが目的だった。そんな、二年間をジョミーは一番楽しい時間だったと言った。
「ジョミー」
 俺を好きになればいいと言ったあの言葉も、彼を自分に縛るだけが目的の言葉だったのかもしれない。
 だが、それでも、俺は…。
「そう、ミュウの長としての死に様ならね…。メギド探しもメサイア襲撃もノアを救う事も、ソルジャー・シンなら当然の事。地球再生なんていうその重すぎる運命から逃れる術を探す事も、許されなかった。でも、僕自身、ジョミーはこう思ったんだ。近い将来死ぬのだと、それがわかってそれに抗う事が出来ないなら、そう、僕は自分の命の終わり方まで他人に任せてしまったんだと。ここまで誰かの為に、何かの為に生きてそして死ぬのなら…。僕はもう僕で生きるという生き方がわからなくなってしまった。だから何処か投げやりで、人の愛し方もわからないくせに、だけどそれなのに、人の愛を欲しがっていた。矛盾を抱えて、ただ愛を得て生きたいと願うだけで、その方法がわからないま、僕は死んだんだ」
 地球再生に向かう前の「行きたくない」はジョミーが本心で言った言葉だったのは知っていた。それを俺は戻って来いとも言わずに見送った。
 ただ待っていると言っただけだ。
 行けと背中を押しただけだ…。
 抗えない大きな力に流されて、それでも、懸命に生きていた。
「俺は待つ事しか出来なかった」
 小さくキースが呟いた。
「そして、ブルーの願いで僕は生きたいと思った。その思いだけで僕は戻って来た。…本当にどこまでも用意周到なんだから…」
 ここまで言うとジョミーは身体の向きを変えて、窓を背にした。

「だけど、戻った僕は、どう生きたらいいかわからないままだった。もう僕の前には道は無い。本当は僕はとても弱いんだと思い知らされた。立ち上がるのにも人の意思が居るのってわかる?それこそ、呼吸する事すらその意思で命令しているんだよ。僕の心はどんどん冷たくなってゆくのに、身体は生きたい生きたいと願うんだ…。呼吸しろってずっと言われているんだ。そんな僕がちゃんと成長出来るはずがない。焦っても考えても悩んでも…どうしようも無くて…何故そんな状態になってしまうのかもわからない。ジレンマで苦しかったんだ。君が優しくしてくれるのを重く感じた事すらあった。そして、僕は教育ステーションに救いを求めた。学生に戻って何がどう変わるのかは僕にもわからなかった。でも、そこでタイプブルーの力を取り戻し、生徒を守る事になった。大きな力を使うには心の成長が居るんだ。未熟な心では力に振り回される。殺戮を繰り返すだけの化け物になってしまうかもしれない。だけど、僕は心が戻らないまま力を得た」
「……」
「本当に怖かったよ。僕のタイプブルーの力は戦闘のみだったし、オレンジの力は人と人を繋ぐだけだから…。この二つに折り合いをつけるのは難しかったんだ。でも、ステーションの事件で僕は人の中の希望を見た」
「僕は誰かの為でもなく自分の為に、自分のしたい事をやっと見つけたんだ」


「僕は、タイプブルーの力を封印する」




  続く







『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十四話「眠り姫」

2012-12-27 03:34:14 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十四話「眠り姫」

 軍事基地ペセトラへと送られたトラヴィス将軍は軍事裁判にかけられる事となった。
 その裁判の証人としてクリスティナもペセトラに居た。
 彼女にも色々な容疑がかけられているが彼女は事実を正直に話す事で好印象を得ていた。
 彼の裁判が進む中で、避けては通れない事象があった。
 今まで機密だったマザー信奉者と将軍一派の反政府主義者の繋がりと、彼らが、大戦直後兵器メギドを強奪し、ミュウの惑星メサイアと人類の首都星ノアを攻撃した事件。そして、マザーの狂信的な科学者達が(成人検査を行っていた)人類からミュウを作る人体実験をしていた事と、ミュウやタイプブルーのクローンを作る実験がされていた事などが公表された。
 この事実は大きな波紋を呼ぶ事となった。
 東の空域の海賊達の多くは軍部に復帰し自分たちの力で軍をより良くしてゆこうとしていた。
 裁判の中で、新たにわかった事は、トラヴィス将軍はミディアンを探せなかったのではなく、探さなかったのだという事だった。
 彼はミディアンの子、エディがミディアンとクライブの遺伝子で作られた子ではないかと疑っていたからだった。
 クリスティナの気持ちも信じられず、周りの全てが自分を騙していると思い込んでしまっていた。
 その思いを野心へと変え、マザーに愛されたキースを妬み恨んでいたのだった。

  軍事基地ペセトラ 議員室 
「それじゃあ、あの教育ステーション襲撃の時に、エディが海賊のもとに行っていたら殺されていたかもしれないんですね」
 資料を見ながらシドが言った。
「彼の父親に会いたい思いを利用した口車に乗せられてクリスティナと一緒に行ってたら…彼女もエディを殺す気だったのだから、そうだったかもね。多分、ソルジャー・シンに化けたジョミーに殺されて…悲劇の王子ってなってたかもね」
「怖い事を言わないで下さい。人類との戦争になってしまいますよ。ソルジャー・トォニィ」
「まぁ、そうならなくて良かったけどね」
「それはそれで面白そうだって顔に書いてありますよ」
「それくらいでなくちゃ…さ。共闘してもつまらないよね」
「トォニィ。共闘ではなく…共存です…」
「同じようなものじゃん」
「トォニィ。その物言い。気をつけろよ」
「わかってるって。セルジュ。ここだけだって」
「だが、まさか、十二人の議会員の僕が抜けた穴を君が埋めるとは思っていなかったな」
「総督と副総督の二人が薦したら議会も認めるだろうね。だけど、僕も良い頃合いだと思っていたから…それで、総督は?」
「ソル太陽系、木星に向かわれた」
「副総督も?」
「多分…副総督は月へ行ってから、合流されると思う」
「…そう。しかし、相変わらす…。キースの話になると堅いね。セルジュ」
「口癖だとでも思っててくれればいい」
「でも、彼は戻るのでしょうか?」
「さぁ、それは僕にもわからない」
「彼こそが悲劇の王子だな」
「うーん。眠り姫ならぬ、眠り王子だよ。誰かが迎えに来るのを待っているんだ。月にはソルジャー・ブルーがいる。今度はフィシスも来てくれるし、きっと、目覚める」
「そうですね」
「そうだな」
「そう、でないと。ソルジャー・シンが彼に託した想いが消えてしまう。だから、大丈夫さ」
「トォニィ。君も月に行きたいんじゃないか?また蚊帳の外に置かれる気分じゃない?」
「蚊帳の外?そんな事は思っていないよ。彼らには彼らの思いがあって動いている。僕には僕の思いがある。それがそれぞれの生き方だろう?何も同じ事をしていないと同じと言えない訳じゃない」
「へぇぇ、いつからそんな風に考えられるようになったんだ…いつも置いてきぼりだって怒っていたのに」
「別に怒ってないっ」
「そう?僕に何度も愚痴ってきたのは誰でしたっけ?」
「う…。そ、そりゃ、そう言った時もあったけど、僕を外に置くのはジョミーの優しさなんだし…。それと、同じ事をしていないとダメなのか?と思ったのは、ジョミーが戻ってから、あの二人を見ていたからなんだ…」
「……」
「あれって、目指す場所が同じなら違う方向から攻めていった方が良いって事だよね?」
「トォニィ…それで大きくは間違ってないと思うけど、結局、考えの基準が戦いなんだな。君は…」
「そうかなぁ?」
「だと思いますけど?」
「だね」
 と三人は笑いあった。

 あの東部宙域での戦闘で撃たれたソルジャーズのジョミーは一命を取り留めた。
 だが、あれから半年が過ぎても彼の意識は戻って来なかった。
 ミュウの医師団の見解では体や脳に異常は見られない事から、彼の意識にダイブして戻す事になり、その場所をジョミーが旧月基地(黄昏の海)と指定してそれが行われたのが三ヶ月前の事。
 その時には彼の意識は戻らずに終わった。
 ジョミーは彼の体を月基地に催眠状態にして残してきたので、今回は再度の挑戦だ。
 前はジョミーが潜ったが、今度はフィシスを補佐にしてジョミーとソルジャーズのブルーが潜るという。
 彼には裁判の証人という重大な嫌疑もかかっているのだけれど、ジョミーは何か別に彼を必要としているようだ。
 あの時、ジョミーはクローンのジョミーが自分を操りキースを殺させる計画だと知った時、すぐに入れ替わりを、と言ったのだそうだ。
 それは、きっと、キースを殺した後で、自分も殺される事、そして、その後に彼も殺される事を見越したからだ。
 もし、自分と彼が死んでしまったら…タイプブルーであるクローンのブルーを誰が止めるのだと思ったと、トォニィがその役目を負ったのなら、ミュウに大きな被害が出る。
 もちろん、その場にいる人間も大勢死ぬだろう。
 それを止めるには、まずは、最初の段階で変える事。
 ソルジャー・シンという強大な力を持ったミュウの長の立場を利用してジョミーをあの場から逃がす。
 (入れ替わった)ソルジャー・シンを逃がしてしまっても将軍の計画は大きく変わらない。
 自分(ソルジャー・シン)にキースを殺させる事は将軍にとってはほんのお遊びの余興でしかない。
 何故なら、公開処刑時にソルジャー・シンが必要なだけなら、彼になれるクローンがいるのだから、、。
 自分がキースを仮死状態に落としてでも時間を稼ぐ事。
 軍部のミュウ部隊をシャトル爆破と共に船へと運ぶ役割はブルー。
 ブレスに気づき事を起こしたのがクリスティナだったのは予定外だった。
(ブレスがソルジャー・シンの化けたクローンのジョミーの腕にあるように見えていたのは彼らが作った幻影)
 事態の急変を知り飛び出したブルー。
 それを収める為に、トォニィが現れた。
 ジョミーがあの時見落としたのは、クローンのジョミーがミュウ達を騙す事に耐えられないくらいに大事に思っていた事に気がついていなかった事。
 その罪を自分の命で贖おうとしてしまう程に…。
 そして、ジョミーにキースを殺すという行為をして欲しくないという彼の気持ちを知らなかったから…。
 ジョミーとキースという本人同士が了解済みなら、殺しあうという事は大きな問題は無かった。
 何故なら、彼らは互いに戦ってきた軍人と戦士なのだから、だが、それを知らないまだ若い彼には信じられないものだったのだろう。
 ジュピターのブレスの発動は、人類の船を東部へと導くだけで戦闘空域まで飛ばすものではなかった。
 クローンのジョミーを読みきれなかった事実がジョミーとトォニィに衝撃を与えてしまい、最後の手段である、民間人を人質に使うような事になってしまったのだそうだ。

 だが、あの時、トォニィが言ったのは、
「民間船を一隻でも落としたらミュウは軍と海賊を壊滅させて、人類をミュウが牛耳るよ」と言う意味なのだそうだ。
 彼らは本当に優しい。
 その優しさが仇になってしまう程に…。
 彼らも危うい。
 ミュウという特殊な能力を持つ新人類でありながら、結局は同じ人間なのだと思わせる。
 その事に最初に気付いたのはソルジャー・シン。
 そして、キース・アニアン。
 僕ら人類とミュウはその事に気がつくのに十四年かかった訳だ。
 それは人が成人する年数と同じだった。

「それくらい時間が必要だったんでしょ?人類は」
「そうなるね」
「ねぇ、セルジュ。それより、成人検査ってゲームアプリがあるの知ってる?」
「…それって、職業認定の適性検査の悪どいやつでしょ?」
「僕がやったらどう出ると思う?」
「やりたいの?」
「やってみたい」
「止めておいた方がいいと思う」
「何故?」
「君がやったら、ゲームサーバーごと、ぶっ壊しかねない」
「えー、そんな事しないよ」
「だって、君は占いとか嫌いじゃないか?」
「まぁ、そんな物に命令されるみたいのは信じないけど…」
「それじゃ、僕が君の適正を教えるよ」
「で、何?」
「そうだな。大人に成りきれないガキだな。でもそこが良いと思う……ん?」
「じゃあ、セルジュ。俺を大人にしてみろよ」
「え?って…それって…そんな…」
 セルジュは両手を顔の前に上げて、近づいてくるトォニィを避けて後ろに下がった。
「って、これじゃ、反対だね…。僕が君を知らない世界へと連れてってあげようかな…」
「冗談。そんな所…行きたくも…ない…」
 前に一度、ジョミーによって開かれているセルジュの意識の壁は脆かった。
 僕は怖かったんだ。彼を視るのが…。
 本当だ。ジョミー。
 彼の心の中には…、……がいる。
 それなのに、僕を恨む事無く、自然に僕を見ていてくれている。

 深く眠りについたセルジュを見つめてトォニィが囁く。
「君もさ。君が本当に思う相手をちゃんと認めてあげればいいのに。そうすればもっと心が楽になるよ。死んだ人を思い続けるのは辛いよね…僕に対してでいい、その思いを全部吐き出して…それを認めて…そして、その先を見て歩くんだ。セルジュ。僕に言わせれば眠り姫は君だな…」




   続く






『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十三話「愛が呼ぶほうへ」

2012-12-21 02:56:39 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十三話「愛が呼ぶほうへ」

  ミュウの母船 Shangri-La
 ソルジャーズのジョミーをシドの乗る医療用シャトルへ担ぎ込んだブルーは必死に止血しながらシャトルを母船シャングリラへ跳ばした。
 シャングリラは東宙域の外にいたが、シャトルの出現場所で交差するように小さな船を迎え入れた。
 ジョミーはすぐさま医療セクションへ運び込まれる。
「助けてくれ。僕が悪いんだ。僕が彼を望んだから!だから…」
 医療セクションのドアがブルーの目の前で閉まる
「どうか。連れていくなら…僕にして…」
 閉じたドア取り付き、叫んだ。
「運命よ。どうか…お願いだ…彼を助けて…」
 そして、僕らにこうして生まれてきた意味を教えてくれないか。
 僕らは出会ったんだ。
 あのどうしようもない場所で、僕は生まれ、彼を見つけた。
 僕はまだ生まれたばかりで、物を考えるとかそういった事すら上手く出来ずにいた。
 僕にわかるのは、僕が生まれてはいけない事だけ…。
 でもそれすらどういう事なのかわかっていなかった。
 ただここに居てはいけない。
 彼を僕がまた作っちゃいけない。
 彼をもう望んではいけない。
 それだけだった。
 でも僕は何故そう思うのかも、わかっていなかった。
 苛立ちがつのるばかりの中、僕は移植されたミュウ因子の発動がみられる特殊な事例となった。
 あれは、ミュウ因子に自分の遺伝子が抗っていたその動きだった。
 僕は僕の中の異物のミュウ因子を壊した。
 それと同時に僕はタイプブルーとなった。
 生きるとか死ぬとか殺されるとか、壊すとかそういった言葉すらまだ知らない頃。
「タイプブルーは最初からタイプブルーとして生まれ、その運命が僕らを導くんだ」
 これは後にソルジャー・シンが僕らに言った言葉。
 僕はそのまま何もわからずに、破壊を繰り返した。
 何をどうしているのかすら、知らず、ただその力に飲み込まれていた。
「だめだよ」
 小さな子供が僕に近づいてきた。
 その子供は僕を抱きしめた。
 僕らは培養ポッドに居たはずなのに、僕らはそれを壊した。
 その子供は僕を抱きしめた。
 僕と同じような小さな子供。
 冷たくない…。
 暖かい…?
 僕はそれまで培養ポッドから出た事が無かった。
 体温と同じ温度になっているPFCは冷たくなかったが、同じように温度調節されているはずのガラスは何故か冷たかった。
 だから僕はその外にある物はすべて冷たいのだと思っていた。
 暖かいんだ…。
 僕は僕に抱きついて泣いているその子供を、その子と同じように抱きしめた。
 近くに生きている者の居ない世界で僕らは出会った。
 僕の身体に異変が起こった。
 急に苦しみだした僕を見て、その子は僕にキスをした。
 身体が少し楽になった。
 そして、瞬間に知識が流れ込んでくる。
 その子の過去も僕にはわかった。
 彼はここ惑星ノアより遠く離れた星で生まれた。
 彼が生まれた時、彼のいるユニバーサルセンターで事故が起こった。
 その為、沢山の子供たちがそこで死んだ。
 彼は運よく生き残った。
 そこに目をつけは科学者が彼をここへ運び込んだ。
 それはまだ生まれて間もない頃、それから三年、かれは実験サンプルとして生きていた。
 彼からの情報はそこまでだったけれど、何一つ無かった僕にはそれで全てだった。
 身体の組織破壊が始まった僕を駆け付けた職員がまたポッドに戻した。
 僕はそれで生き延びた。
 それから何年かして僕はポッドから出された。
 僕はデータ的には一番高い数値を出すクローンだった。
 僕の前にまたあの時の子供が現れた。
 彼も僕と同じクローンとして扱われていた。
「彼は何なのだろう?」
 そうして僕は彼を欲するようになった。
 そして僕は彼に力を分け与え、彼をタイプブルーにした。
 僕たちはまだ小さな子供だったけれど、一緒にいれば何も怖くなかった。
 そんな小さな僕の満足の所為で、僕は彼を「ジョミー」にした。
 それが楽しくて嬉しかった。
 僕の願いが彼を作り、その運命の波に投げ込んだんだ。
 やがて、僕たちは僕たちの本体の「ソルジャー・ブルー」と「ソルジャー・シン」に出会う。
 僕たちには現存するタイプブルーを全員暗殺する指令をうけていた。
 ジョミーは僕たちがミュウの許に来た本当の理由を知らないのに僕たちを惑星メサイアから遠ざけた。
 それで僕はソルジャー・シンを最初に始末してしまおうと思った。
 僕の思いのままに操ってやろうと思ったんだ。
 それは楽しいだろうと…でも、僕は何故か気が変わったんだ。
 その訳を僕は僕の本体に会って気がついた。
 僕のDNAは彼を殺せないんだ。
 愛しているから…。

 そして、今僕は両方を選び、最愛を失うのか?

 君が死を選ぶ必要はどこにも無いんだ。
 もし、その必要があるとすれば、その道を進ませてしまった僕が全ての罰を受けるべきだ。
 作られた「ジョミー」君が何でもかまわない。
 僕の傍に居て欲しい。
 僕には君が必要なんだ。
 失いたくない。
 そうさ、僕を生かす事が出来るのは君だけ。
 僕を殺す事が出来るのも君だけだ。
 愛している。

「愛しているんだ!」



  東部宙域 近くに何も無い虚空

 ジョミーが青く光ることも無く、ただそこにいた。
 呼吸する為の空気を作ることも煩わしく、呼吸や心拍を最低に下げ眠るように漂っていた。
 あの子が生まれたのは、僕の所為。
 あの子が死を選んだもの、僕の所為。
 どこを読み間違えたなんて、もう…どうでもいい。
 もう僕には後悔しか浮かばない。
 ただあの子が死に連れ去られないその為なら、僕は何だってする。
 神になれと言われたら、神にだってなろう。
 悪魔になれと言われたら、悪魔にだってなろう。
 だけど、僕には何一つ出来ない。
(もう十分に幸せでした。全てを知ってるアナタに守られて、人を愛する事、誰かを、何かを守って戦った)
「ダメだ」
(そして、僕は人として生きる喜びを知りました)
「許さない」
(もう…十分です…)
「なら…何故…泣くんだ。ジョミー」
(幸せだったから…です)
 怖くないのか?
 もう二度と、愛する人に会えなくなるのは怖くないのか?
 これは罰なのか?
 ああ、そうか…逝くのは簡単なのかもしれない…。
 僕は地球再生で一度死んだ。
 あの道は、避けられないものだった。
 そう言って全てを諦めていた。
 そうして、僕は逝った。
 皆を残して、何も言わずに、それが優しさだと僕は思っていた。
 そう、僕は間違えた…。
「生きるのを諦めるな」と言ったのはブルー。
 でも、ソルジャー・ブルー。

 生きるのはこんなに辛いんです。

 前だけを見て進むと決めたのに…。
 貴方にそう誓ったのに…。
 捨ててしまえた命。
 それよりも重い…。
 生き続けるという事。
 ジョミー。
 君の幸せはそんなに短くないよ。
 もっと、ずっと長く続くはずだ。
 ブルー。
 彼を支えて、取り戻して…。
 それが、君の生きる意味だと言うのなら。

 小さい白い光だけになったジョミー。
 何かが来る。遠くから青い矢が…まっすぐに僕に向かってくる。
 ああ、あれはブルーの心。
 シュンという小さな音と共に、小さな光を通り抜けた青い矢。
 ゆっくりと音も無く小さな光が浮かぶようにジョミーに戻ってゆく。
「助かったのか…良かった」
 ジョミーの胸には青い矢が刺さり背中まで貫通していた。
 頬を伝った涙が矢羽に落ちると、青い矢は静かに消えていった。

 ゆっくりと宇宙(そら)を進むジョミーの前に練習艦アルビオンが現れた。
 それに誰が乗っているのかは視るまでもなかった。
 宇宙服を着て命綱をつけたキースがゆっくりと近づいてきた。
 キースはジョミーを捕まえた。
 そして、笑って言った。
「戻ったか」
「ええ」
「泣いたか?」
「いいえ…」
「お前が泣く時は傍に居ると言った。俺はそれを守れて居ないな…」
「悲しくて泣いたのではないから…嬉しかったから…」
「そうか…彼が持ち直したと知ったんだな」
 二人はアルビオンのハッチへと向かった。
 キースは気密室へ入るが、ジョミーはそれに続かなかった。
「僕はこのままシャングリラへ行きます」
 そう言うだろうと予想していたかのようにキースはジョミーの腕を掴んで言った。
「ダメだ。俺はお前と居る」
「キース。何故来た。君はこんな所へ来てちゃいけないはずだ。もう行ってくれ」
「時間が無いと言うなら、これをお前の力で跳ばせばいい。俺はどこにも行かない」
「キース」
 この会話はきっと堂々巡りになる。
 ジョミーは諦めるのではなく、彼と居る事を認めた。
「それで、この船は何処へ向かうの?ペセトラ?」
「ああ、最初はな」
「最初?」
「このまま、ノアへ戻る」
「……」
 自分の腕を掴んだままそう言うキース。
「このままだ」
「このままですか?」
「ああ」
「僕はもう大丈夫だから、離して…」
「嫌だ。離しはしない」
「そんな…でも…キース…それは…」
 困る。と続けたジョミーを引き寄せ抱きしめた。
「俺が…離したくないんだ…。お前が俺の傍に居て欲しいんじゃない。俺が傍に居たいんだ。もう…」
「キース」
「もう、離れないでくれ。もうお前の死にそうな姿は見たくないんだ」
 ゆっくりと巻き取られてゆく命綱に引っ張られるように、二人はアルビオンの気密室へと入っていった。
 そして、ゆっくりと閉まるハッチの小さくなってゆく宇宙を二人で見つめた。

「僕達は…もう…どうしようもないですねぇ…」
「ああ、だけど…行くとこまで、行ける所まで…二人で一緒に行こう」

 

 
  続く