君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十七話

2015-02-23 03:46:29 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相・人類の評議会議長だったが…

シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)


※長くなってしまったので、シドの話が終わったら二章にします。^^b


  『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十七話   

  惑星メサイア上空・宇宙ステーション(シャングリラのジョミーの部屋)

 事件から二か月。まだジョミーは眠ったままだった。。
 だが、いつしか、あの淡い氷は消えてなくなり、目覚めは近いと思われていた。 

「本当に早く起きてくれないと、僕がやっちゃいますよ。ジョミー」
 ジョミーの部屋を訪れていたシドがぼそっと呟く。それに答えるように声がした。
「君がそういうと、違う意味に聞こえるね。シド」
「ジョミー!?」
 シドは振り返るとベッドの上で起き上がっているジョミーがいた。シドは思わず抱きついた。
「シド。心配かけたね」
 ジョミーは優しくそう言った。
「だって、二か月も…。もう目覚めないのかと思って…僕は…」
「もう大丈夫だよ」
「トォニィは心配ないって言いましたが、僕はどうしても思い出してしまうんです。あの時を。ナスカ、地球、メティス、スメール…僕には、ただ見送るしか出来ないのかと…」
 シドは泣きそうだった。
「シド。ごめんね。君は見送っているだけじゃない。君がいつもそこに居てくれたから僕は歩き出せたんだ。ナスカも地球も。そう、ニュクスもね。いつも、側にいてくれた。でも、心配をさせてしまったし、辛い思いをさせた。それは謝る。ごめん。今回の事も本当に色々、ありがとう」
「お礼は…僕の方こそです」
「…シド」
「それにしても、そのニュクスの黒い服のだと印象が違いますね」
 そう言ってシドはジョミーから体を離した。
「これは喪服の意味があるそうだよ」
「そうなんですか」
「あちこち焦げちゃってるし、着替えなきゃね。惑星ニュクス。自分たちの星を暗黒惑星と呼び、人類から隠してきたあの星を暴いたのが同胞のクローンとミュウだったとは皮肉だ…ね」
「そうですね。あの星は、彼らはそうなる運命(さだめ)だったのでしょうか?」
「暴かれる事を願う者が現れたのだから、時の流れなんだろうね」
「時の流れ…そうかもしれませんね。ああ。そうだ。ジョミー。ソルジャー・トォニィから正式にシャングリラに戻るように言われました」
「そうか。旅立つ前に出した僕の辞任は通ったよね。なら君を束縛出来ない」
「……」
「では、トォニィに従って…」
「僕はトォニィの側に行って、貴方の為に動きます」
「それは…。僕は純粋に君をシャングリラのキャプテンに戻したいのだけど…」
「僕にはミュウの為にならない事をしようとしているとは思いません」
「シド…僕はそういう意味では…」
「あなたが眠っていた間に考えた結果です。ジョミー。僕には、キャプテン・ハーレイのようになりたいという夢がありました。あれは、ただシャングリラのキャプテンになるだけでは無いんだと気が付いたんです。ハーレイはソルジャー・ブルーとソルジャー・シンの二人を支えていました。僕もそうなりたいと思ったのです」
「そう…か」
「僕はまだまだ頼りになりませんが…」
「ねぇ、シド。僕は君をもうずっと前から頼りにしているよ。そういうのは言葉にしないと伝わらないのかな…」
「いえ、僕がはき違えていたからだと思います。僕は、あなたの心を欲しがっていた…」
「心か…。君は前に答えが欲しいと言っていたね。それに答えるよ」
「答え?」
「僕は、僕の命よりも大切なものを君に託した」
「ジョミーの…命より大切なもの…?」
「傍に居て守りたかったが出来なかった。僕はそれを君に託した」
「それは…」
「何度も君は守ってくれた。君のその大事な肩を負傷してまでね…」
「…これは大した事はありません。ヴィーには僕らを殺す気は無かった…」
「今度は、トォニィを守って欲しい」
「それが僕への答えだと?」
「僕より危なっかしい彼の補佐して欲しい。君は僕といて人類の事も学んできた。技術も医学も政治も。君はとても優秀だ。これからのトォニィに絶対に必要なんだ」
「その為に僕を旅に同行させていた訳じゃないですよね?」
「ううん。違うよ。君を僕が欲しがり、君が側に居てくれた」
「ジョミー。ありがとうございます。着替えますか?」
 シドはステーションの医療センターにジョミーが目覚めた事を知らせた。やがてドクターたちがやって来て検査をして去って行った。
 まだ休んでいるように言われたジョミーは検査着のままだった。
「シド」
 ジョミーが医療班のデータを見ていたシドを呼び寄せる。
「はい。どうしました?」
「さっきの君への答えさ…。もう一つあるんだけど…」
「え?」
「でも、言いにくくて…」
「?」
「ちゃんと答えていない気がして…気になっていたんだ…けど…。やはり言いにくいな…」
 ジョミーは困ったようにしどろもどろになっている。
「もしかして、僕への返事ですか?」
「ああ」
「あー、それはもういいですよ」
 シドは照れて、誤魔化すようにそう答えた。
「好きだったよ…」
 ぼそっとジョミーが言った。
「え?ええ?」
「ずっと好きだった」
「ええ。だって、どうして。ああ、それ友情でしょ?」
「んー、でもさ、ごめんね。キースが居なかったら…と思ったよ。本気でね。そう考えた事が何度もある…」
「それ…嘘?」
「嘘じゃない。君だったらなと…ね」
「僕は拒絶され続けて、可能性すら無いと思っていましたよ」
「そこまで嫌だとは言っていない…想いを隠す為に酷い事をしてた。ごめん。どうしても、言えなかった」
「どうして、そんなに」
「この気持ちは友情だと誤魔化していないと、本気になりそうだったから…かな?友情と愛情が一緒になって君の思いに答えたら、僕は君を壊してしまうんじゃないかと…怖かった。ああ、やっぱりダメだ。もう上手く言えない」
「ジョミー…」
「ダメだ…な。言うんじゃなかった…もう会えないって訳じゃないのに…感傷的になってるんだな…」
「ジョミー。僕も複雑な思いでいました。好きだとうのは本当なんだろうか?どんどん先に行ってしまうのを僕は嫉妬の思いで見ていました。それと、僕はキースにも嫉妬していました。彼はジョミーを笑わせる事が出来る。僕には何度やっても無理でした」
 シドはジョミーの肩を掴んだ。
「それに、あなたはキースを選んだ」
 そういうとシドは真剣な眼差しでジョミーを見つめた。
「…シド?」
「抱いていいですか?」
「え?」
「ジョミー」
「いや、ダメだ」
「僕の事を好きだと言ったじゃないですか?」
「好きだから、ダメなんだ…」
「もしかして…僕が怖いですか?」
「……」
「答えて」
「…怖いよ」
「本当に、僕はあなたに好き以上の感情を持たせたんですね」
「…お前も随分意地悪だな…」
「僕の思いと同じように、あなたの愛も複雑って事ですね」
 自分の命を掛けるような事が平気で出来てしまうあなただけど、愛した相手にも自分の為に命を掛けてくれるのを望む。好きだけでも体をつなげられるのに、それとは別に、愛へと進んでしまったのは、相手の命も要求する。
 それは、リオとハーレイだけ知っていた。
「そんな事をしてるから、自分の愛がわからなくなっちゃうんですよ」
 と、シドは言った。
「どうすれば。どうしたら良かったんだ?」
「キースが好きだから。僕は好きになれない。ってはっきり言えば良かったんですよ。いつも、どこかへ行っちゃうような事ばかりしていないで、ずっと一緒にいられるようにすれば良いんです」
「ずっといられるように…」
 セルジュが前に言った幸せの定義をジョミーは思い出していた。
「僕は幸せになるのを恐れているのだろうか?」
「そうですね。そうかもしれませんね」
「じゃ、幸せへの一歩だ。シド。アレを返して」
「え?」
「セドルに薬を飲まされて僕が君の薬を自分に移した時の僕の動画データ。アレを渡して。気になっていたんだ」
「えっと、ですね」
「渡して」
「ああ、まさか。それを言う為に好きだなんて言った訳では…」
「ごまかさない。全部だよ」
「わかりました」
「良い子だ」
「……」
 シドは自分の端末からジョミーのデータを出して、ジョミーの所へ送信した。
「ジョミー。これからどうするのですか?」
「セドルに会いに行く」
「セドルですか、彼なら、今、ノアに来ています」
「そうか。トォニィは?」
「ペセトラです」
「……」
「ノアに送りますよ」
「ううん。一人で行ける」
「あの…」
「ん?」
「いいえ。何でもないです」
 キースはどうしているか聞かないんですか?と言おうとしたシドだったが、聞けなかった。
 気になっていない筈はない。
 目覚めてすぐにセドルに会うのもきっと先の事件がらみだろう。
「ジョミー」
 シドはこの無鉄砲なソルジャーを一人にしたくなかった。だけど、今は…。二人はもう心を決めていた。
「ジョミー。セルジュからメッセージがきています」
「何?」
「ノアで会いたいとの事です」
「わかった」
「では、行きます」
 ジョミーはシドを見て静かに頷いた。

 シドはジョミーの部屋を後にする。
「ああ」
 シドは大きなため息をついた。
 彼はシャングリラを降り、ステーションのエレベーターへと向かった。
 ここはトォニィの結婚式に来たジョミーを見た場所だった。
 あの時、彼が心を開いた相手が僕だったら、何もかもが平和に進んだのだろうか?
 スメールの事件もノア・メサイア襲撃事件も、そして「地球再生」も、僕は死を覚悟して進む彼を支えきれただろうか?
 僕らではなく、キースの所へ戻ったジョミーをトォニィは認めた。
 僕は帰ってきたジョミーと一緒に旅をするようになっても、いつまでも文句を言っていた。
 何度もジョミーは僕を頼りにしてくれたのに、僕はそれすら見ようとしないでいた。
 離れる今になって気が付いた。
 ジョミーの言葉が蘇る。
「好きだよ」
「僕は、僕の命よりも大切なものを君に託した」
 自分の命よりも大切なもの、それを…。
 僕はそれを守れた。

 そして、もう一度シドは、宇宙港に停泊しているシャングリラを振り返った。
「やっぱり違うな…ジョミーが居ると船が違う。船が暖かくて、喜んでいる」
 貴方はここから何処に行くというのですか?
 僕はここで待っています。
 ふいに涙が零れた。


 しばらくしてジョミーはノアに向かった。
 


  一章  終






『バレンタイン2015』

2015-02-14 23:58:12 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編

  『くまーその先へー』

「フィシス」
 シャングリラの通路を歩いていたフィシスにジョミーが声をかけた。
「ああ、フィシス。君を捜していたんだ。ブルーの所の帰り?」
「ええ、あの、ジョミー?」
「ん?」
 微かな違和感を感じたフィシスは彼に手を伸ばす。
 その様子を見て、ジョミーは優しく彼女の手を取った。
「ほら」
「え?」
「何だと思う?」
 フィシスの手は暖かなふわふわの毛皮の感触に笑顔を浮かべた。
「ミトン?これはぬいぐるみですか?」
「そうだよ」
 明るくジョミーは答えて、次はフィシスの手を自分の頭に導いた。
「ジョミー。これは耳ですか?丸い耳」
「そう。熊だ。カチューシャなんだ」
「熊ですか。でも、どうして?」
「あのね。今日はハロウィンなんだよ」
「ハロウィン?」
「……」
 何かに気が付いたアルフレートが言おうとしたのをジョミーは指を立てて口に当て「(黙ってて)」とウィンクで合図をした。
「トォニィ達も皆も、僕と同じ熊やウサギや猫の仮装をしているよ。中庭に行ってあげて」
「ええ、わかりましたわ」
「お菓子ももらえるよ。行ってらっしゃい」
 ジョミーは二人に手を振って見送った。

 ジョミーの姿は、手には茶色の熊のミトン、足は同じ色の熊のスリッパ、頭にまあるい熊耳だった。
「フィシスが白なら、ブルーは黒かな?」
 ジョミーはそんな事を言いながら、ブルーの部屋へと向かった。

「黒より青が良いのか…な?」
 ジョミーはブルーにミトンとカチューシャを付けて、そう呟いた。
「ジョミー」
 ブルーのテレパシーが優しくジョミーの頭の中に入ってきた。
「ああ、起こしてしまいましたか…」
「今日は何だい?」
 ブルーは目を閉じたまま答えた。
「ブルー。今日はハロウィンなんですよ」
「ハロウィン?」
「そうです」
「でも、ジョミー。今日は…」
「ええ、違います。10月じゃありません」
「ではどうして」
「トォニィが古い本を見つけてきて、お祭りをしたいって言いだしたんです。皆で用意して、僕もクッキーを焼いたんですよ。今、中庭でパーティをしています」
「それは、見てみたいな」
「ぜひ、来て下さい」
「ジョミー」
「はい?」
「それで僕は何の仮装をしているんだい?」
「熊です。黒い熊です…」
 ジョミーの語尾が小さく震えた。
「ジョミー?」
「目を覚まして下さい。ブルー」
「ジョミー…」
「ブルー。今は二月です。二月十四日」
「ああ」
「僕は誰も失わずに、本当のハロウィンを迎えたいと思っています。だけど…それは無理なのですね…」
「……」
「こんな事しか出来ない自分が憎いです」
「ジョミー。泣いているのか?」 
 ブルーはふわふわのミトンの手でジョミーの頭を撫でた。
 そして、ゆっくりと目を開けた。
「泣いてなんかいないです。泣いてどうにかなるならいくらでも泣きますよ」
「泣かないで」
「泣いてないです」
 ブルーから目をそらしたジョミーの目から毀れる一筋の涙。
「…すまない」
「ブルー。今日は何月何日ですか?」
「それは、君がさっき、二月十四日と」
「バレンタインですよ。起きて下さい。チョコを貰い損ねちゃいますよ」
「ジョミー。僕は一つだけでいいよ。君が隠している一つがいい」
「ソルジャー・ブルー。これは運命なんですか?」
「いいや。ジョミーこれは僕が選んだ道だ」
「わかっています…。次に貴方が目覚めた時、何かが起きる…だから僕は」
「そう、僕の命はもっとずっと前に尽きる筈だった。。それを伸ばしここまで来た」
「ブルー。きっともうすぐなんです。もうすぐ貴方の見たかった地球へたどり着けます」
「ああそうだね。僕らは地球へ行けるだろう」
「そうですよ。僕たちは…あの青い地球へゆける。だから、生きていて下さい」
「くれないのかい?」
「チョコあげたら、キスしてくれます?」
「ああ。君が泣きやんだらね」
「次の今日も、その次の今日も、もっと先の今日も。ずっと先の分までキスして下さい…」
「わかっているよ。ジョミー」
「ソルジャー・ブルー」
 ブルーはジョミーが泣き止むのを待たずに優しくキスをした。




 おわり




※トォニィが5才くらいの設定になっています。
 時間ぎりぎりUP。
 仮題のままUPしてしまいました^^;



『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十六話

2015-02-05 02:17:51 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相・人類の評議会議長だったが…
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十六話

  惑星メサイア・宇宙ステーション(シャングリラ)

 事件から一か月。
 シャングリラが惑星メサイアに戻ってもジョミーは目覚めなかった。

「ソルジャー・トォニィ」
 トォニィに、シドがジョミーの容体を心配して話しかけた。
「ジョミーなら、いつもと変わりないよ」
「そうですか…」
「丁度良かった。シド。君にお願いがある」
「何ですか?」
「シャングリラのキャプテンに戻ってくれないか?」
「え…」
「無理強いはしない。だけど、このシャングリラを任せられるのは君だけだと思っている。ジョミーが君を手放さないなら、その時は僕が頼んでみる。ああ、でも、本当に無理にとは言わない。今は、僕がそう強く願っている事を伝えたい」
「トォニィ…」
「今、眠っているからという訳ではないけど、ジョミーではなく君が決めてくれないかな。僕は君の気持ちに従う」
 それだけ言うとトォニィは仕事あるからと戻って行った。
 シドは自分がいつかシャングリラのキャプテンに戻る日が来ると思っていた。でもそれは漠然としていて、このままずっとジョミーと一緒に旅をするのも悪くないと思い始めていた。
 今回の事件でトォニィが本格的に政界に乗り出し、ミュウの母船であるこの船が今まで以上に必要になるのは目に見えている。
 シャングリラのキャプテンに戻る。自分が望んできた事が現実になる。それは嬉しい。だけど、今のジョミーを置いて行っていいのだろうか?
 それは不誠実で不義理な事なのではないか?
 ジョミーは今、キースを失い。ソルジャーズも側に居ない。たった一人だ。僕まで居なくなっていいのだろうか?
『ジョミーではなく君が決めてくれないか?』
 トォニィが言いたい事もわかる。
 ジョミーなら、多分僕に戻るように言うだろう…。でも、それでは駄目で、僕の思いを尊重するって事だ。
 僕が決めないといけない。だけどいっそ、命令してくれた方が楽だったのかもしれない…。
 ずっとジョミーに必要とされたいと思ってきて、今がその時なのに、僕は…迷っている。
「どうすればいいのだろう」

「じゃあ、どうするって言うの?」
 ふいに聞こえてきたのはソルジャーズのジョミーの声だった。シャングリラの停泊するデッキで話している。出て行ったトォニィと会ったのだろう。シドはとっさに影に隠れた。
「何もしない。僕たちは知りたいだけなんだ。何故あんなことをしたのかを」
「捕まえてしゃべらせるって、尋問をするって事だよね。簡単に話す訳がない」
「ジョミー。だけど、彼をこのままにはしておけない」
「僕は居所なんかしらない」
「君の為にも、人類の為にも。これは必要な事なんだ」
「だから、知らないんだ。あいつが人を憎んでいるなんて前からわかっていた事じゃないか?」
「僕たちはその意味を知らなければならないんだ」
「僕たちじゃなくて、自分の為じゃないの?」
「違う。僕は、ブルーも君も救いたいんだ」
「今まで知ろうともしなかったのに、何を今さら」
「じゃあ、君に聞く。何故君は今回は僕らに協力したんだ。ジョミーが頼んだからか?それだけじゃないだろう。君は人が死ぬのを嫌い自分を盾にしたよね?あの時と同じように自分を使って戦いを止めようとしたんだろ?」
「!」
 ジョミーはトォニィを睨みつけた。
「そ…それは」
「だったら。君はブルーを助けたいんじゃないのか?」
「……」
「ジョミーの代わりにキースの軍と対峙したと聞いた。キースは怖かっただろう。味方なら良いが、あいつは僕でも敵に回したくない」
「…怖かった。怖かったけど…。シドが居た。一人じゃなかった。軍を少しでも僕に引きつけてニュクスから目を逸らすのは僕からやるって言ったんだ。だから」
「でも、それは、キースに罪を犯させないんじゃなくて、キースが罪を犯さなかったらブルーもって事だろ?ブルーも助けて欲しいって思いからじゃないのか?だったら同じだろう」
「助けたい…。助けたいよ。でも、僕にはその方法すらわからないんだ」
「僕も助けたいと思う。僕にも方法はわからない。この気持ちは同じなんだ。それは疑わないで欲しい。それに、ジョミーは拘束でもしない限り目が覚めたらすぐにでも動くだろう。僕はその前に知っておきたいんだ。また何もしないでこのままジョミーを見送るのはもうしたくない。それだけは嫌なんだ!」
「……」
「…トォニィ」
 隠れて聞いていたシドは思った。
 トォニィも同じ気持ちでいたのだと…。
 ソルジャーは強くて、何でも出来て、何でも自分の思い通りになる。そんな存在だと思ってい時があった。「何も出来ないし、弱いよ。同じ人間だもの」とジョミーがよく言っていたのを、本心からは取り合っていなかった。
 僕は傍に居て、三人のソルジャーの姿を見ていても、まだどこかで彼らは強いから別格なんだと思っていた。
 彼らの苦悩も努力も全て見てきた筈なのに…。
『知っていて何もしなかったのか?』
 僕は前にどうしてジョミーばかりそんな目に遭うのだとトォニィに怒りをぶつけた事がある。
 あの時、自分の身を斬りながら生き、皆を守るのがソルジャーなんだと、トォニィも思っていたに違いない。
 でもそれは間違っているとトォニィは気が付いたんだ。
「こんなんじゃダメだ」と言っているトォニィを見た事がある。
 今、僕が二人のソルジャー為に、ジョミーやトォニィに出来る事は何なんだろう?

「だから、知っているのは、多分、キース・アニアンだけだと思う」
 ソルジャーズのジョミーがぼそっと言った。
「彼も知らないと言っている」
「記憶を消されて…?」
「多分ね…」
「どうしたら…」
「ソルジャー・トォニィ。僕の所にジョミーが調べていたセドルの情報があります。セドルはキースと通じていました。そこから何かつかめるかもしれませんよ」
 シドは二人の前に出て行った。
 僕はジョミーを助ける為にトォニィの所へ行きます。
 今は、自分が良いと思う方へ。自分の出来る限りの事をしていこうと思うシドだった。





  続く



 ※短くてすみません><
 キリが良い所がここしか無かったので、ごめんなさい。
 次はバレンタインSPかな?
 なかなかHな展開にならない…^^;でも、だからって不本意なのは…。
 って事でSPで遊べたらと思っています。
 本編はシドの話がもう少しきます。



 





『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十五話

2015-01-25 02:07:16 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)


   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十五話

  惑星ニュクス・戦艦ゼウスが墜ちた後、思念体のジョミーとキース

 キースは思念体のジョミーの問に答える。
「全ての混沌を終わらせようとしただけだ」
「終わらせる…?」
 その言葉はジョミーに衝撃を与えた。
「この先に向かうのにここは邪魔だ」
「それは…キース。どういう意味で言っているんだ…」
 ジョミーの思念体が揺らぐ。
 何かが大きなものが近づいている気がした。
「……」
 キースは何も言わないまま、ただ睨み続けていた。
「空が…とても重い…」
 ジョミーの心の中で何かが鳴っていた。
「何かが…起きる」

 そうか、僕はここで間違えたんだ。
 僕は精神ではなく、キースの許へは僕が行かなければならなかったんだ。

 ジョミー本体が再び光り始める。
 ニュクスの薄く淡い緑の空の向こうにチカチカと光る船団が見える。
 ジョミーは空を跳んで、マザーシステムの境界を抜け、プロメテウスへと向かった。
 その時、ニュクス全土で警報が鳴った。
 上空にいた戦艦が星に向かって降下を開始していた。
「降下?まさか!」
 マザーのシステムが書き換えられた?そんな事が出来る筈が無い。

 キース。僕はあれを止める。そして…世界を取り戻す。
 時間が戻った。
「…さようなら。ソルジャー・ブルー」
 ジョミーの瞳から零れた涙が宇宙へと消えていった。
 
 ソルジャーズのブルー。
 僕を殺しに来い。
 でなければ、僕が世界をもらうぞ。

 プロメテウスが降下を始めていた。
「降りてはならない!」
 ジョミーはプロメテウスへと乗り込み、全員に思念波を送った。
 それは艦全体を包み込み、他の船へと広がっていった。
 プロメテウスはマザーシステムのラインのぎりぎりで停船した。
 ニュクス地表から飛び立った戦艦ゼウスの主砲が撃たれる。
 その攻撃はプロメテウスの迎撃システムに阻まれ撃沈には至らなかった。
 
「すべての戦闘行為を今すぐにやめるんだ!」
 シドの声が響いた。
「キース・アニアン。貴方は評議会議長から降ろされた。もう貴方には船団を、そのゼウス一隻すら動かす力はありません」
 セルジュの声だった。
「全艦に告ぐ。僕は、ミュウの長。ソルジャー・トォニィ。本日、議員全員から承認され評議会議長に就任した。それに従い、今、この場のこの空域での全ての権限を僕が預かる。戦艦ゼウスのキース。投降しろ。そして、この無駄な闘いを今すぐに止めろ」
 その声と共に、ニュクス上空に大きな白い船体が現れた。
 それはミュウの母船・シャングリラだった。
 その背後に三隻の船を従えていた。
 一隻はミュウの船、エラ。もう一隻は人類のアルビオン。そして、セドルの船、セレストだった。
 この三隻以外にも軍の高速戦艦が続々と現れ、空域の戦艦は全て包囲された。

 ベルーガ2はシャングリラに収容された。
 プロメテウスからジョミーがミュウの救護用ポッドで移送されてきた。
「ジョミー」
 トォニィに付き添われながらジョミーはシャングリラのあまり使っていなかった自分の部屋へと入る。
「トォニィ。ごめんね。僕は君にとても重い物を背負わせてしまった」
「ミュウとして、人類の中枢に立つことは僕もいつかはそうなると思ってた…だけど、遅いくらいでしょ?」
「君が思う時で叶えてあげたかった」
「ダメですよ。それじゃ、僕はいつまでもぐずぐずしてしまう」
 と笑った。
「それでもさ…君には時間を大切にしてゆっくりと生きていって欲しいんだ」
「ジョミー。時間を戻したね」
「ああ、戻したよ。君には言ってあったね。僕が人類の敵になるって言うのが始まりだと…あの時、君は僕を止めに来た」
「間に合わなかったけど…プロメテウスが沈み。人類の混沌が始まる。僕はそれでもよかった。キースがマザー信奉者を殺すのなんて見逃しても良かったのに。あいつらは邪魔だ」
「それをしたら、それを許してしまったら…。僕らミュウが地球へたどり着いた意味が無くなってしまう。僕は、君にもキースにもブルーにも、もう誰にも人を殺してほしくなかった。それでも…プロメテウスが沈むのだけを止めれればと思っていた。時間を戻すまでしなくてもって。でも、プロメテウスが沈んだ時に視えたんだ。その先の未来が、君とキースの死が見えたんだ」
「僕は死んだりしないよ」
「ブルーが相手でもそう言い切れる?」
「……」
「君もキースも失えないんだ。僕はそれを許さない。未来を変えてでも守ってみせる。そう思ったんだ」
「ジョミー。何も変わらないかもしれないのに?」
「希望はある。時間を止めた先でソルジャー・ブルーに会った」
「希望?時間を止めた先?」
「君は僕に願ってくれたよね?このままではいけないと」
「だって。そうだろ?タイプブルーの力を全部使ってしまうんだ。ジョミーがジョミーでなくなるのに、それを誰も知らないでいかせるなんて、おかしいと思ったから…だから、キースには見せたいと思ったんだ」
「キースには会えたよ。時間はかかっちゃったけどね。彼の身に何が起きていたのかもわかった。あの場所で話せて良かったと思っているよ。ありがとう。トォニィ」
「こんな事になったのを…僕は許してないよ。ブルーも貴方もね…」
「僕がした事を君が許さなくていいんだ。僕が間違ったら怒ってくれればいい。でも、ブルーは僕が止めなきゃいけない。そして許してもらわないといけない。それと、許さなきゃならない。希望はあると思う。ソルジャー・ブルーはあの空間を君と彼ともう一人のブルーが作ったと言った。ブルーはまだどこかで僕らを見ている」
「それで、こうして試していると?ジョミーの力を全部使わせてまで?」
「僕が時間を戻すなんて想像していなかったかもしれないね。僕はわずかに残ったタイプブルーの力を温存していた。その為にタイプオレンジの力を使っていた。そんなとても変な状態だったんだ。いつまでも昔の事を引きずっていてさ、これで良かったんだよ。僕はあの力にしがみついて先に進もうとしていなかったんだ」
「ジョミーが進んでいないって言うのなら、僕らミュウは後戻りしているってなるよ」
「…そうかな?」
「そう。絶対。そうだよ」
「でも、僕はとても卑怯な事をしたんだ」
「敵前逃亡?」
「そうだね」
「勝算が無い闘いなんて慣れていたんじゃなかった?」
「最近は一人勝ちだったからね。そんな感覚、忘れちゃったよ」
「僕のが強いよ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「あー、そうだったね」
「酷いなぁ。ああ、もうどっちでもいいや」
 と、二人は笑った。
 そんな二人を包むようにパキパキと淡い水色の氷が広がってゆく。それは「月の墓標」と似ていたが、いまのそれはとても薄く、淡い。
「トォニィ。後を頼むね。僕は暫く眠る…」
「ねえ、ジョミー。あまり長く寝てると僕が(ソルジャーズの)ブルーを殺しちゃいますよ」
 冗談めかして言っているがその言葉は本気だった。
「大丈夫だよ。この船がメサイアに戻る時には目が覚める。待っていて」
「ジョミーの大丈夫はあてにならないよ。いつも嘘ばっかりだから…」
「じゃあ、約束するよ…僕はトォニィを愛している。だから、信じていて…」
「愛してるなんて言葉を安売りしちゃいけません。ジョミー」
 トォニィはフィシスの真似をした。
「あはは、わかったよ。でも、安売りじゃないからね。本当に感謝しているよ。トォニィ」
「わかりました。ジョミー。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。トォニィ」
 そして、ジョミーは静かに目を閉じた。
 トォニィは立ち上がり、ベッドから離れると彼を守るように氷が閉じていった。

 
 このキースが起こしたニュクスでの戦闘は波紋のように広がり、キースは英雄から犯罪者へと堕ちた。
 彼の身柄は人類軍の許で裁判にかけられる事となった。
 何者かの洗脳で起きた今回の事件で、ミュウの立場は悪くなったが、ニュクスのセドルがミュウの側に加わり、均衡は保たれた。
 衛星スメールでキースの洗脳と記憶障害を治す治療が開始された。





  続く





『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十四話

2015-01-19 03:16:20 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十四話

 どこからともなく桜のような淡い色の花弁が音もなく舞い落ちてくる。
 それを見上げて、落ちてくる一枚を手に取る。
 これは誰の心だろうか?
 ふいに風が吹き、床に落ちた花弁を巻き上げて飛んでゆく。
 その先には、青い地球があった。
 ああ、そうか、これはきっと。
 きっと、僕らの…。
 かけがえのない記憶。

「ブルー。僕はキースを護ると誓ったのに助けなかった。それを後悔していないんですよ。でも、それでも、彼に人間を殺させたくはなかった。だから僕は、キースより先にニュクスに入る為にセドルに近づいた」
「情報を守る事を優先した…それで」
「キースが焼き捨ててしまうような、あんなに醜い人間の情報なんていらないと思えるけどね…。でも、未来に次に向かう為には必要だと思った」
「高度な医療と科学。それを君は、セドルに半分渡してキース(人類)から逃げるように言ったんだね」
「そう。セドルにしか頼めなかったから、でもあれはね。本当は半分じゃないんだ。彼の持つものだけでは不十分。それでも、僕になにかあった時はあれで十分…」
「キースはニュクスの情報を君が奪っただけでは君の言う事を聞かなかった。彼は星を壊そうとするのを止めなかった」
「星もろとも…ね」
「ヘイトスピーチか…」
「そう。ニュクスをマザーの星だと騙して連れてきたマザー信奉者をあのプロメテウスごと破壊するのは彼の最初からの目的だったからね…」
「君は未来を視たのか?」
「ええ、ブルー。視ました」
「ジョミー」
「あの時…プロメテウスが堕ちた瞬間に…世界が壊れる音が…」
「君の衝撃はここまで伝わってきたよ」
「…僕は…」
「君の力を解放させるキーワードは希望を奪われる事。つまり君が絶望する時だったね」
「ええ…だから…」
 と言ってジョミーは黙り込んでしまった。
 ブルーは何も言わずにただ待った。
 風も無いのに揺れる白いレース。その中でキラキラと光る氷の粒。どこからか優しく差し込む光。
 自分のとは違うこの世界を、ブルーはジョミーの心の世界を愛しく思っていた。
「ブルー。どこをどう視ても…破滅しかなくて…まだだめなんだ…と…」
「それで時間を戻そうと…」
「未来は見えない…可能性でしかない…それでも…」
「君は選んだんだ。未来を。トォニィを世界に出す為にキースを失脚させた。キースがプロメテウスを破壊しようとしていた事実さえあればいいという事なんだね」
「ええ、そうです。不審な行動を繰り返したキースは更迭される。セルジュはノアの議員の票を集めて、トォニィが新首相になる。僕はこの一年その為に動いていた。だから、もう大丈夫だ」
「だけど、ジョミー。醜いものや汚いものを隠しているのは…」
「わかっています。それではマザーと同じことをしているのだと、これは人類のモノですから…時が来たら、彼らに。いつか公表します」
「あのフィズも偶然の産物では無いとわかるという事だね」
「ええ。僕がプロメテウスの主砲を消した。あのタイミングでそれが出来るなんて、偶然である筈が無いですからね」
「吊られた男か…」
 タロットカードがくるくると落ちてくる。
「……」
「ジョミー。僕は君が心配だ。その重すぎる荷を担いだままでいくのか?」
「何かを持ち続けるのは、もう慣れました」
「ジョミー」
「いいえ。ブルー。僕は大丈夫です」
「……」
「ブルー。貴方を責めるつもりはありません。その資格があるとか、無いとかも、何も無いですよ…。貴方が責められるのなら、僕も同罪です。僕には何も言う資格がありません」
「……」
「ニュクスで貴方の実験結果も見ました。一世紀以上も前、人類は地球から宇宙に出たが、滅び行く人類の行く末を案じた科学者たちがマザー(人工知能)を作り、その結果、完全に管理された世界を作り出した。だが、それにもいつかは終わりが来る。その時の判断を機械の手に渡さない為、人は亜種が産まれるのを待っていた。そこに突然変異で産まれたのが僕達ミュウ。マザーは貴方に命じた。「生き続けろ」と、そして、僕を護れと…」
「…そうだ、ジョミー。マザーはこれは戦いだと、ミュウを殲滅させてしまうかもしれないけれど、そうなった時は僕らの負けだと言った」
「未来で僕は過去の貴方に会った。あれを僕は罪だと思っていました。本当にこれで、おあいこですね…」
「僕達は対なのかもしれないね…」
「そうですね。でも、ブルー。僕はこの道の全てがマザーがそう仕組んだ事だとしても、今はもう何も後悔していません。戦争を起こし戦ってきた事も、全てが並べられたものだったとしても、それを選び、進んできたのは僕だ。だから、この先もきっと進んで行ける」
「未来の君は、もう一人の僕、ソルジャーズのブルーをどうする気なんだ」
「殺さなければならないなら、殺すしかない…」
「予言の所為?」
「ううん。僕は時間を戻す。未来は変わってゆくと信じたい。だけど、未来は変わらないかもしれない。そうなら、もうそう覚悟をするしかない」
「ジョミー」
「ブルー。僕は貴方が人類を力で牛耳る事はしないと信じています。彼は貴方ですから」
 と、ジョミーはにっこりと笑った。
「そうか…ジョミー。僕はここから君をずっと見ていたかったよ」
 ドームが揺らいでいる。そうこの時間は永遠なんかじゃない。もう終わる。
「ブルー。僕が何故消えてしまいそうなタイプブルーの力を必死で温存させていたのかわかりますか?」
「ああ、ジョミー」
「僕は貴方を取り戻したい、時間を戻すなら…貴方を…と思っていたのに…一体、どこで間違ってしまったのだろう…貴方が生きていた時まで戻したいと思っていた…のに…」
「でも、君は出来なかった。そうしない事を選んだんだ」
「僕は貴方に誇れる生き方をしたかった…ただそれだけ」
「……」
「いつか…僕はこの道を選んだ事を後悔するかもしれない…でも…それでも、僕は…今はこうとしか生きれない」
「ジョミー」
「後悔して泣き叫んで。また失敗して、後悔して…そうやってしか生きれないんだ…。僕はタイプブルーの力を使って時間を戻します。それで僕はタイプブルーでは無くなります」」
「僕の手を離れてしまうんだね。ジョミー」
「はい…ブルー」


 崩壊が始まった世界で、ただ二人。
 世界がたった二人だけなら、よかったのに。
 時間が止まってくれればいいのに。  
 小さな花弁が巻い上がり、地球へと飛んでゆく。
 世界がこれだけなら良かったのに。
 そう、僕ら二人、青い地球の上で出会えれば良かったのに。

「まさか…また貴方に会えるとは…本当に思っていなくて…嬉しいのに悲しくて…」
「僕もだよ」
「僕は笑えばいいのですか?泣けばいいのですか?」
「笑ってくれると嬉しいな」
「そうですか…ブルー。貴方も笑ってくれますか?」
 泣きそうな顔をした二人は笑い合った。

「僕はいきます」
 ジョミーがブルーへと手を差し出す、ブルーがその手をとる。
「今までありがとうございました」
「僕も礼を言うよ。今までありがとう」
 静かに二人が離れてゆく、見つめ合ったまま小さくなってゆく。
「ジョミー!」
 ブルーが叫ぶ。
 その声にジョミーは笑顔で答えた。
「ブルー。貴方の為にこの力を残していたのは本当です…見ていて下さい。世界はきっともっと優しくなれます」



  現在 惑星ニュクス上空

「お願いだ。キース。もう止めてくれ。この宇宙を再び戦乱に落とすのが目的なのか?」
 キースの側にいる思念体のジョミーが聞いた。
「ああ」
「嘘だ。もし、そうだと言うなら、僕は今、タイプブルーのミュウとなって人類の前に再び立とう。愚かな人類。今度こそ容赦はしない。お前たちも無慈悲に殺される側になればいい。僕は人類を滅ぼす化け物になろう。そして、君を」
「ジョミー。その言葉を口にしてはいけない」
 そうヴィーの口を借りて叫んだのはトォニィだった。
「ソルジャー・トォニィ!」
 ジョミーの前にトォニィが居た。
 世界が青く光る。
「ソルジャー・ブルー。世界はきっともっと優しくなれます」
「ジョミー」
「トォニィ。後を頼む…」
 ジョミーはトォニィを見つめ小さく笑った。意識は遠のいてゆく。
 トォニィの腕の中に崩れ落ちる。
 だが、トォニィが受け止めたはずのジョミーの身体が青く輝きながら消えていった。
「ジョミー」
「これは…いったい何が?」
 ヴィーはトォニィを見上げる。
「時間が戻るんだ」
「…トォニィ…?」
 トォニィは宇宙空間を睨みつけていた。





  続く