君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十七話

2015-02-23 03:46:29 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア前副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相・人類の評議会議長だったが…

シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)


※長くなってしまったので、シドの話が終わったら二章にします。^^b


  『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十七話   

  惑星メサイア上空・宇宙ステーション(シャングリラのジョミーの部屋)

 事件から二か月。まだジョミーは眠ったままだった。。
 だが、いつしか、あの淡い氷は消えてなくなり、目覚めは近いと思われていた。 

「本当に早く起きてくれないと、僕がやっちゃいますよ。ジョミー」
 ジョミーの部屋を訪れていたシドがぼそっと呟く。それに答えるように声がした。
「君がそういうと、違う意味に聞こえるね。シド」
「ジョミー!?」
 シドは振り返るとベッドの上で起き上がっているジョミーがいた。シドは思わず抱きついた。
「シド。心配かけたね」
 ジョミーは優しくそう言った。
「だって、二か月も…。もう目覚めないのかと思って…僕は…」
「もう大丈夫だよ」
「トォニィは心配ないって言いましたが、僕はどうしても思い出してしまうんです。あの時を。ナスカ、地球、メティス、スメール…僕には、ただ見送るしか出来ないのかと…」
 シドは泣きそうだった。
「シド。ごめんね。君は見送っているだけじゃない。君がいつもそこに居てくれたから僕は歩き出せたんだ。ナスカも地球も。そう、ニュクスもね。いつも、側にいてくれた。でも、心配をさせてしまったし、辛い思いをさせた。それは謝る。ごめん。今回の事も本当に色々、ありがとう」
「お礼は…僕の方こそです」
「…シド」
「それにしても、そのニュクスの黒い服のだと印象が違いますね」
 そう言ってシドはジョミーから体を離した。
「これは喪服の意味があるそうだよ」
「そうなんですか」
「あちこち焦げちゃってるし、着替えなきゃね。惑星ニュクス。自分たちの星を暗黒惑星と呼び、人類から隠してきたあの星を暴いたのが同胞のクローンとミュウだったとは皮肉だ…ね」
「そうですね。あの星は、彼らはそうなる運命(さだめ)だったのでしょうか?」
「暴かれる事を願う者が現れたのだから、時の流れなんだろうね」
「時の流れ…そうかもしれませんね。ああ。そうだ。ジョミー。ソルジャー・トォニィから正式にシャングリラに戻るように言われました」
「そうか。旅立つ前に出した僕の辞任は通ったよね。なら君を束縛出来ない」
「……」
「では、トォニィに従って…」
「僕はトォニィの側に行って、貴方の為に動きます」
「それは…。僕は純粋に君をシャングリラのキャプテンに戻したいのだけど…」
「僕にはミュウの為にならない事をしようとしているとは思いません」
「シド…僕はそういう意味では…」
「あなたが眠っていた間に考えた結果です。ジョミー。僕には、キャプテン・ハーレイのようになりたいという夢がありました。あれは、ただシャングリラのキャプテンになるだけでは無いんだと気が付いたんです。ハーレイはソルジャー・ブルーとソルジャー・シンの二人を支えていました。僕もそうなりたいと思ったのです」
「そう…か」
「僕はまだまだ頼りになりませんが…」
「ねぇ、シド。僕は君をもうずっと前から頼りにしているよ。そういうのは言葉にしないと伝わらないのかな…」
「いえ、僕がはき違えていたからだと思います。僕は、あなたの心を欲しがっていた…」
「心か…。君は前に答えが欲しいと言っていたね。それに答えるよ」
「答え?」
「僕は、僕の命よりも大切なものを君に託した」
「ジョミーの…命より大切なもの…?」
「傍に居て守りたかったが出来なかった。僕はそれを君に託した」
「それは…」
「何度も君は守ってくれた。君のその大事な肩を負傷してまでね…」
「…これは大した事はありません。ヴィーには僕らを殺す気は無かった…」
「今度は、トォニィを守って欲しい」
「それが僕への答えだと?」
「僕より危なっかしい彼の補佐して欲しい。君は僕といて人類の事も学んできた。技術も医学も政治も。君はとても優秀だ。これからのトォニィに絶対に必要なんだ」
「その為に僕を旅に同行させていた訳じゃないですよね?」
「ううん。違うよ。君を僕が欲しがり、君が側に居てくれた」
「ジョミー。ありがとうございます。着替えますか?」
 シドはステーションの医療センターにジョミーが目覚めた事を知らせた。やがてドクターたちがやって来て検査をして去って行った。
 まだ休んでいるように言われたジョミーは検査着のままだった。
「シド」
 ジョミーが医療班のデータを見ていたシドを呼び寄せる。
「はい。どうしました?」
「さっきの君への答えさ…。もう一つあるんだけど…」
「え?」
「でも、言いにくくて…」
「?」
「ちゃんと答えていない気がして…気になっていたんだ…けど…。やはり言いにくいな…」
 ジョミーは困ったようにしどろもどろになっている。
「もしかして、僕への返事ですか?」
「ああ」
「あー、それはもういいですよ」
 シドは照れて、誤魔化すようにそう答えた。
「好きだったよ…」
 ぼそっとジョミーが言った。
「え?ええ?」
「ずっと好きだった」
「ええ。だって、どうして。ああ、それ友情でしょ?」
「んー、でもさ、ごめんね。キースが居なかったら…と思ったよ。本気でね。そう考えた事が何度もある…」
「それ…嘘?」
「嘘じゃない。君だったらなと…ね」
「僕は拒絶され続けて、可能性すら無いと思っていましたよ」
「そこまで嫌だとは言っていない…想いを隠す為に酷い事をしてた。ごめん。どうしても、言えなかった」
「どうして、そんなに」
「この気持ちは友情だと誤魔化していないと、本気になりそうだったから…かな?友情と愛情が一緒になって君の思いに答えたら、僕は君を壊してしまうんじゃないかと…怖かった。ああ、やっぱりダメだ。もう上手く言えない」
「ジョミー…」
「ダメだ…な。言うんじゃなかった…もう会えないって訳じゃないのに…感傷的になってるんだな…」
「ジョミー。僕も複雑な思いでいました。好きだとうのは本当なんだろうか?どんどん先に行ってしまうのを僕は嫉妬の思いで見ていました。それと、僕はキースにも嫉妬していました。彼はジョミーを笑わせる事が出来る。僕には何度やっても無理でした」
 シドはジョミーの肩を掴んだ。
「それに、あなたはキースを選んだ」
 そういうとシドは真剣な眼差しでジョミーを見つめた。
「…シド?」
「抱いていいですか?」
「え?」
「ジョミー」
「いや、ダメだ」
「僕の事を好きだと言ったじゃないですか?」
「好きだから、ダメなんだ…」
「もしかして…僕が怖いですか?」
「……」
「答えて」
「…怖いよ」
「本当に、僕はあなたに好き以上の感情を持たせたんですね」
「…お前も随分意地悪だな…」
「僕の思いと同じように、あなたの愛も複雑って事ですね」
 自分の命を掛けるような事が平気で出来てしまうあなただけど、愛した相手にも自分の為に命を掛けてくれるのを望む。好きだけでも体をつなげられるのに、それとは別に、愛へと進んでしまったのは、相手の命も要求する。
 それは、リオとハーレイだけ知っていた。
「そんな事をしてるから、自分の愛がわからなくなっちゃうんですよ」
 と、シドは言った。
「どうすれば。どうしたら良かったんだ?」
「キースが好きだから。僕は好きになれない。ってはっきり言えば良かったんですよ。いつも、どこかへ行っちゃうような事ばかりしていないで、ずっと一緒にいられるようにすれば良いんです」
「ずっといられるように…」
 セルジュが前に言った幸せの定義をジョミーは思い出していた。
「僕は幸せになるのを恐れているのだろうか?」
「そうですね。そうかもしれませんね」
「じゃ、幸せへの一歩だ。シド。アレを返して」
「え?」
「セドルに薬を飲まされて僕が君の薬を自分に移した時の僕の動画データ。アレを渡して。気になっていたんだ」
「えっと、ですね」
「渡して」
「ああ、まさか。それを言う為に好きだなんて言った訳では…」
「ごまかさない。全部だよ」
「わかりました」
「良い子だ」
「……」
 シドは自分の端末からジョミーのデータを出して、ジョミーの所へ送信した。
「ジョミー。これからどうするのですか?」
「セドルに会いに行く」
「セドルですか、彼なら、今、ノアに来ています」
「そうか。トォニィは?」
「ペセトラです」
「……」
「ノアに送りますよ」
「ううん。一人で行ける」
「あの…」
「ん?」
「いいえ。何でもないです」
 キースはどうしているか聞かないんですか?と言おうとしたシドだったが、聞けなかった。
 気になっていない筈はない。
 目覚めてすぐにセドルに会うのもきっと先の事件がらみだろう。
「ジョミー」
 シドはこの無鉄砲なソルジャーを一人にしたくなかった。だけど、今は…。二人はもう心を決めていた。
「ジョミー。セルジュからメッセージがきています」
「何?」
「ノアで会いたいとの事です」
「わかった」
「では、行きます」
 ジョミーはシドを見て静かに頷いた。

 シドはジョミーの部屋を後にする。
「ああ」
 シドは大きなため息をついた。
 彼はシャングリラを降り、ステーションのエレベーターへと向かった。
 ここはトォニィの結婚式に来たジョミーを見た場所だった。
 あの時、彼が心を開いた相手が僕だったら、何もかもが平和に進んだのだろうか?
 スメールの事件もノア・メサイア襲撃事件も、そして「地球再生」も、僕は死を覚悟して進む彼を支えきれただろうか?
 僕らではなく、キースの所へ戻ったジョミーをトォニィは認めた。
 僕は帰ってきたジョミーと一緒に旅をするようになっても、いつまでも文句を言っていた。
 何度もジョミーは僕を頼りにしてくれたのに、僕はそれすら見ようとしないでいた。
 離れる今になって気が付いた。
 ジョミーの言葉が蘇る。
「好きだよ」
「僕は、僕の命よりも大切なものを君に託した」
 自分の命よりも大切なもの、それを…。
 僕はそれを守れた。

 そして、もう一度シドは、宇宙港に停泊しているシャングリラを振り返った。
「やっぱり違うな…ジョミーが居ると船が違う。船が暖かくて、喜んでいる」
 貴方はここから何処に行くというのですか?
 僕はここで待っています。
 ふいに涙が零れた。


 しばらくしてジョミーはノアに向かった。
 


  一章  終







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2 コメント

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ホームページを拝見しました (つねさん)
2015-02-27 06:47:11
こんにちは。
スペースお借り致します。

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これからもブログの運営頑張って下さい。
失礼致しました。
返信する
こんにちは。 (maki)
2015-03-04 12:44:19
こんにちは。

とても懐かしいです。
実は以前、私が発行していた「CMペーパー」に記事を送って頂いていて何度か掲載していました。

オリジナル・二次問わずに、広める活動は良いですね。
これからも頑張って続けて下さい。^^

真城灯火
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