君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十一話

2014-12-21 04:36:39 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十一話

  太陽系 木星のメティス・ビルレスト屋上(異空間)

 ビルレストの屋上で、夜が明け上空のドームが朝の色に少しずつ変わってゆくのを眺めながらジョミーがキースに聞いた。
「ここで衛星の攻撃を受けた後で、トォニィに会ったね。記憶はある?」
 ジョミーの脳裏にその二つの情景が浮かんでいた。
 答えをうながすようにキースを優しく見つめた。
「ああ、そうだな。あいつのお前への想いを込めたのをくらったな」
「あはは。あれは、トォニィの自分への不安と、彼の手の内から逃げた僕への反発も含まれていたよ。愛だけじゃなかった」
「やはりお前たちは複雑だな」
「キース。君だって十分複雑じゃない?」
「…俺は…記憶を失って、不安だった。いや、それだけではなく、俺は怖かった…自分の気持ちが怖かった」
「キースの気持ち?」
「ああ」
「知ってるよ」
「…そうか」
「ん、何となく…わかる」
「そうか」
 と、キースはため息をつく。
「でも、キース。僕の気持ちはわかる?」
「いや。俺は何もわからない」
「それは、ミュウじゃないからって事?」
「……」
「…僕たちは、こんな風に、近づいたり離れたりしながら進むんだろうね…」
「何が言いたい?」
「ミュウも人間も、同じ人だって事」
「僕は君を見て全部知っていると思った。君は知られてはいけないと必要以上に隠した」
「だから、お前は動けず。俺は事を急いだと言う事か?」
「お互いに理由はあるけどね」
「俺に聞かないのか?」
「聞いて欲しい?」
「いや…そうは思っていない」
「複雑だね」
 と、ジョミーはキースを見てから、白々と明けてきた空を見上げた。
「僕はさ。君を信じていたんだ。それは裏切られてしまい。僕も君の願い通りに動かなかった…」
「俺の何を信じていたと言うんだ?」
「…君自身の本質…みたいなものかな?」
「俺の本質?」
「そう。本質。実を言うと僕は…」
 と、言葉に詰まるジョミー。
「…ジョミー?」
「僕は出会った時から君に興味があった。だから、殺さなかった。あの出会いは必然だったと僕は思っている。あれすらもマザーが仕組んだ事だとしても、僕は出会った事を後悔していない」
「俺はお前に会った事を後悔している」
「…そうだったね」
 彼の自信に満ち溢れた言動が時折見せる揺らぎ。それはいつも僕がらみだった。だからいつか僕は彼の障害なのではないかと思っていた。
「お前に会って、ミュウとは何なのかと考えた」
「でも、それは僕も同じだよ。キース。君は人類だと一括りに出来る人ではなかった。だから、僕は好きになったのだと思う」
「……」
「だけど…」
 そう言ったきり、ジョミーは黙ってしまった。
 沈黙が流れる。空はもう明るくなっていた。 
「俺は…自分の気持ちがわからなかった。お前の事を覚えていないのに…それなのに、お前が好きだった」
 キースの中で小さく揺らぐ場所があった。前にここに居た時のような、不安と焦り、そして、憎しみ。それから、畏れ…。
「じゃあ、覚えていないのに、気持ちが残ってたいということ…」
「だから、俺はお前から逃げた」
「キース…」
 不協和音が聞こえる気がする。キースが直接的に攻撃を受けて恐怖を感じる時はあっただろう。
 でも彼はミュウを「畏れ」なかった。
 畏れたのは一度だけ…月でソルジャーブルーとの再会の後、「地球再生」の前の僕を見た時、足を震わせて立っていた。怖いのに引き上げる僕にキースは抗わなかった。
「僕は…悔しい」
 ジョミーの語気が強くなる。
「悔しい?」
「ああ」
 キースはジョミーのオーラを見る事が出来ない。出来ないが、今、確実に彼の中の何かが動き出したのを見た。隣にいるジョミーから得体の知れないものの圧力を感じ、キースは血が騒ぐのを覚えた。
「キース。僕は間違えた。君がキースである為ならば、何があっても僕は君の為に動かなきゃいけなかったんだ」
 憎しみと諦め半分でにっと笑うジョミー。
 ジョミーから発せられた熱がキースに伝わってくる。キースはその昂りを抑えるのに必死になった。
「僕がニュクスで得た情報の半分をセドルが持っている。彼に渡したのは主に医療に関する事だ。僕が持っているのは化学。この二つは切り離せない。だから、僕が大部分を持っている。今の人類に悪影響を及ぼすような過去の情報と今の人類にはまだ手を出さない方が良いと思われるものは全て僕が持っている」
「だろうな。全てを知ってセドルが普通でいるのはおかしいと思っていた」
「そう、人は大義名分の前では、どんな恐ろしい事も出来るという事…」
「…俺という人間を作る為に、マザーがどんな事をしてきたのかは知っている。それに近い事をしているのだろう」
「マザーの言う事をきく従順な人類を作る為に、何をどうすれば良いか。それは脳を作り変えるのが一番…」
「洗脳技術か…」
「最初は人体実験の為にクローンが作られた。クローンは人であって人ではなく、モルモットだ。その中で従順な人間の子どもを良い人間として、バンクは動き出した」
「洗脳をする事で、世界を操りマザーは君臨してきた…」
「僕を殺したい?」
「もう今はそう思ってはいない」
「それは僕がミュウで、殺すのが困難だから?」
「いいや。お前ならどんな情報機関においておくより安全だろうと思っている。ミュウの長。ソルジャー・シンのプライドで全人類の為に使う道を模索してゆくだろう」
「信じる?」
「ああ、信じる」
 さっきまでどこか不安そうな顔をしていたキースから不安が消えて、以前の自信家の部分が戻ってきていた。
「そうか、なら、もういいね」
 ジョミーは笑顔で言った。
 ふわふわと金色の髪が揺れている。後ろに束ねられた髪は随分長くなっていた。
 その髪を少しつまみジョミーが言った。
「願掛けは必要なかったみたいだ」
 ジョミーを中心に空気が動き出す。
 キースの身体がほんの少し浮かび上がる。
「お前。力が戻ったのか?」
「やっぱり、きっかけはキースがくれた」
 ジョミーはキースの腕を掴むと静かに上へと浮かび上がった。




  続く





※短くてすみません>< このペースだと年内に終わるのは無理ですね;
次回は「クリスマスSP」の予定です。



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