君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド後編」※BL風味

2013-01-23 02:29:28 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド後編」※BL風味
※「伝えたい言葉」の冒頭にありましたが、こちらの方が合うので二章に持ってきました。
移動ついでに改稿しています。ジョミーの繰り返しがしつこかったのでちょっと変更しました。

「ね。いいよね」
「…それは…」
 心が警鐘を鳴らしている。
 けれど、彼の力に僕が抗えるはずもなく、僕は彼の手を取り身体を抱き起こす。
 そして、静かに唇が触れ合う。
 一度、ためらうように離れるが、次は舌を絡めて音を立て吸いあった。
(ジョミー)
 シドの手が絡みつくジョミーの手を引き剥がした。
「シド?」
「ダメだ…。ジョミー…僕は」
 不思議そうに見つめる彼を見返したシドの目には涙が光っていた。
「わ…わかっているんだ。僕は…ジョミー…僕は、ソルジャー・シンが好きなんだ。彼に認めて欲しくて求めているんだ…」
「……」
「わかってるんだ…僕は…ジョミーを羨ましいと…本当は妬んでいるんだ」
 シドは下を向いて目をつぶりぐっと涙を堪えていた。
「妬む?」
「そう…そうだよ。ジョミー」
「……」
「彼は人からミュウになった。あのソルジャー・ブルーが彼をとても大事に扱ったのを僕は知っている。彼は人間で幼い時からの記憶を持ったまま、ミュウになった。人間なのに…最強のミュウで…。僕らを地球まで導いた彼。僕は嫉妬しながら、いつも憧れていたんだ」
「憧れていたの?」
「そうさ。僕が前からずっと好きだったなんて、嘘だ」
「嘘?」
「人と共に生きると言ってジョミーが船を降りた時、僕は何も言わずに見送ったんだ。なのに、キースの所に知った時から、心に黒い物が出来て、それがだんだんと大きくなっていった。…どうしようも無くなった時に、僕は彼を自分の物としようと思ったんだ」
「それは…」
「きっと、僕はソルジャー・シンがただの人間のジョミーに戻るのが嫌だったんだ」
「……」
「僕らは彼がものすごく苦労してソルジャーになって、そして何度も何度も迷いながら、戦ってきたのを知っている。ソルジャーとして、心を閉ざしてまで戦い続けて、地球にたどり着いたのに…。あの時、僕は止めなかった…僕は…それでも…」
「どうして?」
「彼のする事を願っていたなんて…嘘だ。ソルジャー・シンは休む事無く、ずっとソルジャーで居て欲しかったんだ。そう…死ぬまで…僕らの為に…僕らの側で…」
「死ぬまでなの?」
「悪夢のように…そんな呪縛で縛り付けて起きたかっただけなんだ。それを僕は愛してると言い換えたんだ」
「シド…」
「なんて、愚かで浅ましいんだろう…最初はただ認めて欲しかっただけなのに…」
「……」
「それを見抜いていたから、ジョミーは僕を受け入れなかった。友達のままでいたいと、ずっと言っているんだ」
「友達…」
「笑っていいよ。君にも僕は見破られているのだろうから…」
 シドは愚かでも何でもない。
 好きじゃなかった何て嘘だ。
 きっととても心配してずっと見ていた。
 その想いの行き先が決まってないだけだ…。
 どの言葉で置き換えてもきっと…そこには…。
「ねぇ、シド。人が人を羨んで妬んでしまうのは、誰にもでもある事でしょう?」
「ああ、多分…」
「人にそうあって欲しいと願ってしまうのも罪じゃないよ」
「でも、僕は…」
 僕はジョミーを必死になって忘れようとしている。
 いつから…そう思うようになったのだろう…。
 彼らが現れた事も、月で何も出来なかった事も、キースの所へ戻った事も、全てが…。
 そうすれが楽になれると言ってくる…。
 でも、それでも…。
「きっと…届かない思いだからだよ」
「……」
「ジョミーはシドを認めて、そして信頼をしていると思う。友達になりたいなんて他には誰にも言ってないよね。それが答えだと思うよ」
「…そう…」
「シドは…いい人だよ…僕は好きだよ」
「…ありがとう…」
 シド…それでも…。 
 どうして…。
 人は何かを求めてしまうのだろう。
 僕は「人形」で、どこにも存在してはいけないのに…。
「……」
 ふと、シドが違和感を感じて顔を上げるとジョミーが泣いていた。
「ど、どうして?僕に同情したの?なんで泣くんだ」
「どうしたら…いいのか…わからなくなっている…」
「何をなんだ?」
「妬むとか恨むとか、憧れるとか…僕はとてもわかるよ…シド…」
「なら何がわからなくなっているんだ?」
「人を好きになる方法が…」
「どういう?」
「妬むにも何もすべて…そこには愛がある…」
「妬むのも愛?」
「そう愛がある。ねぇ、シド。今の自分は好き?」
「自分?」
「うん」
「十年前の僕は自分に自信があった。けれど…ジョミーを見送ってからは自分が好きじゃなくなった。彼を取り戻せたら自分も好きになれそうな気がしてた。それは違っていた。それはわかる。だから…今は…」
「今の自分は好き?」
「少しだけね…。今はこうして忙しくしていた方が、きっと自分らしいんだろうね…」
「なら…良かった」
 そう言ってジョミーは自分の涙をぬぐった。
「何故、泣いたんだ?僕を哀れんだのか?」
「ううん。僕と同じだと思って…僕は…ジョミーが嫌いなんだ。でも…大好きなんだ…」
「君はまだ子供でこれから色々知っていく。そうして悩んで泣いて大きくなってゆけばいいさ」
「ジョミーが言うような言葉だね…」
「僕は彼が好きなんだから、同じような事も言うさ」
「さっきは違うって言ったのに調子がいいな…」
「大人だからね」
「大人?大好きで大嫌いなんでしょ?そんな事言うのが大人とは思えない」
「違うよ、大嫌いで大好きなんだ…」
「そこ、意味あるの?」
「ああ、あるよ…」
 とシドが笑った。
「ふーん」

 ジョミー・マーキス・シンは特別な存在だ。
 彼は守られなくてはならない。

 それは、ソルジャー・ブルーの言葉。
 僕はきっと…その言葉を頼りにして、そしてその言葉に反発して…。
 そろそろ、その呪縛から僕も解き放たれよう。
 ジョミー…君は自らの手で僕らからの呪縛から抜け出した。
 でもまだ少し…時間を下さい…。
「ジョミー。起きれる?」
 シドはジョミーに手を差し出した。
「大丈夫」
 ジョミーはシドの手をかりてベッドから下りた。
「ほら、君の悩みの種が探しに来たよ」
 シャトルのモニターをシドが指さして言った。
 モニターにはソルジャーズのブルーが映っていた。
「大好きで大嫌いな、彼が」






    終







『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド前編」※BL風味

2013-01-18 02:59:54 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
       ジョミー 本当はクローンではない(タイプイエロー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド前編」
※「伝えたい言葉」の冒頭にありましたが、こちらの方が合うので二章の番外に持ってきました。

 僕らは優しさで出来ているのかもしれない。
 三年くらいまえ前、教育ステーションへ行くジョミーに合わせて僕は医療器材をシャトルに積んでもう何往復しただろう。
 惑星アルテメシアまでは大型の輸送船で運び、積み込むだけの作業だったが精密機械の運搬には精神的な負担があった。
 今良く使っているのはベルーガではなく、ミュウ用の医療用シャトル(救命用シャトル)を改良したものだが、これでジョミー所有のシャトルが二機となった。
 ステーションで運び終えた機材を設置し、試運転をしていると、何の連絡もなしにクローンのジョミーが現れた。
「お久しぶり。シド」
 彼に会うのは二ヶ月ぶりくらいだろうか?
「久しぶり。元気だったか?」
「試運転?」
「そうだよ。寝てみる?」
 ミュウ用に作られた医療ベッドだ。クローン用にと人類が作っている医療器材よりどうしてもこっちを先に設置しておきたいのは仕方が無い事だろう。
「いいの?」
 とジョミーが言った。
「いいよ」
 さっき彼が顔を見せた時に顔色が悪そうに見えたからそう誘ってみたのだが、彼はこのベッドにそうなじみはないはずだった。
 なので、これは精神的な安定と全体の調和を量り、ミュウの力をより安定させ早い回復を促すものだよと説明をして彼を寝かせた。
「そうなんだ…」
「君は僕らの所に来た頃に使っていたはずだが、スメールにはこれは無いからね…最初は弱いのから…」
 と、スイッチを入れる。
 淡い光が彼を包み流れてゆく。
「寝てもいいよ。短い時間でも夢がみれるはずだ」
 目をつぶったジョミーを見て、タイマーを十分くらいにし、僕は他の作業を始めた。
 しばらくすると、彼が誰かを呼んでいるのに気がついた。
 夢を見ているのだろう。
 苦しそうに眉間にしわをよせている。
「ジョミー。大丈夫かい?」
 僕は彼を起こそうとした。
「…駄目だ。もう…」
「起きるんだ。君が見ているのは悪夢のようだ。そこから戻って来るんだ」
「…でも…僕は…」
 身体をゆすっても、ジョミーはなかなか起きなかった。
 どうして起きてくれないのか、僕にわからなかった。
 考えられるのは、彼自身がその夢を見ていたいと思っているからだ。
「取り込まれてしまうよ。ジョミー」
 やがて、タイマーが切れて、光が収まる。
 それでも、起きなかった。
 このまま起きなくても、身体に問題はない。
 でも、安定をさせる為に作られたこのベッドで、悪夢を見るなんて…。
 彼は、何を抱えているのだろうか?
「ブルーを呼んでくるから…」
 そう僕が言った時、ジョミーが僕の手を掴んだ。
「ダメ。呼ばないで」
「ジョミー」
「彼は…呼ばないで…」
 半夢半醒状態だ。
「ジョミー。何がどうしたんだ」
「……シド…」
 そう言ってジョミーは目を開けた。
 目は開いていても夢の中にいるような感じだった。
「どうした?」
 僕は用心深く聞いた。
「ジョミーの事が好き?」
「え?」
「まだ好きなの?」
「…ああ、まだ好きだよ」
「そう」
「言っただろ。僕はキースなんかよりずっと前から見ていたんだよ。早々、諦められる物じゃない」
「じゃあさ…」
 その言い方に、本物を思い出させる雰囲気があった。
 これは、魅惑…?と、そう思った時にはもう術中だった。
「ジョミー…」
「僕はどう思う?」
「君は彼のクローン…だ。それ以上でも以下でもない…」
「そ…冷たいなぁ…。僕を彼の代わりにしようとした事もあったのに…」
「代わりになんてして…いない。似ているとは思った…けれど…」
「僕になら言えるって…思ったでしょ?」
「…それはあった…でも…それだけ…」

「なら…キスしてよ。そして、僕ら慰め合おうよ」
「…ジョミー…」



   続く




「後書きと年末年始の挨拶にかえて」

2012-12-31 00:32:17 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は

では、後書きです。

この二部を書き始めた時は、人類の意思をジョミーが問いかけてそれに答える人類と、それを彼がどうしたか。しか考えていませんでした。←オイ
他は、ソルジャーズの事ですね。彼らをくっつけたかった。とか、学園物が書きたいとかはありましたが、学園物は…途中断念。。

二部を書き始めてから、一部で書かないで進んでしまった他のメンバー達を補完してやりたいなぁ、とかも考え出して、一番放置されたのは、トォニィですが、彼とキースの関係はもう大人の同士の会話になっているようですからそのままで、トォニィとジョミーは家族なので必要以上の事はしていない感じになりました。
次はシド、彼には二部からのオリジナルキャラのミアと出会わせました。
あまりにあっさりミアに行きすぎてるかな?と後で思いまして、(彼は誠実感があるキャラだったのに、セルジュがそっちを持っていってしまったので)番外で補足します。
ソルジャーズの方は、なんとなく、ブルーとジョミー(本体)が心で浮気してるっぽい感じでしたが、それどころではなくしました。良くある「大事なモノは失ってみないとわからない」って事です。
ブルーに関しては、「愛しているんだ」と叫ばせた事で満足しました。
今回のヒロインがソルジャーズのジョミーに移行した瞬間ですね。

二部になってからの後付設定のソルジャーズのジョミーはクローンではなかったの部分で矛盾が出来ていないかと心配でした。
オリジナルキャラが多く出てきて、でも、あまり彼らを出し過ぎると、別作品になりそうで…
エディとかはもっとちゃんと書けば良かったかもしれないけど、流しました;


えー、一番の心残りは、エロくならなかった事です。

二部二章からはエロ有り。にするつもりが、何故か、無し。
ってどうしてかと言うと、大戦時から十四年過ぎてしまったのが問題で、あの時、ジョミーとキースの年齢は三十代、って事は、キースはそろそろ五十歳です。
若い身体に戻ったジョミーを二十歳くらいと考えて、えっと、新入社員と課長クラスの危ない昼下がりってな感じ?と、、、、。
思ったら、書けませんでした^^;
その頃は「ガンダムAGE」の子安さんが浮かんでたりしたし…。。。
(で、AGEって酷くなかったですか?何だよこの設定!似てるじゃん!と思いつつ終わりまで見ました…)

えっと、危ない昼下がりが嫌いな訳ではありません。
もう十分な二人なので、ここでは素通りして後で書いてやろうと思ったのです。
別枠の方が良い気がして…。
それと、どうも本気で戦ってくれないジョミーの本気を引っ張り出してやろうと、と言う事で、番外で遊びたいと思っています。
星の一つや二つ壊しても良い場所を作らないと戦えないって。


十一月にPC壊れとかがあって焦りましたが、今年中に終了目標はなんとか達成されました。
次は、真城灯火のオリジナルもそろそろ取り掛からないとマズイのでこれからはまったり更新になりますが、まだ彼らを書きたいので書いてゆきます。

  それでは、良いお年をお迎え下さい。


★CM・・・普通の男女の恋愛物が書きたくなって、しかもHなのが書きたい。百合少女とノーマル男子の恋愛です。←普通の恋愛?とにかく、男の子も女の子もかっこよく活躍させたいと思っています。これで大賞応募を考えていますが、バンド練習もあるので、時間的、字数的に間に合わなかったら諦めて、短編で一つ書いてから、取り掛かるかもしれません。

  では、来年もよろしくお願いします。

  真城灯火。





『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

2012-12-30 03:00:17 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

「タイプブルーの力を封印?」
 思わずキースが聞き返した。
「うん。封印すると言っても、それは僕だけの事で、タイプブルーの力を使える状態で温存させるだけなんだけどね。タイプブルーはクローンブルーがいる。人類からミュウにさせられた彼がいる。そして、新しいタイプの僕。僕はジョミー・マーキス・シンは、やっと僕になったんだ。もう誰かの所為になんてしないで生きる。だから、僕は人類とミュウに影響を与え続ける「楔」になる。人が戦いに向かうのなら僕らはいつでも力を行使する。理不尽に思えるような事もする。トォニィはミュウの為に生きるだろう。キース、君は人類の為に生きるのだろう?僕は二人の間に、あの二人を連れて立つ」
 それは、ジョミーの本当の状態を知らない軍部が三人を架け橋ではなくて、人々の間に穿つ楔にしようとした時期があった。
 それをそのまま利用して、人もミュウに対しても影響を与えてゆくという事なのだろう。
「あの二人は了解済みなんだな」
「うん。前に話してある。この戦いが終わったらと決めていた」

「ミュウのお前の言葉を信じて人は戦争を止めに来た。それには十四年かかった。それはお前も同じだったんだな。自分の生き方を見つけろと、俺はお前にずっとそう言い続けていたとが、俺ではお前にそれを与えてやれなかったのか?」
「きっとね。心の何処かで君の言葉も届いていたと思うんだ。だけど、僕は素直にそれに従えなかった…」
「そうなのか…やはり…それは俺がブルーを殺しているからか」
「違うと思う」
「…違う?」
「それは…きっと…僕が君を好きになったから…君に従うのが面白くなかったんだろうな」
「…好きになったなら相手の言う事を聞いて従うのもあるんじゃないか?」
「僕が君の前で泣けなかったように…僕はものすごく意地っ張りなんだよ…。そして、とても甘えたがりなんだ。一つ君の言う事を聞いたら…それこそ全部君に任せてしまいそうで…あの動く事すらままならなかった時には、君を好きだと思う事すら考えたくなかった。本当に何もかも…君に投げて逃げ込んでしまいそうだったんだ。それこそ…地球再生の前に君の身体に溺れた時以上になるような気がして…怖かったんだ」
「俺は…」
 俺は甘えて欲しかった。子供の身体になってしまい、何も出来なくなったお前を介抱するのが嬉しかったんだ。
 俺は、お前が俺しか頼れないようにしようとしていた。
 甘え頼りきる事が出来ずに悩んでいる事も気がついていた。
 それでも、俺は…俺のエゴだと知っていても、それでも。
「俺は甘えて欲しかった」
「僕は…君が怖かったんだ…。だから、僕は君を愛した僕を否定した。僕の行為には打算しかなくて愛など存在しなかったのでは?とね。認めるのが怖かったんだ。僕は避けていた。僕には君との思い出がある。あれをすべて嘘だったと思う事は出来なかった…愛しているのは事実なんだ」
「ジョミー」
「しかし、まさかね、こんなに君を好きになるなんて…思いもしなかったよ…。君無しでは居られないとは言わない。だけど、君を殺せるのが僕なら、僕を殺せるのも君だ。君が居なくなったら僕も居ない」
「なら、絶対に俺が死ぬまで生きろよ」
「…僕はそう長くは生きられないんだよ…」
「クローンには生殖能力が無く、子孫を残せないままいつか細胞崩壊が起きてしまう事は知っている。だが俺は、あのブルーもお前もクローン検査の結果通りではないと俺は思っている。お前たちはミュウ最強のタイプブルーなんだろう。今まで、人間の結果など、ただの紙くずにしてきたじゃないか?お前は大きすぎる力を持ってしまった時、体機能を全て力で動かしていた。いつかその壊れたDNA配列も変えるんじゃないか?」
「人ですらなくなってしまったような言い方だな、それ」
「基より、ミュウだろう」
「ミュウだけど…それに何がいいたいの?」
「いいさ。俺だって実験体だ。クローンとそう変わりはない。マザーも俺がこんなに長く生きるなんて予想していなかっただろうな」
「うん。そうかもね」
「だから…僕たちは…」
「もうどうしようもない…」
「その言い方には望みが無いな」
「んー、どうにでもしてゆける?」
「何処にでも行ける」
「何処にも行けないのに?」
「行けるさ」
 二人はメティスの星空を見上げた。

「でも、キース。ペセトラは良いのか?こんな辺境の視察、後回しに出来たんじゃないか?」
「俺の意思は議会に通してある。副総裁のお前のと同じだ」
「そうか…来てくれて良かったよ。僕はここからペセトラに行く足が無かった」
「そう言えば、ドッグに船が無かったな」
「ゼルはフィシスを送っていったんだ」
「人類の戦艦で良いなら乗ってゆくがいい」
「充分だ」
 僕はここビルレストで暮らした二年間がとても大切だったと思っている。
 お互いをまだ良く知らず、探り合うような日々だったけど、忙しくて会えない日も多かった。
 けれど、僕たちはなるべく会うように決めていた。
 あれはどちらからともなく決めた事柄だった。
 他愛無い日々の業務を話すそんな時間でも必要だったんだ。
 あの二年間が無かったら、今、ここに居なかっただろう。
 そう、きっと僕は全てを諦めて消えていただろう。
「ジョミー。手を出して俺と同調してくれないか」
「…?」
「俺が心からお前を傍に置きたいと思ったのは、地球再生の時だ。目の前から居なくなった時だ。いつもお前は俺の傍に居ると落ち着くと、安らげると良く言っていたな。俺はお前が傍にいると緊張した。何も動じないように生きてきた俺がだ。最初はお前が敵だからだと思っていた。俺とお前が関係を持つようになってもお前はどこか心を許していなかった。俺もそうだった。そう言葉では何でも嘘でも言える。だから、手を合わせよう…俺を視ててくれ」
 そう言って手を出したキースの手にジョミーも手を出し合わせた。
 ゆっくりと同調が始る。
「怖くはない?」
 どこからともなくジョミーの声が聴こえてきた。
「大丈夫だ」
「僕は怖いかな…」
 そう言ってジョミーはキースを見て照れたように笑った。
「俺は…俺はそうやってお前が見ていてくれるのが好きだったんだ。お前がずっと俺を見ていてくれるならどこまででも人の為に生きよう。それだけで生きていけると思った。俺の横でずっと二人で前を見て進めたら…と思っていた。今もそれは変わらない。それを言葉にしたら「愛している」となるのならそうなんだろうな。これが本心だ。楔になると言うならそれも良いだろう。だけど、こうしてやっと捕まえたお前を俺は手離しはしないぞ。ずっとこの手を掴んでいる。もう逃がさない。覚悟しろ。それが、俺の希望だ」

 彼の本心が流れ込んでくる。
 熱い決意。
 熱い思い。
 焼けてしまいそうだ。
 この男の前だとどうして僕はこんなに小さいのだろう…。
 そして、どうしてこんなに嬉しいのだろう…。
 泣ける程に…どうして嬉しいのだろう…。
 心が泣いている。
 愛していると…。
「俺を見てさらけだせ。全てを…ジョミー」
「キース…好きです。僕も君が好きです。この身が朽ちても好きでいられる自信がある。死んでも絶対にこの思いを守る。誰にも君を渡さない。僕だけのモノでいて下さい…」
 溢れ出し止らない思い…。
 ダメだよ…。
 僕はわがままなんだ…。
 もう、だめだ…。
「もっと…だ。もっと言ってくれ」
「…誰よりも…何よりも傍に居て欲しい…。僕は「未来」は望まない。「今」が次の瞬間に過去になり、未来が「今」になるのなら、僕は「今」をずっと望む。ずっとこの「今」であったらと…望む。僕は今、君を愛しているんだ…きっと、何よりも誰よりも、さっきの僕よりも今の僕は君が好きだ」
 もう、言葉が次げない…思いだけで潰れてしまいそうだ。
「…ジョミー」
「…言葉なんて意味は無いよ…もう…僕たちには…言葉は必要ない…」
「俺はもっと聞きたい…」
「どう…して…僕たちは同じ場所で出会わなかったのだろう…そうしたら…こんなに時間をかけなくても見つけられたのに…」
「マザーが俺たちを殺しあうように配置したんだ。だけど…この出会いでなかったら、本当に殺しあうだけだったのかもしれない」
「そうかもしれないね…ああ、殺したいほど愛しているよ。キース」
「ならば、俺は殺されたいほどに愛している」
 過去の憎しみや悲しみなど消し飛んでしまえばいいのに…。
 そうさ、未来は変えてゆけるんだ。
 そう、望めば、何にでも変えてゆける。
 だって未来はまだ訪れていないのだから…。

 僕たちは思いっきり「今」を愛そう。
 「今」を大切にして懸命に生きるんだ。
 そうすれば、いつか未来は願う方向へと向かってゆくだろう。




「お前は、今、幸せか?」
「今?幸せだよ…」










        終





『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十五話「ジュピター」

2012-12-29 01:50:58 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十五話「ジュピター」

  太陽系 木星の衛星都市メティス
 空港に着いたキースはここにミュウの船が無い事を確認をする。
 月が長引いているのだろうと思いつつビルレストへ向かった。
 ビルレストの玄関に着いたキースは二階の自分の部屋に人影を見た気がした。
 キースは二階へ急ぐ。
 開いたままのドアから中に入ると、それを見計らったように声がした。
「ここから見る火星は大きくて、手で掴めそうだ…」
 その声の主は大きな窓も前に立ち、手を火星に向けるジョミーだった。
「それを言うなら地球にも届きそうなんじゃないか?」
 振り返らないジョミーにキースはそう声をかけた。
「火星と双子星みたいな…あの赤い地球には僕は興味が無い…」
 少し寂しそうに答えた。
 キースはジョミーの横に立ち、同じようにドームの外の星を眺めた。
「そうか。月はどうだった?お前がここに居るのは、成功したという事なのか?」
「ううん。彼を取り戻せてはいない。だけど…ブルーが月に残ると言って…シャトルを黄昏の海に置いてきた。僕はゼルでここまで来た」
 言いながらキースをチラリと見るジョミー。
「あの磁気嵐の…シャトルでは…」
「大丈夫だ。少し離れれば影響はないから、静止衛星みたいになってる。月でフィシスが言ったんだ。ブルーが迎えるのが相応しいって、多分…もうすぐ戻ってくる」
「……」
「フィシスを月のブルーに会わせる事も出来たし、彼もブルーだけの方が戻って来やすいだろうからね」
 とジョミーは笑った。
「ブルーとは何もなかったのか?」
「ん…あれ以来、忙しくて僕とブルーは会っていなかったから…。今回会った時に、無謀だったって殴られた…。読みが甘かったのじゃなくて、そこまで読んでいたからクローンでは無い事を皆に伏せていたのじゃないか?とも言われた」
「何もせず、殴られたのか?」
「シドが一発、返した…」
「……」
「ブルーの苛立ちもわかる…人を利用し欺く…そんな事に僕は慣れ過ぎてしまったのかもしれない…」
「ジョミー。俺はあの時、将軍の前でお前たち二人を見た時思ったんだが、あのジョミーとお前はあんなに似ていたか?本当にクローンでは無いのか?と思える程だった。どこかで繋がりがあるんじゃないか?」
「…んー、遺伝子がどこかで繋がっているかもしれないね…でも、彼のデータが全て消失してしまっているので追えなかんだ。どこか別の方法でないとわからないかもしれない」
「……」
「あの子は自分の本当の名前すら知らないんだ」
「そうか…ならお前が名付け親になってやればいいんじゃないか?」
「ジョミーじゃない名前をねぇ…思いつかないな…」
「そう言えば、お前、ネーミングセンス無かったな…」
「あはは…。今度はシャトルじゃないし…トォニィに頼むかな」
 と、二人は小さく笑った。
「あの時、僕と彼とが入れ替わった時、年齢差が出来てしまっている僕たちは見分けが付かない状態じゃないといけなかった。二人が似ているように見えたのは、気が付かれないようにしながら、お互いが「魅惑」の力を使っていたから…だから、彼はより「ソルジャー・シン」らしく。僕は彼らしくしていたんだ」
「そうだったのか…」
 キースは感心したように呟いた。
「でも、キース」
 ジョミーがクスクスと笑い出す。
「ん…?なんだ?どうした?」
「君は本当はわかっていたんじゃないか?」
「俺は将軍の前でお前に上手く殺されるのと、シャトルに部下を待機させるしか聞いていなかったからな。入れ替わっているのは…気がつかなかった」
「ジョミー。お前は、そのソルジャー服が一番似合っているな」
 とジョミーがキースの口調を真似をして言った。
「……」
 真似されたキースは、それがどうした?と言いたそうな顔をしながらも、少し照れていた。
「僕、本人にだと言わない感じの台詞だよね」
「…な、なんだ…今更、言って欲しいのか?」
「言って欲しいかな」
「改めて、言えと言われると…言い難いな」
「ジョミー、お前はお前で良いんだ。もね…何故、あんな事を言ったの?」
「あの時は、俺を殺せるのはお前だけだ。と話したばかりだったからかもしれないが、本当に死ぬかもしれないとも思った。だから、言いたくて言えなかった事を伝えないと後悔すると思ったのだろう。それと、もしかしたら…」
「もしかしたら…僕じゃないって思ってたかもしれない?」
 ジョミーが言葉を継ぐ
「ああ、お前の言うように、無意識に本人を目の前にしたら言えない事がすらすらと出てしまったのは…そういう事だったのかもしれないな…」
「じゃあ、僕も本人に言えない事は他の誰かに言わないといけないんだね」
「ジョミー。俺は同じ実験体は居たが、もう何も残っていないぞ」
「ふーん」
「?」
「残ってたら、そっちに言っていいんだ」
「そうではない。俺はお前にも言った。だから、言いたいなら俺に言え」
 呆れたような顔を隠さずキースは言った。
 回りくどい言い方が好きではない自分がジョミーの話にはこうして付き合ってしまう。それは、それをお互いが楽しんでいるからだった。
「そうだよね。言いたい事があるなら本人に伝えないと伝わらないよね」
「そうだ」
「では、キース。僕に言いたい事は?」
 何となくこう切り返してくる事がわかっていたキースはそれをそのまま返した。
「言いたい事なら、言った。ソルジャー服が似合う事も、進む事を拒み悩むお前もそのままで良いと。それと、俺がもうお前と離れて居たくない事も俺は言った。今度はお前の番だ」
 きっと今ジョミーが一番聞きたいだろうと思っている言葉を並べて、言葉で逃げれないようにしたキースはジョミーの返事を待った。
「つ、強くなったね…」
「待たされ過ぎれば腹も括るさ」
「…ご…」
「謝るなよ」
 ごめん。と言いかけた言葉を遮りキースが言った。
「俺が聞きたいのは謝罪じゃない。お前が、今、俺に伝えたい言葉だけだ」
「君に言いたい事かぁ…。やっぱり、謝ってしまうのが一番簡単なんだけど…それじゃ、納得しないって感じだね」
「いや、それでもいい。小さな一つ一つにまで、何に謝ったのかをはっきりさせてくれればな」
「それは…ちょっと…」
「では、言ってくれ」
「…ま…待っていてくれてありがとう」
「待つと言ったからな」
「でも、君は僕が僕でいられる場所を作ってくれている。それにはやはり感謝するべきなんだろうなと思うんだ」
「……」
「僕はこの戦いで思ったんだ。何度も言うようだけど…どんな大義名分があろうと人は殺し合ってはいけなんだと…。僕は何千、何万という人を殺している。いや、将軍を被害者とするなら…もっとかもしれない」
「それ…は…」
 俺も同じだから、と言おうとしたキースを「いいんだ」とジョミーが制した。
「それをね。僕は前は誰かの所為にしようとしていたんだ。ブルーに導かれミュウになって、長として戦争を起こし、ミュウを地球まで連れて来た。そうだな…誰かの為にした事だと、はっきり言うとミュウの為だな。そうやって僕自身の罪から逃れようとしていた。そして、僕はその戦いの中でもう一つの自分の運命を知った。人智を超えた力をマザーの意のままに…地球の為に使って死ぬ事。僕はそれをすごく簡単に受け入れた。それで人々や仲間を死なせた事を償えるのなら…。全てから…開放されると…楽になれると喜びすら感じてた…。有り余る力を得て、それの最高の使いどころを用意されていたんだから、力に押しつぶされて普通に生きているように見せているだけの僕だったから…嬉しかったんだ」
 キースは不安定な状態のジョミーをこのビルレストで間近に見ている。
 自分にはここでの生活は自分の療養の為と、彼を監視するのが目的だった。そんな、二年間をジョミーは一番楽しい時間だったと言った。
「ジョミー」
 俺を好きになればいいと言ったあの言葉も、彼を自分に縛るだけが目的の言葉だったのかもしれない。
 だが、それでも、俺は…。
「そう、ミュウの長としての死に様ならね…。メギド探しもメサイア襲撃もノアを救う事も、ソルジャー・シンなら当然の事。地球再生なんていうその重すぎる運命から逃れる術を探す事も、許されなかった。でも、僕自身、ジョミーはこう思ったんだ。近い将来死ぬのだと、それがわかってそれに抗う事が出来ないなら、そう、僕は自分の命の終わり方まで他人に任せてしまったんだと。ここまで誰かの為に、何かの為に生きてそして死ぬのなら…。僕はもう僕で生きるという生き方がわからなくなってしまった。だから何処か投げやりで、人の愛し方もわからないくせに、だけどそれなのに、人の愛を欲しがっていた。矛盾を抱えて、ただ愛を得て生きたいと願うだけで、その方法がわからないま、僕は死んだんだ」
 地球再生に向かう前の「行きたくない」はジョミーが本心で言った言葉だったのは知っていた。それを俺は戻って来いとも言わずに見送った。
 ただ待っていると言っただけだ。
 行けと背中を押しただけだ…。
 抗えない大きな力に流されて、それでも、懸命に生きていた。
「俺は待つ事しか出来なかった」
 小さくキースが呟いた。
「そして、ブルーの願いで僕は生きたいと思った。その思いだけで僕は戻って来た。…本当にどこまでも用意周到なんだから…」
 ここまで言うとジョミーは身体の向きを変えて、窓を背にした。

「だけど、戻った僕は、どう生きたらいいかわからないままだった。もう僕の前には道は無い。本当は僕はとても弱いんだと思い知らされた。立ち上がるのにも人の意思が居るのってわかる?それこそ、呼吸する事すらその意思で命令しているんだよ。僕の心はどんどん冷たくなってゆくのに、身体は生きたい生きたいと願うんだ…。呼吸しろってずっと言われているんだ。そんな僕がちゃんと成長出来るはずがない。焦っても考えても悩んでも…どうしようも無くて…何故そんな状態になってしまうのかもわからない。ジレンマで苦しかったんだ。君が優しくしてくれるのを重く感じた事すらあった。そして、僕は教育ステーションに救いを求めた。学生に戻って何がどう変わるのかは僕にもわからなかった。でも、そこでタイプブルーの力を取り戻し、生徒を守る事になった。大きな力を使うには心の成長が居るんだ。未熟な心では力に振り回される。殺戮を繰り返すだけの化け物になってしまうかもしれない。だけど、僕は心が戻らないまま力を得た」
「……」
「本当に怖かったよ。僕のタイプブルーの力は戦闘のみだったし、オレンジの力は人と人を繋ぐだけだから…。この二つに折り合いをつけるのは難しかったんだ。でも、ステーションの事件で僕は人の中の希望を見た」
「僕は誰かの為でもなく自分の為に、自分のしたい事をやっと見つけたんだ」


「僕は、タイプブルーの力を封印する」




  続く