君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十四話

2015-01-19 03:16:20 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノア副首相 ジュピターという宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズのブルー 人類が作ったブルーのクローン(タイプブルー)
      ジョミー 本当はジョミーのクローンではない(タイプイエロー)

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 二十四話

 どこからともなく桜のような淡い色の花弁が音もなく舞い落ちてくる。
 それを見上げて、落ちてくる一枚を手に取る。
 これは誰の心だろうか?
 ふいに風が吹き、床に落ちた花弁を巻き上げて飛んでゆく。
 その先には、青い地球があった。
 ああ、そうか、これはきっと。
 きっと、僕らの…。
 かけがえのない記憶。

「ブルー。僕はキースを護ると誓ったのに助けなかった。それを後悔していないんですよ。でも、それでも、彼に人間を殺させたくはなかった。だから僕は、キースより先にニュクスに入る為にセドルに近づいた」
「情報を守る事を優先した…それで」
「キースが焼き捨ててしまうような、あんなに醜い人間の情報なんていらないと思えるけどね…。でも、未来に次に向かう為には必要だと思った」
「高度な医療と科学。それを君は、セドルに半分渡してキース(人類)から逃げるように言ったんだね」
「そう。セドルにしか頼めなかったから、でもあれはね。本当は半分じゃないんだ。彼の持つものだけでは不十分。それでも、僕になにかあった時はあれで十分…」
「キースはニュクスの情報を君が奪っただけでは君の言う事を聞かなかった。彼は星を壊そうとするのを止めなかった」
「星もろとも…ね」
「ヘイトスピーチか…」
「そう。ニュクスをマザーの星だと騙して連れてきたマザー信奉者をあのプロメテウスごと破壊するのは彼の最初からの目的だったからね…」
「君は未来を視たのか?」
「ええ、ブルー。視ました」
「ジョミー」
「あの時…プロメテウスが堕ちた瞬間に…世界が壊れる音が…」
「君の衝撃はここまで伝わってきたよ」
「…僕は…」
「君の力を解放させるキーワードは希望を奪われる事。つまり君が絶望する時だったね」
「ええ…だから…」
 と言ってジョミーは黙り込んでしまった。
 ブルーは何も言わずにただ待った。
 風も無いのに揺れる白いレース。その中でキラキラと光る氷の粒。どこからか優しく差し込む光。
 自分のとは違うこの世界を、ブルーはジョミーの心の世界を愛しく思っていた。
「ブルー。どこをどう視ても…破滅しかなくて…まだだめなんだ…と…」
「それで時間を戻そうと…」
「未来は見えない…可能性でしかない…それでも…」
「君は選んだんだ。未来を。トォニィを世界に出す為にキースを失脚させた。キースがプロメテウスを破壊しようとしていた事実さえあればいいという事なんだね」
「ええ、そうです。不審な行動を繰り返したキースは更迭される。セルジュはノアの議員の票を集めて、トォニィが新首相になる。僕はこの一年その為に動いていた。だから、もう大丈夫だ」
「だけど、ジョミー。醜いものや汚いものを隠しているのは…」
「わかっています。それではマザーと同じことをしているのだと、これは人類のモノですから…時が来たら、彼らに。いつか公表します」
「あのフィズも偶然の産物では無いとわかるという事だね」
「ええ。僕がプロメテウスの主砲を消した。あのタイミングでそれが出来るなんて、偶然である筈が無いですからね」
「吊られた男か…」
 タロットカードがくるくると落ちてくる。
「……」
「ジョミー。僕は君が心配だ。その重すぎる荷を担いだままでいくのか?」
「何かを持ち続けるのは、もう慣れました」
「ジョミー」
「いいえ。ブルー。僕は大丈夫です」
「……」
「ブルー。貴方を責めるつもりはありません。その資格があるとか、無いとかも、何も無いですよ…。貴方が責められるのなら、僕も同罪です。僕には何も言う資格がありません」
「……」
「ニュクスで貴方の実験結果も見ました。一世紀以上も前、人類は地球から宇宙に出たが、滅び行く人類の行く末を案じた科学者たちがマザー(人工知能)を作り、その結果、完全に管理された世界を作り出した。だが、それにもいつかは終わりが来る。その時の判断を機械の手に渡さない為、人は亜種が産まれるのを待っていた。そこに突然変異で産まれたのが僕達ミュウ。マザーは貴方に命じた。「生き続けろ」と、そして、僕を護れと…」
「…そうだ、ジョミー。マザーはこれは戦いだと、ミュウを殲滅させてしまうかもしれないけれど、そうなった時は僕らの負けだと言った」
「未来で僕は過去の貴方に会った。あれを僕は罪だと思っていました。本当にこれで、おあいこですね…」
「僕達は対なのかもしれないね…」
「そうですね。でも、ブルー。僕はこの道の全てがマザーがそう仕組んだ事だとしても、今はもう何も後悔していません。戦争を起こし戦ってきた事も、全てが並べられたものだったとしても、それを選び、進んできたのは僕だ。だから、この先もきっと進んで行ける」
「未来の君は、もう一人の僕、ソルジャーズのブルーをどうする気なんだ」
「殺さなければならないなら、殺すしかない…」
「予言の所為?」
「ううん。僕は時間を戻す。未来は変わってゆくと信じたい。だけど、未来は変わらないかもしれない。そうなら、もうそう覚悟をするしかない」
「ジョミー」
「ブルー。僕は貴方が人類を力で牛耳る事はしないと信じています。彼は貴方ですから」
 と、ジョミーはにっこりと笑った。
「そうか…ジョミー。僕はここから君をずっと見ていたかったよ」
 ドームが揺らいでいる。そうこの時間は永遠なんかじゃない。もう終わる。
「ブルー。僕が何故消えてしまいそうなタイプブルーの力を必死で温存させていたのかわかりますか?」
「ああ、ジョミー」
「僕は貴方を取り戻したい、時間を戻すなら…貴方を…と思っていたのに…一体、どこで間違ってしまったのだろう…貴方が生きていた時まで戻したいと思っていた…のに…」
「でも、君は出来なかった。そうしない事を選んだんだ」
「僕は貴方に誇れる生き方をしたかった…ただそれだけ」
「……」
「いつか…僕はこの道を選んだ事を後悔するかもしれない…でも…それでも、僕は…今はこうとしか生きれない」
「ジョミー」
「後悔して泣き叫んで。また失敗して、後悔して…そうやってしか生きれないんだ…。僕はタイプブルーの力を使って時間を戻します。それで僕はタイプブルーでは無くなります」」
「僕の手を離れてしまうんだね。ジョミー」
「はい…ブルー」


 崩壊が始まった世界で、ただ二人。
 世界がたった二人だけなら、よかったのに。
 時間が止まってくれればいいのに。  
 小さな花弁が巻い上がり、地球へと飛んでゆく。
 世界がこれだけなら良かったのに。
 そう、僕ら二人、青い地球の上で出会えれば良かったのに。

「まさか…また貴方に会えるとは…本当に思っていなくて…嬉しいのに悲しくて…」
「僕もだよ」
「僕は笑えばいいのですか?泣けばいいのですか?」
「笑ってくれると嬉しいな」
「そうですか…ブルー。貴方も笑ってくれますか?」
 泣きそうな顔をした二人は笑い合った。

「僕はいきます」
 ジョミーがブルーへと手を差し出す、ブルーがその手をとる。
「今までありがとうございました」
「僕も礼を言うよ。今までありがとう」
 静かに二人が離れてゆく、見つめ合ったまま小さくなってゆく。
「ジョミー!」
 ブルーが叫ぶ。
 その声にジョミーは笑顔で答えた。
「ブルー。貴方の為にこの力を残していたのは本当です…見ていて下さい。世界はきっともっと優しくなれます」



  現在 惑星ニュクス上空

「お願いだ。キース。もう止めてくれ。この宇宙を再び戦乱に落とすのが目的なのか?」
 キースの側にいる思念体のジョミーが聞いた。
「ああ」
「嘘だ。もし、そうだと言うなら、僕は今、タイプブルーのミュウとなって人類の前に再び立とう。愚かな人類。今度こそ容赦はしない。お前たちも無慈悲に殺される側になればいい。僕は人類を滅ぼす化け物になろう。そして、君を」
「ジョミー。その言葉を口にしてはいけない」
 そうヴィーの口を借りて叫んだのはトォニィだった。
「ソルジャー・トォニィ!」
 ジョミーの前にトォニィが居た。
 世界が青く光る。
「ソルジャー・ブルー。世界はきっともっと優しくなれます」
「ジョミー」
「トォニィ。後を頼む…」
 ジョミーはトォニィを見つめ小さく笑った。意識は遠のいてゆく。
 トォニィの腕の中に崩れ落ちる。
 だが、トォニィが受け止めたはずのジョミーの身体が青く輝きながら消えていった。
「ジョミー」
「これは…いったい何が?」
 ヴィーはトォニィを見上げる。
「時間が戻るんだ」
「…トォニィ…?」
 トォニィは宇宙空間を睨みつけていた。





  続く






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