君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
二次小説とオリジナル小説の置き場となっています。
同人に傾いているので入室注意★

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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」十一話・十二話(Shangri-La)

2011-06-30 01:37:22 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です
<用語>
木星軌道上の衛星メティス キースとジョミーがいる太陽系拠点
惑星メサイア ミュウが向かった新しい移住惑星

  「君がいる幸せ」

   一章「黄昏の海」

  十一話(Shangri-La)現在
 今は誰もいない老子たちの部屋の前を通り、この船の中心で、ブルーの部屋だった「青の間」へと向かうジョミー。
「ここは落ち着くな…」
 とてつもなく大きなモノに抱かれているような安心感。
 身体が浮き上がりそうな程の清浄な空気。
 広く広くとても静かだ。
 僕は一段一段噛み締めるように階段を上がった。
 ブルーのベッドの前に来ると、もうずっと考えていた事が蘇る。戦争中は何も考えずにただ突き進むだけだった。
「でも、今は…」
 考えてしまう時間があるからいけないのだろうか?
 何も考えられない程に自分の身体を酷使すれば、いいのだろうか?
 だが、今の僕にはそれは逃げでしかない。
 時間がもっと早ければ…苦しむ事もないのか?
 時間がもっと遅ければ…悩む事もないのか?
「この答えは出せそうにないな…」
 堂々巡りを始めてしまった考えを振り切るように階段を降りかけるが、今度いつ、この部屋に来れるかわからない。なら、今、言うべきなのだろう。
 僕は立ち止まり目を閉じた。
「さっき、トォニィに言われました。そう、僕が揺らいでるとしたら、それは貴方のせいだ。僕はまだ地球を想うように。僕は貴方を、ブルーを想っている。地球に着いたのに貴方は居なくて、僕の想いはどこに行けばいいのですか…」
 もう居ないのに。
 忘れればいいのに。
 もう会えないのに。
「僕も死んでしまえばよかったのですか?」
 人類とミュウを見守り続けるのが僕の役目なら、どうしてこんなに満たされないのですか?
 どこまで行けばいいのですか?
 全てを貴方の所為にして、貴方の中に逃げてしまいたい。
 貴方は何処にいるのですか?
 青の間の広い天井に向かって僕は叫んだ。

「ブルー。答えを下さい!」



 ミュウの「惑星メサイア」への旅立ちの日がやってきた。

 ここメティスに残るミュウ達が見送っている。
 ジョミーもトォニィから贈られた昔と同じソルジャー服を着て見送った。
 白く美しい船体、モビーディックと呼ばれた鯨がゆっくりと出てゆく。
 この別れは永遠ではないが、次に会えるのは何年先になるか誰にもわからない。
 もしかしたらまた戦争になって、もう二度と会えないかもしれない。
 見送るミュウ達は目的と意思を持って残る事を決めた者たちだったが、皆、泣いていた。
 見送られる方もきっと同じだろう。
 シャングリラはゆっくりと旋回して、そして離れてゆく。
 やがて星にまぎれて見えなくなった。
 ミュウとの出会いから、ナスカへ降りての生活とその悲劇。
 どこまでも続くように思われた戦争。そして、地球へ。
 いろいろな記憶が蘇ってくる。
 あの船を我らの墓標にしてでもと願った事。シャングリラは皆の希望であり夢だった。
 きっとこの先もそうあり続けるだろう。
「トォニィ、皆を、シャングリラを頼んだよ」
「僕は僕の決着をつけてくる」
 ジョミーは見送りの皆が帰った後、別のドッグから人類の戦艦に乗り込み「月」へと出港した。
 月には「黄昏の海」と呼ばれる場所があった。

「黄昏の海へ ジョミー…」





 「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」

  十二話(Moon)現在
 月へ

 出港してすぐに主賓室へと案内されたジョミーはぼんやりと宇宙を眺めていた。
 しばらくしてキースが訪れた。
「極秘だから、戦艦しか用意できないのはわかるけど、こうしてこの服を着てここにいるのは、ちょっと緊張するね」
 とジョミーは苦笑いをした。
 こんな風に、オフでジョミーがジュピターとしてではなく、ミュウの前長としてキースの前にいる事、二人が一緒に動く事は今も出来なかった。
 わずか3年前、この船の軍人にとってはジョミーは敵の総大将だったのだからそのソルジャー服だと余計にだろうなとキースは思った。
 ジョミーは、これが二人にとって最後の「静かな時間に」なるのかもしれないと思っていると珍しくキースがコーヒーを入れて持ってきた。
 ジョミーに手渡すと自分は窓に向かい外を眺めていた。そして唐突に、
「どうして何も聞かない?」と言った。
 ビルレストでのあの襲撃があったすぐ後に、キースから「月」に行くようにと要請があった。コーヒーカップを両手で包むようにして、ジョミーはその黒い液体をじっと眺めた。
「聞くのが怖いんだ」
 そして、コーヒーをひと口飲んだ。
 そのコーヒーは苦く熱かったが、少し気持ちが落ち着いたような気がした。
「僕は、月に何が待っているのかは、薄々感じている。だけど、本当にそこに行っていいのかがわからない…。トォニィを突き放すように送りだしたのに僕はまだ迷っているんだ…卑怯だよね」
 と自分を責めるように笑った。
 キースは相変わらず振り向かないままだった。
 星さえも壊せる力を持つ彼が怖いと言うもの、それが…月にある。
「俺も出来れば(月へ)つれて行きたくはない」言いにくそうにキースは言った。
 多分、いつまでも隠しておく事が出来るものをそうしないで教えてくれたのはキースの優しさなのだろう。
 ジョミーは「大丈夫だから」と答えたかった。
 だが、言う事が出来ずに「ありがとう」と答えた。
 しばらくすると中距離ワープの連絡が入る。キースは艦橋に戻っていった。

 船は「月」を目指した。



   続く




『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」十話(Jupiter)※BLあり

2011-06-29 00:47:00 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

  「君がいる幸せ」

   一章「黄昏の海」

  十話(Jupiter)現在
「トォニィ!」
「本気だよ」
 言葉と同時に戦艦も一撃してきたトォニィの攻撃がジョミーを襲う。
「……」
 強力な力だ。本気だと言うだけはある。
 袖や、あおられた裾の端が千切れて飛ぶ。幹部服でも防げない程の力が押し寄せた。
 だが、ジョミーは空気の圧力を変化させただけで攻撃全てを相殺し何事も無かったかのように消した。
 それを見て、青く光りだすトォニィ。
「一緒に来てくれないなら…」
「グランパをここから出さなきゃいいだけ!」
 連続的に攻撃を加えるトォニィ。
 攻撃の速さにトレーニングルームの機能が追い付かず、壁に亀裂がはしった。
 微かな振動を爆音が広がりシャングリラが揺れた。
「やり過ぎた…」
 そう呟くトォニィの目の前で、爆炎が回りながら集束していった。その中心に青く光るジョミーがいた。
 トレーニングルームごと吹き飛ぶかと思われた攻撃だったが、壊れたのは壁の表面だけで、内部は何も起きていなかった。
「また相殺された」とトォニィは思ったが、よく見るとシャングリラが壊れないように大きなシールドを二重にも三重にも張っているジョミーがいた。
 トォニィにすれば船が少々壊れても、たとえ怪我をさせてしまっても、ジョミーさえここに留めておけばそれで良いと思っていた。
「(そう)思っていたのに!ちゃんと戦ってもくれないなんて…」
 トォニィの怒りが思念波となって船内を突き抜けた。ミュウ達が顔を上げる。
 この事を知っていたかのように、艦橋からアナウンスが「心配しないで。これは外部からの攻撃ではありません」と流れた。
「……」
「……どうして…」
 そう言って座り込んでしまったトォニィをジョミーは抱きしめた。
「また…置いてゆくなんて出来ない。その為なら、ここに閉じ込めても…。船が壊れて移住出来なくなってしまっても…と…」
「僕に何をしても、僕の意思は変わらない。だけど、この船はミュウの希望だから。僕とブルーの大事な船なんだよ」
「でも、一人にしないでグランパ。本当に僕でいいのか…僕はまだ怖いんだ。僕一人では何も出来ない」
「トォニィ…。君は一人じゃない。沢山の仲間がいる。少し離れてしまうけど僕もいる。僕の事はもう心配しなくていい。僕は、待っている。人と共に、人類の目覚めの時を。だから、わかって欲しい。大丈夫だよ。今度はたどり着く場所の無い旅じゃない。安心して旅立ってほしい…」
「…うん。わかってる。だけど…」
 とトォニィは泣きだした。
 いつもはプライドで身を固めて護り、生意気な言動が多い彼が、僕と居ると素直な子供の彼に返る時があった。それは僕も心地よく。いつまでもそうしてあげたかった。
「また置いてゆくなんて出来ない」
「一人にしないで」
「ちゃんと戦ってもくれないなんて」
 トォニィの言葉が頭の中を巡ってゆく。ジョミーはある決心をしてこう言った。
「トォニィ、僕がどうして船を降りたか知ってるよね?」
 声音を強めた事で、トォニィには僕の言いたい事がすぐに伝わったようだった。
「あいつを…キースを守る為でしょ?」
「…それもあるけど、それだけじゃない」
「僕はあいつが嫌いだ」
 トォニィは僕を突き放し、少し距離を取った。
 これまでのいきさつを考えれば、トォニィには、キースはとても好きになれない相手だろう。そしてトォニィには超えなきゃならない物がある。そう思いながら僕もトォニィとの距離を取った。
「グランパ、僕が今また、あいつを殺しに行ったらどうする?」
「……」
「前みたいに見逃せる?あの時、僕が殺してたらマザーを壊して人類を力で抑えてしまおうと思っていたよね?」
 その問いにジョミーは少し考えてから答えた。
「キースの側には、マツカが居たから、どうなるかはわからなかった…だけどキースが死んだ場合も考えてはいた…」
 さあ、思い出せトォニィ。あの時の気持ちを。
「僕に同族殺しをさせたあいつをなんで!守るの?そうだ。あいつを殺せばいい。そして、グランパを連れて行く!」
 トォニィは感情的になってわめいた。そんな、トォニィをジョミーは静かに見つめた。
「今は殺せないだろう?」
「あんな人間!殺すくらい訳ない!」
「だから、今は僕が護っているから…お前は殺せない」
 この言葉は、トォニィをよりいっそう熱くするのを承知の上でジョミーは言った。
「…僕からあいつを守る為に…船を降りたと言うの?」
「お前からだけじゃないが…」
 冷たい眼差しでトォニィを見据えた。
「ジョミー」
「……」
 トォニィが無意識で、ジョミーと呼んでくる時は危険だ。だが、彼の高ぶる感情を受け止めてあげられるのは僕だけ…。僕にしか出来ない事だった。大人になれトォニィ。この先離れてしまうなら…今しかない。
「さっきのが僕の100%だと思ってないよね?」
「ああ…」
 返事をしながらジョミーは防御の体勢をとった。
「全部受けきれる?」
 空気が動いた瞬間、間髪入れずにトォニィからの連続攻撃がくる。
 一つ一つ相殺してゆくジョミー。
 まだジョミーの船を護るシールドは、はられていた。
「戦いたい。でも、戦いたくない。勝ちたいけど、勝ちたくない。僕はまだ超えたくない。まだイヤだ。ジョミーは…」
 そんな想いと共に、トォニィは泣きながら攻撃を加えてくる。
「ジョミーは僕のだ。好きだ。誰にも渡したくない!」
 これがトォニィの離れたくない本音だ。
 だが、それには答えられない。
「トォニィ…ごめん」
 と思った時に僕は真横からの攻撃を一つ見逃した。回避は出来ないので相殺するが間に合わずくらってしまった。
 壁に向かって吹っ飛ぶジョミー。部屋中がシステムダウンする。ジョミーのシールドが消えたのだ。
「ジョミー!」
 トォニィがあわてて駆け寄る。ジョミーは至近距離での相殺の反動で飛ばされただけだったが、細かい傷があちこちに出来ていた。
「ごめんなさい」
「謝らないで、これは僕が仕掛けた事。大丈夫だから、前より強くなったね」
 ジョミーは起き上がりトォニィの手を取ろうとするが、その手をはらわれる。目をそらしたままトォニィが言った。
「…さっきの僕の声、聴こえてたよね?」
「聴こえたよ」
 とジョミーは優しく微笑んだ。
 その答えに少し戸惑いながら、トォニィはジョミーを見つめた。そして、いつもとは反対にトォニィに抱きすくめられた。
「グランパを抱きたい」と静かに彼は言った。
「いいよ」
「……」
「僕もトォニィの気持ちに答えたいんだ」
「ジョミー」

 ぎこちないキスと抱擁。

 謝るのは僕だ。
 トォニィは、きっと僕がどんなに説得されても一緒に行かない事はわかっていた。
 わかっていても、心が欲するのは止められない。僕も君を求める。
 だから、僕がいたら成長できない気がした。僕がいない状況でないと、仲間達の理解も信頼も得られないと、ああ、違う。人類の行く末、キースを護る事、それは、僕の口実でしかない。
 そう、それだけじゃない…。
 僕は仲間達を裏切っている。
 だから僕は皆と一緒に居られないんだ。
 トォニィ…。
 今、君とこうして体を合わせていても僕は違う思いでいる。
 僕は醜く。汚いんだ。
 僕はまたこうして君を無理に大人にしてゆくのだろうか?
 いつも辛い目に遭わせてしまうね、トォニィ。
 もっと優しくして、もっと愛してあげたいのに…。
「でも君はきっとわかってくれる」
 僕は、横で眠るトォニィの長い髪を優しく触り、その頬にキスをした。


 罪つくりなソルジャー・シン

 罪つくりなソルジャー・ブルー

 繰り返す罪なき子供





  つづく

『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」九話(Jupiter)

2011-06-28 01:49:13 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

 「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」

  九話(Jupiter)現在
 キースの狙撃犯にミュウがいた事は、すぐにシャングリラにも知らされた。
 シャングリラが停泊していメティスの宇宙港の大きな格納庫に滑り込むようにして止まるミュウの小型機。
「ジョミー、無事だよね?」
 バードフレッチアから降りてきたジョミーにトォニィは聞いた。その無事が、キースを指している訳では無いとジョミーは感じていた。
「…襲撃犯は無事に捕まえたよ。どうもマザー信奉者にそそのかされたみたいだ。彼の身柄もじきにこちらに渡されるだろう」
「そうか、良かった」
「タイミングとしては良くないと思うけど」
 ジョミーは苦笑いをしながら言った。
 人類からの提案を受けて決まった。惑星移住に反対している者はまだ沢山いる。襲撃犯がそうとは限らないが、マザー信奉者と組むとは問題ありだと話すとちゃんとミュウ達で会議検討するからとトォニィは言った。
 他人の意見を素直に受け入れるのが苦手だったトォニィ。少しずつではあるが着実に長として成長してきている姿が嬉しかった。

 ジョミーの報告を受けての仲間たちとの会議の後、艦橋下の中庭でトォニィとジョミーは二人きりになった。
「グランパ」とジョミー呼ぶトォニィ。二人の時は昔のままだった。
 そのトォニィがふいに厳しい眼差しでこう言った。
「前から気づいてたけど、なかなか聞けなくて…。グランパ。揺らいでるよね?」
「……」
 どうも最近の自分の心のシールドは普通のミュウには読めないが、心を許してしまった者には読めてしまうようだとジョミーは思った。
「僕たちと一緒に来ないのは変わりないの?ならどうして揺れてるの?」
 トォニィは僕をここに残していくのが心配なのだと言った。
「別に揺れてなどいないよ」と言ってみたが聞き入れてもらえなかった。
「だって、普段のグランパだったら、襲撃犯にミュウがいたってあそこまで防げないことはないよね?」と言う。そして、「何を迷っているの?」とたたみかけてくる。
 こうなると、トォニィにごまかしは効かない。けれど正直に話す事も出来なかった。
「ごめんね、今はまだ話せないんだ」
 こんな言葉じゃトォニィが納得しないのは承知している。だが今はこれしか言えない。
「グランパ。僕たちはもうすぐここを出てゆくんだよ。お願いだ。一緒に来て!」
「ごめん…僕は…行けないんだ」
「僕がこんなにお願いしてもだめなの?」と言うとトォニィはジョミーの腕をつかみ、どこかへ跳んだ。

 そこはトォニィ達、ナスカチルドレンのトレーニングルームだった。
「トォニィ?」



  つづく


『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」八話(Jupiter)

2011-06-27 00:49:40 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です

 「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」

  八話(Jupiter)現在
 叫ぶと走り出すジョミー。
 走りながらキースの前の変光ガラスを硬化させてゆく「ビルレスト」はミュウからの攻撃も防ぐようにしてあるので頭痛が襲ってくるがジョミーには効かなかった。
 パキパキという音とともにガラスが氷のように固まってゆく。
 ジョミーのサイオンに反応して外部シールドも強化されていった。
 キースもこの事態に気がつき背を低くかがんでいる。
 彼に覆いかぶさるジョミー。そのまま青く光りだす。
 その直後。
 強力なレーザーカノンが地上から撃ち込まれた。
 ピンポイントで狙われ、外部シールドが細く破られる。レーザーが一直線でこちらを狙ってくると思われたが、何かに当たったように放射線状に分かれて広がり再び一点に集まってくる。
 前面は硬化ガラスが弾いてくれるが、上と横と下からは防いでくれない。
「この力は!」
 爆音と共に二人のいた周辺の廊下が粉々になった。
 狙撃犯は敷地より200mほど先にいた。
 彼らは立て続けに第二波を撃ち込もうとしている。
「もう無駄だよ」
 と彼らの正面から声をかけるジョミー。
 至近距離に現れたジョミーを見て狙撃犯があわてて逃げした。そこに「止まれ」の声と共に追いついたビルレストの護衛隊が銃を向ける。逃げる犯人は振り向き小型の爆弾を投げつけた。
 ジョミーは爆風から隊員を護りながら、犯人もシールドで庇おうとするが、何故かそれは上手くいかなかった。
「……」
 銃撃戦の末、狙撃犯は狙撃されて捕まったが、彼らが自分たちの車を爆破した事で護衛隊に負傷者が出た。もちろん犯人も無傷では無い。
 倒れている狙撃犯に見覚えがあった。
 彼はミュウだ。
 狙撃犯にミュウがいたことで気づくのが遅れ、襲撃を受けてしまったあげくにビルレストに被害と怪我人を出してしまった。
 キースを狙う人がいる事。
 キースを狙うミュウがいる事。
 それを忘れていた訳ではないのに…。最近は襲撃される事がなかったから気が緩んだのだのか?
 ジョミーの中でキースを守る必要性が薄れてきていた。
 全てが動き出す気配がする。
 僕がここを離れない理由の一つにミュウにキースを襲わせない為もあるのだけれど、彼がこのまま第一線から退いていけばその危険性も減る。いや、彼をもう護る事が必要が無いと言う事なんだろうか?今の襲撃もここに僕がいなくても死ぬような事はなかっただろう。
「時がきてしまったのか…」
 襲撃を受ける直前にキースは地下6Fのシャトルの格納庫にジョミーによってテレポートされていた。
「ここしばらくなかったが」
 上の状況を確認すると地上へと戻ってきた。
 歩いて戻ってきたジョミーはビルレストの正面入り口で警備といるキースを見て、かすり傷一つついてないよと明るく「ミュウの服をキースにも作ろうか?」と提案した。
 その背後に、風を巻き上げながらビルレストの庭にミュウの小型機バードフレッチアが到着した。
「トォニィに会ってくる」
 振り返りまっすぐに歩き出すジョミー。
 ジョミーが乗った機体を厳しい眼差しで見送るキースだった。


  つづく


『君がいる幸せ』 一章「黄昏の海」七話(Jupiter)

2011-06-24 03:08:43 | 『君がいる幸せ』(本編)一章「黄昏の海」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説

 「君がいる幸せ」

  一章「黄昏の海」

  七話 現在(Jupiter)
 木星から見ると火星の先に地球が見える。
 自分の中にある青い星への望郷と、どうしようもない渇望は、マザーが植え付けた物だとしても、これは人間ならば皆が持っているものなのだろう。 

 地球での戦いから、もう三年、あの戦いの夢を見た。
 夢を見る事があまりないキースは、それを懐かしく思えばいいのかわからなかった。
 三年が長かったような、短かったような不思議な感覚がしていた。
「機械め!もう私の心に触れるな!」
 グランド・マザーに向かって言ったあの言葉は本当に心から叫んだものだ。
 地球で死ぬ事を望んで停戦し、対話を口実にマザーの許に降りた。
 ミュウの長であるジョミーに自分を殺させる事で、決着が着くだろうと、その先の事は考えていなかった。
 それは生き残った者が判断すればいい事だから…。と思っていた。
 だが、こうして生き延びて、先を考えないといけなくなった時、俺は人間として生きようと思った。
 あの日、あの時 私はもう一度産まれたのだろう。
 ミュウは自分たちの存在を認めさせ、人類との共存を願い戦いを挑んできた。
 今度は距離を置く為に異星に移ると言う。
 その決断は「人の未来のため」すべてをかけて望んで、そして手に入れたものを手放すのか…。それは、どれほどの苦痛を伴うのだろう。
 ただ前だけを見て進む方が苦痛は少ないように思えた。
 やはり優しすぎるな…彼等は。
 以前、セルジュが、なぜ大佐がここだと言ったのか?とジョミーに聞いたと言っていたが、あれの答えはどうだったのだろう?今なら、セルジュはジョミーに何故ここに残るのか?と、聞きたいと思っているだろうな。

 シャングリラが旅立つまで、後2週間
 キースとジョミーが暮らし、シャングリラが停泊しているのはジュピター軌道上衛星ステーション・メティス
 その中心部にあった古い建物を改築して住んでいた。
 名前は『ビルレスト』 地上5階、地下6階 建物よりも庭が多く占めていた。
 その庭からは有事の際、シャトルが飛べるようになっている。
 内部は二人の意見を聞いて改装されていた。
 共通の入り口が真ん中にあり、向かって右側にジョミーが住み、 左側にはキースが住んでいる。
 ジョミーは5階をキースは3階と2階を住居としていた。
 地下に各自のトレーニングルームがあり、部屋から地下6階まで個人のエレベーターが通っている。
 正面のエントランスを抜けると共通のエレベーターもあるが、ジョミーがキースの部屋に行く時は階段を使い廊下を歩いていく事が多かった。
 キースはビルレストの自室で(人工で作られた)夕陽を眺めていた。
 ステーション・メティスは戦時中、地球の最終防衛線が置かれた前線基地だった。
 自分の乗った戦艦ゼウスもここから出撃した。今は、軍事施設も多く残っているが人類とミュウの共生都市も出来ていた。
 先日、出産をしたミュウの女性が共生都市へと行くので、見送りに行くとジョミーのスケジュールにあった。
 メティスはステーションとして大きいが、わざわざ彼が送らねばならない程ではなかった。
 危険があるという事か?。
 それはミュウの反対派か、人類の好戦派か、あるいは未だ根強く残るマザー信奉者。
 一番やっかいなのはマザー信者SD体制が崩壊しても管理出産がなくならないのは彼らのせいだった。ミュウの行う「自然出産」は人の行為ではないとすら言うのだ。
 確かに、妊娠出産する機能が低下してしまっている人間では、リスクが高い。が、完全に無理という訳ではないと医師も言っている。
 だが、やはり安全ではない。だから、危険をおしてまで自ら子供を産む必要はなかった。
 実子が欲しいのならばバンクに精子・卵子を預けて、結婚したといえば受精させて人口子宮で育てた子を受け取ればいいのだ。
 この前の「人を好きになるとは?」とのジョミーの問いはこのあたりを指しているのだろうか。
 ジョミーは何を考えているのか?
 何に不安になっているのだろう?
「ジョミー、お前がジュピターでいるのもそろそろ終わりなのかもな…」
 夜が近づいていた。
「時が来たのかもしれない」
 キースは遠く小さな地球を見つめた。

 この日、シャングリラから戻ったジョミーは敷地に入った所でキースに呼ばれた。
 帰ったばかりなのでミュウの幹部の服を着ていたが、着替えずにキースの部屋へ向かう。
 中央階段を3階まで上がり、長い廊下を行くと、キースが待っていた。
 思いがけない出迎えにちょっと驚き、少し笑顔を作ると「ただいま」と声をかけた。キースからの返事は無かった。
「何か急用?」
「何事もなかったようだな」
 今日の事を心配していたような質問だが、微妙にニュアンスが違うのを感じてジョミーはあえて笑顔を作り答える。
「うん。母子ともに無事にね。彼女は普通の人と結ばれたんだ。だからここに、残るって。僕がメティスに居るからそうするって…」
 キースがこうして待ってでも話そうとしているのは何なのか。なんとなくソレを感じてしまったので、どうしてもしどろもどろになってしまう。
 まだ、駄目だ。諦めも決心もついていない。
 外は夜の時間になり変光ガラスは宇宙を映している。
 キースは外を見ながら「この前、3年前の夢を見た」と話出した。
「3年前の?もう三年か…。だけど人類はまだ受け入れてはくれない。キースは僕にここから出ていけと言いたいのだろうけど出ていかないよ」とジョミーはキースのの後ろ姿に向かって言った。
「非合理だな」とキースは振り返る。
「僕にはまだわかってないんだ。どうしたらいいのかが、答えが出せていないんだ」
 とジョミーは言えなかった。
 人を好きになる意味が三年前の夢を見たら答え出るのだろうか。
「キース、僕は…」
 言葉が途切れる。
 突然、ピリッ!と五感が脅威を伝えた。
 世界から音が消え、時間が止まる。
 この感覚は…キースが狙われている!
 どこから?サーチしながら叫んだ。
「キース 狙撃だ!」
 油断した!
 どうしてもう少し早く気が付かなかったのか?
 以前の自分なら何キロも先の艦隊まで見えていたのに…。


  続く