君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

真城灯火の小説ブログです。
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☆入室ありがとうございます☆ PN:真城灯火です。 『小説家になろう』で書いています。「なろう」で書いている小説も転載させていますが、ここはアニメ「地球へ…」の二次小説置き場です。本編の『君がいる幸せ』は終了しています。今は続編の『限りある永遠』を連載中です☆まずは、カテゴリーの「はじめに」と「目次」「年表」で(設定やR指定について等…)ご確認の上、お進み下さい。 ブログタイトルですが、これの「君」は自分自身、心の事で、「僕」は自分の身体の事です。 自分の心がそうであるなら、自分はそれに従う覚悟を意味しています。 だから、ジョミーや誰かが一方的に誰かに…って意味ではありません。(小説停滞中) 2021年に、他にあるブログを統合させたので、日常の駄文とゲームの話が混ざった状態になっています。

『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十一話「ミュウと人とソルジャー・シン」

2012-10-02 01:06:27 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十一話「ミュウと人とソルジャー・シン」

「落とさない?」
「力を?」
 そんな事どうしたら、僕達に何が出来る。
 僕達は人なんだ。
 と生徒達は口々にざわめき始めた。
 その様子を少しだけじっと眺めてからジョミーは静かに話し出した。
「僕はミュウだ。それもとても特殊なミュウなんだ。僕はさっき爆風をここにいるミュウの彼らと防いだように、皆の力を集める事が出来る。そして、それは、ミュウの力だけじゃない」
「ミュウの力だけじゃない?」
「除去した爆弾を集めてCブロックに仕掛け、その威力で上に上げる、惰性で軌道に戻す。だけど、それだけじゃ…ここがもたないかもしれない…。救援が来るまで僕らは僕らだけでここを守るんだ。ミュウの皆がさっきしたのは祈る事、願う事だけだ。彼らはバリアやシールドなんて使った事は無い普通の人だ。それを引き出し、強固なシールドへと変換したのは僕だ。それをここにいる全員で行えば、ここは守り抜ける」
 ざわざわと生徒がざわめく。
 この間にも不気味な振動は続いている。
 ジョミーには、支えきれなくなった海賊の船が離脱する知らせが入っている。
 生徒達を不安に陥れないように、ぎりぎりまで強攻策は取りたくないと思ってはいるが、時間は限られてきていた。
 それでも、ジョミーは説得を続けた。
「出来る。必ず。全員の力を集めれば、ステーションは守り抜ける」

「僕は君たちと同じなんだ。惑星アルテメシアは僕の故郷でもある。ここには、僕の両親と、愛する人がいる。そう、君たちと同じだ。ここには…。君達にも子供の頃の記憶があるのだろう。良い事も悪い事もあっただろう、嫌な事があったとしても、全てが悪い事ばかりじゃなかったはずだ。そんな子供時代を過ごした場所は永遠なんだ。もう戻らないし、戻れない。本当に大切な思い出なんだ。そこを壊していいのか?君たちはここで死んでいいのか?まだまだ君達にはやりたい事があって、大きな未来があるのだろう。それを諦めるな。逃げるな。立ち向かうんだ」
 そう、僕はこの星でブルーに会った。
「僕はそんな思い出の星を守りたい。ううん。皆で守ろう。信じて欲しい」

 やがて重力バランスが崩れ始める。
 振動と共に軋む音がする。
「時間がもう無い…」
 天井を見ていたジョミーがつぶやく。
 そして、ジョミーはミュウ達の前に歩み出た。
 ジョミーと同じように不安感が押し寄せていたミュウ達は、やっとジョミーが自分達の所へ来た事で、その不安が消えてゆくのを感じていた。
 きっと、出来る。
 そう信じれる。
 ジョミーとなら何も怖くない。
「僕達でやろう。もう一度頼む。力を貸してくれるね」
「やります」
「守り抜きましょう」
 ミュウ達がそういいながら各自祈り始める。
 ミュウ達のサイオンが静かに溢れ始めた。
 その前にジョミーがいる。
 彼はまだ何もしていない。
 ジョミーは振り返り、そして、静かに。
 そして、少し冷めた目で人々を見つめた。
 それは、自分達の命がかかっているのに何もしようとしない人たちへの諦めが感じられた。
 生徒達は、それに対して「人だから」と言う者もいたが、それにはジョミーが無言で「だから?何だと言うの?」と言われている気がしていた。
「出来もしない事をお願いしたりしないよ」
「君たちにも出来るんだ」
 そんな言葉が聞こえる気がした。
「ジョミー。俺達は信じる。どうしたらいいんだ?」
 と言ったのは、キリアンとマックス。そして、あの上級生だった。
「助かりたいと。落とさない。と祈り願えばいい。それが力になるんだ」
 キリアン達が祈りだす、それにつられるように他の生徒達も祈り始めた。
 やがて、生徒や教授陣、全員が祈っていた。

「そう。それでいい。その祈り…僕が後を引き継ぐから」
 そう言うと、ジョミーは優しく微笑み、青く光り始めた。
 その光りは大きくなりセンター全体を包み込んでいった。
 青い光がステーション全体まで拡がると、少しずつサイオンが変化してゆく。
 青からオレンジへ。そして、眩い陽の光りへと。

 時間になりCブロックの爆破が起きる。
 ジョミーは集めた光を維持しながら、爆破の威力を使いステーションを引き上げ始める。
 上へ ゆっくりと軌道へ
 そして、人の強さと優しさの源へ

 この光は僕だけのものじゃない…。
 人と人とが思いあう優しさ。
 誰かを守りたいと思う力。
 僕もこの光の一つなんだ。
 ミュウも人も…同じなんだ。
 ああ、暖かいな。
 僕はここへ。
 これを感じ為に還って来たんだ。

「シャングリラ。ワープアウト!」
「戦艦ゼウス。ワープアウト!」
「続いて、演習艦アルビオン。ワープアウト!」
 この他にも何隻もの船が救助に現れた。
 シャングリラから通信が入る。
 トォニィとミュウの仲間達がステーションに取り付いた。
 次々にアンカーが打ち込まれてゆく、ゼウスから小型艇が飛び立ちステーションに機材を運び込み少しずつ安定した軌道に戻っていった。

 センターの真ん中で、背中合わせで座り込んでいるジョミーとキリアンとマックス。
 生徒達ももうくたくたで皆座り込んでいた。
「人はどうだった?」
「人の力?」
「どうだ?」
「ここまで引き出せると思っていなかった。人って、スゴイよ」
「そうだろ?お前も俺達、人を助けたいと思っただけじゃなく信じてくれたんだな?」
 キリアンが言った。
「僕もそれ感じたよ」
 マックスが言う。
「ああ、信じ合わないとこんな事は成功しないさ」
 ジョミーがそう答えて、立ち上がり大きく背伸びをした。
 その背後が、騒がしくなった。
 生徒達の間に緊張が走っていった。
 誰が入って来たのか、僕には見なくてもわかった。
 振り返らず、ゆっくりと手を下ろした。
 小型機で乗り込んで来たのはミュウの長、ソルジャー・トォニィと、人類の最高位、キース・アニアンだった。
 この二人が連れ立って歩く図は国際会議でも滅多に見れなかった。
 不仲とかお互いが干渉しないとの不協和音が知られていたが、同じ歩調で歩いてくる二人にはそんな感じは一切しなかった。
「ジョミー」
 声をかけてきたのは、僕から一定の距離で止まった二人では無かった。
 僕は声の方に向き直った。
「エディ…」
 彼はキース達が入って来たのと別方向から来たので、この状況に慌ててしまっていた。
「エディ」
 駆け寄ったのはキリアンとマックスだった。
 彼らが再会を喜び合うのを横に見て、キースに敬礼し、トォニィに挨拶をしたセルジュが僕に声をかけてきた。
「ミア・マクレーンも無事です」
「ありがとう」
 僕は改めて、向きを変えてキース達を正面に捉えた。
 トォニィは僕を少し呆れた風に見てこう言った。
「ジョミーの行く所にはいつも問題ありだね」
 と笑った。
「それじゃあ、僕はまだ皆が宇宙(そと)にいるから、支援しないと燃料切れしちゃう」
 そう言って、トォニィはセンターを後にした。

 生徒や教授達は続々と大型艦のシャングリラへと移送されていた。
 エディもキリアン達と一緒に手を振って出て行った。
 エディにはまだ軍の兵士が付いていた。
 その護衛にヴィーが居るのに気付き、僕と彼は小さく挨拶をした。
 シャングリラは、ここの人を全て乗せるとアタラクシアへ降りる事になっていた。
 僕とキースは管制室へと向かった。
 様々なデータを出して僕はこの状況を説明した。
 キースはセルジュから報告は受けていたので、クラヴィス将軍の更迭を決めていた。
「ブルーも無事に助け出したようだ」
 僕がキースの顔を見上げると
「トォニィがそう伝えて欲しいと言ってきた」
「そうか…良かった」
「ここは?」
「さっき報告を受けたが、廃棄する程では無いようだ。ブロックごとの修理で済むだろう」
「そう。なら他に行かずに休みで済みそうだね…」
 ジョミーは離れてゆくシャングリラを眺めながら言った。
 それを横でじっと見つめた後、キースが聞いた。
「この事態をどう収拾しようと思っていた?」
「エディは逃がしたけど、避難が間に合わなくて、最初はやつらはここと一緒にエディやクリスティナを殺す気だとわかって…」
「それで?」
「それでも、ブルーを行かせた。それが、あの子達を守る最善な方法だと思ったから…」
「お前はまだ爆弾があると思っていたのだろう?」
「ああ、僕だけじゃない。管理室や教授もそう思って必死に探した」
「…予知は戻ったのか?」
「どうだろう?友人のキリアンとマックスが危ない目に遭うのはわからなかったな」
「戻りたいか?」
「こんな事が起きると力があった方が良いと思うけど…。でも、戻るのとは違う。僕はもっと違う何かが欲しい」
「そうか…」
 キースがゼウスへ戻る時間が近づいていた。
 二人は管制室を出た。
「身体は大丈夫か?」
「何とかね」
「……」
 キースは何も言わずに乱暴にジョミーの右腕を掴み上へ引き上げた。
 半分吊り上げられたような形になるジョミー。
「…痛っ…何を…」
 そのまま、キースはジョミーの頭を抱え込み、両腕で抱きしめた。
 ジョミーの顔にキースの髪がかかる。
「俺が…俺が、どれだけ心配したと思っているんだ…」
 キースのその言葉も肩も震えていた。
「……」
「お前のインカムにはシグナルがついていたんだ…」
「…ロスト…」
 それは僕が死んだとキースに知らせる信号だ。
「俺は何度お前を失えばいいんだ?」
「キース…ごめん」
「……」
「キース」
「俺は…」
 キースは言いかけた言葉を飲み込んだ。
「止めないでいいよ。僕を責めていい…」
「責めても同じだ…」
「ごめん。もう少し…まだ僕は…まだ君と進めない…」
 キースが僕を抱く腕に力を込める。
「俺もそれは理解しているつもりだ…」
「僕らは依存しちゃいけないんだ…お互いが立っていないと、成り立たない」
「ああ」
「まだ僕はそれを、その方法が見つけられない」
「ジョミー。それでも俺は…」
 キースが僕の頭を掴んだままキスをしてきた。
 想いが流れ込むような優しいものだった。

「俺との事は見えなくても、お前はもう何かを見つけているんじゃないか?」
「そうだね。僕は人とミュウの未来には希望があると信じているよ」
 
 離れてゆくゼウスを眺めてから、僕はアルビオンへ急いだ。



   Artemisia編 一章十二話 「過去 そして 次の時代へ」

 演習艦アルビオン
「シド。…セルジュは?」
「セルジュは、戦艦エンディミオンで東の星域へ行っています。ゼウスもそこへ?」
「将軍は見つかったのか?」
「はい」
「そうか、これで収まると良いけど…」
「ブルーがかなり派手にやったみたいで、あ、いえ、死傷者は少ないです…そうとう脅かしたみたいで…これで大人しくなるといいですね」
「そうか…僕はこのままアルテメシアに降りて生徒と合流するけど、ミアはどうするの?」
「一度、ペセトラに戻らないと…」
「シドは?」
「僕もベルーガを取って、戻ってきます」
「了解」
「ところで、クリスティナとは連絡取れる?」
「東の星域の戦闘が治まってきてるので、多分」
「会えないかな?」
「それは、少し難しいかと…通信なら」
「わかった」
 アルビオンはアルテメシアに降りた。
 僕はすぐにダールトンの通信網を使ってミディアンを探した。
 クリスティナとミディアンには面識があった。
 ミディアンとクラヴィス将軍との出会いが、ミディアンの兄グライムを軍を抜けさせ海賊へ向かわせたとクリスティナは誤解していたが、それはすぐに解けた。
 ミディアンとクラヴィス将軍は戦争中の混乱の中での別れだった。
 将軍が個人的な恨みで動いていたのでは無いのかもしれないが、それが全く無いとも言えなかった。
 僕は彼女達に謝罪する事しか出来なかった。
 戦争を起こした事、グライムを殺した事が、避けて通れなかった道だとしても、僕に何一つ過ちが無いとは言えないのだ。

 人は過ち進みゆくものなのかもしれない。
 それでも、全ての人を信じて僕らは進むしかなかった。

 




    終


  「夢の在り処」二章へ つづく




『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十話「友情。生徒同士ということ」

2012-09-26 01:00:16 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 十話「友情。生徒同士ということ」

 やがて、選ばれたメンバー四十五名が集まった。
「無線で一つ一つ指示をするより僕が映像を受け取り、処理の仕方を教えるから、僕と同調して…テレパシー交信に慣れてくれ。難しい事はないから今から少しやってみよう」
 処理に向かう生徒とテレパシー交信の練習を少しした後、彼らを見送る事になった。
(装備の点検は済んだかい?)
(はい)
(では、各自処理の仕方を送る。今、ステーションはゆっくりと回転をしている。それは通常の状態ではない。だから細心の注意をして欲しい。そして、くれぐれも無理はしないで…)
 ゆっくりだが、一つ、一つと処理が進んでゆく。
 やがて、二十八個の処理が終わった。
「どう?不安は消えた?」
 僕はセンターに集めたミュウの生徒達に声をかけた。
 彼らは予知は出来ないが、これだけ集まると感覚は鋭くなる。
 ミュウは僕が探した子をプラスして四十人近くになっていた。
 その彼らから僕は口々に不安感を訴えられていた。
 そう、まだ何か起きる。
「船に爆弾が!時限式で周りにトラップ!」
 管理室からの声が館内に響いた。
「!」
 その声と同時に上部の格納庫の練習艇が爆発した。
 上部から振動がくる。
「軌道は…」
 データが大きいスクリーンに現れた。
 落下が加速していた。
「くそっ」
「作業中の生徒が巻き込まれました」
「さっき、作業は終わったんじゃなかったのか?」
「館内から外にあるのを見つけたので、そのまま処理をすると…」
「今、どうなっている?」
 聞くと同時に僕は外に意識を飛ばした。
「キリアン!マックス!」
 彼らが…。
 僕はパネルから生徒達の方へ振り返り叫んだ。
「ミュウに告ぐ!船の誘爆が起きている。上部ブロックからの爆風を防いでくれ」
 防護シャッターが間に合わない。
 大きな衝撃が近づいていた。
「何を、どうすれば?」
 ミュウたちが叫ぶ。
「守りたいと祈れ!僕がその気持ちを力に変える!」
 第一波、第二波と振動がくる。
 ミュウ達が一人一人祈りだす、サイオンパターンによってオーラの色が違っている。
 それを集めるかのようにジョミーが青く光りだし大きな輪になる。
 大きな振動がステーション全体を揺らした。
 生徒達の悲鳴と叫び声があがった。
 青い光が第三波を防いだ所で、やっとシャッターが機能し消火が始まった。
「皆、大丈夫か?僕は救出に行く」
 ミュウに声をかけ、皆の前でキリアン達の救出に跳んだ。
 僕は二人を連れ戻し医務室へと運んだ。
 幸い飛ばされただけで二人に大きなケガは無かった。
「良かった」
 二人の間で泣きそうになっている僕にキリアンが言った。
「俺が自分で言い出した事で死んだら、俺が情けないだろ」
「それ、どういう意味だよ。本当に心配したのに…」
「お前が責任を感じる事は無いって意味だよ」
 マックスが補足した。
「僕は二人を助けに行くよりここを守る方を優先させたのに…そんな僕を心配なんかしなくていいよ…」
「でも、お前は僕達の側に来ただろ?」
「そうそう、幽霊みたいな…でもとても暖かくて…それは僕らを包んでくれてた」
「……」
 僕は無意識で思念体を飛ばしていたのか?
 見つけただけだと思っていたのに…。
「君達が無事で居てくれるのがとても心強い。センターに戻る。僕はここを守ってみせる」
 涙が零れた。
 そう。もう何も考えない。
 ここを守り抜く。
 絶対落とさせない。
 もう、それしか考えない。きっと、それは叶う。

 ステーションの落下は続いていた。
 僕はセンターに戻り生徒全員の前に立った。
「一年のキリアン、マックスは無事です。幸い命に関るような怪我もありません」
 生徒、教授陣、管理員、皆から歓声が上がった。
 皆も不安ばかりのこの状況の中で起きた小さな幸運を喜んだ。
 だが、事態は一刻を争う深刻な状況だ。
 皆に現実を知らせ、前に向かせないといけなかった。
「静かに。これから、今の状況を隠さずに話します」
 僕はそこに居る皆を見て言った。
「知っての通り、ここは周回軌道を外れ、星へと落下を始めている。残った海賊の船が落下を止める為に引き上げてくれている。だが、さっきの練習艇の爆破がさらに軌道を外れさせ落下の速度を速めた。彼らだけでは支えられなくなった。そして、今、ここに軍の艦隊とミュウの船が救助に向かって来ている。だが、それも…救出できる時間内に到着すると言えなくなってしまった」
 皆に動揺が走りざわつき始めた。
「聞いてくれ。今、大人たちは必死で集めてきた爆弾をCブロックに設置している。それは外れた軌道を戻すだろう」
 その言葉に安堵の表情を浮かべる生徒達。
 僕は上に指を示した。
「だけど、この計画は危険なんだ。この上は壊滅状態だ。そこに…Cブロックを破壊したら…ここは無事では済まない。だから、皆の協力が必要に…」
 僕の言葉は途中で遮られた。
「ジョミー。君は僕達を殺す気なのか?」
 生徒の一人が声をあげた。
「いいえ」
「ここを壊して、星へ落ちても影響を与えないようにしたいのか?」
「いいえ」
「僕達を殺してまでも、星を救った英雄になりたいのか?」
「いいえ。違います」
「君はミュウだから、さっきみたいに跳んでどこにでも逃げれるんだろう?」
 その声は、前に僕を殴った四年生の男からだった。
「いいえ。僕は逃げたりしない」
 生徒がざわつき始める。
 この問答は無駄だ。
 僕は皆に信用してもらおうとは思ってはいない。
 信用していようと、いなかろうと実行するだけだ。
 空気に不協和音が流れ始める。
 そんなモノは、もうかまわない。
 僕はここを守りたいんだ。
 ジョミーの表情が少しずつ「ソルジャー・シン」へと戻ってゆく。
「待った」
「ジョミーも皆も聞いてくれ」
 振り返ったその先にはキリアンとマックスがいた。
「ジョミーが、僕達の星アルテメシアへの影響を減らす為に、ここを壊す気ならもうとっくにやってる。ジョミーは攻撃できる武器を積んだシャトルを持っていた」
 マックスが話始めた。
「な、何故それを?」
 キリアンが僕に今はしゃべらない様に目で合図をしてきた。
 生徒達が口々に不満を言い始めた。
「ほら、見ろ」
「ちゃんと聞けよ。持っていたと言ったじゃないか」
 キリアンが言う。
「でも、それはここにはもう無い。さっきトップのブルーが乗って出ていった」
「大事なお兄さんだけ逃がしたって事か?」
 上級生が言った。
「詳しくは知らないけど、ジョミーには何よりも優先して守らなきゃいけないものがあったんだ」
「ジョミー。説明を…でないと伝わらないよ」
「……」
「何か協力して欲しいんだろ?」
 キリアンが言った。
「…確かにシャトルはここにあった。僕専用の医療機器を載せてCブロックにあった。マックスが言ったように、シャトルはブルーが乗って出ている。説明する前に聞きたい。君たちがシャトルを知っているとは思わなかった。何故、わかった?」
「ジョミーと知り合う前に見つけたんだ。あれが君のだって後で知った」
「君たちはどこまで冒険してるんだ…ブルーの事は?」
「ジョミーと彼が話している所に僕達もいたんだ。盗み聞きしてごめん」
 二人はごめん。とポーズをした。
「Cブロックに?なんで?あの時、君たちはここに居たんじゃ…」
 僕はセンターに彼らが見当たらないと気付いていた事を思い出した。
 きっと、どこかに紛れていると思っていた。
「僕達はここに入る為に隠れていた時に、海賊がシャトルを見つけたと知ったんだ。僕達は爆弾の事とか知らなかったけど、海賊がシャトルに爆薬を仕掛けるみたいな話を話をしていて、それで、エディのデータだけセンターに残してCブロックへ行って隠れて海賊を待っていんだ。そしたら…」
「海賊は来なくて、僕とブルーが現れた訳か…」
「ジョミー。いざとなったら皆に協力してもらって何とかするって言ってたよな」
「…ああ…言った」
「今がその時だよな」
「そうだね。わかったよ」
 僕は生徒たちの方を見て話した。
「説明を…いや、誤解を受けるような行動をした僕がいけないんだ。釈明をさせて欲しい。気が付いているのもいると思う。トップのブルーとジョミーがここに居ないのは、爆弾を仕掛けた海賊がジョミー・ダールトンを攫って行ったからだ。彼ら二人がミュウなのは知っているだろう。彼らはミュウにとっても特別な存在なんだ。二人共ソルジャークラスのタイプブルー。とても強いんだ。だから、海賊に渡すわけにはいかない。大げさかもしれないが、彼らをまた再び、戦争を起こす火種にしたくない。そうなる前にとブルーを行かせた…」
 僕は側にいる上級生に目を向けた。
「これで、ここを攻撃するようなシャトルが無い事。ブルーが居ない意味をわかってくれたかな?」
「それは…起こるかわからない戦争を起こさないようにって…ここより、そっちを取ったって事だろ?」
「…そうだ」
「お前は!」
「どんな手を使っても戦争は起こさせない。そして、ここも落とさせない」
 その言葉に決意が読み取れたが、上級生はまだ食らい付いてきた。
「それでも、ここからお前が逃げれるのはかわりない」
「逃げる気があったら、ブルーと一緒に出ていってると考えるのが普通じゃないか?」
 マックスが反発した。
「いつでも逃げれたなら、俺ならとっくに逃げてる」
 キリアンも言った。
「もういいよ。僕が逃げる事はないし…逃げても宇宙空間なら僕にもどうしようも無い。だからもういい」
「良くない」
 と二人が言った。
「僕達は信じてるけど、逃げるんじゃないか?なんて思われてるリーダーなんて信用出来ないだろ?」
「いぁ、まぁ、確かにそうだけど…」
「わかってもらうべきだ。これから何かしたいんだろ」
「ああ。そうだ。でも、今から、僕がしようとしている事には僕が必要不可欠で、だから、もうそれが証明さ。僕はどこにも行かない」
「ジョミー」
 僕は再び生徒達に話しかけた。

「皆に協力をして欲しい。僕はここを守りたい。今だけでもいいから、僕を信じて欲しい。艦隊の到着まで、ここを星に落とさない。皆の力を貸して欲しいんだ」




  続く







『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 九話「戦闘特化」

2012-09-21 02:21:41 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 九話「戦闘特化」

 暗闇の状態から少しずつ光りが戻ってくる。
 彼女の銃の腕はさっきので知っていたし、僕もバリアを張る時間は無かった。
 けれど、僕は撃たれなかった。
 いや、正確に言うと撃たれたけど、弾はそれて僕の頬をかすめただけだった。
 左耳に付けていたヘッドセットが外れて落ちた。
 そこで、彼女への暗示は解けた。
 銃を額に押し付けられ、僕は両手を挙げるしかなかった。
「何なの?ジョミーって君が?何を…」
「クリスティナ。すみません。僕はミュウです。力を使いました」
「……」
「教えて下さい。貴女が首領ですか?なら…」
「クリスでいいわ」
「なら、ジョミーはどこです?」
「ジョミーは君じゃないの…」
「貴方達は踊らされている。このままだと…また…」
「何?どういう…事?」
「戦争を起こすのは、とても簡単なんだと言う事だ」
 僕がそう言った時、衝撃がステーションを揺らした。
 砲撃ではなく何かが爆発したようだった。
 僕は上げた手で銃を払落して、机のネットを強制的に管理室に繋いだ。
「動かないで撃つわよ」
「今はそれどころじゃない」
「……」
 僕は血で汚れたシャツは着ていなかった。上着も所々汚れ破れているそんな姿の僕にクリスは僕が持っていたあの黒いマントを着せた。
「女装のまま、皆の前に出る趣味は無いよね」
 クリスを先頭にしてセンターの管理塔へ海賊の幹部達が向かった。
 僕はセンターの生徒がいるホールへと向かった。
「ジョミー。聞こえる?君の言う通りだったわ。許可なしで一隻出ている。我々はこれから追う。小型艇しか残せなくてすまない」
「大丈夫です。必ず捕らえてください」
「了解」
「まだ、新手がいるばずです。僕からも支援を出します」
「…どこにそんな…?まぁ、いいわ。任せる」
「OK」
「今、機能を戻しているわ。それとここに残る者に指示を出したから、安心して」
「ありがとう。それとここと下級生のブロックを解放してほしい」
「開けた。それと、ジョミー。エディとグライムの事は後で話して」
「…わかった」
「じゃあ、ここは君にまかせたわ」
「わかりました」
 話しながら、僕は管理室からのデータをパネルに出して確認をした。
 クリスとの会話が終わり、僕は思念をステーションに広げていった。
 ここには、ブルーは居なかった。
 そして、何故かキリアン達の姿も見当たらなかった。
(ブルー。どこにいるんだ?)
 返事は無かった。
「この中にミュウがいるだろう?出てきてくれないか」
 センターへと降りた僕はデータを見ながら生徒達に言った。
 集まっていた生徒はざわざわとしていたが、皆、海賊から解放された事がわかったので、一人、一人とおずおずと手を挙げた。
 十人程の生徒が僕の前にやって来た。
「知っている通りに、海賊達はもう僕達に危害を加える事はない。もう安心だ。彼らの目的は達成されないままだが、彼らはここを出て本当の敵を追って行った」
「本当の敵?」
「彼らを使ってここを襲わせ、僕達を彼らに殺させて全面戦争を起こそうとしている者の所へね」
「せ、戦争?」
 怒りを含んだジョミーの声に反論するものは居なかった。
 ふいに、ブルーからの思念が飛んできた。
(ジョミー…気を失ってた…)
(ブルー。良かった。無事だったか?)
(完全に無事って訳でもないけど…な。連れて行こうとしたヤツに撃たれた)
(死んでないなら、君は無事って事だ)
(酷いな。こんな時くらい、優しくしてくれても…)
(優しくするよ。全て終わったらね。少し我慢して待ってて…)
 一刻も早く側に行きたかった。
 その声に、その思いに僕の緊張が伝わらなかっただろうか?
 ここで僕がグラついちゃいけないんだ。
 遮られていた扉が開き、下級生がセンターに入って来た。
 彼らを上級生にまかせて僕は下級生の中からまたミュウを集めた。
 それから、僕は教授陣の許に行きここのデータを見せた。
「いいですか。よく聞いて下さい。ここは今、さっきの爆発で軌道を外れてゆっくりと惑星アルテメシアに引かれています。本当の敵はここに爆薬を仕掛けていったという情報があります。今、落下はほぼしていません。海賊は彼らの残った船で引き上げてくれています。それと、軍も動き出しています。僕の仲間も来ます。それまでに爆薬を探し、ここを守りましょう」
 データを見せられ、事実を知った教授たちは慌てた。
「海賊たちがこんな事をしなければ」
「そんな情報は信用出来ない」
「さっきのやつらみたいに逃げるんじゃないのか?」
「逃げたんじゃない。ここを破壊して逃げた船を追っていったんです。あれにはジョミーが連れ去られています。彼らはそれを追ってくれたのです」
「だが、こうなったのは、そもそも…」
「そうです。ですが、今それを言っていて我々が助かりますか?追求は後でお願いします。まだ時間はあります。今を見て対策を考えて下さい」
 その言葉に教授たちは対策を練りだした。
「僕は下層部に行ってきます。しばらくお願いします。センターが一番頑丈です。まだ大丈夫だから動揺しないようにと、生徒達に話して下さい」
(ブルー。今、行く)
 僕はセンタールームを後にした。
 この頃には殆どの機能が戻っていた。
 Cブロックへとブルーを連れて跳んだ僕の前にはあの懐かしいベルーガがあった。
「これにも医療システムが積んである。何かあった時の為に持って来た」
 ブルーに、今の状況を説明した。
「君はジョミーを追ってくれないか」
「僕もここに残っ…」
「だめだ」
「どうして!?」
「君はジョミーを追うんだ」
「だったら、ここを軌道に戻してから」
「君一人でか?これだけ大きなステーションなんだ。五千人の人の命もかかっている。そんなに簡単にはいかない。その間にジョミーが死んでしまってもいいのか?」
「え?」
「そうなってしまってもいいのか?」
「なんで、そんな事にはならない!」
「敵は海賊じゃない。マザー信奉者だ。君たちを作った人間達の巣窟だぞ。何を仕掛けてくるかわからない。やつらは君たちが僕ら(ミュウ)から離れた事を知り、この計画を練った。軍に恨みを持つ海賊をそそのかして、ここを襲わせ。その隙にジョミーを奪った」
「マザー信奉者…あの狂信集団…。だったら何故僕を置いて行ったんだ?」
「君は彼らには必要が無くて、彼が僕だからさ…」
「……」
「君は目的の為に手段を選ばない。彼は目的の為に死ねる」
「…ジョミー」
「…どっちが…やつらにとって扱いやすいかってだけの違いさ…」
「わ、わからない…。だけど、ここをこのままに…」
「行くんだ。ここは大丈夫だ。ミュウも軍もこちらに向かっている。やつらが何を仕掛けていても対処してみせる。いざとなったら、僕が皆に協力してもらって何とかして切り抜ける。だから…見送るしかない。そんなのは…もう二度としない。させない。見送るのも、見送らせるのも、もうしない!」
「……」
「ブルー。だったら僕が行く。それでいいか?」
 ジョミーがこの混乱で少しずつタイプブルーの力を取り戻しつつあるのはブルーにもわかった。
 だが、まだその力は前の頃とは程遠かった。
 だから、もしジョミーを止めなければならない状態になった時、もしかしたら、二人共失うかもしれなかった。
「僕が、助けに行く」
 ブルーと僕はベルーガに乗り込み銃創の治療を開始した。
 そしてベルーガはゆっくりと出てゆく、ハッチを開ける操作をしながら僕は思った。
 戦闘特化とは、こういうモノ。
 戦ってタイプブルーに戻ってゆく。
「これで、あの子達は無事だ。必ず、取り返せよ」

「センター。設置された爆弾は位置は把握できたか?」
「約三十個、教職員が処理しています」
 用意周到なやつらだ。エディ、クリスティナごとここを爆破する計画だったんだろう。
「ただの威力じゃない、ここを星に落とすつもりなんだ。周到に隠された物もあるはず…」
「星に落とす?そんな事が…」
「設置された位置と威力を考えたら計算は出るだろう?」
「そんな事をしたら…」
「海賊を完全に滅ぼす為に戦争をしたいんですよ。軍がね…。
 そう言いながらジョミーはセンターへ戻って来た。
「軍が?」
「海賊がじゃないのか?」
「海賊を騙しここを襲わせたのはマザー信奉者。その彼らを後ろから操っているのは軍の上層部の人間だ」
「まさか…」
「クラヴィス将軍が陰で動いている」
「そ、そんな」
「だから、一刻も早く。残りを見つけないと…次に何を仕掛けてくるかわからない」
 そう、僕の中の不安が消えない。
 やつらはとても酷い事を平然と出来るそんなのが集まっている。
 こんな生ぬるいやり方では満足していないはずだ…。
 きっと、まだ何かある。
 ここをアルテメシアへ落としたら、海賊との問題だけじゃない、周辺の東部の勢力が黙っていないだろう。
 僕や、ソルジャーズの誰かがここで死んだら、ミュウも黙ってはいない。
 ミュウとキースの軍と戦争になる。
 そして、弱体化した軍をクラヴィス将軍は派閥を使ってキースを総督の座から追い落とすだろう。
 また、戦争になる。
 そして、今度こそミュウと人は戻れない血塗られた道に進む。
 僕の願いが全て瓦解する。
 僕がここに居る意味も何も無くなってしまう。
 将軍はエディをどうしたかったのだろう。
 彼の母親、ミディアンをどう思っているのだろう。
 愛しているのか?
 憎んでいるのか?
 それとも、その両方なのか?
「ジョミー。新たに小型ですが…二十八個見つかりました」
「な…?」
 こうしている間にも軌道を外れているステーション。
「今、作業をしているのは、二人一組で十二人。処理中の者を省くと動けるのは八人か…」
 僕が跳ぶしかないか…。
 力を温存したいんだけどな…と思った時。
「ジョミー!俺達もやる。方法を教えてくれ」
 振り返るとそこにはキリアン達、一年が居た。
「ダメだ。練習の時みたいな物じゃないんだ。本物の爆弾なんだ」
「見ると館内のもあるじゃないか?それなら宇宙空間より動けるはず、それなら僕達でも出来る」
「だから危ないんだ」
「わかっているって、そんなの」
「でも」
「ジョミー」
 別の生徒から声がかかった。
 彼らは上級生だった。
「外にあるのは僕達が処理する」
「!」
「場所の詳しいデータを」
「だけど…」
「ここは僕達の学校なんだ。生徒だからって何もしないでじっとしてはいられない」
「危険なんだぞ」
「ここで待っていても危険だ」
「ジョミー。僕達に手伝わせてくれ」
「…キリアン、マックス…」
「…わかった。処理に向かう人を選んで。僕に教えてくれ」



  続く








『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 八話「変装それともコスプレ?」

2012-09-16 01:47:35 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 八話「変装それともコスプレ?」

「諦めろよ。ミアのデータ持ってるのジョミーだし…」
「ウイッグもあるぞ」
 と二人は楽しんでいる。
「……」
 マックスのお陰で簡単に衣装部屋はすぐに見つかった。
 衣装はきれいにウィンドウに並べられていて側に行くとスポットライトが点いてとても探しやすかった。
 肝心の制服は自分達のを使っていたのか少なかった。
 グレーの上級生の服は四着あるには、あったのだが、男子二着。女子二着だった。
 十四歳にしては小さい僕は、身体のサイズ的にも女子の制服を着る事になりそうなのは…「当然」って感じだった。
 二人とも金髪のウィッグをつけていた。
「ジョミーはウィッグなんていらないな。こっちで十分じゃないか?」
「何?」
「リボン」
「…もう、何でもいいよ…」
 彼らは軍人でもない普通の子供だ。
 こうしている事が怖くない訳がない、茶化していないと不安なんだ。
 何度も戦ってる僕にも不安はあった。
 それは二人とは違う物である事もわかっていた。


 先に出る事にした僕はここの位置と、目標の上級生のいるセンターまでの地図や監視モニターが復帰している場合の対処方を相談して、再びの合流を約束した。
「じゃ、行くね」
 と廊下を走って行こうとすると、キリアンが声をかけた。
「待った」
「何?」
「走らない方がいい」
「え、なぜ?」
「お前、女らしく走るって出来ないだろ?」
「それは、そんな風に走れなくたって良いんだよ。見つからなきゃいいんだから…」
「あっはは。そうだな。頑張れ」
 顔を見ると一人で行く僕を心配して声をかけてきたのだと言う事がわかった。
「うん。二人とも、気をつけて」
 僕は廊下に出て生徒の私室を抜けて管制塔へ向かった。
 それは、センタールートの方が早いけれど、私室の方にはもう生徒が居ないので、監視も少なく見つかる危険が低いと思ったからだった。
 でも、それは甘かった。
「誰かを探しているのは、当然か…」
 多分エディが一年の中に居ない事がわかり、センターとここで探しているのだろう。
 さっき、キリアンが「見つかりそうになったら」と渡してきた物があった。
 その黒い物を拡げて見ると、それは、魔法使いのようなマントだった。
「……」
 これを着て、あーはっはっはっは。と高笑いをしている自分が浮かんだ。
 ミュウを魔法使いとでも思っているのだろうか…。
「キリアン…。これ着て。パッと消えろって?…ちょっと前なら出来たんだけどね」
 僕は廊下の角から次の廊下を覗っていた。
 だが、海賊達が生徒の部屋を見て回っているなら、好都合かもしれない。
 部屋に入れたらネットが使えるかもしれない。
 他のブロックまでは無理だが、ここなら「僕の力を加えれば」ソルジャーズ達がどこに居るのかがわかるはずだ。
「まず、彼らを見つけないと…」
「誰だ!」
「!」
 僕は走り出した。
 廊下を二つ行った所で、前を塞がれた。
 僕は身を翻し、後ろからくるのに飛びかかった。が、前から来た男の反応がとても早く、僕は背後から殴られて気を失った。
  暗闇の中
「手短にしろよ」
「ああ」
「つっ…」
 どうやら気を失っていた時間はほんの数分だったようだ。
 僕は生徒の部屋の床に倒れていた。
 どこも縛られてはいなかった。
「さて、お嬢さん。何でここにいるのかな?」
「……」
「監視で入ってる軍人か?」
「……」
「まぁ、後で吐いてもらう。捕まえるのに手強かったって事で、殺しゃあしないからな」
 と、倒れたままの僕に覆いかぶさるように寄ってくる。
 僕は男を見たまま、手で後ろに下がった。
 男が動くタイミングに合わせて男の腹に足を思い切り蹴り上げた。
 男の運動能力の高さと鍛え方から蹴りは思ったより入っていないようだ。
 蹴りいれた右足を掴まれた。
「このっ」
 僕は足を引いてもう一度蹴った。
 もちろん、威力なんてない。
 だが、男は少しよろめいた。
「こいつ、子供だと思って手加減してやったのに」
「子供だと思うやつに悪戯しようとしたくせに」
「お前、女じゃないのか?」
 と同時に足を振り回され僕は部屋を転がった。
 僕がぶつかった先にあったデスクの上の物が落ちて音をたてた。
「騙しやがって…」
 男が唸る。 
「このクズやろう。ヤレなくて残念だったな…」
 そう言いながら僕は後ろ手で、力を溜めて剣を作ろうとしていた。
 男と僕が睨みあっている部屋のドアの外で人の声と音がしてドアが開いた。
「!」
 男が音も無く倒れた。
 死んではいなかったが意識は無かった。
「ケガはしていないか?」
 薄明かりの中、歩いてくるその人は途中に落ちている髪飾りを拾った。
 そして、僕に近づき髪に付けようとして
「これは付けなくてもいいね」
 と言った。
 僕は見上げて、
「貴女の方が似合うでしょうね」
 と言った。

 彼女の背後、ドアの外に銃を持った海賊がいる。
 彼女は倒れた男を連れて行くように指示をしていた。
 その指示が終わると僕の方に戻ってきてこう言った。
「そこ、血が出てる。診せてみろ」
 見ると左腕が出血していた。
「……」
 最初の廊下か、部屋へ投げ込まれた時か投げ飛ばされた時かわからなかった。
 左腕を触ると刃物のような物で切ったように制服が切れていた。
 廊下で切られていたのだろうと思いつつ上着とシャツを脱いだ。
「出血の割に浅い。だから気がつかなかったのだろう」
 僕はベッドに座り彼女は手早く処置をした。
「貴女は何者ですか?」
「それは、こちらも聞きたい。お前は何をしていた」
「今、助けてもらった事と治療してくれた事の、礼は言う。だけど、貴女が何者かわからない内は、僕は何一つ答えられない」
「そう?」
 彼女はしゃがみこんで僕をじっと見つめた後、いきなりキスをしてきた。
 僕は慌てて引き離した。
「な、何を…」
「生意気な子にはこうするのがいいのよ」と薄く笑っていた。
 身体に違和感が起きた。
 中心から痺れがくる気がする。
「何か…したな…」
「ちょっと口を滑らかにしただけ」
 と自分の唇を人差し指で触っていた。
「自白剤か…?」
 僕は胸を押さえたままベッドに横になった。
「…戻ってから…薬に過剰反応するんだ…もう…何もするなよ…」
「しないよ。君がちゃんと答えてくれればね」
 胸の動悸がだんだん治まってきた。
 落ち着いたのを見計らって彼女が質問を始めた。
「君の名前は、ミア・マクレーン?」
「…ミアではない」
 僕はゆっくりと答えた。
「ミアの正体は?学生じゃないな」
「学生じゃない。軍人…」
「どこから?所属は?」
「ペセトラから…諜報部、ただの監視要員」
「ペセトラ?正規軍?」
「ああ」
「君とミアは同僚とかか?」
「…違う」
「じゃあ、どういう関係なんだ?」
「…先輩と後輩…」
「それだけじゃないな。ミアのデータを持っているのは何故だ」
「身代わりになる為に」
「身代わり?では、ミアは何をしている?」
「ここには居ない…襲撃前に逃がした…」
「……」
「軍人が居たのでもわかるだろう?ここへの襲撃は予測されていた」
「それでは、エイドリアンが居ないのも君の所為か?」
「僕も探しているんだ」
「彼を?」
「僕の大事な人たちを」
「人たち?」
「そう」
「君は、何者なんだ?」
「僕はジョミー・マーキス・シン」
 淡く青い光が二人を包んでいた。
「思ったより時間がかかってしまったな…キリアン達は無事だろうか…」
 僕はこの部屋のネットが生きている事を祈りつつ、デスクに噛り付いた。
 ネットは動いた。
 僕はそこに自分の力を加えて彼らを探す。
 海賊に気付かれる前に…そして、予定通りに一度ステーションの機能を三秒程止めた。
 再起動後、三十秒でもう一度、機能が落ちるように操作した。
 センターの上級生がいる部屋の近くでキリアン達が隠れている。
 その彼らを次のダウン時に潜入させる計画だった。
 時間は三十秒。
「起きてください」
「……」
「貴女は何者なんです?」
「……」
「答えて」
「クリスティナ・デュッセルドルフ」
「!」
「デュッセルドルフ?グライムの何なんだ?」
「婚約者」
 その言葉に動揺した僕は彼女が銃を取った事に気付くのが遅れた。
 銃声が響く。
 それは、機能停止と同時だった。




  続く





『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 七話「襲撃」

2012-09-11 02:25:06 | 『君がいる幸せ』Artemisia編 夢の在り処
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン。今はジョミーの専属。

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 一章「夢の在り処」 七話「襲撃」

 ミアはジョミー・マーキス・シンに関する詳しい情報は知らなかった。
 十年前の大戦で、ミュウを率いてきたソルジャーである事が一般的に知られている彼の経歴。
 軍に居るものは、戦後、彼に「ジュピター」と言う権限が贈られた事と、ここ数年は表舞台から姿を消している事くらいだった。
 そして、最近になって知らされたのは、自分が潜入している教育ステーションに入学して来ると事。彼が、自分の監視対象の二人と深い繋がりがある事、彼が子供の姿になっているという不思議な情報だけだった。
 ジョミーが綴ったデータには、エディの家族に対する謝罪が込められていた。
「僕が彼の家族を知ったのは、八年前「ジュピター」と言う名で、キース・アニアンの部下をし、その警護にあたっていた頃だ。
 この東のグラス空域で大掛かりな海賊掃討作戦があった。
 海賊と言っても彼らの多くは元軍人で軍の体制に反対し除隊した者や、戦中戦後の急激な変化に取り残された者達の集まりだ。
 その中でも、グライムと言う男が率いるとても強力な一団があった。
 数年かけてその海賊の壊滅を狙っていたグラヴィス将軍。
 どういう経緯で知り合ったのかはわからないが、戦中、クラヴィスは、グライムの妹、ミディアンと恋に落ちて子供が生まれていた。その子供がエディだ。
 僕が調べた中では、彼らは本当に愛し合っていたと思える。戦争が激化する中で、二人は運命に引き裂かれた。
 段々とより大きくなってくるグライムの戦力。
 それに敵対するように軍での地位を上げるグラヴィス。
 これを見ると、二人を引き裂いたのはグライムだったのかもしれないね。
 そんな流れの中に、キースと僕は置かれた。
 その頃、僕は二人の事は知らなかった。けれど、この海戦で僕は海賊に加担した。とても無謀な、とても、悔いの残る戦いだった。
 そして、僕はエディの伯父、グライムを処刑したんだ。
 その後エディの母親ミディアンはたった一人で、彼を大事に育てた。
 それは、彼を見ればわかるだろう。
 やはり、子供は愛の結晶なんだと思う。
 僕はエディと会えて、話が出来てとても嬉しかった。
 その彼を僕は守りたい。
 僕が側にいて守り抜く気でいた。けれど、セルジュの情報から事態が変わった。
 人に知られてはいないが、この数年の間にまた軍に不満を持つ者、昔沢山いた「マザー信奉者」が再び集まり、ある組織が出来ている。
 彼らは「エディ」に僕と同じ事をしようとしている。
 そう、彼を「ミュウのソルジャー」のように仕立て上げようとしているんだ。
 政府に牙を向く勢力の「旗印」にしたいんだ。
 僕はミュウだ。
 ソルジャーと呼ばれるだけの力が僕にある事は自分でもわかった。
 だから、その運命を受け入れて生きてきた。
 エディは人間だ。
 そんな運命に流される必要はない。
 彼の母親もそう思うから隠れながら、普通に育ててきたのだと思う。
 ここに来てそんな風に狙われるとは思ってもいなかっただろう。
 彼をそんな修羅の道に落としたくは無い。

 これは、戦争を起こした僕達の所為なのか…。
 そして、八年前に海賊を根絶やしに出来なかった僕らの所為なのか…。
 だとしても、僕は彼の伯父を殺した。後悔しても、僕がした事実は消えない。
 ミア。君は軍規に従わなくても良いだけの権力、最高の力がジュピターだと思っているね。
 この「ジュピター」は人ではなくミュウの力を持っている僕の人としての「枷」なんだと僕は思っている。
 ソルジャーという化け物の首にキースが付けた首輪だ。
 僕は「人が殺せて、殺せない」んだ。
 だから、ミュウの力が無くなったのかもしれない。
 僕は「矛盾」だらけだ。
 そんな僕だけど、彼、エディは守りたい。
 将来、彼が僕を恨みに思う時が来たとしても…。僕は受け入れよう。
 僕は彼に、自分で選べない未来なんて、与えたくない。
 セルジュの力を借りてくれ。
 どうも軍はエディを使って海賊を一掃しようと考えているようだ。
 ここに僕ら、クローンの二人と僕が居る事も計算済みだろう…。
 危険な戦いになるかもしれない。
 だから、最後に。
 セルジュと合流したら、ここに、何が起きても戻って来ないように。
 シドと二人で彼を守っていて欲しい。

                 Jomy      」

 ミアはエディにジョミーが彼を逃がそうとした経緯を伝えた。
 だが、全てを伝える事は出来なかった。
 ミアは、シドにこのデータを見せてどうするかを聞いた。
「今は、セルジュの軍と合流して、守り抜く事ですね」
 そうシドは言ったが、それが彼の本心で無い事は手に取るようにわかった。
 シドは自分からエイドリアンを逃がすように言った事で、ジョミーから離れてしまった事を後悔していた。
「今は…、ソルジャーズ。君たちが頼りだ」
 
 その頃、教育ステーションは生徒の避難が間に合わないまま、海賊の襲撃を受けていた。
 やはり、元軍人の集まりだ。
 さすがに十秒ではなかったが、こんな移動もしない教育ステーションの攻略なんて目を閉じてても出来そうなレベルだったのに変わりはなかった。
 襲撃された時、ここの迎撃システムに任せて、僕達は何もしなかった。
 僕は生徒を非難させる為、各ブロックからセンターに生徒を集めて上級生は上部デッキへ、下級生は下部デッキへと向かわせている途中だった。
 迎撃システムはすぐに沈黙してしまい、軍の兵士も半数が倒され、捕虜となっていた。
 生徒達は各ブロックのセンターホールへ集められた。
 僕は、その時、キリアンとマックスの二人と一緒だった。
 そして、前に僕が閉じ込められ、彼らに助けられたあの一年のブロックでも無いCブロックに居た。
「これで、やつらはここの全員から探さないといけなくなる」
 ジョミーはエディのデータと共に行動をしていた。
 生徒の詳しいデータは破壊しておいた。その復旧にはある程度の日数が必要だろう。
「ジョミー」
「これで、生徒が殺される事はないだろう」
「でも、エディは一年だとわかっているんじゃないのか?」
 マックスが聞いた。
「この時を狙っての襲撃だから、当然知っているだろうね」
「そしたら、二年や上級生。女子生徒はやばくないか?」
 キリアン言う。
「軍の監視役の女性が居ると情報を流した。それと…その監視対象の彼らの事も…」
「彼ら?」
「ここには、エディだけじゃなく。下手に殺したら問題になる人間がいるから…」
「それは、お兄さん達の事?」
 マックスにはある程度の情報がいっているようだ。
「ああ、学年や身体的データはわからないだろう。やつらにとっては敵にしたくない素材だろう」
「ミュウなんだよね?」
 と、二人が慎重に聞いてきた。
 ミュウと戦争をしていた事実は消えていない。
 僕らミュウが人と混じって暮らすようになって、身近にミュウがいるのが自然になっても、強いミュウは恐れられていた。実際、ミュウが起こした暴力事件は少ないがあるのは事実だった。
「そう、強いよ。二人共ね」
「そんなに強いなら戦えば良かったんじゃないか」
 キリアンが言った。
「彼らはそんな事は聞いてはくれない」
「なんで?」
「兄たちにもいろいろあるみたいで…」
「……」
 戦ってくれればこんな事にはならなかったのに、と彼らは思ったようだった。
「多分、ここでは使いたくないんだ…」
 一応僕も何か危害が及ぶようなら戦えとの指示は出した。
 それが何もしないでこうなっているのは、まだ生徒は無事だと言う証拠だろう。
 海賊の襲撃で各ブロックは完全に遮断され、何もわからない。
 情報さえもが分断されていてわからなかった。それは目隠しをされている気分だった。
 サーチさえ出来たら…。 もどかしく思っていた。
 この状態になっても、シドと僕とのルートは切れる事は無かっただろう。
 彼を行かせた方がエディは守れる。
 彼は何としても守らねばならなかった。
 僕にミュウの力が戻っていれば良かったのにと痛感していた。
 僕の今の力はとても弱い。
 使える種類も少なかった。サイコキネシスは使えない。テレパシーは近くに居ないと無理だった。戦闘能力は人とそう変わりない。
 何故、体力は戻ってきたのに…ミュウの力は戻ってこないのだろう?
 僕達三人は小さなライトを手に上級生のいるBブロックに向かっていた。
 場所によっては完璧に封鎖されている所も出来ていた。
 そんな所に僕達はいた。
 まずは、ここを出てBブロックに向かわないといけない。
 彼ら二人は僕の持つエディのデータを自分達にも運ばせて欲しいと言ってきた。
「狙われるのはわかってる。逃げ回ればいいんだよな」
「兄と同じく僕もミュウだ。だから、僕の心配はいらない。ギリギリまでは一緒に居る。本当に危ない時はデータを消して逃げてくれ」
「わかった」

  Bブロック潜入
 非常灯の薄明かりの下で「それで、どうするんだ?」と、急にキリアンが聞いてきた。
「何を…」マックスと僕が振り返る。
「だって、ここでは上級生に混じるんだろ?」
「そう。そこで僕が兄達を探す。合流しないと…」
「それはわかってるよ。俺達、これじゃすぐバレるって」と自分を見下ろした。
「あ」
「そうだった…」
 僕達は一年の紺に黄色のラインの服。
 上級生はグレーに黒のラインだ。
「困ったな…。誰かの部屋に入って借りるしかないか…」
「入れないだろ?入れたらネットが使えるから、こんな事はしてない」
「ロックを細工して解除してでも…入る。上級生の私室に向かおう」
「ジョミー。待って。いい考えがある」
 マックスが言った。
「この近くに歓迎会で使ってた演劇の衣装部屋があるはず。だから…」
「衣装?ドレスとかじゃないのか?」
「今年はそうだったけど昨年は学園物だったんだ」
「マックス。詳しいね…」
「マックスはトップのセシリアが好きなんだ」
「あ、今年の姫役の?」
「だだのファンだって!部屋を探そう」
 マックスが真っ赤になって先に歩きだした。
 僕達はちょっと笑いながら後に従った。




  続く